魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

今話で70話目に突入!


70. その程度の存在だったんだね

「あぁもう! あいつの目的は何なのよ⁉︎」

「お、落ち着いてください、みらいさん。お気持ちは分かりますが……」

 

リビングに入って早々、みらいが喚いているのを仁美が落ち着かせている。

まどかとかずみが連れ去られた後、一同は治療の為に、一旦海香の家に引き返した。軽症だったり、やや重症だったりと人によって怪我の具合が異なる為、直ぐに出撃するのは難しいと判断した為だ。

 

「あのユウリって魔法少女、やけにアラタ達を恨んでたみたいだけどさ。何かトラブルでもあったのか?」

 

包帯に巻かれた右腕を押さえつけながら、誠司が質問するが、アラタ達は首を横に振るばかりだった。

 

「分かんないね。そもそも、ユウリって名前の子と会った覚えはないし」

「だよな。あの魔法少女がそのユウリって奴だと思うけど、顔もよく見えなかったし……」

 

ゲンヤが当時の事を思い返しながら呟いた。

 

「それに、まどかは単に人質として捕まっただけだけど、かずみだけはあんな執拗に追いかけてた。一体どうして……」

 

龍が唸っていると、サキが立ち上がって玄関に向かって歩き出した。

 

「多分知ってるんだ、あいつは。かずみが狙い目だって事を」

「待てよサキ。どこへ……」

「決まってる。かずみを助けるんだ」

「待ちなさい! みんなの怪我が完治してからじゃないと……」

「そ、そうですぞ! 向こうは今夜0時にと伝えてあったではありませんか!」

「待てない! こうしてる間にも、かずみに何をしでかすか分からないんだぞ⁉︎」

 

マミと御成がサキを必死に止めている間、海香は、ユウリが送りつけた矢を手に持って、ジッと眺めていた。

 

「海香、どうかしたんですか?」

「……どうしてかしらね」

「?」

 

士郎の質問に対し、そう答えた海香に視線が集まった。

 

「口で言えばいい事を、なぜ矢文にしたのかと思ってね」

「言われてみれば……」

「そんな事、今はどうだって……!」

 

サキが叫んだ時、ソファーでふんぞり返っていたニコが風船ガムを膨らましながら呟いた。

 

「それよりさ。みんな気づいてた?」

「えっ?」

「あの子ら、相当キてるよ。これ以上魔法を使い続けると……」

 

パン! という破裂音と共に風船が割れた。それが何を意味しているのか、タケル達には直ぐに理解出来た。つい先日に体験しかけた事を忘れるはずがない。

が、似たような表情を浮かべたのは、タケル達だけではない。アラタ達も緊迫した表情でニコに目線を向けていた。そして、廉がいち早く咎めるように叫んだ。

 

「! おい、ニコ! タケル達の前でその話は……!」

「だいじょーぶ。そちらさんも察してるだろうから」

「なっ……⁉︎」

 

アラタ達が一斉にタケル達の方に向き直った。お互いが困惑する中、ニコは淡々と呟いた。

 

「おたくらも気づいてるでしょ? 顔を見てれば分かるよ。大方、今日ここに来たのもそれを話す為でしょ?」

「……!」

 

ニコの的を得ている推測に、何も言い返せない。やがて里美が恐る恐る尋ねてみた。

 

「じ、じゃああなた達も、ソウルジェムやアイコンの事を……」

「そういう皆さんも、やっぱり……」

 

そこから長い沈黙が続いた。アラタ達も知っていたのだ。魔法少女や仮面ライダーの成れの果てが、どんなものであるのかを。

やがて口を開いたのはタケルだった。

 

「……いつから、気づいてたんだ?」

「それは……。ゴメン、詳しくは話せないけど、半年前くらいに、偶然……」

「その事を知ったら、きっとお前達は絶望して、それこそ最悪の結果に繋がる。それだけは避けたくて、俺達も今日まで黙ってた。もちろんこの事はかずみも知らない。記憶が抜け落ちているから、都合が良いと思ってな」

「みんな……」

 

アラタ達が心の中で平気を装い、裏で苦しんでいた事を考えると、タケル達も胸が痛くなった。

 

「逆に質問するけどさ。みんなはどうやって気づいたの? こんな事、滅多に知る機会は無いだろうし……」

 

カオルが質問をすると、仁美が代表して、ソウルジェムやアイコンの正体を知った出来事も、さやかが魔女になりかけたきっかけを話し始めた。

 

「……そうか。さやかや君達も苦労したんだな」

 

サキが、空席のソファーを見つめながら呟いた。

ちなみに今、さやかはこの場にはいなかった。海香の家に戻る際、さやかだけは今夜までに戻る事を前提に、見滝原でやるべき事があると言って、直接見滝原へ帰っていったのだ。

やがてマミがパン! と音を鳴らして注目させた。

 

「さぁ。この話はとりあえずここまでにしておいて、今は鹿目さんやかずみさんを取り戻す方法を考えないと」

「うん! まどかおねーちゃんもかずみおねーちゃんも、絶対助けようね、キョーコ、みんな!」

「あぁ。このままやられてばっかじゃ性に合わねぇ」

 

ゆまと杏子も俄然やる気になって叫び、さやかを除く一同は対策を練っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇっと、確かこの辺だったわよね」

 

その頃、さやかは魔法少女に変身して、住宅街を屋根伝いで飛び回りながら、目的地まで向かった。

やがてたどり着いた先に見えたのは、ほむらの家だった。杏子に教えてもらったその家は、外見上は特に何の変哲もない一軒家のように見えた。さやかは周りに誰もいない事を確認してから変身を解き、ネームプレートにほむらの名字が彫られているのを確認した後、インターホンを鳴らした。が、いつまで経っても応答がない。運悪く、誰もいない時に来てしまったようだ。

 

「あぁもう……! こんな非常事態に限って……!」

さやかは髪を掻きむしっていたが、時間をかけている場合ではない。さやかはポケットに入っていた紙切れとペンを取り出し、用件を紙に書いて伝える事にした。

隣町のあすなろ市でかずみと共に、まどかが謎の2人組に連れ去られた事。今夜0時に取引をする事になっているが、万が一の為に、約束通りにほむらやマコトにも救出を手伝って欲しい、といった内容を書き込むと、それを玄関のドアと地面の隙間に挟み込んだ。

 

「……お願い。まどかを、助けてあげて……!」

 

さやかは祈るように呟くと、ほむらの家に背を向けて走り出した。人目のつかないところでまた変身するのだろう。

 

「……」

 

その様子を、買い物帰りのほむらが訝しんだ表情で路地裏から見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた、午前0時よりちょっと前。

あすなろドームには、すでに変身している一同が待機していた。さやかも合流して、ユウリ達が現れるのを待っている。

やがてモニターが午前0時の差した瞬間、コツ、コツとタケル達とは別の足音や金属音が擦れる音が聞こえてきた。一同が気を引き締めていると、タケル達がいる場所から少し離れた入り口から人影が現れた。現れたのは、長ズボンにチェーンがついて、ジャラジャラと音を鳴らし、ポケットに手を入れて不敵な笑みを浮かべている茶髪の少年だった。短髪にワックスが塗られてつり上がっている顔や破けている服装からは、ガラの悪そうな風俗らしき雰囲気を漂わせている。

 

「ようこそ、イーブルキッチンへ。プレイアデスやそのお仲間さんよぉ」

「お前……、あの時のライダーか!」

「天宮 雅彦ってのが俺の名前だ。ま、覚えてなくてもいいけどさ。なんせ、俺はあの時、あの場にはいなかったんだからな」

「あの時……?」

「そんな事よりかずみを……! まどかを解放しろ! 今すぐにだ!」

「まぁまぁ慌てなさんな。ちゃんと返してやるからさ。……俺達の調理を済ませてからな!」

 

雅彦が指をパチンと鳴らすと、広い野球フィールドに魔法陣が出現し、円柱のようなものが現れた。その中心には、かずみが椅子に座らされて手足を拘束されている姿があった。

 

「みんなー!」

 

かずみがアラタ達の姿を確認して叫んだ。そこから少し離れたところには、まどかが手足を縛られて、身動き出来ない状態で地面に座っていた。

 

「タケル君、みんな!」

「「まどか!」」

「「かずみ!」」

「! 待て!」

 

何人かがジャンプして2人に近寄ろうとしたその時、隼人が手を突き出して制止した。

「⁉︎ どうした?」

「! これって……!」

 

ゲンヤが訝しんでいると、マミも何かを察したのか、ハッとした表情になった。

 

『ガンガンガンマン!』

 

隼人がガンガンガンマンを取り出して、かずみの頭上にあるモニターに向かって撃った。するとどうだろう。銃弾はモニターに当たる前に2人のいる円柱を囲むように張られていた何かに当たり、全面に電流が流れた。一同に動揺が走った。

 

「妙な気配がすると思っていたが、やはり結界だったか……!」

「そう簡単に引き渡すつもりじゃ無いって事ですね……!」

 

隼人と上条が苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。もし隼人が止めてなければ、結界に直に触れてしまい、その電流で大ダメージを負っていただろう。

 

「あっはっはっは!」

 

と、今度はモニターが歪んでユウリの姿が映り、画面からニュルリと抜け出てきた。魔法を使ってモニターから潜り抜けてきたのだ。ユウリは地面にゆっくりと舞い降りると、意気揚々に口を開いた。

 

「ここは、悪魔の調理場。今宵はこのあたし、魔法少女ユウリがお前達にとっておきの料理を振る舞ってやる」

 

そう言ってユウリは右手の指の間にイーブルナッツを出して、その手をかずみに向けた。

 

「今日の食材はこのイーブルナッツと、魔法少女かずみ」

「何⁉︎」

 

料理番組のようなテンポで恐ろしい事を語りだすユウリに、一同は緊張が走った。

 

「作り方は簡単。このイーブルナッツを額に埋め込みまして、アブラカダーブラ」

 

ユウリが説明していると、雅彦が横入りしてきた。

 

「テストはもう成功してるからな」

「テスト?」

「覚えてるだろ? このあすなろ市で刑事や販売員が、立派な魔女になったのをさ!」

「やっぱり、あれはあなた達が……!」

 

まどかがそう確信していると、カオルと龍が叫んだ。

 

「やめろユウリ! こんな事をして何になる!」

「そうだ! 何で俺達が戦わなくちゃいけないんだ!」

「カオル、龍……!」

 

かずみも2人の姿を見て、必死に説得した。

 

「やめて! ユウリ、雅彦! 私達は同じ魔法少女や仮面ライダー、仲間なんだよ!」

「……仲間?」

「そう、仲間」

 

かずみの呟きを聞いて、ユウリと雅彦は黙り込んだ。このまま上手く話せば分かってもらえる。かずみやまどかはそう思い込んでいた……。

 

「……ぷ」

「クヒヒ……!」

「……えっ?」

「プワァッハッハッハ! おい、聞いたかよ雅彦! こいつ今言ったぜ! あたし達は仲間だってさ!」

「あぁ! バッチリ聞こえたぜ! いやぁ、マジウケるわ! ギャアッハッハッハ!」

 

だが、2人から返ってきたのは、狂ったような笑い声だった。その様子を見て、タケル達は意味もなく背筋が震え上がった。雅彦がおかしくなったのか、目尻に涙を浮かべながら、タケル達……正確にはプレイアデス星団のメンバーに向かって叫んだ。

 

「聞いたかプレイアデス! 仲間だとよ! 俺ら仮面ライダーや魔法少女が仲間だって!」

「……!」

 

アラタ達は何かに怯えているように、何も言い返せずに黙り込んでいた。それを見かねたタケルが怒鳴った。

 

「それの何がおかしいんだよ! 俺にとって魔法少女や仮面ライダーはみんな仲間や、友達だって思ってる! それをバカにするなんて……!」

「許せない……ってか?」

 

ユウリが不敵な笑みを浮かべながらそう呟くと、かずみの方に向き直って口を開いた。

 

「……にしてもお前何も知らないのか、かずみ。こいつらは」

「やめろ!」

 

ユウリが何かを言おうとした時、サキが耐えきれなくなったのか、それを遮るように叫んだ。

 

「ほぉ。汚れた手をこの子にだけは見せたくないってか、浅海サキ」

「黙れぇ!」

「お前ら、それ以上言ったら、絶対許さねぇ!」

「ひゃっはっは! いいねぇ、いい顔だぜ!」

 

雅彦が腹を抱えてアラタを指差して笑っていると、里美が叫んだ。

 

「あなた達の目的は何なの⁉︎ 私達に何の恨みがあるの!」

 

それを聞いて、ユウリは顔をアラタ達に向けた。そして、被っていた帽子を外しながら、どこか冷めた口調で呟いた。

 

「名前も手紙も、あれだけヒントをやったのに。欠片も思い出さないわけ……?」

「……は?」

 

ユウリの言い方に違和感を感じる星斗。そして遂に、その容姿が明らかになった。

 

「ホントにあんた達にとって、その程度の存在だったんだね」

 

露わになったその顔の特徴としては、金色の綺麗な瞳に、ブルーベリーのヘアゴムで結ばれた金髪のツインテール。タケルら見滝原組からして見れば、どこにでもいそうな美少女ぐらいの感覚だった。

だが、アラタ達はその容姿を目にした途端、信じられないと言わんばかりの表情を見せた。

 

「……! お、お前は……!」

「そんな……! そんなはずは……!」

「そうよ! だって、あの子は……!」

 

プレイアデス星団の皆が口々に呟いているのを耳にしてきたタケル達は尋ねた。

 

「アラタ、あいつを知ってるのか⁉︎」

「あ、あぁ……。でも、もういないはずなのに……!」

「いないって、どういう事だよ⁉︎」

 

杏子が困惑した目つきで問い詰めると、雅彦が前に出て叫んだ。

 

「そうさ! ユウリはかつて、テメェらによって葬られた!」

「葬、られた……⁉︎」

「そしてあたしはお前達に、復讐する為に還ってきたんだ! 絶望の淵からな!」

 

ユウリが狂気に満ちた表情で、目的を告げた。皆が動揺する中、雅彦はポケットからディスピアゴーストアイコンを取り出し、腰にゴーストドライバーを展開した。

 

「ようやくだ……! ようやくテメェらプレイアデスをこの手でぶち殺す時が来たァ! ユウリに手をかけたこの力で、今度はテメェらの存在そのものを絶望に染めてヤラァ!」

 

雅彦は狂い笑いしながら、ディスピアゴーストアイコンのスイッチを入れてドライバーにはめ込んだ。中から出てきたパーカーが怪しく踊り出している。

 

『アーイ! バッチリミロー! バッチリミロー!』

 

雅彦は両手の爪を立てて、腕をクロスしてから、口の両端を吊り上げて叫んだ。

 

「変身!」

 

そしてレバーを引いて押すと、装甲がつけられて、パーカーが羽織られた。

 

『カイガン! ディスピア! レディゴー! 覚悟! ドキドキゴースト!』

 

ディスピアの姿を見て、一同は威圧されたかのように後ずさった。

 

「ディスピア……。文字どおり絶望を背負うライダーか……!」

「クヒヒ……! さぁ、このまま殺り合いたい所だが、その前に……!」

 

雅彦がユウリに目線を向けると、ユウリは頷いて、イーブルナッツをかずみに近づけた。

 

「先ずは調理の方を済ませないとな!」

「! しまった!」

「かずみちゃん!」

「「「「「「やめろぉぉぉぉぉぉ!」」」」」

 

まどかが止めさせようとしたが、手足が縛られていては身動き1つ取れない。アラタ達が止めようとしたが、もう遅い。

 

「さぁ、今宵のメインディッシュ。『マギカ アラビアータ』の完成だ!」

『か、かずみぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!』

「……!」

 

タケル達が為す術もなく立ち止まって叫んでいる目の前で、かずみは抵抗出来ず、その額にイーブルナッツがズブリという音と共に埋め込まれていった……。

 

 

 

 




間も無く集中講義や習い事で忙しくなるので、投稿が遅れるかもしれませんが、何卒よろしくお願いいたします。

次回から更に戦いは激化! イーブルナッツを埋め込まれた、かずみの運命や如何に……!

次回もお楽しみに。
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