魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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連日投稿です。

今回は上条がタケル達の事を知る回になります。そして後半ではあいつが再び……。


67. 僕は待ってるからね

「……今でも、信じられないよ。あんな光景は」

「そりゃまぁ、普通はそうなるよな」

 

上条の呟きに対し、誠司は素っ気なく答えた。

上条が魔女に操られている渡辺を止めようとした際に、使い魔に襲われそうになった所をタケルに助けられ、そのままタケルやさやか、仁美、晶を含む11人が一斉に姿を変えて、武器を用いて使い魔と戦っている光景を、上条は唖然とした表情で眺めていた。因みに結界内にいたのは使い魔だけだったらしく、マミによれば、魔女そのものは遠くに逃げてしまったようだ。

魔女の呪いから解かれた渡辺は、それからしばらくして目を覚ました。本人には夢だと思い込ませた後、彼は家に帰っていった。依然として、腑に落ちない表情を見せていたが……。

そして現在、上条はタケル達と共に人気のない場所に移動して、マミや隼人を中心に、自分達の正体や事情を説明してもらっていた。

 

「魔法少女に、仮面ライダー……。まるで、おとぎ話みたいですね……」

「残念だが、これは事実だ。俺達のように素質のある奴は、契約して1つの願い事を叶えてもらう代わりに、このソウルジェムやアイコンを手に入れる。これを手に入れた奴は、魔女と呼ばれる、世界に蔓延する呪いと戦う使命を課される」

「補足するなら、主に、男の子が仮面ライダー。女の子が魔法少女になるわ」

「は、はぁ……」

 

マミと隼人の説明に困惑している上条だが、彼も決して頭は悪くないので、ある程度は理解出来ていた。

 

「……でも、魔女って、さっき襲ってきた奴らよりも強いって訳ですよね。あんな恐ろしい奴と戦うなんて、大変そうに思うんですが……」

「大変なんてレベルじゃない。命がけなんだ」

 

そう答えたのは星斗だった。

 

「そうよ。魔女との戦いは常に命がけ。大怪我だってするわ。現に、私も命を落としかけたし、八谷君も大怪我を負った事もあるわ」

 

マミの言葉に上条は黙り込んだが、一度頭の中を整理した後、改めて口を開いた。

 

「……でも、それでも、タケルやみんなには叶えたい願いがあったんだよね? 一体どんな事を願ったら、あいつらと戦おうって思えるんだい?」

「それは……。各々事情はあるけど、俺の場合は半ば強制的だったかもな。魔女に襲われて、死にかけてた時に契約して、生き延びた事で、魔女との戦いをするようになった訳だし」

「! そんな……!」

 

タケルの言葉に、上条は息を呑んだ。

 

「私もほとんど同じ理由で魔法少女になったわ。後はみんなバラバラね。違う自分になりたい、どうしても忘れたくない、誰かを救いたい。そういった事情を経て、私達は契約をしてきたの」

 

マミの会話を聞いて、さやかと仁美の拳がギュッと握り締められたのを、まどかは見逃さなかった。

 

「今の話だけなら、命がけとはいえ、俺達は魔女という悪からこの街を守り抜いていく、正義の味方という解釈も出来る。そう思わないか?」

「た、確かにそうですね」

「……でもね、上条君。この話には続きがあるの」

 

マミの真剣な表情を見て、上条は気を引き締めた。

 

「さっき、契約する際にこのソウルジェムやアイコンを手に入れるって言ってたでしょ? ……このソウルジェムは、私の心臓でもあるの」

「なっ……⁉︎ それって一体……」

 

マミが自らのソウルジェムを卵型に変えて説明すると、上条は目を見開いた。続けてさやかがソウルジェムを上条に見せるように突き出した。

 

「契約しちゃうと、こんな風に自分の魂を形に変えられちゃうの。だから、今のあたしの体は、抜け殻みたいなものなの。この体の中の心臓とか血液とか、動いてないの」

「アイコンも同じ原理さ。だから、どれだけ体が傷つこうが、大怪我しようが、このソウルジェムやアイコンが無事なら、時間が経てば元の体に回復する。逆に言えば、このソウルジェムやアイコンが壊れたら最後、本当の死を迎える」

「!」

 

上条はただただ愕然とする他なかった。

 

「それに……」

 

と、今度は仁美が説明し始めた。

 

「私達が魔法を使う度に、このソウルジェムは濁っていきますの。その濁りを取り除く為にも、魔女を倒した際に手に入れれるグリーフシードを使う必要がありますの。けど、もし穢れを完全に溜め込んでしまったら……」

「ど、どうなるっていうんだ……?」

 

上条が恐る恐る尋ねてみると、タケルは重苦しい口調で呟いた。

 

「ソウルジェムやアイコンはグリーフシードに変わって、俺達は魔女になる」

「⁉︎ ま、魔女に……⁉︎」

 

告げられた真実に、上条は驚きを隠せない。

 

「本当だよ。あたしなんて昨日、魔女になりかけた訳だし」

「昨日って、さやかが学校を休んでた……。じゃあさやかが学校を休んだ本当の理由って……!」

 

さやかは何も言わずに頷いた。上条が呆然とする中、杏子が髪をかきむしりながら口を開いた。

 

「ヤローが何を狙ってやがるのか分かってる訳じゃねぇが、魔法少女や仮面ライダーが増えるって事は、それだけ魔女になる奴も出てくる可能性があるって事だ」

「奴って……?」

「キュゥべえっていう、白い生き物の事だよ。長い耳があって、言葉も喋れるの」

 

と、まどかがわかりやすく説明した。

 

「キュゥべえは、素質のある子の前に姿を現すわ。もしくはテレパシーで声だけかけてくる事もあるし……。念のために聞いておくけど、上条君、あなたこれまでにそれらしい声を聞いた事があるかしら?」

 

マミがそう尋ねると、上条は目をつむってしばらく黙り込んでいると、不意にハッと表情を変えた。それを見て一同に嫌な予感がよぎった。

 

「……そういえば、以前僕の左腕がいつの間にか治ってた時に、声が聞こえたんだ。その左腕は、魔法によって治ったんだって……。確かに、頭の中にそんな声が響いてきて……」

「! それって……!」

「こいつにも、素質があるって事か……」

 

隼人が腕組みをしたまま唸っていた。

 

「あの野郎……! 恭介にまで勧誘を仕掛けてたのか!」

「ぼ、僕に仮面ライダーの素質が……」

 

上条が自分の左腕を見つめながらそう呟いていると、さやかが駆け寄って咎めた。

 

「ダメだよ! あんたは契約しちゃダメ!」

「さ、さやか……?」

「さっきも言ってたでしょ! 契約したら、あんたは一生戦い続ける事になるし、魔女になっちゃう事だってあるかもしれないんだよ! あんたが大好きだったバイオリンも弾けなくなっちゃうかもしれないし、夢も叶わなくなっちゃったら、あたし、何の為に契約したのか……!」

「え……?」

 

さやかの言い方に疑問を抱いていた上条だが、彼が口を開くよりも早く、タケルがそれを遮るように声をかけた。

 

「とにかく、あいつが近寄ってきても惑わされんなよ。何を言われても、自分の意思を曲げないでくれ。それが、何も知らずに仮面ライダーや魔法少女になっちまった、俺達からの頼み事だ」

「う、うん……」

 

上条が戸惑いながらも頷いていると、さやかの頭の中にタケルからのテレパシーが届いた。

 

『みんながいる前じゃ言い辛いだろ? 後は、自分の口で説明するんだぞ』

『うん。ありがとう、タケル』

 

その後方で、晶と仁美が互いに見合って頷いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一同は解散し、それぞれの自宅に戻る中、さやかは上条に話があると告げて、公園に立ち寄ってベンチに腰掛けた。

 

「さっきはゴメン。急に怒鳴っちゃって。あのままだと、あんた本当に契約しちゃうんじゃないかって思ってさ……」

「気にしないで。それより、話って何?」

「……うん。あたしの願い事の事なんだけど……」

「さやかの……?」

「ほら、あんたも言ってたじゃん。一体どんな願い事があったら、魔女と戦おうって思えるのかってさ」

 

さやかは一度深呼吸した後、自らが戦いと引き換えに叶えた願いを告げた。

 

「あたしね、恭介の腕が治ってほしい。それだけを願って、魔法少女になったの」

「……! まさか、僕の腕が治ったのは、さやかが……!」

「その通りですわ」

 

不意に聞こえてきた声のした方を2人が振り返ると、後をつけてきた仁美と晶が近づいてくるのが見えた。

 

「あ、あんた達……」

「ゴメンね、さやかちゃん。悪気があった訳じゃないんだけど……。やっぱり気になっちゃって」

 

晶が申し訳なさそうに謝っていると、仁美は2人のいるベンチに座って語り始めた。

 

「さやかさんは、上条君にもう一度バイオリンを弾いてほしくて、その願いを叶えたんです。でもそれ以上に、その時のさやかさんは上条君、あなたに好意を抱いておりましたの」

「えっ……?」

「ちょ、ちょっと仁美。そんなの恥ずかしいから良いって……」

 

さやかが本当に恥ずかしそうに言っているが、仁美は黙らなかった。

 

「それからしばらくして、私は恐怖心に負けそうになっていた自分を変える為に契約しました。何より、友達であり続けたいという思いが、私を突き動かしていました。……でも、魔法少女がどういうものかを知った時、私は決意しました。手遅れになる前に、この気持ちだけはどうしても伝えたい。例え上条君に希望を与えたさやかさんに嫌われてしまっても、この気持ちを止める訳にはいかない、と」

 

そして仁美は、さやかにありのままの感情を吐露した後、さやかに猶予を与えた。結果的に、さやかは想いを告げる事なく時を過ごし、仁美は約束通り、上条に告白し、その想いは遂げられた。

それが、昨日の真実なのである。

 

「そんな、事が……!」

「本当なんです。さやかちゃんは、上条君に笑顔になってほしい一心で、契約を交わしたんです」

 

晶がそう補足説明した。すると、自分のせいだと落ち込んでいる上条の肩に手を置いて、優しく語りかけた。

 

「そんなに落ち込むなって。そりゃあ最初は少しでもあたしの事を見てくれたらって思ってたけど、心のどっかでなんか違う気がしてたんだ。あたしってそういう気持ちで契約を決意してたのかなってさ……」

 

さやかは日が沈みかけている空を見上げながら、淡々と呟いた。

 

「でもさ。昨日魔女になりかけてからみんなに助けてもらって、やっと気づけたの。あたしは、恭介にもう一度演奏をしてもらいたくて、その願いを叶えたんだ。恭介が楽しそうにバイオリンを弾いてるのがいつも輝いて見えて……。……それに、恭介を傷つけちゃったから、それを償いたいって気持ちもあって……」

「……!」

 

上条の脳裏に浮かんだのは、医者に一生治らないと宣告されて、さやかに八つ当たりしてしまった時の事。あれが原因で、さやかは命がけの戦いに足を踏み入れる事となった。そう思うと、取り返しのつかない事をしてしまったという罪悪感が上条の全身を駆け巡った。

 

「さやか、ゴメン……! 僕の、せいで……!」

「だ〜か〜ら、そんなの気にしてないって! あたしが魔法少女になった事で迷ってたのが悪いんだし、それに、あたしはもう、後悔なんてしてない。一緒にいてくれるって約束してくれた奴がいるんだもん」

 

さやかは不意に頬を染めて、晶の方に目線を向けた。晶は恥ずかしそうに視線を地面に向けた。

 

「そういった人がいてくれるだけでも、あたしは充分幸せ。だからさ、恭介も今度からちゃんと仁美を守ってあげなさいよ。今まで仁美が陰ながら守ってくれたのもあるんだからさ」

「も、もぉ〜。ちょっと恥ずかしいですわ」

 

仁美はモジモジしながら顔を赤くして言った。

 

「そういう訳だからさ。恭介には、ちゃんと自分の人生を生きてほしいの。だから安易に契約なんて交わすんじゃないわよ」

「さやかさんの言う通りですわ。上条君、この体がどうであれ、私達は人間としてこれからも生きていく決意をしてますわ。上条君を愛する、1人の人間として」

「だから、これからも僕達はずっと友達でいましょう。その事に魔法少女とか、仮面ライダーとかは関係ないんですよ」

 

3人の力のこもった言葉を受けて、上条は静かに、

 

「……ありがとう」

 

と、呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

これで何回目か分からなくなるほど、上条はため息をついている。3人と別れた後、彼は1人、夜道をトボトボと歩いていた。思い起こされるのは、先ほどまでに見てきた、あるいは聞いてきた事ばかり。

 

「(まさか、僕の知らないところで、そんな事になってたなんて……)」

 

彼の知る由もない世界で、タケル達は人知れず命がけの戦いを強いられていた。それを知った上条の内心はとにかく複雑だった。

 

「……どこまでも罪深いな、僕って奴は」

 

不意に立ち止まって、俯きながらそう呟く上条。先ほど、さやか達から話を聞いて、その場では相手に合わせれたのだが、やはりどこかで後ろめたさがあり、未だに自分がしてしまった事にやるせなさを感じていた。

そんな上条に、声をかける者がいた。

 

「随分と悩んでるみたいだね」

「……!」

 

声のした方を見上げると、塀の上に赤く光る目玉が特徴の、白い生き物がチョコンと座っているのが見えた。そして、とっさに思い出した。上条の腕が治ったあの日、どこからともなく声をかけてきた存在がいた事を。今、目の前にいるそいつの声と間違いなく一致している事を。

そして何より、今のタケル達が巻き込まれてしまっている事態の元凶がそいつである事を。

 

「お前が、キュゥべえか……!」

「こうして君に面と向き合うのはこれが初めてだったね、上条 恭介」

 

キュゥべえは呑気そうに語りかけるが、今の上条にはかえって逆鱗に触れさせるような口調だった。

 

「お前のせいで、さやかやタケルがどれだけ辛い目にあったか、分かっているのか⁉︎」

「それは非合理な言い方だね。僕はちゃんと君達人類が承諾したと認識した上で契約を結んで、魔法少女や仮面ライダーになった。そこから先において被害を被る事に関しては個人の責任に値するはずだ」

「君って奴は……!」

 

歯ぎしりしながらキュゥべえを睨みつける上条だが、足も満足に動かせない為、とっ捕まえる事すら出来ない。

 

「やれやれ。僕は何も喧嘩をしに来た訳じゃないんだ。ただ、君に伝えたい事があって、こうして1人になったタイミングで声をかけに来たのさ」

「! 僕と契約するつもりなのか……! タケル達から、全部話を聞いてる事を知った上で……!」

「それもある。現に、君には僕が見えている。つまり、仮面ライダーになる資格もあるという事だ」

 

ただ……、とここでキュゥべえが別の話題をふってきた。

 

「僕が伝えたかったのは、君が助けたあの少年の事だ」

「渡辺がどうしたって言うんだ!」

「彼のメンタルは僕が思っていた以上に弱いみたいだ。だから、あぁやって魔女の口づけをつけられた。きっと彼を虜にした魔女にとっては、格好の餌になっただろうね」

「なっ……⁉︎」

 

告げられたのは、渡辺が再び魔女に狙われる可能性があるという事だった。あの時は偶々上条がいたから助かったものの、いつまでも同じ偶然が重なるとは限らない。そして魔女の結界に取り込まれてしまった者は、生きて出られないのがほとんどである。

 

「いずれ再び彼は捕食対象になる。このまま行けば、ね」

「そんな……!」

「まぁ、僕としては彼の生死がどうなろうと関係ないよ。彼は素質者では無い。だから、僕達にとっては何ら影響もないし、彼がどうなろうと関係ないよ」

「なっ⁉︎ お前、彼の命を何だと思って……!」

 

キュゥべえの発言に、怒りを露わにする上条。そんな彼を冷静に見つめながら、キュゥべえは言った。

 

「もっとも、君がその気なら、彼を助ける事だって出来る。君には、そんな奇跡を可能にする力が秘められている訳だからね」

 

つまりそれは、キュゥべえとの契約の対価によって、渡辺を救うという事だった。

 

「まぁ、ある程度の事情を知ってしまっている君が、理解した上で契約するところまでは、正直なところ期待出来ないけどね」

 

キュゥべえが耳の裏をかいた後、上条に背中を向けて、首だけを振り向かせて、上条に告げた。

 

「……でも、本当はどこかで思ってるんじゃないかい? 僕にも、仮面ライダーの力があれば、美樹 さやかや志筑 仁美、それにまどかやタケル達を守ってあげれるって」

「……!」

 

キュゥべえからの指摘に、上条は息を詰まらせた。

 

「魔法少女や仮面ライダーがゆくゆくは背負っていくものを知る男、上条 恭介。……この宇宙の為に死んでくれる気になったら、いつでも声をかけて。僕は待ってるからね」

 

それだけ告げると、キュゥべえは返事を待つ事なく暗闇に溶け込むように姿を消した。

上条は、暗くなってきた為に、急いで家に帰る事さえ忘れて、複雑な表情のまま、キュゥべえが先ほどまでいた塀の上を見つめていた……。

 

 




という訳で、ラストの方でキュゥべえが久々の登場。かなりの外道っぷりが滲み出て、完全に悪者扱いです。

次回、上条が下す決断に乞うご期待。

次回もお楽しみに。
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