魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

この間、「遊戯王展」に行ってきましたが、とても充実した内容であり、1日楽しめました! 行って良かった!


71. 一度、あたしを殺したんだ

まどかとかずみを取り戻そうと奮起していたタケル達だったが、遂にかずみの頭に、謎多きイーブルナッツがユウリの手によって埋め込まれてしまった。イーブルナッツを使った者がどんな姿になるのかは、雅彦の口からも語られたし、自分達もその姿を目にしている。

 

「……アレ?」

 

が、どういうわけか、いつまで経ってもかずみが魔女化する事はなかった。ユウリが首を傾げながら間抜けな声をあげていると、かずみの体内で何かが鼓動して、彼女を拘束していた椅子がバラバラに崩れ落ちた。そして帽子とマントが半ば強制的に装着されて、地面に立つと額を押さえながらよろめいた。

 

「か、かずみちゃん⁉︎」

「……あ? どうなってんだ?」

「何で⁉︎ イーブルナッツの効果は……⁉︎」

 

まどかと雅彦、ユウリが困惑する中、かずみは息を荒げながら目線をユウリに向けた。が、焦点が合ってないように見える。それを見て、ユウリは再び不敵な笑みを浮かべた。

 

「いや、効果はあったみたいだ、なぁぁぁぁぁぁ!」

 

ユウリは2丁のリベンジャーを取り出して、かずみを狙って撃った。

 

「! かずみ!」

 

アラタが逃げるように示唆するが、それよりも早く、かずみは杖を振り回して弾を弾いた。そして頃合いを見計らってユウリに接近して殴り倒そうとした。

が、すんでの所でユウリがリベンジャーを盾代わりにして勢いを止めた。

 

「……は! 新入りのチビ如きが、このあたしに勝てるとでも?」

「な……!」

 

刹那、リベンジャーから火が吹いて、1発は杖をへし折り、もう1発はかずみの右太ももを貫いてバランスを崩させた。かずみがよろめいている間にユウリは右足を振り上げてかずみの顎に直撃させた。

 

「ガッ……!」

 

かずみが倒れこんだところに、更に追い討ちをかけるようにユウリは何度もかずみを踏みつけた。

 

「かずみ!」

「て、テメェ!」

 

その光景を見て頭に血が上ったアラタは飛び出して、結界を破壊しようとしたが、周りに張られた電流が厄介で、破壊を阻害している。加えて脅威は結界だけではない。

 

「オイオイ! 俺様を忘れてもらっちゃあ困るなぁ!」

「ぐっ……!」

 

雅彦がアラタの脇腹に蹴りを入れて、アラタは吹き飛んだ。

 

「アラタ!」

「この……!」

 

続いてサキ達も攻め入るが、雅彦の俊敏な動きについていけず、逆に返り討ちに遭っている。

 

「ひゃっはっはっはっはっは! 無駄無駄ぁ! テメェら如きに俺様が倒れるわけないんだよ!」

「くそっ……! 確かに強いな、こいつ……!」

「でも、諦めるわけにはいきませんわ! 早くまどかさんとかずみさんを助けないと……!」

「いい加減諦めろってよぉ! テメェらが来たところで、この状況はかわらねぇ! むしろ自分の手をどんどん汚しちまってるんだよなぁ!」

「ど、どういう意味だ……⁉︎」

 

星斗は雅彦の言い方に疑問を抱いたが、段々とそれどころではなくなってくるほど、戦闘は激しさを増してきた。

 

「おねーちゃん達をいじめるな!」

 

ゆまが果敢に攻めるが、雅彦はその攻撃をかわして逆に弾き飛ばした。

 

「うっ……!」

「ガキがちょろちょろ動き回んじゃねぇよ!」

「! ゆま!」

「この野郎……! ゆまを傷つけてタダで済むと思うなよ!」

「やぁっ!」

 

杏子とさやかが半ギレしながら得意のスピード勝負に持って行こうとするが、向こうもタイミングを見計らってガンガンロッドを振り下ろして2人を叩きつけた。

 

「杏子! さやか!」

「誠司君、私も!」

 

誠司と仁美が助太刀しながらガンガンジッテやバトンを振り回しているが、雅彦にはまるで効果が無いようだ。

 

「んなチャチなもんで俺を倒せるもんかよぉ!」

「ぐぁ……⁉︎」

 

誠司を地に伏せて何度も叩きつけており、その姿は暴徒と化している。マミと隼人が応戦しようとするが、逆に誠司を掴んで投げ返して、2人を吹き飛ばした。

 

「! みんな!」

「このままじゃ全滅だ……! タケル、恭介! 一緒に!」

「あぁ!」

『アーイ! バッチリミナー! カイガン! ムサシ! 決闘ズバッと! 超剣豪!』

 

タケルはムサシ魂にゴーストチェンジし、彼を含むアラタと上条の3人で雅彦に立ち向かった。格闘技だけで応戦するアラタだが、ガンガンロッドのリーチの長さに阻まれて、思った以上に動けていない。上条はまだ経験の浅さが災いして敵の重い一撃に弾かれてしまっている。次第に追いつめられた2人は、ガンガンロッドを放った雅彦によって首根っこを掴まれてそのまま締め上げられた。

 

「ぐ、あぁぁぁぁっ!」

「ガッ……!」

「クハハハハ! このまま逝っちまいな!」

「やめろぉ!」

 

そこへすかさずタケルが2刀のガンガンセイバーを構えて突進して、2人を雅彦から引き離した。

 

「邪魔するなぁ!」

 

雅彦は苛立ったままガンガンロッドを拾ってタケルと激しい撃ち合いを始めた。

その間にも、ユウリの憎悪を含んだ攻撃がかずみを容赦なく襲っており、次第にかずみの意識が朦朧とし始めているのが確認できた。それを見て里美が悲鳴や涙と共に叫んだ。

 

「もうやめて! かずみちゃんは関係無いわよ!」

 

それを聞いてユウリは足を止めて、にやけながらタケル達の方を振り向いた。

 

「ははっ! いいね、もっと見せてよ。人殺しの涙ってやつをさ」

「……は?」

「どういう、事なの……⁉︎」

 

口から血を流しているかずみと、そのそばで怯えていたまどかが疑問を抱いていたが、その理由をユウリ自らが答えた。

 

「かずみやお前達に教えてやるよ。こいつらはね……」

「やめろ! それは、それだけは……!」

「はっ! 自分達がしてきた事がそいつらにバレるのが怖くなったのかねぇ⁉︎」

 

怯えながらも必死にユウリの言葉を遮ろうとする廉を、雅彦は笑いながらガンガンロッドで吹き飛ばして黙らせた。

 

「兄貴!」

「廉さん!」

「そぉらユウリ! 言って聞かせてやれよ! こいつらが犯した罪をなぁ!」

「あぁ。こいつらは一度なぁ」

「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

サキの咆哮がこだまするが、ユウリはそれに構う事なく、1つの真実をかずみやタケルら見滝原組に突きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一度、あたしを殺したんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『⁉︎』

 

タケル達は耳を疑った。

 

「アラタ達が、ユウリを……⁉︎」

 

タケルは思わずプレイアデス星団のメンバーに視線を向けた。ユウリや雅彦がこの状況で嘘を言うとは思えない。更に、星団達の表情が青ざめていたり、目を見開いていたり、何も言い返さずに目を瞑って黙り込んでいる姿を見るに、ユウリの言っていた事が事実である事が伺える。

 

「そ、そんな……!」

「本当、なの……⁉︎ ねぇ、ちょっと!」

 

さやかが尋ねるが、誰も答えない。少しして返答したのはアラタ達ではなく、雅彦だった。

 

「もちろん本当さ。それに今まで殺ってたのはユウリだけじゃねぇんだよ」

「あんた達、プレイアデスが正義の味方だと思ってた? 残念だったね。こいつらは、表向きじゃ正義を気取って魔女と戦ってるが、裏じゃ何人もの魔法少女や仮面ライダーを殺してる、悪魔の集団だよ」

「魔法少女……、仮面ライダー……、殺して……」

 

雅彦とユウリの説明に、かずみは理解が追いついていない。ただ、上ずった声でユウリの言葉を繰り返している。そんな彼女に更に追い討ちをかけるように雅彦は告げた。

 

「こいつらは、俺から大事なものを奪ってったんだ。だからよぉ。今度は俺とユウリが、お前らから一番大事なものを壊す。因果応報ってやつさ。当然の事だろ?」

「雅彦、お前……」

 

アラタが呆然と呟く中、ユウリはゆっくりとリベンジャーの銃口をかずみに向けながら言った。

 

「そうさかずみ。こいつらにとって大事なものはあんただ。だから、あんたを殺すの」

 

すると、彼女を中心に三角形の魔法陣が展開された。

 

「イル・トリアンゴロ!」

「か、かずみ!」

 

アラタ達が必死に止めようとしているが、距離が遠すぎて間に合わない。そう思っていたその時、

 

「もうやめて!」

 

ユウリの前に、手足を縛られながらも立ち上がって出てきたまどかが、かずみを守るように立ちふさがった。その光景に、結界外のメンバーは面食らった。

 

「まどか!」

「危ないわ!」

「おい、どけよ。あたしはあんたに用は無いんだよ」

「ダメだよユウリちゃん! あなたや雅彦君の気持ちはわかるけど、だからってこんなやり方、間違ってるよ! 大切なものを奪われたからって、それでかずみちゃんを殺すなんて、納得いかないよ!」

「まど、か……」

 

倒れこんでいるかずみはまどかの名を呟いた。

まどかが震えながらもかずみを守ろうとする姿を、ユウリは鼻で笑いながら呟いた。

 

「何も知らない部外者が随分と調子のいい事言ってくれるじゃん。おまけに魔法少女でも無いガキが、このあたしにたてつこうなんて、とんだバカに出会ったもんだ」

 

ユウリは冷めた目つきで銃口をかずみからまどかに向けた。

 

「……気に入らねぇ。そんなにそいつを守りたいってんなら、良いよ。あんたから先に殺してあげる。かずみはその後でも充分だ」

「……!」

「だ、ダメ……!」

 

かずみの声を後ろから聞きながら、まどかが目を瞑った時、ユウリに異変が生じた。

 

「ぐ、あぁぁぁぁっ……!」

 

突然ユウリの胸の下に付けられていたソウルジェムを押さえながら、呻き始めたのだ。そしてまどかは見てしまった。ユウリのソウルジェムが黒く濁り始めている事に。

 

「! ユウリちゃん! ソウルジェムが……!」

「何だって⁉︎」

 

それを聞いたタケル達に動揺が走った。が、ユウリは無理やり振り切るように腕をソウルジェムから離してまどかにリベンジャーを再び向けた。

 

「こんな、ところで……! こうなったら、こいつらだけでも、絶対に、ぶち殺して……!」

「だ、ダメ! それ以上は……!」

「黙れ……!」

 

ユウリがよろめきながらも引き金を引こうとしている。まどかが必死に説得しようとしたその時、結界外から咆哮がこだました。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

結界内の3人が振り向くと、タケルがガンガンセイバーで結界を斬り裂こうとしている姿があった。

 

「タケル君!」

「そんな事、させるかよ……! 誰も殺させはしない!」

「はん……! んな力任せで結界なんて破れねぇよ! ましてやこの俺様がいる事を忘れねえんのか、あぁ⁉︎」

 

そう叫びながら雅彦がぶつかってきて、タケルを弾いた。が、タケルはバランスを整えて客席に着地してから、ブーストゴーストアイコンを取り出した。

 

「だったら、今の俺に出来る全力で、みんなの命を救う!」

『一発闘魂! アーイ! バッチリミナー! バッチリミナー!』

 

ブーストゴーストアイコンがドライバーにはめられて出てきたパーカーを見て、プレイアデス星団やユウリ、雅彦、更にジュゥベえ達は驚きの表情を見せた。

 

「な、何あれ⁉︎」

「あんなアイコン、初めて見たぜ……!」

「こいつは……」

 

そしてタケルは右手の人差し指と中指を立てて叫んだ。

 

「命、燃やすぜ!」

『闘魂ダイカイガン! ブースト! 俺がブースト! 奮い起つゴースト! ゴーファイ! ゴーファイ! ゴーファイ!』

 

タケルの闘魂ブースト魂を見て、アラタ達は目を見開いた。

 

「タケルの姿が……!」

「な、何だよあの姿⁉︎」

「初めて見るタイプだわ……!」

「これが、タケルの新たなる力なのか」

 

雅彦も思わず後ずさったが、すぐに声を震わせならガンガンロッドを構えた。

 

「は、はん! どうせこけ脅しに決まってらぁ!」

『サングラスラッシャー!』

 

そう叫んでタケルに向かって言った。対するタケルはサングラスラッシャーを取り出して雅彦の攻撃を受け止めた。

 

「何⁉︎」

「はぁっ!」

 

タケルから放たれたパワーに圧倒されて、雅彦は弾き飛ばされた。タケルの斬撃が雅彦を追い詰めて、一気に戦況が一変した。

 

「な、何だってんだこいつは……! さっきまでと全然違いすぎるだろ……!」

「当然だ! この力は、俺の想いが形になって出来たものだ! だから、復讐に囚われてるお前らになんか、負ける事は無いんだ!」

「三下風情がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

雅彦は苛立ちを最高潮に達しながら再び殴りかかったが、タケルからしてみれば格好の的に過ぎず、タケルの圧倒的優位が伺えた。そんな中で、雅彦は不敵な笑い声と共に呟いた。

 

「にしてもよぉ。あんた、自分が何してるのか分かってんのか? ここで俺達をぶっ潰そうって事は、実質こいつらに手を貸してる事になるんだぜ? 何人もの魔法少女や仮面ライダーを皆殺しにしてきた、偽善者達のなぁ! そんなんじゃ、テメェらも同罪って事になるよなぁ!」

 

そう言って油断を誘ったのか、雅彦は急接近してガンガンロッドを振り下ろしたが、タケルはそれをサングラスラッシャーで押さえ込んだ。

 

「それはお前の思い込みにすぎない!」

「あっ……⁉︎」

「確かにアラタ達が裏でどんな悪い事をしてきたのか、全部分かってなんかいない。けどそこには理由があるんだ! そうしなきゃならない事情があって、同胞達に手をかけている! でなきゃ、あんな優しいあいつらがそんな事をするとは思えねぇんだ!」

「タケル……!」

「それに、そんな事でアラタ達を見捨てる理由になんかならない! アラタ達が何かしたのを知ったからって、俺の気持ちは変わらない! 俺はこれからもみんなの友達だ!」

「なめやがって……!」

 

そう呟くと、雅彦はガンガンロッドをドライバーにかざした。

 

『ガンガンミロー! ガンガンミロー!』

「気に入らねぇ、気にいらねぇ、気にいらねぇ……! 何でもかんでもベラベラを口にするお前が、一番気にいらねぇ!」

『メガマブシー! メガマブシー!』

 

ガンガンロッドの先端に黒いエネルギーが収束する中、タケルは俺ゴーストアイコンとブーストゴーストアイコンをメガネの部分にセットして、エネルギーを刀身にまとった。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」

『闘魂ダイカイガン! ブースト! オメガシャイン!』

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

『オメガジャッジメント!』

 

雅彦が咆哮と共にエネルギー弾を放ち、タケルがそれに向かってサングラスラッシャーを突きつけながら突進した。両者の技がぶつかり合い、大きな音が鳴り響いたが、タケルが一歩踏み出すと同時にエネルギー弾は霧散して、タケルはそのまま雅彦に向かっていった。

 

「な、バカな……⁉︎」

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 

タケルは命の源であるアイコンを傷つけないように、腹の部分にサングラスラッシャーを当てて、自分の体ごと押し込むように飛び上がった。

 

「! タケル君!」

「あいつ、まさか!」

 

晶達が見つめる先には、まどか達がいる結界が。タケルは勢いをつけて雅彦の体を結界にぶつけた。

 

「グァァァァァァ⁉︎」

「おぉぉぉぉぉっ!」

 

タケルと雅彦、両者の体に結界の電流が流れて、痛みが走ったが、タケルは耐えながら力を込めて更に自分の体ごと雅彦を結界に押し付けた。

やがて、結界にヒビが入り始めた。

 

「なっ⁉︎」

「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

そして遂に結界は破壊され、2人はまどか達のいた地面に転がった。雅彦は大ダメージを受けてしばらく動けそうにないらしく、そのままうずくまっていたが、タケルはすぐに起き上がって、まどかとかずみのところに駆け寄った。

 

「くそっ!」

 

ユウリがリベンジャーを向けるも、それよりも早くタケルがサングラスラッシャーでリベンジャーを弾き飛ばした。武器がなくなってしまったユウリはどうする事も出来なかった。

 

「タケル!」

「タケル君、大丈夫⁉︎」

「あぁ、平気だぜ。これくらいな。かずみの方も、大丈夫なのか?」

「う、うん。今はもう平気……」

 

そう呟くかずみだが、目は変色しており、すぐに治療する必要があるように思えた。結界が破れた事で外にいたさやか達も一斉に中央に集まった。

 

「かずみ!」

「良かった……!」

 

一同が安堵していると、ユウリの低い声が響いた。

 

「……んで」

「!」

 

皆がユウリの方を向くと、いつの間にかリベンジャーを拾い上げて銃口を拘束されたままのまどかに向けているのが見えた。

 

「何でお前らはいつもいつも、あたしの邪魔ばっかりするんだぁ!」

「ユウリ、ちゃん……」

「ハァ、ハァ……! こうなったらもう何でもいい……! 全部ぶっ壊してやる! 先ずはテメェからだ!」

「! マズい!」

「やめるんだ!」

 

ユウリが叫びながら引き金を引こうとした瞬間、まどかとユウリに異変が生じた。まどかの姿が一瞬にして消えたのだ。否、まどかだけではない。ユウリの手に握られていたリベンジャーも忽然と姿を消したのだ。ユウリは自分の右手を、困惑した表情で見つめた。

 

「な、何で……?」

「あ、あれを!」

 

御成が指さした先は、ユウリの後方だった。そこにはまどかと、彼女を守るように立っている紫を基調とした魔法少女の姿が。それを見て、見滝原組はアッと驚いた。それはいつも見慣れている人物だったからだ。

 

「ほ、ほむらちゃん……!」

「ようやく結界が解けたから、入る事が出来たの。その辺は感謝しておくわ、タケル」

 

現れた魔法少女は、暁美 ほむら。その手にはユウリが持っていたはずのリベンジャーが握られている。どうやら彼女の魔法によってまどかは移動されて、ついでにリベンジャーも奪い取ったといったところだろう。

 

「な、何者なんだ、あの魔法少女は……⁉︎」

「あ、あの一瞬で何が起こったの?」

「もしかして、あいつがイレギュラーの1人か……?」

 

サキとカオルの言葉に反応したのは、龍の足元にいたジュゥベえだった。

 

「ジュゥベえ、イレギュラーって……?」

「前に風の噂で聞いた事があるんだ。そいつは契約者の中でもとびっきりの存在らしくて、その素性すら明確にされてないって話だ。まさかこんなところでお目にかかるとはねぇ」

「そ、そんなに凄い人なんだ……」

 

かずみが目を見開いていると、雅彦が起き上がって、ガンガンロッドに手をかけた。

 

「て、テメェ! 何しやがった……!」

『ダイカイガン! ノブナガ! オメガドライブ!』

 

だがそれよりも早く、別方向からの銃撃がユウリや雅彦のいた地面の周辺を抉った。一同が顔を上げると、客席からガンガンハンドを構えているマコトの姿が。

 

「新しい仮面ライダー⁉︎」

「マコト! やっぱりお前も来てたのか……!」

「……ふん。ほむらに呼ばれて来てみたが、随分と妙な事になってるな」

 

マコトはそう言いながらまどかとほむらのそばに降り立った。

ほむらはそれを確認すると、さやかに顔を向けた。

 

「一応、約束は守ったわよ。美樹 さやか」

「来てくれたんだ、助かったよ!」

「えっ? さやかちゃん。どういう事なんですか?」

「こないだ、あの2人に頼んでたの。まどかに何かあったら助けてほしいって」

 

さやかの説明をよそに、ほむらはリベンジャーをユウリに向けた。鉄仮面のような表情ではあるが、彼女の口から放たれた言葉には憎悪のようなものがあった。まどかを危険に晒した2人を呪うかのように。

 

「……それで、最後に遺したい言葉でもあるかしら?」

「くっそ……!」

 

ユウリは歯ぎしりしたが、武器が奪われていては抵抗する間もない。と、そこに雅彦の声が聞こえてきた。

 

「邪魔、すんじゃねぇよ……! グッ!」

 

皆が振り返ると、そこにはヨロヨロと立ち上がろうとする雅彦の姿が。よく見ると、ドライバーにはめられているディスピアゴーストアイコンが黒ずんでいるのが見えた。

 

「! いけない! 彼のアイコンが!」

「ジュゥベえ!」

「わかってらい!」

 

サキの叫びを受けてジュゥベえやアラタ達が雅彦に駆け寄ろうとしたが、雅彦はそれを拒むかのようにガンガンロッドを一振りして、アラタ達を吹き飛ばした。

 

「テメェらの助けなんか、いらない……! 俺は、絶望の仮面ライダー……! このまま誰も殺せず仕舞いになるんなら、いっそここで……!」

「な、何を……⁉︎」

 

隼人が驚いていると、雅彦のアイコンが更に穢れを増した。それを見ていたニコが無表情ながらも焦った口調になって呟いた。

 

「マズいね。このままだと、ユウリと雅彦のソウルジェムやアイコンが孵る」

「ど、どういう事……⁉︎」

 

ただ1人、状況が把握出来ていないかずみはタケル達を見回していた。このままでは、ユウリと雅彦、2人が魔女に変貌してタケル達に襲いかかる。ほむらとマコトも、もう間に合わないと思ったのか、武器を下ろした。

 

「お前ら、全員道連れダ……!」

 

そう叫んで雅彦はレバーに手をかけた。魔法を繰り出して、魔力を消費する事で、アイコンに穢れを貯めて魔女を生み出すつもりか。そう思った一同は身構えた。

 

「そんな結末、認めるかよ!」

 

だが、タケルだけは皆と違って駆け出して、雅彦にタックルして彼を押さえつけた。一度はレバーから手を離した雅彦だが、再度レバーに手を置こうとする。それをタケルが見逃すはずもなく、羽交い締めにして、魔法を使わせないようにした。

 

「くっ! 離せ! 離せよ!」

「そんな事できるかよ! これ以上戦ったら、お前もユウリも……!」

「それでも、それでも……! あいつらだけは絶望させねぇといけねぇんだ! 俺達から全てを奪ったあいつらだけは、絶対に許せねぇんだぁ……! あいつらをブッ殺せるなら、こんな体なんて……!」

「そんな事で、自分の命を散らせるつもりかよ! ふざけんな! 俺はもう、誰にも絶望してほしくないんだ! まどかやアラタ達もそうだし、お前やユウリだって同じだ!」

「「……!」」

 

タケルから放たれた言葉に、ユウリと雅彦は言葉を失う。

 

「だから……! だから、俺は絶対に見捨てない! 絶望に打ちひしがれてる奴がいるなら、何度でも助ける! 俺は最後まで戦ってやるって決めたんだ!」

 

タケルがそう叫んだその時だった。タケルの体内からピンクとオレンジのラインが入ったアイコンが現れて、宙を舞い、光り始めた。

 

「えっ、何⁉︎」

「アイコンが……!」

「これってさやかの時と同じ……!」

「って事はまた……⁉︎」

 

さやか、誠司、上条、そしてプレイアデス星団やジュゥベえは初めて見る光景に戸惑っている。それ以外のメンバーはさやかが魔女化しかけた時の事を思い返していた。ほむらとマコトも、目の前の現象に驚きを隠せなかった。

 

「これは……!」

「何だ、あのアイコンは……!」

 

すると、光がその場にいた、ユウリと雅彦を除く全員を包み込み、ソウルジェムとアイコンが輝くと同時に、一同が声を出す間も無く吸い込まれていった。後に残ったのは、意識を失ったかのように倒れこみ、変身が解けたユウリと雅彦。そして彼らのソウルジェムやアイコンだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一同が目を覚ますと、そこは先ほどまでユウリ達と死闘を繰り広げていたホールと似たような造りの空間だった。

 

「ど、どこなの、ここ……?」

 

里美が不安げな声を出す中、隼人がそれに答えた。

 

「前にさやかが魔女化しかけた時と同じ現象が起きた事を考えると、おそらくここはユウリと雅彦の2人のソウルジェムやアイコンの中に出来た結界だ。ただ……」

「えぇ。2人分の結界が出来ているからか、空気が重苦しいわね……」

「ソウルジェムやアイコンの中に……」

 

ほむらが信じられないといった表情を浮かべて周りを見渡している。続いてサキが質問した。

 

「それにしても、さっきのアイコンは何だ? あんな機能のアイコンは初めて見たぞ」

「そいつはオイラも聞きたいな」

 

ジュゥベえも興味深げな反応を示している。

 

「このアイコンの事は……。実は俺もよく分かってません。ただ、隼人さんが言ってたみたいにさやかが魔女化しそうになった時に、このアイコンのおかげでさやかの中の魔女をやっつけれたのも事実なんです。もしかしたら、今回もその類いかも……」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

タケルが呟いていると、かずみが怪訝な顔をした。

 

「さっきから言ってる事全然分かんない! さやかが魔女になりかけたって、どういう事なの⁉︎ だって魔女は……!」

「えっと、それは……」

 

さやかがオロオロしながら説明しようとした時だった。

突然、全員の背後に何本もの巨大な十字架が地面を突き破って飛び出てきたのだ。

 

「なっ……⁉︎」

「しまった……!」

 

続けて、タケル達の足元に棘のついた蔦が出てきて、一人一人を縛り上げると、持ち上げられて、十字架に括られてしまった。

 

「えっ、何これ⁉︎」

「い、痛ぇ! 無理やり外せねぇぞこれ!」

「ミスった……! もう魔女が来てたのか!」

「えっ⁉︎」

 

更に地面の底から現れたのは、2体の巨大な影だった。一体は心臓のような姿で、ツインテールのような鞭がついている。もう一体はギョロリと不気味に動かしている3つの目と、両手にある3本の鋭いかぎ爪が特徴的な姿だった。どちらにも共通して言えるのは、この世のものとは思えない、悍ましい姿をしている事にある。それに当てはまる存在といえば、1つしかない。

 

「どう、して……⁉︎」

 

かずみが青ざめた表情で呟いた。

 

「どうしてソウルジェムやアイコンの中に、魔女がいるの⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜心臓の魔女、ニー・ブリューエン・ヘルツェン〜

 

〜自己を否定する彼女を癒そうとする者には、鞭が振るわれる事になるだろう〜

 

〜復讐の魔女、リベンダー〜

 

〜彼女が抱える憎しみの闇は深く、それを阻害する者は死の制裁を受ける事になる〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、タケル達の体にまとわりついていた鞭が一斉に動き出して、全身を縛り上げて、握りつぶすかのように締め上げた。

 

『う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

全員がその痛みに耐えきれず、絶叫した。

意識が薄れていく中、タケル達の脳裏に奇妙な光景が流れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいたのは、点滴をつけてベッドに寝転んでいる少女と、その背中を見つめる、ユウリに似た少女。そしてその傍らで悲しげな表情を浮かべている少年だった……。

 




もう直ぐ夏休みが終わっちゃうなぁ……、と思うと、また勉学に忙しくなって小説投稿が遅れちゃいそうで不安です。なるべく頑張って時間を見つけて執筆していきますので応援よろしくお願いいたします。

さて、次回はユウリと雅彦の過去が明らかになります。

次回もお楽しみに。

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