魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

今回でいよいよ人魚の魔女戦に決着がつきます。


63. この力が、俺の生きる希望そのものだ!

炎の中から現れたのは、新たに生み出されたアイコンによって手に入れた新フォーム「闘魂ブースト魂」となったタケルだった。

 

「新しいアイコンが、生まれた……⁉︎」

「ど、どうなっているのですか……⁉︎」

 

周りにいたほとんどのメンバーが、タケルが新たなアイコンを手にした事に疑問を隠せなかった。だが、隼人がタケルの姿を見て、ある仮説を立てた。

 

「……もしかしたら、さやかを救いたいというタケルの心が、あのアイコンに反応したのかもしれない」

「そ、そんなのってアリかよ……」

「あいつの潜在能力は正直なところ、未知数だからな。だが、今言える事は、あの力があれば、本当にさやかを助ける事が出来るかもしれないって事だ」

「……そうね。きっと天王寺君なら……」

 

マミと隼人が見つめる先には、サングラスラッシャーを構えて、人魚の魔女に立ち向かっていく姿が。まどかも必死にタケルの背中を見つめながら心の中で応援していた。

 

「(タケル君、頑張って……!)」

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 

人魚の魔女は、タケルの姿が変わった事に臆する事なく剣をかざして、再びいくつもの車輪を出現させて、車輪はタケルに吸い寄せられるように転がりながら突っ込んできた。

 

「ふっ! はぁっ!」

 

が、タケルは向かってくる車輪を難なく真っ二つに斬り裂いて、次々と破壊していった。

 

「(不思議だ……。さっきよりもずっと強い力を感じる……! あれだけボロボロだった俺に、立ち向かう勇気を与えてくれてる……!)」

 

不意にタケルは、体の痛みが消えている事に気付いた。同時に体の中からほとばしる炎のエネルギーのようなものが、全身を駆け巡っているのを感じていた。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

タケルはサングラスラッシャーに力を込めると、刀身が炎を纏い、横1文字に振り切ると、車輪は炎に包まれて、次々と崩れていった。

人魚の魔女は一吠えすると、自ら突進してきて、剣を振りおろした。対するタケルはサングラスラッシャーをぶつけて、勢いを相殺させた。甲高い金属音が結界内に響き渡り、火花がそれぞれの武器から散っていたが、タケルが力ずくで押し返して、人魚の魔女はよろめいた。

人魚の魔女はすぐに体勢を立て直して、剣を振るおうとしたが、それよりも早く人魚の魔女の体にタケルの後方から放たれた砲撃が炸裂して、うめき声をあげた。タケルが振り返ると、マスケット銃を構えたマミと、2丁のガンガンガンマンを構えた隼人が銃口を人魚の魔女に向けているのが見えた。

 

「ウラァ!」

「とぉっ!」

 

その隙に、杏子とゆまが接近して、槍やハンマーで攻撃を展開していった。

 

「へっ! タケルばっかにカッコいいとこは持ってかせねぇぜ!」

 

ニヒルな笑みを浮かべて杏子は叫んだ。その表情からは、先ほどまで微塵もなかったはずの勝気な自信に満ち溢れていた。

 

「その通りだ!」

「拙僧も!」

 

続けて星斗と御成が飛び上がり、人魚の魔女の頭に飛び蹴りを入れた。人魚の魔女はよろめき、壁に激突した。

 

「仁美ちゃん、僕達も……!」

「そうですわね!」

 

晶と仁美も、顔を見合わせた後、ガンガンハンマーやバトンを持つ手に力を込めて、人魚の魔女に向かっていった。

この2人には、共に救いたい、大切な人がいる。例えどれだけ傷つけてしまっても、例えどれだけ自分が無力でも、彼女のそばにこれからも居続けたい。その想いが糧となり、そしてタケルの前へ突き進む勇気に押し出されて、再び戦う意志が蘇ったのだ。

 

「(……思えば今日までの私は、ズルい女だったかもしれませんわ。みんなの忠告も聞かずに、自分の我が儘を貫いて契約して、魔法少女になった……。そして今、さやかさんの恋心を踏みにじってまで、上条君を自分のものにしようとしてる……。……でも、それでも、私は諦めませんわ! これから先、どれだけみんなの想いを裏切ろうとも、私は自分に嘘をつかずに、自分に向き合って、自分の進んだ道を信じていきたい……! それをさやかさんに伝えるためにも……!)」

「(僕は結局弱いままなのかもしれない。この力は、さやかちゃんやタケル君みたいになりたいと思って手に入れた力。でも、だからって同じ力を手に入れたわけじゃない。それに、僕の心は2人や他のみんなよりも小さくて弱いものだって、自分がよく分かってる……。でも、それでも良い……! この弱い自分を受け入れて、さやかちゃんを元に戻せなくても、今度は僕が、さやかちゃんを守るんだ!)」

「「はぁぁぁぁぁぁっ!」」

 

仁美はバトンを突き出して人魚の魔女をよろつかせ、晶は力強くガンガンハンマーを振り下ろして、人魚の魔女を怯ませた。その勇姿からは、これまで以上に堂々とした風格が漂っていた。

人魚の魔女が反撃しようとして右腕を動かそうとしたが、

 

「させっかよ!」

 

という叫び声と共に、杏子が背後に回り、多節棍状になった槍が人魚の魔女の右腕に絡まり、身動きが取れなくなった。その隙に、タケルと晶が同時に武器を振り下ろし、人魚の魔女にダメージを与えた。

一旦距離を置いた杏子は飛び上がって、マミと隼人のいる地点に着地した。

 

「……ったく。そういや、ガキに説教されるなんてあたしも案外、ヤキが回ったかな。らしくなくなっちまったよ」

「……そうだな」

 

杏子の視線の先には、ゆまが車輪を次々と破壊していく後ろ姿があった。絶望に打ちひしがれていた杏子達を真っ先に救ったのは、間違いなくゆまの言葉だった。彼女はこれまで幾度となく絶望を抵抗する間もなく受け続けていた。その中で、自分でも気がつかずにもぎ取った、「生きる」という希望が、彼女を知らぬ間に強くさせていた。おそらく彼女の心の強さは、今のタケルに十分匹敵するものであるのは間違いないだろう。

 

「いつかは死ぬ、でもそれは今じゃない……か。……そうね。あの子の言う通りね」

 

マミの表情には、自然と笑みが浮かんでいた。だがそれは自暴自棄に陥った時とは違い、生きる意志を持った者だけが表せれるものだった。

 

「この魔女を倒さなければ、さやかは助からない。……なら、細かい話は後だ!」

「えぇ。今度キュゥべえに会ったら、とっちめてやらなきゃね! でもその前に……!」

 

2人は銃口を人魚の魔女に向けて、引き金を引いた。

 

「「先ずはこいつから!」」

 

2人の様子を見て安心したのか、杏子も砲撃の隙間を縫うように駆け抜けて、槍を持つ手に力を込めた。

 

「(……考えてみりゃ、他人の為にここまで戦ったのは初めてだっけな。……さやかの野郎を叩き起こす為に、この力を使う! あいつにこれ以上、誰も傷つけさせたりするような事は、あたしがさせない!)」

 

すると、杏子の体に赤いオーラがまとわりついて、瞬時に彼女を中心に、何人もの杏子の分身が現れて、一斉に槍を振りかざした。

 

「くらえ! ロッゾ・ファンタズマ!」

 

それが、杏子の願いから生まれた、彼女の真の魔法、幻惑魔法を応用した魔法だった。

そして分身を含む杏子の一斉攻撃は人魚の魔女に命中して、地面に倒れこんだ。

 

「す、凄い……!」

 

これを見たまどかは思わずそう呟いた。タケル達もその光景に驚いていたが、誰よりも驚いたのは、かつての彼女の師匠にあたる2人だった。

 

「杏子が、あの魔法を……!」

「あれはあの日、家族を失って以来ずっと封印してきた、彼女の魔法……。きっと、秋永君や千歳さんの出会いが、彼女に人間や魔法少女としての本来の心を取り戻したんだわ……!」

 

マミに至っては感極まって、涙を浮かべているほどだった。それだけ杏子が昔の信念を持って再び戻ってきてくれた事に、喜びを感じているのだ。

 

「マミ!」

「! えぇ!」

 

だが、いつまでも感激している暇はない。マミはすぐさま気持ちを切り替えて、マスケット銃を魔法で強化して、巨大化させた。隼人もそれに続いてガンガンガンマンを合体させてドライバーにかざした。

 

『ガンガンミテー! ガンガンミテー!』

「くらえぇ!」

『オメガインパクト!』

 

先に先制したのは、隼人の『オメガインパクト』であり、人魚の魔女はそれを剣で受け止めたが、勢いが強い為に、後ずさっている。そこに追い討ちをかけるように、マミがいつものようにあの言葉を発した。

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

巨大な砲撃弾は、人魚の魔女を吹き飛ばし、壁にめり込んだ。が、人魚の魔女もしぶとさを発揮して、甲高い雄叫びと共に起き上がった。

 

「一気に決める!」

 

人魚の魔女が体勢を整える前に、タケルはサングラスラッシャーの、サングラスを模したカバー……メガシェイドを開けて、左側にオレゴーストアイコンをはめ込んだ。

 

『メガマブシー! メガマブシー!』

「タケル君!」

 

それを見た晶が、とっさにベンケイゴーストアイコンを取り出して、タケルに投げ渡した。タケルはそれを手に取って力強く頷くと、右側にベンケイゴーストアイコンをはめ込んだ。

そしてメガシェイドを閉じると、炎のようなエネルギーの塊が刀身を包んだ。

 

『闘魂ダイカイガン! ブースト!』

 

そしてタケルのすぐ近くでは、杏子が分身を霧散させて元に戻ると、意識を集中させて、足元に巨大な槍を出現させた。杏子がそれに乗ると、槍にありったけの魔力を注ぎ込んで、人魚の魔女の持つ大剣に狙いを定めた。

 

「いくぞ、杏子!」

「わかってらぁ!」

 

杏子がそう言い返すと、先陣を切って大剣にぶつかっていった。火花が飛び散り、激しさが溢れていた。すると、人魚の魔女の持つ大剣から音が鳴り響き、亀裂が入った。隼人とマミの攻撃を正面から受けて、耐えきれなくなっていたのだ。

 

「いっけぇ!」

『オメガシャイン!』

 

そして杏子が一歩退くと同時に、サングラスラッシャーのトリガーを押したタケルが前に出て、思いっきり大剣に技をぶつけた。しばらく拮抗していたが、遂に人魚の魔女の持つ大剣に入ったヒビが大きくなり、バリィィィィィン! という音と共に、大剣が粉々に砕け散った。そしてそのまま振り切ったサングラスラッシャーは人魚の魔女の体を掠め取り、再び壁に激突させた。

これを見た一同は興奮して、歓喜していた。

 

「良し、いけるぞ!」

「タケル殿! 今のうちに!」

「あぁ!」

 

タケルは着地してからすぐに、人差し指と中指を立てて、意識を集中させた。

 

「(どうして俺にこんな力が宿ったのか、今でもよく分かっていない……。けど、分かった事がある! それは……!)」

 

背後に炎を連想させるような魔方陣を展開させて、タケルはゴーストドライバーのレバーに手をかけた。

 

「この力が、俺の生きる希望そのものだ! 俺達は絶望なんかに、負けない!」

 

そして1回引いて押すと、右足に炎が纏われた。

 

『闘魂ダイカイガン! ブースト!』

「はぁっ!」

 

タケルは人魚の魔女に向かって走りながら飛び上がり、右足を突き出した。そして狙いを定めて、その姿を見据えながら、タケルは力を込めて叫んだ。

 

「命、燃やすぜぇ!」

『オメガドライブ!』

 

タケルの放った強烈な一撃から回避する暇もなく、人魚の魔女は両手を突き出して受け止めるしかなかった。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

タケルは持てる力の全てを振り絞って、右足に力を込めた。

しばらく両者ともに動かない状態が続いていたが、人魚の魔女の腕が軋み始めた時、遂に人魚の魔女の両手が弾き飛ばされて、タケルの蹴りは人魚の魔女を貫通した。

人魚の魔女は、タケルが着地すると同時に全身が炎に包まれて、悲鳴をあげる事なく崩れ落ちて、跡形もなく消滅した。

 

「やった……! やったぞ……!」

「おぉ! 遂に、あの魔女を!」

「やりましたわ!」

 

人魚の魔女が消滅したのを確認して、一同は喜びを爆発させた。

その一方で、タケルはホッと一息ついたと同時に変身が解けて、フラついた。

 

「タケル君!」

 

そこへ慌ててまどかが駆け寄って、タケルを支えた。

 

「タケル君、大丈夫⁉︎」

「あ、ありがとな。初めてだったから、ちょっと疲れちまって……」

 

タケルは苦笑しながらまどかに無事を伝えた。まどかもタケルの様子を見て安堵していた。

何がともあれ、さやかのソウルジェムの中にいた魔女は倒す事が出来た。一同がそう思っていると、結果にヒビが入り、崩れ落ちようとしていた。

 

「! 結界が……!」

「どうやらソウルジェムの中でも、仕組みは外の時と変わってないらしいな」

「すぐに脱出するぞ!」

 

すると、タケルのポケットの中から、また例のピンクとオレンジのアイコンが飛び出てきて、光り出すと同時に、タケル達の全身が光に包まれた。

 

「お、おい。まさかまた……!」

 

星斗が顔を引きつらせていると、一同は声を出す暇もなく、再びアイコンに吸い込まれていった。そしてアイコン自身も、瞬時にフッと結界内から完全に姿を消した。




というわけで、人魚の魔女との戦いに終止符が打たれました。

次回は試験期間もあるので、更新までしばらくお待ちください。早くても来週の水曜日ぐらいになると思います。

そして次回で、第3章は完結します。

次回もお楽しみに。
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