魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

今回は謎めいた展開になると共に、あの謎に包まれたアイコンがいよいよ本領を発揮します。


61. それが、ソウルジェムやアイコンの最後の秘密だ

「……さ、さやか、ちゃん、が……?」

 

晶の上ずった声が、人気の薄れた工場の近くの路上に響き渡った。マコトから聞かされたのは、キュゥべえと同様、さやかが間も無く魔女になるという、にわかに信じ難い内容だった。晶の隣にいた誠司も、目を大きく見開いている。

 

「な、何であいつが魔女に……⁉︎」

 

その理由を、マコトはスペクターゴーストアイコンを見せながら語り始めた。

 

「あいつのソウルジェムは、完全に黒く濁りきった後、グリーフシードに変化して、魔女を産み、消滅する。ソウルジェムが消滅する事がどういう事かは、お前達でも分かるだろ?」

「う、嘘ですよね……? だって、そんなのって……」

「事実だ。そして、それがソウルジェムやアイコンの最後の秘密だ」

 

晶の言葉を否定して、マコトは淡々とそう告げた。

 

「この力の源が負の感情を溜め込み、濁りきって黒く染まると、俺達はグリーフシードになり、魔女として生まれ変わる。それが、魔法少女や仮面ライダーとなった者の、逃れられない運命でもある」

「何、だと……」

 

絶句する誠司は、思わず後ずさった。一方で晶は今にも泣きそうな声色でマコトに言った。

 

「そ、そんな……! どうして、ですか⁉︎ だってさやかちゃんは、魔女から人を守りたい、正義の味方になりたいって、その一心で魔法少女として今日まで頑張ってきたのに、そんなのって……!」

「酷すぎる……とでも言いたいのか?」

 

マコトの遮りで、言葉が詰まる晶。

 

「さやかは、そういった祈りに見合うだけの呪いを背負いこんだだけの事だ。確かにあいつは誰かを救い続けたかもしれない。だが、これからは別だ。その誰かを祟りながら、この街に呪いを撒き散らし、生きていく。お前も例外とはならないかもしれない」

「……っ!」

 

足をガタガタと震わせて、恐怖している晶を見て、マコトは冷ややかな目つきでこう告げた。

 

「これで分かっただろ? お前が憧れていたものの正体が、どういったものなのかがな」

「……あ、あぁ!」

 

刹那、晶は理解した。なぜあの時、晶が契約しようとするのをあれほど拒んでいたのか。それは、その先の結末がどうなるかを見越していたからだ。単に見返りを独り占めする為ではなく、障害となる敵を増やしたくないから、と。

晶の脳裏には、さやかの笑顔が走馬灯のように駆け巡っていた。

 

「(そんな……! 嫌だ、嫌だよ、さやかちゃんが……!)」

 

晶の視界がグニャリと歪み始めた。最早立っているかすら判断が出来ないほどに、自我が狂い始めていた。

 

「……助け、られなかった……! さやかちゃんに伝えたい事、いっぱいあったのに……! 僕は、結局……!」

「まだだ!」

 

不意に、誠司の叫び声が響き渡り、晶は顔を上げて、マコトは眉をひそめた。

 

「……確かにお前の言うように、ソウルジェムやアイコンが魔女を生み出す、とんでもない代物だってのはよく分かった。お前が嘘を言うとは思えねぇしな」

 

けどな……、と、誠司は一旦間を置いて、それからマコトを真っ直ぐ見据えた。

 

「だからって、まださやかが魔女になる可能性があるだけで、実際にはなってる訳じゃねぇ!」

「……あぁ、そうだ。さやかはまだ魔女になってはいない」

「!」

 

マコトの言葉を聞き、晶は驚きの表情を浮かべた。

 

「だが、それも時間の問題だ。ほむらから聞いた様子だと、後数分もしないうちに、グリーフシードは黒く染まる。どのみちあいつは助からない」

「……そうやって勝手に決め付けるのは、気に入らねぇな」

 

誠司は怒りを押し殺しながら、背後にいる晶に、振り向かずに叫んだ。

 

「晶! 先に行け! さやかの所に!」

「で、でも……!」

「モタモタすんな! あいつに伝えたい事があるんだろ⁉︎ だったらこんな所で立ち止まるな! 前へ進め! 何が何でもな!」

「……! 誠司君!」

「お前がさやかを救うんだ!」

 

その一言で、晶の決心がついたのか、震えが止まり、強く頷いた。

 

「……うん、分かった! 僕、さやかちゃんの所に向かう! だから、気をつけてね!」

「心配すんなって。俺は簡単に死にやしないさ」

 

誠司が晶を見て、ニヤリと笑った。その顔からは自信が満ち溢れていた。

晶は勇気を振り絞って駆け出した。マコトの横を通り過ぎて、さやかがいるであろう駅の方へ走っていったが、本人は止めるような事はしなかった。ただジッと、誠司を睨みつけている。

 

「……せっかく真実を教えてやったのに、どこまで愚かなんだ、お前達は……!」

「愚かでも何でも言っとけばいいさ。俺達は諦めが悪い。それだけだ。特に今の晶はな」

 

マコトは撤退して晶を追いかけようとしたのか、足を動かして後ろを振り向こうとした。が、誠司がそれを許すはずが無かった。

 

「晶の所に行こうってんなら、俺を倒してからにしな」

 

そう呟く誠司は、ポケットからカエサルゴーストアイコンを取り出して、腰にゴーストドライバーを展開し、スイッチを入れてからバックルにはめ込んだ。

 

『アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!』

「変身!」

『カイガン! カエサル! レッツゴー! 覚悟! ゴゴゴゴースト!』

 

誠司が変身した後、マコトも無言で腰にゴーストドライバーを展開する。

そして、アイコンのスイッチを入れて、バックルにはめ込むと、いつものようにポーズをとって呟いた。

 

『アーイ! バッチリミロー! バッチリミロー!』

「変身」

『カイガン! スペクター! レディゴー! 覚悟! ドキドキゴースト!』

 

変身後、しばらく睨み合っていた両者だったが、先に動いたのは誠司だった。

 

「はぁっ!」

『ガンガンジッテ!』

「そんなもの……!」

『ガンガンハンド!』

 

両者同時に武器を取り出し、火花を散らしながら戦い始めた。

誠司が軽い身のこなしでガンガンジッテを振るう中、マコトは無駄の無い動きで、ガンガンハンドを盾代わりにして攻撃を抑えつつ反撃している。

激しい戦いの最中、誠司がマコトに噛み付くように叫んだ。

 

「大体お前、何様のつもりなんだよ! 知ったような口で言っといて結局何もしないで、単なる情報通ですって自慢してるつもりか⁉︎」

「……随分と余裕だな」

 

マコトが冷徹な口調でそう呟くと、誠司が一気に詰め寄って、一瞬の隙をついてガンガンジッテで斬りつけた。後ずさりながらもマコトは、ガンガンハンドの銃口から弾丸を放ち、誠司の腹に当てた。それにより誠司も後ずさり、一旦距離が離れた所で息を整えていると、誠司が再び口を開いた。

 

「……信じらんねぇな。ここまで非情な奴はさ。お前もほむらも、本当に人間なのか?」

「もちろん違うと断言する。俺も、お前もな」

「生憎だが、俺は人間としてここに立ってるつもりだ。んでもって、お前も人間だと思って戦ってる。それだけだ」

 

そう呟きながら、誠司はゴエモンゴーストアイコンを取り出した。

 

「お前とは良いライバルになれたと思ってたけど、ガッカリだぜ」

「俺は1度も認めて無いけどな」

 

心底残念そうに呟く誠司に対し、冷徹さを貫いているマコトもノブナガゴーストアイコンを取り出して、同時にスイッチを入れた。

 

『アーイ! バッチリミナー! カイガン! ゴエモン! 歌舞伎ウキウキ! 乱れ咲き!』

『アーイ! バッチリミロー! カイガン! ノブナガ! 俺の生き様! 桶狭間!』

 

パーカーがぶつかり合い、互いにレバーを1回引いて押すと、各々のパーカーが羽織られて、ゴーストチェンジした後、

 

「いくぜぇ!」

「はぁっ!」

 

再び戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……だから僕は、これ以上はやめておいた方が良いってさやかには忠告しておいたんだけど、全く聞いてくれなかったからね」

 

キュゥべえがそう淡々と、マコトが言っていた事と寸分違わぬ事実を告げた。

その場にいたさやか以外の全員が、告げられた真実に震え上がった。そして、同時に理解してしまった。このシステムにおける、恐ろしいサイクルが循環してしまっていた事に。

慌ててまどか達は、虚ろな目をしているさやかに必死に呼びかけた。

 

「さ、さやかちゃん! 嫌だよこんなの! 魔女になんてなっちゃダメだよ!」

「さやか殿! お気を確かに!」

「しっかりしろ! こんな所で絶望なんてするな、さやか!」

「さやかさん! ご自分に負けないで……!」

 

様々な声が飛び交う中、さやかは依然として何も語らない。むしろ、ソウルジェムがまた黒く濁り出しており、状況が悪化している。

キュゥべえはその様子を見て、首を横に振った。

 

「もう少し早く浄化していれば、まだ延命出来たかもしれないけど、ここまで絶望を溜め込んでしまっては、どうしようもないね。君達も、早く変身すると良い。もう直ぐ魔女の結界が張られるだろうからね」

「黙れ! さやかを勝手に魔女にするな!」

「そうよ! 美樹さん! しっかりして!」

 

隼人とマミがキュゥべえを咎めながらさやかに呼びかけている。

 

「くそ……! 何か方法は無いのかよ⁉︎」

「無理だね。今まで誰1人として、その運命から逃れられた者はいない。今回はさやかがそうなるけど、何れは君達もそうなるからね」

 

星斗が拳を固めながら必死に打開策を立てているが、キュゥべえは冷たく言い放った。

 

「おい、さやか! お前みんなを守る為に、他人の為に魔法を使うって言ってたじゃねぇか! この力で、人を幸せに出来るって! そんなお前が魔女になんかなったら許さねぇぞ!」

「さやかおねーちゃん、しっかり!」

 

杏子とゆまも、彼女達の憧れでもある少女に必死に声をかけるが、未だにさやかは正気に戻らない。

その様子を見ていたキュゥべえは呆れていた。

 

「やれやれ……。人間の感情は本当に理解に苦しむ……」

「さやかちゃん!」

 

不意に、キュゥべえの声を遮るように聞こえてきた少年の声。一同が振り返ると、そこには汗だくの晶が、息を荒げてやってくるのが見えた。

 

「あ、晶!」

「やっと、見つけた……!」

 

晶は涙で目を滲ませながら、さやかのもとへ駆け寄った。

 

「晶君! さやかさんが……!」

「分かってます! 話はマコト君から全部聞いてます!」

「マコトから⁉︎ じゃあ、あいつやほむらは知ってたって事か⁉︎」

「はい……! 今は誠司君が足止めしてくれたから、ここに来れたんです!」

「誠司が……!」

 

一同に説明し終えた晶は、さやかの手を握った。そして、祈るようにさやかの手に顔を近づけた。

 

「さやかちゃん……! お願いです、絶望になんて、負けないでください……! 僕、さやかちゃんに言いたい事、たくさんあるんです……! もっともっと話したい事が、いっぱいあるんです……! それが言えなくなったら、僕は……!」

 

嗚咽しながら懇願するように呟く晶を見て、タケルは俯きながら唇を噛んでいた。その表情からは悔しさが表れている。

 

「(くっそぉ……! このままじゃさやかを助けられない……! このまま何も出来ずに、さやかを魔女にさせちまうのかよ、俺は……!)」

 

タケルの目尻には、薄っすらと涙が溜まっているが、本人はそれに気づいておらず、どうしようも出来ぬまま、歯ぎしりしていた。

 

「(どうして……! どうしてこんな肝心な時に何も出来ないんだ、俺は! さやかが危ない目にあったら絶対守るって約束したのに! 晶が本当の気持ちを伝えれるようにする約束したのに! なのに……!)」

 

無い頭を必死にフル回転させて、さやかを救う方法を考えているタケルだったが、何も思いつけず、ますます拳を強く固めている。

このままさやかは魔女として、呪いを振りまく存在に変貌してしまうのか。誰もが、そんな最悪の結末を予期してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……だが、次の瞬間。予想だにしない事態が目の前で発生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん⁉︎」

 

不意にポケットの中が熱くなったので、中にあったものを取り出してみると、それは、タケルが仮面ライダーになった次の日にそばにあったピンクとオレンジのラインが入った、謎多きアイコンだった。以前、タケルが落ち込んでいた際も淡白く光ってはいたが、今回はその時以上に強い光を放っているではないか。

 

「こ、これは……!」

「! 天王寺君、それは……⁉︎」

「何だ、あのアイコン……⁉︎」

「タケル君……⁉︎」

 

皆が不思議な光景に目を奪われていると、さらに輝きが増して、ピンク色のオーラが、タケルを覆い、直後にさやかとキュゥべえ以外の全員が同じようにオーラに包まれた。

 

「うわっ⁉︎」

 

すると、黒く濁っていたさやかのソウルジェムに向かって、光が吸い込まれていき、そばにいたタケル達も、強風に押されるように、ソウルジェムに吸い寄せられていった。

 

「な、何だよこれ……⁉︎」

「す、吸い込まれちゃう!」

「一体どうなって……!」

「これは……!」

 

謎の現象が発生し、タケル達だけでなく、キュゥべえも驚いたような声をあげた。

やがて風の勢いは強まり、とうとう踏ん張りきれずに宙に浮いて、ソウルジェムに向かって吸い込まれていってしまった。

 

「「「「「うわぁぁぁぁぁっ⁉︎」」」」」

「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」」」

「のわぁぁぁぁぁぁぁっ⁉︎」

 

やがて光が辺りを包み込み、ようやくそれが晴れた時、目を瞑っていたキュゥべえが、光の根元だった位置を見てみると、そこにはぐったりとベンチに横たわっているさやかと、彼女のソウルジェム以外、何一つ存在していなかった。

つまり、さっきまでそこにいたまどか達は、忽然と姿を消したのだ。

 

「これは……。何が起きているんだ……?」

 

予想外な光景を見て、さすがのキュゥべえも、首を傾げるばかりだった……。




いかがでしたでしょうか。
今作では、仮面ライダーも、魔法少女同様、穢れを溜め込むと魔女に変貌するという設定になっております。今後とも、そのようにご了承ください。

何故か例のアイコンが光り出したかと思えば、消えてしまったまどか達。果たして、彼らはどこに行ってしまったのか?
そして、さやかを救い出す事が出来るのか?

ネタバレになりますが、次回は、いよいよタケルが新たな力を手にします!

次回もお楽しみに。
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