魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

今回はそれほど物語は大きく動きませんが、謎がまた深まる回になります。

では、どうぞ。


59. インキュベーター

「……あら。もうこんな時間」

 

不意に時計の針の位置を見て、仁美は声をあげた。

さやかとほむらが対峙していた頃、仁美は上条と世間話を仲睦まじく語り合っていたが、いつの間にか辺りが暗くなっている事にも気づかないくらいに夢中になっていたようだ。

それだけ仁美は幸せに浸っていたという事だ。

 

「随分と遅くなっちゃったね。ゴメンよ、仁美。話し出したら止まらなくなっちゃった」

「いいえ、お気になさらず。私も上条君に自分の気持ちを正直に伝えれて、良かったですわ」

「僕もだよ、仁美。久しぶりに仁美とこんなに話せれて」

 

仁美に続いて、上条も笑みを浮かべた。段々とつき始めた街灯の灯りが、2人を幻想的にライトアップしている。

 

「そうだ。良かったらこのまま僕の家に来て、ご飯でも食べていかないかい? 家族にも紹介しておきたいっていうか……。もっと聞きたい事とか、話したい事もあるし。仁美の家族には僕の家から連絡すれば良いよ」

「まぁ、それは嬉しい限りですわ。でしたら……」

 

仁美が頬を紅く染めて、上条のお言葉に甘えようとして、座っていたベンチから立ち上がったその時、仁美がピタリと立ち止まった。

 

「? 仁美……?」

 

上条が怪訝な顔をしているが、仁美の耳には、彼の声は届いていない。

彼女が立ち止まったのは、不意に言葉では言い表せない何かを左手につけられたソウルジェムを通じて感じ取ったからだ。

 

「(……なんですの? この妙な気配……。 胸を貫くような、とても暗くて悲しいこの感覚は……)」

 

仁美は訳も分からず困惑した表情を浮かべていると、脳裏にさやかのの顔がよぎった。なぜ急にさやかの事が頭に浮かんだのか分からなかったが、一つだけ言える事が。

 

「(まさか、さやかさんに何かあったのでは……⁉︎)」

「……仁美? どうかしたの?」

 

不意に辺りをキョロキョロ見渡す仁美を見て、上条は首を傾げた。

行かなければならない。そう直感的に感じ取った仁美はなるべく動揺を見せつけないように、不安を押し殺して、上条に告げた。

 

「あ、あの。ごめんなさい。実は、急用を思い出してしまいまして。申し訳ありませんが、今日はこの辺で失礼させてもらいますわ。自分で誘っておいて、ごめんなさい」

「う、うん。良いよ、別に。今日は楽しかったよ」

「え、えぇ。こちらこそ。では、また明日」

「あ、ちょっと待って」

「? どうされましたの?」

「あ、いや。大した事じゃ無いんだけど……。仁美っていつからその指輪つけてたの?」

 

上条が目に付けたのは、ベージュ色の宝石が埋め込まれていた指輪型のソウルジェムだった。珍しいものだと思って気になっていたらしい。仁美は落ち着いて苦笑いを浮かべながら言った。

 

「こ、これはその……。つい最近手に入れたものですの」

「へぇ。綺麗だね。……あ、ゴメン。邪魔しちゃったね」

「お気になさらず。それでは……」

「うん。それじゃあ」

 

別れの挨拶も早々に、仁美は一礼すると、公園の外へ出るために緑地帯を駆け抜けていった。上条はそんな仁美の後ろ姿を呆然と眺めている。

 

「(さやかさん……! どうか無事で……!)」

 

仁美の心配事はただ一つ。さやかの安否だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さやかちゃん、どこなの……」

 

一方、まどかとタケルは固まってさやかの捜索を続けていた。

途中で、誠司から連絡を受けて、杏子とゆまが、さやかを殺そうとしたほむらを見つけて足止めしたのだが、逃がしてしまい、さやかの行方も途絶えてしまったという報告を頼りに、近くにいた2人は合流して、さやかが消えて行った方へと足を運んでいた。

すでに辺りは、日が沈んで暗くなっており、街灯が灯り始めている。

川沿いに設置されている噴水広場に差し掛かって、タケルは隣を走っているまどかの方に顔を向けた。あれからノンストップで走り回っていた為、体力も限界に近いのか、肩で息をしているように見えた。それを見たタケルはまどかに声をかけた。

 

「ちょっと休憩するか」

「……うん」

 

まどかも賛同して、近くのベンチに腰をかけて、息を整えた。

休憩する中、タケルは辺りを見渡しながら、内心焦っていた。各々の家族には、前もって帰りが遅くなるとは告げているが、あまり遅くまで外にいると、家族に心配をかけてしまう。一刻も早く、さやかを見つけ出さなければならない。

 

「さやか……。お前、どこにいるんだよ……」

 

タケルが誰ともなしにそうボヤいた時、聞き慣れた声が、2人の耳に入ってきた。

 

「君達も、僕の事を恨んでいるのかい?」

 

声のした方をゆっくりと振り向くと、予想通り、白い顔に爛々と赤く光る目が特徴的な生物……キュゥべえがチョコンと街灯の下に座っていた。

いつからそこにいたのか分からず、不気味な感じだった。

 

「……あなたを恨んだら、さやかちゃんを元に戻してくれるの?」

「それは無理だね。僕の力の及ぶところじゃない」

「人様の命を抜き取って、ソウルジェムやアイコンにしちまう力がある癖に、よく言うぜ……ったく」

「生憎、僕にも出来る事と出来ない事があるのさ」

 

そう呟くと、キュゥべえは拒絶されていない雰囲気を察したのか、2人に近寄って、まどかから見て左隣の空いたスペースに腰掛けた。猫みたいに足で体を擦っているキュゥべえを横目で見ながら、まどかが口を開いた。

 

「……ねぇ。あなた、いつか言ってたよね。私が凄い魔法少女になれるって話。あれって、本当なの……?」

「? まどか、お前……」

 

不意にまどかが口にした言葉を聞いて、まどかから見て右隣にいるタケルは顔をあげてまどかの方を見た。対するキュゥべえは淡々と事実を告げた。

 

「凄い……なんていうのは控えめな表現だよ。契約して力を手に入れれば、君は途方もない魔法少女になるよ。おそらくこの世界で最強の、ね」

「……じゃあ、私が魔女をやっつける事を早く引き受けてたら、さやかちゃんやみんなは、魔法少女や仮面ライダーにならずに済んだのかな……?」

 

まどかがやや躊躇気味に質問すると、キュゥべえは彼なりの精一杯のフォローをするかのように声をかけた。

 

「さやかは彼女なりの願いを遂げたし、他のみんなもそうだ。その点については、まどかは何の関係もないよ。……ただ、その後の頑張りについては、まどか1人で、さやか10人分の働きが出来てたかもしれないけどね」

「どうして私なんかが……」

 

責任を感じているのか、まどかの口調は暗くなっている。タケルも彼女にかける言葉が見つからず、黙り込んでいる。

そんな中、キュゥべえが困惑したような表現をしているかのように、首を横に振った。

 

「僕にも分からないんだ。はっきり言って、君が、……ううん。君やタケルが秘めている潜在力は、理論的にはありえない規模のものなんだ。誰かに説明してほしいのは、僕だって一緒さ」

「そう、なの……?」

 

意外な返答に、まどかは表情を変えた。タケルも、キュゥべえの話に耳を疑っている。

 

「君達が本来の力を解放すれば、奇跡を起こすどころか、宇宙の法則そのものを捻じ曲げる事だって可能だろう」

「ちょ、ちょっと待てよ。それじゃあ、俺達、まるで神様みたいな力を備えているっていうのか?」

「そういう事になるね。なぜ君達だけがそれほどの素質を備えているのか、理由は未だにはっきりとしてないけど」

 

スケールのぶっ飛んだ話に、タケルはさらに腰深くベンチに体を預けた。

まどかもそうだが、タケルも仮面ライダーである以前に、それまで平穏な暮らしをしていた、どこにでもいそうな少年少女だ。特別な家系でもなければ、特殊な力を備えているわけではない。そんな2人になぜ宇宙レベルの力が備わっているのか、謎が深まるばかりだった。

 

「……私は」

 

しばらく沈黙が続いた後、まどかが夜空に輝く星々を眺めながら、ポツリと呟いた。

 

「自分なんて、何の取り柄もない人間だと思ってた……。ずっとこのまま、誰の為になる事も、何の役にも立てずに、最後までただ何となく生きてくだけなのかなって……、タケル君やさやかちゃん達の後ろで、ジッと背中を見てるだけなのかなって……」

 

それは、まどかがこれまで溜め込んでいた、内心の戸惑いだったのだろう。次から次へと、自己嫌悪な言葉が口から溢れ出てきている。

 

「それが悔しいし、寂しい事だって分かってるんだけど、でも心のどこかで、仕方ないよねって思ってたの……」

「現実は随分と違ったね」

 

キュゥべえはそう結論づけた。反論出来ずに口を閉じたままの2人を見て、キュゥべえは今一度まどかに視線を向けた。

 

「まどか。君が望むなら、万能の神にだって、なれるかもしれないよ」

「……おい!」

 

キュゥべえの甘い誘惑を聞いて、タケルも黙っているわけにはいかず、咎めようとした。が、それよりも早く、まどかが震えながらも何かを決意したようにキュゥべえに声をかけた。

 

「……私なら。キュゥべえに出来ない事でも、私なら出来るのかな?」

「というと?」

「ま、まどか……?」

 

タケルが恐る恐るまどかの方に顔を向けると、まどかは息を吸って深呼吸してから、こう言った。

 

「私があなたと契約すれば、それでさやかちゃんの体を元に戻せる?」

「な……⁉︎」

「その程度、きっと造作も無いだろうね」

 

キュゥべえが淡々と告げる中、タケルだけはまどかの意見に反対した。

 

「まどか、考え直せよ……! 魔法少女になるって事は……!」

 

だが、まどかは首を横に振って、真っ直ぐとタケルの目を見つめた。

 

「私は、今日までずっとみんなに助けられて、今の私がいるの。だからね、今度は私がタケル君みたいに、一歩勇気を踏み出す番だと思うの。隣に並んで、一緒に戦えるなら、命がけになるって分かってても、きっと大丈夫だって、タケル君がそばにいるだけでも、そう思えるの」

「まどか……」

 

始めてみた気がする、まどかの強い信念を持った目を見て、タケルの気持ちが揺らぎ始めた。まどかを危険な目に遭わせたくない。その想いは、変身して戦ってきた当初から変わっていない。真実を知って、なおさらその想いは強くなった。

だが、今のまどかを見ると、その考えが本当に正しいのか、迷い始めてきた。そしてその目つきは、あらゆる運命を受け入れてでも、友を助けようと決意を固めている雰囲気を漂わせており、何となくではあるが、今の彼女を止める事は出来ないかもしれない、と思わせるものだった。

次第に、タケルの体から力が抜けた。そしてタケルは、まどかの目を見つめ直して言った。

 

「……まどか。本当にそれで良いんだな?」

 

まどかは強く頷き、キュゥべえに向き直った。

 

「君の決意は確かに感じ取った。改めて聞くけど、その願いは君にとって、魂を差し出すに事足りるものなんだね?」

「さやかちゃんの為なら……、みんなを守れる力が手に入るなら、……いいよ」

 

そして、赤く光る目をしっかりと見据えて、深呼吸してから、まどかは告げた。

 

「私、魔法少女に」

 

だが、その次の言葉は続かなかった。なぜなら……。

 

「……え?」

「な……⁉︎」

 

2人の目の前で、突然キュゥべえに何十発もの穴が空き、原型が定まらないほどに肉塊に成り果てて、ベンチに横たわった。

一瞬のうちに何が起きたのか分からず、2人が混乱していると、2人の後方から、金属音が鳴り響いた。2人が振り返ると、そこには魔法少女姿のほむらが、息を荒げながら立っていた。足元には拳銃と空の薬莢が落ちている事から、彼女がキュゥべえを撃ち殺したと見て間違いないようだ。

 

「ほ、ほむら……⁉︎」

「ひ、酷いよ……! なにも、殺さなくても……!」

 

ほむらの剣幕に怯えつつも、まどかとタケルは思わず立ち上がり、まどかはほむらを咎めた。

だが、ほむらはそれを無視して、2人に、正確にはまどかに詰め寄った。

 

「あなたは……!」

 

その姿からは、怒りや悔しさが滲み出ている。

 

「何であなたは、いつだってそうやってタケルみたいに、自分を犠牲にして……!」

「……え」

「役に立たないとか、意味が無いとか……! 勝手に自分を粗末にしないで……! あなたを大切に思う人の事も考えてよ……!」

 

癇癪を起こしながら叫ぶほむらを見て、まどかとタケルは戸惑いを隠せない。これまで見た事の無いようなほむらの冷静さを失ったような言動に、途方に暮れている。一方で、ほむらはたまらずまどかの両肩を掴んで、感情を露わにしたように糾弾した。

 

「いい加減にしてよ! あなたを失えば、それを悲しむ人が世の中にはいるって、どうしてそれに気づかないの⁉︎ あなた達を守ろうとしてた人達は、どうなるの⁉︎」

「ほ、ほむら、ちゃん……」

 

事情が把握出来ず困惑しているまどか。ほむらは叫び終えると同時に膝から崩れ落ちて、涙が溢れ出た。彼女は依然として肩を掴んでおり、見兼ねたタケルがほむらの腕を掴んだ。

 

「お、おい。よく分かんないけど、とりあえず離せって……!」

 

が、タケルがほむらの腕を掴んだ瞬間、まどかとタケル、両者の脳内にノイズが走った。朧げながら、かつて夢の中で見た、ほむらとマコトが変身した姿で巨大な魔女に立ち向かう姿が映し出された。何故そのような映像が流れてきたのか分からなかったが、まどかは思わずほむらに尋ねた。

 

「……わ、私達は、どこかで、会った事……あるの? ずっと前に……」

「……! そ、それは……」

 

言いにくげに言葉を詰まらせて、ようやくまどかから手を離した。そのまま肩を震わせて手を地面につけて泣いている。始めて見る彼女の泣き咽ぶ姿に、声をかける余裕すらない。

と、その時、別方向から声が聞こえてきた。

 

「まどかさん! タケル君!」

 

まどかとタケルが振り返り、ほむらが顔を上げると、遠くから、制服姿で駆け寄ってくる人影が。灯りに照らさせて、その人物の全体像が露わになった。

それは、先ほど上条と別れてさやかを手がかり無しで探していた仁美だった。

 

「仁美、ちゃん……?」

 

まどかが、予想外だった彼女の登場に驚いていた。仁美は3人の手前で立ち止まり、一旦ベンチの方を向いて、キュゥべえの死体を見て息を呑んだ。が、すぐにまどか達の方に向き直った。

 

「……さやかさんは」

「!」

「さやかさんは、今どこに……?」

「な、何で仁美がさやかの事を……」

「分かりません。ですが、何となく、今さやかさんに会わないと、取り返しのつかない事が起きるような胸騒ぎがして……! 彼女がどこにいるのか、ご存知ありませんか⁉︎」

「そ、それは、私達も今……」

 

まどかが状況を説明しようとした時、タケルの携帯に電話がかかってきた。タケルが携帯を開くと、相手は星斗だった。耳に当てると、星斗の声が聞こえてきた。

 

『タケル! さやかが見つかったぞ!』

「さやかが……!」

 

タケルの声を聞いて、まどかと仁美が顔を見合わせる。

 

「それで、どこにいるんだ?」

『駅の方にいるらしい。まだ本人は見つかって無いけど、マミさん達が魔力を辿って特定したんだ。今は杏子とゆまが近くに向かってるみたいで、俺もマミさんと隼人さん、御成と一緒に合流してそっちに向かってる。タケル達も急いで来てくれ!』

「分かった。ちょうど今、仁美も来てるとこなんだ」

『仁美もか⁉︎』

「あぁ。すぐに向かう。後で合流しよう!」

『了解!』

 

そうして電話を切ると、タケルはまどかと仁美に顔を向けた。

 

「さやかが駅の方にいるみたいだ。俺達も急ぐぞ!」

「うん!」

「はい!」

「……待って!」

 

3人が走り出そうとした時、ほむらが口を開いて弱々しい声で呼び止めた。

 

「美樹 さやかは、もう……」

 

その姿を見て、まどか達は放っておくわけにはいかない感情が芽生えた。が、それ以上にさやかの身の安否が心配で仕方が無い。そう考えたまどかは呟いた。

 

「……ごめんね、ほむらちゃん。でも私、行かなきゃならないの。さやかちゃんを助けないと」

「……ほむら。確かにお前の言う通り、俺達がいなくなったら悲しむ奴だっている。でも、俺達だってさやかがいなくなったらもっと悲しくなる。そうならないように、手遅れにならないうちに、さやかを助けたい。それが、俺達が生きているうちにやりたい事なんだ」

「……!」

「……だから、行ってくる」

 

タケルがそう言うと、先に駆け出し、続いてまどかと仁美も後についていった。

 

「! 待って! まどか、タケル! 行かないでぇ!」

 

手を伸ばすほむらだが、膝に力が入らず、それ以上動く事が叶わなかった。

3人がほむらの視界から消えて、1人取り残されたほむらは、その場に泣き崩れた。

ほむらのすすり泣きが、彼女以外誰もいない噴水広場に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無駄な事だって知ってるくせに、本当に懲りないんだなぁ、君も、工藤 マコトも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……訂正しよう。広場には、ほむらともう一体がいた。

神経を逆撫でするような声を聞き、ほむらは憎しみを含めた眼差しで振り返ると、赤く光った不気味な目が彼女を見つめていた。

 

「代わりはいくらでもいるんだけど、無意味に潰されるのは困るんだよね。勿体ないじゃないか」

 

近くのフェンスの上に足をかけながら呟くその声の主は、先ほどほむらに撃ち殺されたはずのキュゥべえだったのだ。

キュゥべえは、フェンスから飛び降り、キュゥべえだった(・・・)死体の上に屈み込む。そして驚くべき事に、自分の死体をガツガツと、物凄い勢いで貪り食い始めたではないか。白い肉塊は、あっという間にキュゥべえの腹の中に収まり、きゅっぷい、という、悍ましい光景には似合わないようなゲップをした。

ほむらが立ち上がると、キュゥべえは寝転がりながらほむらに言った。

 

「君達に殺されるのは、これで2回目になるけど、おかげでようやく君の攻撃の特性が見えてきた。……時間操作の魔術だろう? さっきのは……」

「……」

 

目の前の魔法少女は何も語らない。キュゥべえはそれを肯定と受け止め、さらに言葉を続けた。

 

「やっぱりね。最初に見た時から何となく察しはついていたけれど、これでハッキリとした」

 

キュゥべえは体を起こすと、ほむら、そしてマコトに関する重要な事を口にした。

 

「君達は、この時間軸の人間じゃ無いね?」

 

それを聞いて、ほむらは図星を突かれたかのようにわずかながら目を見開いたが、すぐに元の冷徹な表情に戻った。そして髪をかきあげると、怯まずに言い返した。

 

「……お前の正体も、企みも、私とマコトは知っているわ」

「なるほどね。ようやく納得したよ。だからこんなにしつこく僕の邪魔をするわけだ。……そうまでして、鹿目 まどかの運命を変えたいのかい?」

「えぇ。出来る事なら、まどかだけじゃなくて、タケルもね。そして……」

 

そこで、ほむらは押し殺した声で、怒りを含めながら、キュゥべえを睨みつけて、宣言した。

 

「絶対にお前の思い通りにはさせないわよ。キュゥべえ、……いいえ」

 

次にほむらの口から出た言葉を聞き、キュゥべえは、邪悪に笑ったようなオーラを発した。その言葉とは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「インキュベーター」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、つい先日に影の魔女と戦った工場付近を2人の人影が駆け抜けていた。誠司と晶である。

 

「晶、もう少しだ! 頑張れよ!」

「は、はい……!」

 

星斗達と共にいた御成から連絡を受けて、2人は合流した後、駅に向かって走っていた。普段なら疲れ果てて倒れそうになる晶も、この時ばかりは、さやかの事が人一倍心配な為、気力だけで頑張って誠司の後ろを走っている。

とはいえ、2人のいる場所は、現時点では他のメンバーと比べても駅からまだ離れている位置にいる為、当分時間はかかってしまう。

いっその事、変身して工場やビルの上を飛びながら行った方が早いかもしれないと思い、誠司がアイコンを取り出そうとした時だった。

 

「どこへ行くつもりだ?」

 

目の前に、制服姿のマコトが横道から登場してきた。

 

「どこへって……、さやかの所にだよ。あいつ、昨日から家に帰ってないみたいだからな。こうして俺達が探し回ってて、ようやく見つけたから向かってんだよ。分かったらそこをどいてくれ」

「お願いします! 一刻も早く、さやかちゃんに会って、話したい事がたくさんあるんです! だから……」

 

だが、マコトは行く手を遮るように前に出て、ため息をついた。

 

「……あいつは、穢れを溜め込みすぎた。今から行っても、お前らが無駄死にするだけだ」

「なっ……⁉︎」

「無駄死にって、どういう事だよ!」

 

マコトの言っている事が理解出来ず、困惑している2人。

そんな2人の様子を見たマコトは、静かにスペクターゴーストアイコンを取り出し、2人に見せつけるようにしてから口を開いた。

 

「……教えてやろう。キュゥべえ……もとい、インキュベーターと契約する事の本当の意味を」

 

何の真実も知らない誠司と晶は目を見開いている。マコトは冷たい目つきで、淡々と告げた。

 

「そしてこの契約の証とも言える、アイコンやソウルジェムに隠された、真実をな……」

 

 




さやかの元に向かおうとする誠司と晶の前に立ちはだかるマコト。彼の行動の意味とは……。

そして次回、アニメ界を、2011年に生きる人々を震撼させたであろう、あの衝撃の真実が、明らかとなる……。
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