魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜 作:スターダストライダー
「じゃあ、この問題を解いてみて」
数学担当の河東先生に言われて席を立ったのは、まどかとタケルに謎の問いかけをしたミステリアスな転校生、ほむらとマコトだった。
2人はスライド式の黒板に、数学の解答をスラスラと書いていた。かなり難易度の高い問題を、一切の迷い無く解いていくその姿に、普段は寝ている事の多いタケルやさやか、誠司だけで無く、クラス中が驚きの表情を見せていた。
「……マジで?」
タケルは呆然としながらそう呟くしか無かった。
また、その後行われた体育では一際目立つ事が起きた。
ほむらは走り高跳びにおいて、170センチを余裕でクリアしたのだ。しかも完璧なフォームで。これには体育担当の牛島先生も、
「け、県内記録じゃないの、これ……?」
と呟いた。クラスの女子が彼女を褒め称えながらほむらの周りに群がった。その一方でほむらは周りの声に興味が無いのか、無表情のまま、またまどかを見つめていた。まどかは思わずさやかの背中に隠れた。
一方、マコトは100メートル走を測る事になっていた。その横には、誠司と晶が並んでいた。転校生の初めて走る姿を見るとはいえ、注目はほとんど誠司に集まっていた。と言うのも、誠司はクラスの中では一番速く、全学年の中でもトップクラスの記録を保持している。
皆の注目が集まる中、スタートの合図が鳴り、誠司は早速トップスピードで集団を抜け出した。誠司が左斜め後ろを見ると、晶が早くも苦しげな表情を浮かべている。元々運動が苦手な彼は、早々に出遅れていた。
「(……っしゃあ! このままぶっちぎりで……⁉︎)」
誠司が勝利を確信していた時、右斜めから何者かが誠司を追い抜いたのが見えた。ハッとしてその人物を見ると、それはマコトだった。ゴールに近づくにつれてスピードを上げていき、そのまま誠司との差をどんどん引き離し、1番でゴールした。その1秒半後に誠司がゴールする形となった。
「う、嘘だろ……?」
周りが唖然とする中、誠司自身も、目の前に起きた現実が信じられなかった。その様子を遠くから見ていた女子達からは歓声が上がっている。
「せ、誠司君……」
遅れてゴールした晶が誠司を慰めようとするが、それよりも早く誠司が悔しげに叫んだ。
「くっそぉ〜! ……よし、決めた! 工藤 マコト! 今日からお前は俺のライバルだ!」
「……」
誠司が指を指してマコトにそう宣言した。対するマコトは興味を示さないままだった。まるで鼻で笑ったかのような表情を見せてから視線を誠司から離して、逆に誠司に寄ってきたタケルの方を見つめた。タケルはまた訳も分からず困惑していた。
「え〜っ⁉︎ 何それ?」
その日の放課後、7人は駅前のショッピングモールの中にある、様々なファストフード店がひしめく広場で軽食を食べながら、ほむらとマコトの事を話題にしていた。その最中、まどかとタケルからそれぞれに起きた出来事を話すと、ポテトを口に運ぼうとしていたさやかが素っ頓狂な声をあげた。ちなみにまどかとタケルの2人も、マコトやほむらから同じような事を言われていた事を知って驚いていた。
「あの後、あいつらにそんな事言われたのか?」
「やっぱり変わった方々ですのね」
「訳分かんないよね……」
「だよな……」
誠司と仁美の言葉に、まどかとタケルも同意した。
「文武両道で才色兼備かと思いきや、実はサイコな電波さん……。カーッ! どこまでキャラ立てすれば気が済むんだあの転校生共は⁉︎ 萌えかっ? そこが萌えなのか⁉︎」
さやかは、言うだけ言って机に顔を伏せた。
「萌え……なのかな?」
「まどかさん、タケル君。本当に暁美さんや工藤君とは初対面ですの?」
「ううん……。常識的にはそうなんだけど……」
曖昧にそう答えたまどかに、真っ先に反応を示したのは早々に復活したさやかだった。
「何それ? 非常識なところで心当たりがあると?」
どう伝えようか迷うまどかだったが、意を決して他の6人にこう告げた。
「あ、あのね……。私、あの子達と、夢の中で逢った……ような」
一瞬、静寂が辺りを包み、耳にはさやか、仁美、誠司、晶、御成のジュースをすする音が聞こえてきた。その後、
「ぎゃははははははっ!」
「あっはっはっはっ!」
「あははは、うふふっ」
「なっはっはっは!」
「あ、あはは……」
5人の笑い声が広い広場に響き渡った。
「ひ、酷いよぉ……! 私、真面目に悩んでるのに……」
まどかが顔を赤くして抗議したが、誠司とさやかは涙を浮かべるほど高笑いしていた。
「な、何だよそれ! うっはっは!」
「すげーよ、まどかまでキャラ立ち始めたよ!」
すると今度はタケルの方に注目が集まった。よく見ると、タケルはまどかの話を聞いて、驚いた表情を浮かべている。
「? タケル殿? どうかなされましたか?」
「……いや、信じられねぇかもしれねぇけどさ。多分、俺もそんな感じだと思う……。マコトの方は分かんないけど、ほむらの方は夢で見た事あるかも……」
「まぁ……」
「……マジで?」
仁美だけでなく、今度は誠司も戸惑いを隠せなかった。その一方でさやかは呑気そうにこう推測した。
「あーもう決まりだわ! それ前世の因果だわ。あんた達時空を越えて巡り会った運命の仲間なんだわ♪」
「マジかよ」
タケルが呆然と呟く中、晶が2人に質問をした。
「夢って、どんな夢だったんですか?」
「……それがね。よく思い出せないんだけど、とにかく変な夢だったって事は覚えてるの」
「俺もそんな感じだな。何となく後味悪い夢だったような気がするけど……」
「でしたら、こういう事も考えられますわ」
すると今度は仁美が意見を述べた。
「もしかしたら、2人は本当にあのお二方と会ったことがあるのかもしれませんわ」
「えっ?」
「どゆこと?」
「2人は憶えていないつもりでも、深層心理には彼らの印象が残っていて、それが夢に出てきたのかもしれません」
「……って事は、タケルとまどかはどこかであの2人を見た事があるって事か?」
「そういう事になりますわね」
「それ、出来過ぎてない? どんな偶然よ」
「前世の因果よりは筋の通った仮説かと思いますが?」
さやかの反論に仁美がそう返した。
とはいえ、仁美の説をもってしてもそれほど決定的とは言えない為、7人は食べる事も忘れ、はたと悩んでいた。
「う〜む、こうしてみると、なんとも摩訶不思議な方々ですな……」
結局、御成がサラダを食べながらそう結論付けた。皆が納得のいかないまま頷くと、誠司がふと思い出したかのように携帯の時計を見て、仁美に尋ねた。
「……そういや仁美、お前今日って習い事は? いつもこの時間ならそろそろ向かう頃だと思うけど」
「あっ、そういえば……」
「今日ってピアノだっけ? それとも日本舞踊?」
その問いに、仁美は苦笑しながら答えた。
「本当なら今日はお茶のお稽古なんですけど、昨晩、講師の方が体調を崩されたという連絡があって、今日はお休みなんです。……とはいっても、本当はいつも通りあるわけですし、もうすぐ受験だっていうのに、いつまで続けさせられるのやら……」
「うはぁ……。小市民に生まれて良かったわ」
「言えてる、言えてる」
さやかに続き、誠司も頷きながらそう呟いた。他の4人も同感だった。
「…んじゃあどうすっかな? みんな暇になった訳だし、どっか行くか?」
食べ物を片付けながら尋ねたタケルの提案に、晶がくいついた。
「僕、1階の本屋で買いたい本があるんです。そっちに寄りたいんですけど……」
「でしたら、拙者もお供いたしますぞ」
晶、御成に続いて、さやかが言った。
「あっ、じゃあさ。あたし帰りにCD屋寄りたいんだけどさ。他のみんなで付き合ってくれる?」
「いいよ。また上条君の?」
「えへへ、まぁね」
さやかは普段の勝ち気な表情とは打って変わって、少し乙女な表情になった。
「構いませんわ」
「俺もいいぜ」
「そうだな。俺もCD屋の方に行くか」
仁美、タケル、誠司も承諾して、7人は店を後にした。
そして、エスカレーターのところで一旦分かれる事になった。
「じゃあ、30分後に、1階の時計塔に集合な」
「うん、分かった」
「じゃあ、またね〜」
そう言って、タケル、まどか、誠司、さやか、仁美は上の階のCD屋へ、晶と御成は下の階の本屋に向かった。
……えっ? なんで仁美が原作と違ってお茶のお稽古に向かわないかって?
はてさて、なんの事やら……(笑)
次回は来週投稿する事になりますので、お楽しみに。