魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

今話は割と原作から外れている感が強いです。

それから、先日「君の名は。」を観てきました! とっても良かったです! 凄く見応えのあるシーンばかりなので、まだ観てない皆さんは、時間が空いた時にも是非!


73. 精一杯生きてほしいんだ

「……はっ!」

 

不意に意識を取り戻したタケルは、しばらく目を見開いていた。目の前で踊るように動いている2体の魔女を見据えながら、タケルは呟いた。

 

「今のが、雅彦と、ユウリ……いや、あいりの記憶……?」

「い、今のは一体……」

 

ふと隣を見ると、サキが呆然とした表情で冷や汗をかいていた。見れば、他のメンバーも似たような表情を浮かべている。どうやらこの場にいる全員が、脳内に2人の記憶が流れ込んだようだ。

 

「こ、これが、あいつらが契約した理由だったのか……」

「か、悲しすぎます……!」

 

誰もが、大切な親友であり、愛した者の死という悲惨な過去を知って、目を背けたがっていた。

が、そんな彼らに、無慈悲にも魔女達が容赦なく痛めつけてきた。タケル達を縛っていた棘が、更に締め上げてきたのだ。

 

「や、やめてあいり、雅彦! 私、あなた達と……!」

 

だが、必死に説得するかずみの言葉は最後まで伝えきれなかった。心臓の魔女がそれよりも早く仕掛けて、棘がかずみを貫いたからだ。

 

「か、かずみ!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

あまりにも酷い光景に、アラタは叫び、まどかは悲鳴をあげた。

 

「ま、マズい! 起きるんだかずみ!」

「かずみ! ……は!」

 

カオルが前方を見ると、絶望の魔女が鋭い鉤爪を振り上げたのが見えた。

 

「! まさか、あれで引き裂くつもりか⁉︎」

「く、くそ!」

「かっ……!」

 

皆が必死に手足をばたつかせるが、縛る力が強く、簡単には抜け出せない。そうこうしている間にも、絶望の魔女は鉤爪を振り下ろし、かずみの顔面に直撃した。

 

『かずみぃぃぃぃぃ!』

『かずみちゃぁぁぁぁん!』

「か、かずみ殿ぉぉぉ!」

 

血しぶきが飛び散り、近くにいた何人かの顔に降り注ぎ、視界が遮られた。

 

「うぐっ……!」

「うっ……!」

「か、かずみちゃ……!」

 

里美が顔を大きく振って血を振り払いながらかずみの名前を呼ぼうとした時、ムシャ、という奇妙な音が聞こえてきた。

 

「……え?」

 

他のメンバーもその音を聞いて一斉にかずみの方に向いた。そして、目撃してしまったのだ。

かずみが口で鉤爪を咥え、大きな音を立てながら咀嚼している姿を。

 

「ひっ……⁉︎」

「な、何……⁉︎」

 

里美は怯え、ゲンヤが困惑した口調で呟いていると、かずみが鉤爪のついた手を引きちぎり、そこから血が噴き出た。絶望の魔女がのたうち回っている間に、かずみは口に残っていた血を吐き出した。その瞳からは獰猛な獣を連想させており、タケル達は一瞬、目の前にいる少女が本当にかずみなのかと疑ってしまうほどだった。

次に心臓の魔女が再び棘をふるってきたが、今度はそれを左手で掴むと、何かを流し込んだかのように、掴まれた棘から本体に向かって変形し始めた。心臓の魔女が悲鳴をあげながら棘をめちゃくちゃに振り回していると、偶然にもその棘が、タケルとまどか、そしてアラタを縛っていた十字架の根本に命中して、3人は自由の身となった。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「まどか!」

 

慌ててタケルは落下していくまどかをキャッチして、安全に床に降ろした。それから、縛られている他のメンバーに声をかけた。

 

「今助けます! もう少し……」

「ぐがぁぁぁぁぁぁっ!」

 

だが、タケルの言葉を遮るかのようにかずみが咆哮して、両手両足を獣の足のように鋭く尖らせて、棘を引き裂き、自ら拘束を解いた。そしてそのまま2体の魔女に、唸り声と共に飛びかかろうとした。

が、すんでのところでかずみの耳につけられたソウルジェムがチリンと鳴り響き、一瞬だけかずみの中で何かが鼓動した後、勢いを失ったかのようにかずみはフラついて、地面に落下した。

 

「かずみ!」

 

アラタは慌ててかずみの落下地点に駆け寄って、地面に当たる前に抱き抱えた。その隙を見逃さずに、絶望の魔女がもう片方の鉤爪を振り下ろしてきた。

 

「2人とも逃げろ!」

 

廉が叫ぶが、もう遅い。アラタが身構えた時、

 

「はぁっ!」

 

タケルが前に出てサングラスラッシャーで受け止めて、そのまま弾き返した。

 

「大丈夫か!」

「助かったぜタケル!」

 

アラタは礼を言いながらかずみを降ろした。その時、かずみの目が元通りになっていて、そこから涙が溢れ出ている事に気付いた。

 

「かずみ、大丈夫か?」

「……あいりも、雅彦も」

 

かずみは呆然とした表情で2体の魔女を見上げた。

 

「ユウリの事が、本当に大好きだったんだね。友達が、好きな人がいなくなって、とっても悲しかったんだよね……」

 

その言葉は、おそらく2体の魔女の元となっているあいりと雅彦に向けられたものに違いない。心優しい彼女にとって、彼らの受けてきた痛みは彼女の心に深く突き刺さっていた。

アラタは、どうにかして彼女を慰めたかったが、目の前の脅威がそれを許さない。アラタはタケルに問いかけた。

 

「タケル。お前は前にも似たような事があったって言ってたよな。それで、どうすれば良いんだ」

「とにかく、この魔女達は、2人の心が生み出した魔女だ。こいつらが外に出る前に急いで倒せば、2人は助かる……!」

「なるほどな……」

「って言っても、2体も相手にしてたんじゃこっちが保たない。早く隼人さん達を解放してからじゃないと……」

 

2人が策を練っている間にも、魔女達は攻撃を仕掛けてきた。2人はかわしながら戦闘態勢に入った。

 

「とにかく今は、こいつらに攻撃して、弱ったところで助け出すしかない!」

「分かった!」

 

2人が先に狙いを定めたのは、心臓の魔女だった。絶望の魔女は片方の腕はかずみによってもげて、もう片方は深いダメージを負っている状態。ならばまだ体力の残っている心臓の魔女をターゲットに絞り込んだのだ。

2人が走りながら心臓の魔女を翻弄させていると、不意に心臓の魔女の左目の部分から何かがずり落ちてきた。それを見て一同は驚愕した。それはまさに先ほど脳内に流れてきた映像に出てきたユウリにそっくりだったからだ。その証拠に、首元にはスプーンのネックレスがつけられている。

 

「こいつは……!」

 

2人が驚いている間に、ユウリの姿をしたものは、手のひらに三角型の魔法陣を展開した。

 

「イル・トリアンゴロか!」

「そっちが仕掛けてくる前に……!」

 

アラタが拳を構えて先制攻撃を仕掛けようとした時だった。

 

「ダメ! 攻撃しちゃ、ダメ!」

 

唐突に聞こえたかずみの声を聞いて、アラタの動きが一瞬だけ鈍った。すると、そばにいた絶望の魔女が咆哮をあげて腕をめちゃくちゃに振り回した。

 

「ぐぁっ……!」

 

その勢いに呑まれて、アラタが吹き飛ばされてしまった。

 

「アラタ!」

 

タケルが前に踏み出そうとした時、かずみが駆け寄ってきて、その動きを止めた。

 

「なっ……! 離してくれよかずみ! 今がチャンスなのに……!」

「ダメ、だよ……! だってあれは、ユウリなんだよ……!」

「「!」」

 

タケルと、遠くから見守っていたまどかが、かずみの表情に気付いた。それは、本気で懇願している顔だった。

 

「ユウリを、もうこれ以上傷つけないで……! だってユウリは何も悪い事なんてしてない……! ただ、あいりを助けたくて……!」

「違う……! 違うんだかずみ! あれはユウリじゃない! あいりの心が創り出したものだ! 確かにユウリの形はしてるけど、お前だって知ってるはずだろ! ユウリはもう、いないんだ……!」

「でも、それでも……!」

 

それでも、ユウリの形をしている為に、傷つける事に抵抗があるのだろう。かずみは頑なに拒み続けた。

血を吐きながらも、攻撃をしようとするユウリを見て、かずみは叫んだ。

 

「! ユウリ、もう、やめてぇ!」

 

すると、ユウリの形をしたものの体を何かが貫いて、地面に倒れこんだ。

4人が振り返ると、サキが片手に鞭を持っているのが見えた。どうやらそれで攻撃したようだ。

 

「タケル! 今のうちにみんなを!」

「! はい!」

 

タケルはかずみを振りほどき、サングラスラッシャーで先ず、隼人とマミ、サキ、そしてさやかを解放した。そして解放された4人が、武器を用いて他のメンバーを縛っていた棘を千切った。

さやかがほむらとマコトを解放すると、早速ほむらが声をかけた。

 

「まさか、あなたに助けられる日が来るなんてね……」

「お互い様ってもんよ」

「それより、この空間も気になるところだが、これは一体……」

 

マコトも初めて見るこの現象に、戸惑っているようだ。が、以前はされる側だったさやかに明確な答えは返せなかった。

 

「いや、ごめん。あたしもこんな事は初めてでさ」

「まぁ、時間がある時にゆっくり聞かせてもらうわ。それよりも今は……」

「あいつをどうにかしなきゃね!」

 

さやかは魔女達を睨んで、前進した。

全員が自由になり、魔法少女や仮面ライダー達は一斉に攻撃を仕掛ける態勢に入った。それを見て、かずみは焦りを積もらせた。

 

「⁉︎ やめて! みんな何してるの⁉︎ ユウリもあいりも、雅彦も悪い子なんかじゃない! 友達の為に人生を差し出す子が、悪い子のはずがないよ!」

「分かってるよ、そんなこたぁ」

 

かずみにそう返事したのはみらいだった。かずみが言葉を詰まらせる中、みらいはゆっくりと振り返り、悲しげな表情を見せた。

 

「だからこそ、ここで殺さなきゃならないんだ。もうこれ以上、あいつらが苦しまないように」

「で、でも……!」

「かずみ」

 

不意に後方から話しかけてきたのは、アラタだった。

 

「アラタ……」

「あれは魔女だ。ユウリじゃない。そして……」

 

一旦間を置いたアラタは深呼吸をしてからその真実を告げた。

 

「俺達魔法少女や仮面ライダーの末路でもある」

「私達、の……」

 

かずみが呆然と呟く中、絶望の魔女はガムシャラに攻撃してきた。

 

『ガンガンペインター!』

『ガンガンジッテ!』

「ダァッ!」

「はぁっ!」

「うぉぉぉっ!」

 

前線にいたメンバーが拡散して、その隙にゲンヤと仁美、誠司が次々と斬りつけた。血しぶきが上がる中、アラタは簡略的ではあるが、説明を続けた。

 

「ソウルジェムやアイコンに穢れを溜め込みすぎると、孵化して俺達は魔女に変わる」

「そう。そいつが魔女の正体でもあるのさ」

 

そう呟いたのは、雅彦に吹き飛ばされて受けたダメージがようやく回復したジュゥベえだった。

 

「ジュゥベえ、あなた知ってたの……⁉︎」

「そりゃあそうさ。おいらだって好きでこいつらに手を貸してるわけじゃない。ちゃんとグリーフシードってもんを報酬としてくれるから魔女化を防いでやってんだよ」

 

告げられた真実に、かずみは言葉を失ってしまった。一段と戦闘が激しくなる中、かずみは恐る恐る尋ねた。

 

「ね、ねぇ……。魔女になった人達は元にもど……」

「無理ね」

 

そう返したのは、そばに立ったほむらだった。

 

「いくら魔法で姿を変えようと、魔女は魔女。不可逆なの。あぁなったら最後、殺す事しか手はない。私とマコトは今までずっと見てきたわ。何人もの魔法少女や仮面ライダーが絶望の果てに、魔女になっていく姿を」

 

それだけ告げると、マコトと共に再び戦地へと赴いた。

 

「とはいえ、今回のパターンは特別みたいだ。だから、今ここでこの魔女達を倒せば、少なくとも2人は助かるかもしれない……」

 

目の前の、ユウリを殺す事で、あいりと雅彦は助かる。そう理解したかずみだったが、3人の仲睦まじい様子を思い出したかずみは力が抜けた。

 

「で、出来ない……! 私がユウリを殺すなんて、そんなの、出来ない……!」

「分かっている」

 

そう呟いたのはサキだった。彼女はすでに覚悟を決めた表情で片手を振り上げている。

 

「これ以上、かずみの手は汚させない」

「まだ迷ってるってんなら、そこで黙って見てなよ。邪魔になるだけだし」

 

続けて杏子が、口こそ悪いが、かずみにそう言った。サキが雷撃でユウリを攻撃し、さらに杏子が槍で追撃を加えている姿を引きとめようにも、今のかずみにはその気力さえ失われてしまっていた。

 

「(私は、一体どうしたら……)」

 

かずみが、一斉に攻撃しようとしているプレイアデス星団のメンバーを見つめていると、その真下の地面が濡れているのが見えた。

かずみが口を開こうとすると、士道が呟いた。

 

「……ごめん、かずみちゃん。今の僕達には、これ以上彼らが誰かを傷つけないようにしてあげる事しか出来ないんです……。それしか、僕達には……」

「士道の言う通りさ」

 

続いて、カオルが普段よりも低い声で呟いた。

 

「こんな想いをするのは、全てを知ってる私達だけでいい。だから、私達だけで、終わらせてやるんだ……!」

「……!」

 

その一言に、カオルやこの場にいる魔法少女や仮面ライダー達が背負う覚悟にどれほどの重みがあるのか、感じ取ったような気がしたかずみは、迷いが薄れていく気がした。

 

「かずみ」

 

と、そこへアラタがもう一押しするかのように声をかけた。

 

「前に俺が言ってた事、覚えてるか? 迷う事があったら、自分の心に従えってな。……無理に戦えだなんて言わない。戦わずに見ているだけってのも選択肢の一つだ。それを踏まえた上で聞きたい。かずみはこれからどうするんだ?」

「私、は……」

 

かずみは今一度魔女の方に目を向けた。四方八方からの攻撃を受けて、絶望の魔女は今にも崩れ落ちそうだった。それを見ていた心臓の魔女が棘で絶望の魔女を包むかのように縛り上げ、千切れた棘の傷口から流れた血が意思を持って動き出し、絶望の魔女を覆った。それに伴いユウリの姿をしたものが変形し始めて、結果的にそれはユウリとは程遠い異形と化した。ユウリの腕は鋭い鉤爪へと変わり、苦しげにのたうち回って、ガムシャラに腕を振り回して、戦っているさやか達を拒んでいる。

早く手を打たなければ、あいりも雅彦も危ない。そう思いながら、アラタはタケルに尋ねた。

 

「今更聞くまでもないけどさ。タケル、お前はどうする?」

「決まってるよ」

 

タケルは即答し、こう告げた。

 

「俺達はたった今、ユウリが受けた苦しみ、そしてあいりと雅彦が受けた悲しみがどういったものかを知った。だからこそ、真実を知った俺達には、その想いを受け止めて、応えてやる必要がある!」

「! 想いに、応える……!」

 

タケルの言葉を聞いて、かずみはハッとした。

そして理解したのだ。今の自分に出来る事は何かを。かずみはゆっくり立ち上がりながら、杖を握りしめた。アラタを除くプレイアデス星団のメンバーは、その様子に驚いていた。

 

「か、かずみ……!」

「私はもう、傍観者なんかじゃない。ユウリの事は生き返らせられない。でも、あいりと雅彦だけは、私達が絶対に助けてみせる!」

「かずみ……」

「だからお願い! 私と一緒に戦って!」

 

かずみの言葉を受けて、一同は黙り込んだが、マミが強く頷いて言った。

 

「分かったわ! 私達で隙を作るから、そうしたら、あなた達の想いを全部乗せて、フィナーレを決めなさい!」

「「「はい!」」」

 

かずみ、アラタ、タケルは強く頷き返したのを見て、マミはさやか達に向かって叫んだ。

 

「さぁ、行くわよみんな!」

「「「「「「はい!」」」」」」

「「おぉ!」」

「……私達も、やろう!」

「……あぁ!」

 

プレイアデス星団達も意を決して頷き、攻撃を再開した。どれだけ体を取り込んで強化された魔女といえど、何人もの魔法少女や仮面ライダーの団結には敵わない。次第に魔女の方が押され始めた。

後方の3人は攻撃態勢に入るが、かずみは未だに体の震えが止まらない。決意したとはいえ、本能が拒み続けている。すると、かずみの腕を優しく握る者がいた。まどかだった。

 

「私が出来るのは、応援しかないけど、忘れないで。私は絶対にみんなのそばを離れない。私も戦うよ」

「まどか……! ありがとう」

 

かずみは泣きそうになりながらも涙をグッと堪えて、杖を魔女に向けた。

 

「今だ!」

 

魔女がよろめいて隙が生じたタイミングで龍が叫ぶと、3人は頷き、アクションを起こした。

 

『闘魂ダイカイガン! ブースト!』

『ダイテンガン! ネクロム!』

 

タケルとアラタの右足にエネルギーが溜まり、かずみも杖の先端にエネルギーをチャージし始めた。魔女は抵抗しようと体を動かすが、すかさず魔法少女達が魔法を駆使して魔女を拘束する。

 

「「はぁぁぁぁぁぁっ!」」

『オメガドライブ!』

『オメガウルオウド!』

 

両者は飛び上がり、右足を突き出したところで、

 

「リーミティ・エステールニ……!」

 

杖から光線が放たれ、魔女に直撃した。魔女が小声で何かを呟いたように見えたが、それを掻き消すかのようにそのすぐ後に、2人のキックが炸裂し、ボロボロになった体を貫いた。ぽっかりと穴が開き、崩れ落ちる寸前に全身が輝いて、光が辺りを包み込んだ。

 

「「「「……!」」」」

 

その瞬間、タケル、まどか、アラタ、かずみの4人の意識は飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

かずみがハッと目を開けると、そこは魔女の結界のような不気味さが一切感じられない白い空間だった。隣にはタケル、まどか、アラタが困惑した表情で佇んでいた。よく見るとかずみ自身やライダー達の変身が解けていた。

 

「どこ、ここ……?」

「わ、分かんないよ……」

 

4人が辺りを見渡していた時だった。

 

「! あれは……」

 

タケルが指さした先には、周りとは色の違う光が収束していた。やがてそれは形となり、見覚えのある人物に変化した。

 

「ユウリ……!」

 

それは、金髪のツインテール少女……ユウリそのものだった。

 

「どうしてユウリが……?」

「そのアイコンのおかげさ」

 

ユウリが指さしたのは、タケルの上空。そこにはピンクとオレンジのアイコンが浮遊していた。

 

「そのアイコンがあいりの中で眠っていたあたしに呼びかけたのさ。だから、こうして言葉をかわす事が出来る」

「え、ならその体は……」

「今のあたしは、あいりの心が生み出した存在。実体の有無はあんた達も知っての通りだ」

「じゃあ、やっぱりユウリはもう……」

 

ユウリは静かに頷く。

 

「あたしは、あいりが死んでいく事に納得がいかなかった。子供の頃からあたしを雅彦と一緒に支えてくれた友達が、病気で目の前から消えていなくなる事が。……だから、お願いしたんだ。あいりの病気を治してほしい。でも、それだけじゃあ飽き足りなかったんだ。この力で、多くの難病に苦しむ子達を救う事に活用してこうとした。結局、自分自身の管理が怠って、魔女に成り代わっちゃったけどね」

 

ユウリは苦笑交じりにそう告げるが、4人は決して笑う事はなかった。やがて、まどかが声をかけた。

 

「……ユウリちゃんは、後悔とか、無かったの?」

「後悔は……。まぁ、あたし1人の命で、色んな人達が明日も生きられたって思えば、そんなに気にしてないさ。ただ一つだけあるとしたら……」

「あるとしたら……?」

「……みんなと一緒に、バケツパフェを食べれなかった事、かな」

 

ユウリは虚空を見上げながらそう呟いた。それは、叶えられなかった約束。たった一度だけ破ってしまった誓い。

いてもたってもいられなくなったかずみは、ユウリに抱きついた。そして涙を流しながら呟いた。

 

「ユウリ、辛かったよね……! 一緒に美味しいものが食べられなくて、とっても……!」

「……まぁ、ね」

 

ユウリは優しくかずみを撫でた。

すると、ユウリの手が薄っすらと消えていくのが確認できた。

 

「! ユウリ、それ……!」

「……そろそろ限界みたいだな」

 

ユウリは自分の手のひらを見て呟いた。

 

「いや……! ユウリ! お別れなんて、そんな……!」

「しょうがないさ。あたしはもう死んでるんだ。いつだって別れの時ぐらい来るよ」

「……あぁ、分かるよ、その気持ち」

 

タケルがそう呟いたのは、幼少期の父の死を間近で見ていたからなのだろう。それから、ユウリは4人に微笑んだ。

 

「ありがとう。あんた達があいりと雅彦を助けてくれたおかげで、あたしも満足してる。もう悔いはないさ」

「ユウリ……!」

 

体が粒子となって徐々に消えていき、いよいよ別れの時が近づいた。ユウリは首からかけていたスプーンのネックレスを外して、かずみに握らせた。

 

「2人に会ったら伝えておいて。これからも、美味しいものたくさん食べて、生き続けろって」

 

そして輪郭は薄れ、顔だけが残った状態で、ユウリは笑みを浮かべて言った。

 

「2人には、精一杯生きてほしいんだ」

 

ありがとう……、と呟いたのを最後に、ユウリは4人の視界から消えた。かずみがネックレスをギュッと握りしめて、震えながら強く頷くと、4人は再び意識を失った。

 

 

 




という訳で、最後に本物のユウリを登場させました。

次回もお楽しみに。
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