魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜 作:スターダストライダー
ゴーストの方もますます盛り上がるような展開になってきてますね。
今回はいよいよあの新フォームが登場!
「……う、っ……」
不意に意識が戻って、ゆっくりと目を開けてみたタケルは、周りの風景が一変している事に気付き、唖然とした。
「……! 何だここ……⁉︎」
タケルは立ち上がりながら周りを改めて見渡した。
タケルが倒れていた場所は、さやかの濁ったソウルジェムに吸い込まれて意識を失う前までは確かに駅のホームのはずだった。だが、今は暗いホームとはまた異なった、異質な空気が澄んでいる空間へと変貌していた。周りは大量のコンサートに関するポスターが貼られたレンガの壁で囲まれた一本道となっており、奥の方は漆黒の闇に包まれている。そもそも、この場所へ導かれたのも、あのアイコンが原因なのだ。あの一瞬でアイコンに何が起きたのだろうか。
ふと足元を見てみると、タケルを中心に、同じように吸い込まれていたまどか達が倒れていた。自分だけで考え込んでいても仕方ないと思い、まどかに近寄った。
「まどか、まどか……!」
「……ん。あれ、タケル君……?」
タケルがまどかの肩を軽く揺すると、まどかも目を開き、そして周りが一変している事に驚いていた。
「! 何、ここ……!」
「わかんねぇ。とにかくみんなを起こそう」
まどかが頷くと、2人は協力してマミ達を起こした。マミ達も、景色が変わっている事に動揺している。
「な、何だよここ……!」
「僕達、さっきまで駅のホームにいたはずなのに……」
「……ていうより、この重苦しい空気ってまさか……」
「魔女の結界、のようだな」
隼人は目を細めてそう結論付けた。
「魔女の結界……⁉︎ 何でそんな所に? だってあの時、タケルが持ってたアイコンの力でさやかのソウルジェムに吸い込まれて……」
「それが関係しているのかもしれないな。キュゥべえが言ってただろ? あいつは魂をソウルジェムやアイコンに移し替えるのが目的で、しかもソウルジェムやアイコンは濁りきると魔女になる。だから、ソウルジェムの中に結界が出来てもおかしくないと思う」
「じゃあ、ここは……」
「きっと、さやかのソウルジェムの中だ」
タケルはそう推測した。それを聞いた一同は緊迫した表情になった。結界が張られているという事は、十中八九魔女もこの道を進んだ先にいる。しばらく黙りこんでいた一同だが、タケルが意を決して奥の方を見た。
「とにかく、先へ行こう。どっちにしても、ここで立ち止まってるわけにはいかない。……さやかを助けなきゃいけないしな」
「……! う、うん!」
タケルの話を聞いて、晶も強く頷いた。それに続いてまどか達も同意して、一同は固まって奥へと進んだ。
奥へ進んだ先には扉があり、開くと、赤い絨毯が敷かれた一本道が続いていた。奥からは演奏が聞こえている。壁にはいくつもの丸いガラスが取り付けられており、その一枚毎に映像が映し出されていた。タケルら7人がいつものように仲良く登校している姿や、上条の所へお見舞いに行っている様子、タケル達が魔女と戦っている姿などが映されている事から、これがさやか自身の記憶なのだろうと悟った。
「どこまで続いてるのかな……?」
まどかが不安げな声を出した。タケルが横を向くと、まどかが怯えながら隣を歩いているのに気づいた。タケルは安心させるようにまどかの手を握った。
「大丈夫だ。きっとこの先の魔女さえやっつければ、多分さやかだって元に戻るさ」
「う、うん……。そうだと、いいね……」
そう呟くも、やはりまだ不安を拭いきれていないようだ。とはいえ、タケル自身も、未知なる恐怖に足が竦んでいるのも事実だった。が、逃げ出すという選択肢はなかった。一刻も早く、さやかを絶望から救い出さなければならない。
その一方で、先ほどからマミは口を開く事なく俯いていた。ソウルジェムやアイコンの正体を知って、気持ちの整理が出来ていないのだろう。彼女の表情からは、不安で押し潰されそうな雰囲気が感じられた。
再び扉があり、そこを開けて先へ進もうと一歩踏み出したその時、全員の背後にあった扉が勢いよく閉じた。
「な……! 閉まりましたぞ⁉︎」
「……気づかれたみてぇだな」
杏子がゆまの手をしっかりと握りながら、奥の方を見てそう呟いた。皆が視線を先に向けると、確かに殺気や敵意が感じられた。それは何度も魔女の結界に入り込んだ時に感じたものだった。
扉はタケル達に迫りながら開いていき最後の扉が開かれたのと同時に、結界の最深部らしき空間へとたどり着き、一同は目の前に広がる光景に息を呑んだ。
そこは赤く光るコンサート会場に酷似しており、タケル達の背後にいる指揮者を中心に、使い魔らしき黒い人形がホールを囲むように並んで、結界に響き渡るような演奏をしている。
そしてその音色に聴きいっているように、タケル達の目線の先では、西洋風のマントと鎧を纏い、胸にはピンク色のリボン、ハート型の襟、三つ目のような形の兜をつけ、下半身が人魚の尾びれの形をした、巨大な魔女がゆらゆらと揺れていた。その大きさからは圧倒的な威圧感が溢れており、タケルが以前対峙した鎧武者の魔女よりもずっと巨体だった。その左手には、その魔女の背丈に匹敵するほどの剣が握られている。
〜人魚の魔女、オクタヴィア・フォン・ゼッケンドルフ〜
〜彼女の使い魔の演奏を邪魔する者は、必ず彼女の剣によって斬り裂かれるだろう〜
「こ、これが……!」
「さやかがなるかもしれない魔女の姿って訳か……!」
「で、デカすぎる……!」
一同の視線を浴びて、人魚の魔女も彼らの存在に気づいたのだろう。ゆっくりと左右に揺れるのを止めて、ギロリとまどか達を睨みつけるかのように目線を下に向けた。
「! 変身するぞ!」
「そうですね……! どのみちこいつを倒さなきゃ、さやかは助からない!」
「まどか、下がってろ!」
「う、うん!」
まどかが身を引くと、タケル達はアイコンやソウルジェムを手に持った。仮面ライダー達は腰にゴーストドライバーを展開し、魔法少女達はソウルジェムを卵型に変えた。
『『『『『アーイ!』』』』』
『『バッチリミナー! バッチリミナー!』』
『『バッチリミロー! バッチリミロー!』』
『バッチリミテー! バッチリミテー!』
「「「「「「「「「変身!」」」」」」」」」
『カイガン! オレ! レッツゴー! 覚悟! ゴゴゴゴースト!』
『カイガン! シーザー! レッツゴー! 覚悟! ゴゴゴゴースト!』
『カイガン! アリトル! レディゴー! 覚悟! ドキドキゴースト!』
『カイガン! ヘカリア! レディゴー! 覚悟! ドキドキゴースト!』
『カイガン! ハウンド! ヒァウィゴー! 覚悟! オーオーゴースト!』
9人の少年少女が変身し終えると、それを合図に、人魚の魔女が剣を振り上げて、大量の木製車輪を出現させて、一斉にタケル達に襲いかかった。
「! 回避だ!」
隼人の号令と共に一同はバラバラに散った。タケルはまどかを抱き抱えて人魚の魔女から離れた後、まどかを降ろした。
「まどかはここにいろよ!」
「う、うん! 気をつけて……! それから、さやかちゃんを
助けてあげて……!」
まどかが涙目になりながらタケルの手を握って懇願した。対するタケルは無言で頷くと、まどかの手を振りほどいて人魚の魔女に向かって攻撃を仕掛けた。
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
タケルがガンガンセイバーで斬りかかろうとするが、その行く手を遮るかのように車輪が転がってきた。
「このぉ!」
タケルが弾きながら軌道をズラしているが、数が多過ぎた為に、途中で捌ききれずに直撃をくらってしまった。
「ぐっ……!」
タケルが地面を転がっている間にも、車輪はタケルを轢き殺そうと迫っている。タケルはひたすら回避し続けるばかりだった。
一方、他のメンバーも、予想を上回る魔女の強さに苦戦を強いられていた。晶がガンガンハンマーで弾いても、マミや隼人が銃で破壊し続けても、一向に敵の攻撃が収まる気配が見当たらない。
「たぁっ!」
ゆまも小さい体で必死にハンマーで叩きつけていた。
「オラァ!」
「はぁっ!」
「やぁ!」
杏子と星斗、仁美も飛び上がって人魚の魔女に直接斬りかかるが、まるでビクともしていない。
「そいヤァ!」
御成は肉弾戦を駆使して車輪を破壊しているが、その度に直接触れた事でダメージが蓄積していき、息があがりつつあった。
その一方で、マミが持つマスケット銃は震えていた。
「(魔法少女や仮面ライダーは、魔女に生まれ変わる……。私もいつか、ああなるっていうの……⁉︎)」
マミの全身を、得体の知れない恐怖が支配して、彼女の本来のペースを乱していた。
否、そもそもこの場にいる全員が、本調子ではなかった。皆の脳裏に浮かんでいるのは、キュゥべえが語っていた、魔法少女や仮面ライダーに隠された真実。ある程度理解したものの、そう簡単に受け入れる事が出来ていないのだ。それは、異物のように、毒のように内側からえづき侵され、壊れていく。だからこそ、心が乱れてしまい、まともに戦えるだけの精神が持てないのだ。
「(これまで、俺達が倒してきた魔女は、そのほとんどが、元は魔法少女や仮面ライダーだった人達だった……。結局俺達がやってきたのは、同じ想いを抱いていた人達を殺してきたようなものだったのかよ……! それじゃあ、俺達は何の為に……!)」
タケルが、歯ぎしりしながら、行き場のない怒りをぶつけるかのように、人魚の魔女に突進した。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「! タケル君!」
まどかの叫び声が聞こえてきたが、それで止まるタケルではなかった。ガンガンセイバーをベルトにかざして、魔力を高めた。
『ガンガンミナー! ガンガンミナー!』
「はぁっ!」
『オメガスラッシュ!』
タケルは力を込めて人魚の魔女を斬りつけたが、その鎧には傷一つつかなかった。
「! そんな……!」
驚いているタケルに反撃するかのように、人魚の魔女は剣を横に振るって、タケルを吹き飛ばした。
「ガハッ⁉︎」
「きゃあああああっ!」
タケルが壁に叩きつけられて、衝撃が装甲を貫き、口から血が噴き出したのを見て、まどかは悲鳴と共に目を背けた。
「タケル殿! ぬぉわぁ!」
御成もタケルに気を取られてしまい、車輪に跳ね飛ばされてしまった。
「御成君!」
仁美が御成を助けようとするが、それを妨げるように人魚の魔女が剣を振り下ろした。左右を車輪に挟まれてしまい、回避出来ぬまま、衝撃に呑まれて地面を転がった。
「あぁ!」
「調子に乗りやがって!」
杏子が槍を振りかざすが、それよりも早く、人魚の魔女は車輪を出現させて、杏子を地面に叩きつけた。落下してくる車輪を交わしながら、全身に痛みを感じながら、杏子は不敵に笑っていた。
「(……はっ、こいつはいつぞやのお返しみたいだな……。考えてみりゃ、こいつはさやかの心そのものだ。……それにあたしたち、最初は殺しあう仲だったっけね)」
杏子の目には、人魚の魔女がさやかと被っているように見えた。人魚の魔女は怒りを表すかのように腕を動かし、剣を振り下ろしている。その様子は、最初にさやかと対峙した時とよく似ていた。
「(けどよぉ……! さやか、あんたは信じてるって言ってたじゃねぇかよ! この力で、人を幸せに出来るって! だから、こんな程度の事で負けんじゃねぇよ……! あたしだって負けるつもりはないからさ……!)」
杏子は再び捨て身の攻撃を仕掛けた。その一撃で、人魚の魔女はグラついたが、反撃とばかりに剣を横に振り回して、無防備な杏子に強烈な一撃を与えた。杏子は声を出す暇もなく、口から血を吐いて、マミのいる位置まで叩きつけられた。
「! きゃあ!」
「マミ!」
マミも突然の不意打ちを受けて、杏子と共に吹き飛ばされて地面を転がった。
「(クッソォ……! 頼むよ、神様……! こんな人生だったんだ……、せめて一度ぐらい、幸せな夢を見させてくれよ……!)」
薄れる意識の中で、杏子は訴えかけるように心の中で呟いた。
「キョーコ、マミおねーちゃん……!」
ゆまが心配そうに2人の方を見て呟くが、休息の暇など与えないとばかりに再び車輪がゆまめがけて突っ込んできた。
「ゆま、危ない!」
『アーイ! バッチリミテー! カイガン! ビリー・ザ・キッド! 百発百中! ズキューン! バキューン!』
「はぁっ!」
隼人がゆまの前に出て2丁のガンガンガンマンで車輪を破壊したが、隙をついた人魚の魔女が空いた右手で隼人を鷲掴みにして高く掲げて、ギュッと握りしめた。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
隼人があまりの痛さに悲鳴をあげてもがいていた。そして人魚の魔女は、隼人を地面に叩きつけた。それにより地面にヒビが入った。かろうじて意識はあるようだが、全身に痛みが走り、まともに立ち上がる事すら出来ないようだ。そんな隼人に追い打ちをかけるように人魚の魔女は剣を振りおろした。
「隼人さん!」
慌てて晶が隼人の前に立ち、ガンガンハンマーで抑えつけたが、衝撃が晶の全身を貫き、声にならない悲鳴が晶の口から漏れた。衝撃は床下まで及び、亀裂がさらに大きくなった。晶の足が地面にめり込んでいる。
「! 危ない!」
咄嗟に星斗は動き出し、晶と隼人の腕を掴んでその場を離れた。抵抗のなくなった剣は地面に打ち付けられ、衝撃波が星斗に直接襲い、星斗は吹き飛ばされて、壁に打ち付けられた。
人魚の魔女が振るった剣は床を崩壊させて、ホール内に立っていた者達は全員床下の空間に落下した。
「きゃあああああああ!」
巻き添えをくらったまどかは悲鳴と共に真っ逆さまに落ちていった。まどかが目をつむっていると、誰かに抱き抱えられる感触がしたので目を開けると、タケルが傷だらけの体で必死にまどかに怪我をさせまいと、守るような体勢のまま落下していた。
崩壊した床下の空間は、先ほどとは打って変わって演奏者が1人もおらず、指揮者だけが呆然と立ち尽くしているだけの世界が広がっていた。タケルには、その指揮者が一瞬だけ上条に似ているように思えた。
倒れていた杏子やマミ、隼人、御成、仁美も空中で意識を取り戻して、体勢を整えながら地面に着地した。
タケルもどうにかして無事に着地出来たが、まどかを降ろすとすぐに地面に倒れこんだ。やはり無理に体を動かした事で、ダメージが相当体に響いていたのだろう。
「タケル君!」
まどかが必死に彼の名を呼ぶが、今のタケルには、声を出すほどの体力が残っていなかった。
他のメンバーも満身創痍な様子で、膝をついたりしている。唯一戦力の中で無傷だったゆまは、依然として余裕のありそうな人魚の魔女と、深手を負っている杏子達を交互に見ながら恐怖に震えていた。予想以上に敵のパワーが強すぎて、ゆまは本能的に、自分の力だけでは勝てないと悟っていた。
だが、逃げ出すという選択肢は、ゆまにはなかった。ゆまはすぐに杏子とマミ、隼人が固まっている所に駆け寄った。
「待ってて! すぐ治すから!」
だが、3人の口から放たれた言葉は、ゆまの予想を上回るものだった。
「いい……! ゆま、お前は逃げろ……!」
「俺達の事は気にするな……! まどかを連れて、せめて2人だけでもここから脱出するんだ。さっき通ってきた道を使って……!」
「え?」
杏子と隼人の言葉が理解出来ず、立ち尽くすゆま。さらに拍車をかけるように、マミはポツリと口を開いた。
「……そうね。今更傷を治して、それからどうするっていうの?」
「で、でもそれじゃあみんなが……」
「あなたも聞いたでしょ? ソウルジェムは、魔女を産むのよ」
そう呟くマミの顔は、不具合に口元がつり上がっており、焦点が合っていない目からは涙が溢れている。その表情からは、絶望の2文字が伺えた。
「あなたはまだソウルジェムが穢れてないから大丈夫かもしれない。……けど、私達は? 今更グリーフシードで取り除いても、何れストックも切れて、黒く染まりきって、魔女が産まれる。……どうせ魔女になるくらいなら、ここで死ぬしか、ないじゃない……」
「「……」」
近くで聞いていた杏子と隼人も、同意見なのか、黙りこんでいた。
「そ、そんな……」
あまりにも絶望的な状況に、まどかも反論する余裕はなかった。魔法少女ではないまどかでは、この状況では無力に等しい。もう、誰にも人魚の魔女を止める事は出来ないかもしれない。そんな予感が、まどかの脳裏をよぎった。
勝負あったと思ったのか、人魚の魔女は剣を振りかざして、勢いよく杏子達が跪いている所に向かって振り下ろした。一同が無抵抗のまま目をつむった時、ゆまが振り返りざまにハンマーを勢いよく振り回して、剣の軌道を逸らした。
「「「!」」」
杏子、マミ、隼人の3人が、ゆまの行動に驚いて目を見開いていると、さらに驚くべき事に、3人の体が光に包まれて、いつの間にかあちこちについていたはずの傷が綺麗さっぱり消えていた。3人はすぐにそれがゆまの治癒魔法である事を悟った。
「! 治ってる……」
「ゆま⁉︎」
「なぜ、俺達を……」
するとゆまは、ゆっくりと振り向き、強い眼差しを向けながら、3人、否、その場にいる全員に向かってこう語り始めた。
「ゆまはね。ママにいじめられてた時、いつも考えてたより死んじゃった方がいいって」
手に握っていたハンマーを地面に垂らして、ゆまは真剣な表情で論じていた。
「でも、魔女に襲われて、死んじゃうって思った時にね。ゆまは、必死に生きようとしたんだ」
「いつか私達は、その魔女になるのよ! 分かってるの⁉︎」
「いつかは、今じゃないよ」
その言葉を聞いて、3人はハッとした。その表情を見据えながら、ゆまは会話を続けた。
「人はみんな、いつか死ぬよ。キョーコ、マミおねーちゃん、隼人おにーちゃん。本当に
すると、そんなゆまを邪魔に思ったのか、人魚の魔女が再び剣を振り下ろして、ゆまに斬りかかった。
「! ゆま……!」
途中で気づいた星斗が声をかけるが、もう遅い。そのまま剣がゆまに直撃するかと思いきや、金属音が響き渡った。
一同がゆまのいた方に目をやると、そこにはタケルが肩を大きく揺らしながら立っていた。どうやらギリギリのところでガンガンセイバーを使って弾いたらしく、ガンガンセイバーはタケルの手から離れて地面に刺さっていたが、ゆまは傷一つついていない。が、タケルの方は無事では済まなかった。ヒビ割れた右腕の装甲からは血が滴り落ちて、地面に片膝をついて、満身創痍な状態になっていた。
「「タケル!」」
「「「タケル君!」」」
「天王寺君!」
「タケル殿!」
「タケルおにーちゃん!」
まどか達の心配げな声を背に受けて、タケルは痛みを堪えながら口を開いた。
「……そうだ。ゆまの言う通りだ。いつかは今なんかじゃない」
タケルは静かにヨロヨロと立ち上がった。誰の目から見ても、今のタケルは相当な深手を負っている。にもかかわらず、タケルからは未だに諦める様子が、絶望する雰囲気が感じ取れなかった。
「……人は死ぬ。必ず死ぬもんだ。俺や、まどか、マコト、ほむら、こうして戦ってるみんな、父さん、母さん、それに、この街の人や、あすなろ市で戦ってるアラタ達も、この世界に生きてる人は、いつか死ぬ時がやってくる」
タケルは、これまで出会ってきた人、様々な事情で死んでいった者達の、希望に満ち溢れていた顔を思い返しながら、踏ん張る足に力を込めた。
「でも、俺達は今、生きてる」
その瞳には、行き場のない怒りをぶつけていた時とは違い、真っ直ぐな信念が漲っており、迷いはなかった。
「一緒にいてくれる仲間や家族、地域の人がいるから、俺達に明日を繋いでくれた、父さんや、これまでに命を燃やし尽くして消えていった魔法少女や仮面ライダーが託した想いがあったから、こうして生きていられる……!」
そう叫んでいるタケルは、もう動いていても意味のないはずの心臓の鼓動が高まっているのを確かに感じていた。
「だから俺は、この命が動いている間は、絶望なんてしねぇ! これからも戦っていくんだ! 人間として、仮面ライダーとして!」
そしてタケルは、二本足でしっかりと立ち、顔を真っ直ぐに人魚の魔女に向けて叫んだ。
「命を燃やして、みんなを守ってやる! それが俺の生きる意味だ!」
と、その想いに応えるかのように、突如、ピンクとオレンジのラインの入ったアイコンが、タケルの目の前に浮いて、眼の部分から光を放つと、タケルの心臓部分が赤く燃え上がるように輝き始めた。
「! 何だ……⁉︎」
「タケルの体が……!」
「タケル君!」
一同が、その異様な光景に釘付けになっており、人魚の魔女も動けずに警戒していた。
やがて赤い光がタケルの体から離れると、丸い球体となり、タケルの右手に収まった。タケルが右手を開いてみると、そこには通常のアイコンや英雄アイコンとは一味違う雰囲気の、黒と真紅の、炎の形をしたアイコンが握られていた。
「これは……!」
タケルも新しいアイコンの登場に驚いていたが、それを手に握った瞬間、脳内に自然と使い方に関する内容が入ってきた。
「……よし、いくぞ!」
タケルはオレゴーストアイコンを取り出した後、新たに誕生したアイコンのスイッチを入れて、バックルにはめ込んだ。
『一発闘魂! アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!』
音楽が流れると同時にタケルの全身は炎に包まれて、赤と黒のパーカーが辺りを旋回していた。そしてレバーを一回引いて押すと、パーカーが羽織られて、炎が霧散した。
一同がその熱さに、思わず目をつむっていたが、再び目を開けたその先には……。
『闘魂カイガン! ブースト! 俺がブースト! 奮い立つゴースト! ゴーファイ! ゴーファイ! ゴーファイ!』
これまで以上に気迫があり、角や眼の部分、トランジェントが炎を基調とした外見となっている、タケルの新フォーム姿があった。
「「「「!」」」」
「タケル……! その姿は!」
「も、もしや、タケル殿の新しい力では……!」
「こんな事って……!」
「初めてみる姿だ……!」
ベテランのマミや隼人でさえ、予想だにしない展開に開いた口が塞がらない。
「凄い……!」
まどかは、神々しく輝いて見えるタケルの姿に感銘を受けていた。
『サングラスラッシャー!』
タケルはベルトに右手をかざして、サングラスも模したカバーがついた武器……サングラスラッシャーを構えると、刃先を人魚の魔女に向けて叫んだ。
「これが今の俺の、命の輝きだ!」
というわけで、ここからは闘魂ブースト魂が登場します! ようやく登場させれて、ホッとしてます。
ゆまのセリフを見て思ったのですが、これってゴーストの主題歌の2番の歌詞と本当によくマッチしてると思います。やっぱりまどマギとゴーストはよく似てるなと思います。
次回はいよいよ大詰め! 新たな力で、さやかを救う事は出来るのか⁉︎
次回もお楽しみに。