魔法少女まどか☆ゴースト 〜命を紡ぐ物語〜   作:スターダストライダー

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お待たせしました。

今回でユウリと雅彦との激戦編は完結します。


74. こんなに美味いのに、食べられなかったのかよ……!

「……ケル、タケル!」

「……あ?」

「良かった! 目が覚めました!」

 

誰かに揺さぶられて起きたタケルの耳に、晶の声が聞こえてきた。目を開けると、そこは白い空間ではなく、最初にあいり達と戦ったあすなろドームの中だった。そばには揺さぶった張本人である星斗がおり、周りを見渡すと、同じようにまどかとアラタ、かずみも起こされていた。

その奥にはユウリの姿をしたあいりと雅彦が依然として目を閉じたままだった。

 

「! あいつらは、大丈夫だったのか……⁉︎」

「心配ないわ。さっき確認したけど、どちらも浄化されてるわ」

 

そう言ってマミが彼らの心臓であるソウルジェムとアイコンを見せて、2人のそばに置いた。それが合図になったのか、2人は目を開けた。

 

「! あいり! 雅彦!」

 

かずみが声をかけて無事を確認した。

2人はゆっくりと上半身だけ起こして、自身の両手を見て驚いていた。

 

「あ、あたしは、どうして……」

「このアイコンが、お前らを助けようとしたんだ」

 

そう言ってタケルはピンクとオレンジのアイコンを2人に見せた。

 

「このアイコンには、どうやら他人のソウルジェムやアイコンの中に入り込める力があるらしいんだ。何でそんな力があるのかは分からないけどな」

「……そいつで俺達を助けたってのか。どこまでもお人好しな奴だ……」

 

雅彦は目線を外して嫌味を含んだ言葉を返した。

すると、あいりの右手に何かを握っているのが見えた。それを見て一同は緊迫した。彼女が握っていたのはリベンジャー。つまり、今一度武器を持って戦おうとしているのだ。

 

「おい! もうよせ! 勝負はついたんだ! これ以上は……!」

「黙れよ! ……その名前であたしを呼んでるって事は、お前らだって見たはずだ。あいりだった頃のあたしと雅彦が何を見てきたのかを……!」

 

知らないはずがない。彼らはあいりが生み出すはずだった魔女からの攻撃を受けて、その過去の記憶の断片を目撃した。それは、あまりにも悲しすぎる現実と、煮え滾り続けていた復讐心が、2人を豹変させてしまった事。

 

「あたし達は、その時から、何が何でもお前らだけは殺すと誓った……! それをユウリが望んでいなくても、あたしらから大切なものを奪ったお前らだけは、この手で必ず……!」

 

あいりが腕を伸ばして銃口をタケル達に向けようとした時だった。

 

「ダメ!」

 

一番標的にされるであろうかずみが前に飛び出して、あいりを抱きしめた。

 

「なっ……⁉︎」

 

あいりもとっさの事で反応できず、一瞬だけフリーズしてしまった。が、すぐにかずみを引き剥がそうと抵抗した。

 

「は、離せ……!」

「嫌! だってユウリと約束したんだもん! 2人を助けて、それから……! 友達になるって!」

「⁉︎ ユウリ、が……! そんなデタラメ……!」

 

雅彦がかずみに飛びかかろうとしたが、アラタがそれを止めた。

 

「本当なんだ! 俺とタケル、それけらまどかも見てたからな! あいつも、これ以上お前らに絶望してほしくないって、生きていてほしいって……!」

「!」

 

アラタに続いて、タケルも声をかけた。

 

「俺も10年前に、父さんが理由も分からず死んで、凄いショックだった。俺に色んな事を教えてくれた父さんが、突然いなくなった。お前らからユウリがいなくなったように、俺も、あの時は寂しかった」

「だったら俺達の気持ちだって分かるはずだ……!」

「でも俺は、周りの人達が支えてくれたおかげでここにいられる! 1人じゃ潰れそうになってた俺を、助けてくれた……! その時の恩義があって、仮面ライダーとして、2人を救う事が出来た!」

 

タケルは一瞬だけ目線をまどかに向けて言った。タケルの心の支えになったのは、母親以上にまどかが何も言わずともそばにいてくれた事だった。母性に満ちた彼女がいてくれたから、タケルは強くなれた。彼はそう言っているのだ。

それを聞いて、雅彦は力が抜けたように両手を地面につけて、体を震わせながら呟いた。

 

「俺にも、お前らみたいな奴らがいたら、こんな苦しい事ばっかに囚われる事は無かっていうのかよ……? もっと早く、お前らみたいな奴を作っていれば……?」

「それは今からでも遅くはない。俺だって2人の気持ちはよく分かる。でも復讐ばかりにこだわってちゃダメなんだよ! その怒りは、本当の敵と向き合う時にとっておくんだ!」

「本当の、敵……!」

「それまでは、俺達がついてる……! もう憎しみだけで戦うのは終わりにしよう……!」

「……」

 

それっきり、雅彦は黙り込んだ。それを見たあいりは叫んだ。

 

「! 雅彦、お前……!」

 

裏切るつもりなのか。そう叫ぼうとしたあいりだが、かずみがそうさせなかった。あいりの目の前に、ユウリから託された銀色のスプーンのネックレスを見せつけられたからだ。

 

「……辛かったよね。魔法少女や仮面ライダーの事を全部知って、それでユウリが死んじゃって……! でも辛かったのは、2人だけじゃない。アラタ達だってそうだもん……! 知らなかったのは、私だけ……」

 

その瞳から大粒の涙を流しながら、あいりの顔をしっかりと見据えて叫んだ。

 

「だったら今度からは、私も、一緒に、背負うから……!」

 

そう言って再び抱きしめるかずみ。あいりは目を見開いたまま、リベンジャーを持つ右手を動かして、銃口をかずみのこめかみに当てようとした。だが、なぜか右手は震えるばかりで、そこから動く事は敵わなかった。

 

「……んで、何で……! この距離なら、絶対に殺れる、はずなのに、何で、だよぉ……!」

 

あいりの目から、次第に大きな水滴が流れ落ち、やがてそれは川の流れのように伝い続けた。

 

「何で、殺そうって、思えないんだぁ……! あたしは、どうしてぇ! う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

堪えきれずに泣き崩れたあいりを、同じように泣きながら抱きしめるかずみ。その光景に、一同は胸の奥が意味もなく痛み、中には涙を流す者もいた。

ただ、ほむらとマコトだけは無表情のままそっとしており、感情すら持ち得ないジュゥベえはなんら興味がなさそうな表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、一同はあすなろドームを後にして、それぞれの街や家へ帰ろうとした。見滝原組とプレイアデス星団に加えて、そこにはあいりと雅彦もいた。が、その表情からはあらゆる感情が抜け落ちているように見える。ちなみにほむらとマコトはあいりが泣き止んだ頃にはすでに消えていた。

星一つ見えない今宵の夜空の下を歩く一同だが、ここで十字路にたどり着き、解散する事となった。

 

「それじゃあ、また何かあったら連絡してね」

「あぁ、そっちもそのつもりでな」

「……雅彦とあいりはどうすんだ?」

「それは……」

 

誠司が質問すると、アラタが声をかけた。

 

「なら、ちょっとついてきてくれるか? かずみもよかったら……」

「? 良いけど」

「なぁ、俺もついていって良いか?」

「私も……」

 

と、今度はタケルとまどかが手を挙げた。2人もあいりと雅彦を放っておけないと思い、もうしばらくそばについてあげる事にしたのだ。

 

「? 2人もか? まぁ良いけど」

「大丈夫なの?」

「うん。明日は学校もお休みだから、多分大丈夫」

「そうだったな。んじゃ行くか」

 

そう言ってアラタを先頭にかずみ、タケル、まどか、あいり、雅彦は一かたまりになって歩いていった。他の一同はそのまま解散し、家路についた。

しばらく歩いていると、タケル達の目の前に一軒の飲食店が現れた。

 

「さ、着いたぞ」

「ここが……?」

 

5人が呆然としていると、店の扉が開いて、従業員らしき人影が見えた。どうやら閉店する直前だったらしい。だがそれ以上に、5人は現れた人物にアッと表情を変えた。そしてその店員も6人……主にタケルやまどか、アラタ、かずみの方を見て驚いた表情を浮かべた。

 

「……かずみ? それに君達は……」

「立花さん?」

 

それはかつて、かずみと初めて対面した際に関わった人物であり、あいりや雅彦にとって、かずみを詰めたトランクを入れ替えさせられてしまった因縁の相手でもある、立花だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無理にお願いをして許可をもらい、店に入った一同はすでに客のいなくなったテーブルを囲んでいた。立花はアラタが皆に内緒で注文したものを作るために、厨房にいた。あいりと雅彦は相変わらず俯いており、アラタを除く他の3人は店内を見回していた。不意にかずみが質問をした。

 

「ねぇアラタ。どうしてここに……?」

「あの事件があった後、居所を個人的に調べてたのさ。いつかはかずみにも教えとこうかなって思ってたんだけど、タイミングが合わなくてな。……ただ、今回はちょうど良いかもって思って」

 

そう呟くアラタの視線は、あいりと雅彦に向けられていた事に、誰も気付かなかった。

しばらくして、立花が料理を持って現れた。

 

「お待たせしました」

 

そう言って立花は料理をテーブルの中央に置いた。それを見た5人は目を見開いた。立花が置いたのは、少し大きめのバケツであり、中にはたくさんのフルーツが盛り付けられており、その下には黄色いジェル状の食べ物が見えている。皆がその大きさに言葉が出ない中、立花は料理名を言った。

 

「バケツパフェです」

 

立花が作ったその料理の名を、あいりと雅彦は一瞬たりとも忘れた事は無い。かつて雑誌でその存在を知り、いつかユウリを含む3人で食べようと約束した料理が、今目の前に現れたのだ。

その2人の様子を伺いながら、かずみが立花に話しかけた。

 

「そういえば立花さん。新しいお店始めたんだね」

「あぁ。オーナーと知り合いでな。店ごと任された」

「良かったですね」

「……なぁ、食べていいか?」

「あ、うん。いいよ」

 

あいりがそう聞いてきたので、かずみは頷いた。

 

「「……いただきます」」

 

2人は早速スプーンですくって口に入れた。途端に口いっぱいに程よい甘みが広がった。

 

「……美味い!」

「あぁ……!」

 

それはタケル達も初めて見る、狂気に満ちていた時の笑みとは違った、本当に美味しいものを食べた時に出る笑みだった。

2人の食べる姿に催促されて、他の4人も少しずつ摘みながら食べた。

 

「うん、美味しい!」

「この時間でも、全然イケるね」

 

4人も自然と笑みがこぼれる。すると、かずみが立花にこんな提案をしてきた。

 

「ねぇ! これお店の定番メニューにしようよ! きっと喜ぶ子、いるよ!」

 

だが、立花は両手でバッテンを作って首を横に振った。

 

「そいつはダメ。採算取れないからな」

「どうしても?」

「どうしても。それこそバケツパフェがボケツパフェだ」

「中々にうまいこと言いますね……」

 

タケルが苦笑していると、か細い声が聞こえてきた。

 

「そっか……。ちょっと残念」

「!」

「こんなに、美味いのに……」

 

声の主はあいりだった。よく見ると、彼女の目からは水滴が零れ落ちている。その表情は、先ほどまでの笑顔から一転して、悔しげな表情に変わっている。もしかしたら、ユウリがこのバケツパフェを食べて喜んだ時の事を想像したのかもしれない。そしてそれは雅彦も同様らしく、急にペースを上げてガツガツとパフェを貪り始めた。さすがの立花もその様子に訝しみ始めた。

 

「お、おい……」

「……あぁ、美味ぇ、美味ぇよ。こんなに美味いもん、まともに食ったの、久しぶりだ……。美味いのに、何で……!」

 

雅彦がパフェを口に運ぶ度に顔を動かしているが、時折その動作に合わせて、水滴が彼の顔から滴り落ちていた。終いには、スプーンを小刻みに震わせながら、

 

「……あいつは、こんなに美味いのに、食べられなかったのかよ……!」

「うぅ……! うぅ……!」

 

嗚咽交じりに呟くのと同時に、タケル達も肉眼で確認出来る程に、雅彦の目から涙が大量に流れていた。あいりも、泣きながら一生懸命にパフェを食べていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜一緒に食べたかった。〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう叶わないはずのその気持ちが、こうして行動に表れているのをタケル達は察した。かずみももらい泣きをしているが、その気持ちを払拭するために、2人と同じように食べ始めた。が、明らかにペースは落ちていた。

 

「(……今は、それで良いんだ。悔しい気持ちを抑えずに、自分に正直になれば良い。無理やりでも生きてご飯を食べてる方が、きっと新しい道に繋がるから)」

 

3人がパフェを食べている姿を見ながら、アラタは心の中で呟いている。彼があいりと雅彦を連れてきたのは、2人に前を向いて進んで欲しかったからだ。

 

「(……俺もいつか、かずみやタケル達につき続けてる嘘も、言えるように強くなるからさ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局バケツパフェのほとんどをあいりと雅彦で消化し、後はかずみが残った分を食べた。現在、その3人は泣き疲れたのか、長椅子に寝転がって立花がかけてくれた毛布に包まれながら目を閉じていた。あいりの手には、スプーンのネックレスが握られている。

残された4人は、立花が淹れた紅茶を口にしていた。

 

「立花さん。ありがとうございました。急に押しかけちゃって」

「気にするな。それより、何があった……?」

 

立花はあいりと雅彦に目を向けた。タケル達はどう説明しようか迷っていたが、それを察した立花はティーカップをテーブルに置いて立ち上がった。

 

「……無理に話さなくても良い。それなりの事情がありそうなのは間違いないからな」

「すいません……」

もう1人(・・・・)のお客さんも、よほどスイーツが好きだったんだよな……」

「……はい。でもその子は少し前に……」

「……」

 

深く息を吐いた立花はポケットからペンを取り出し、ホワイトボードに何かを書き始めた。

3人が気になっていたが、そのホワイトボードにはこう書かれた。

 

『新Menu 〜バケツパフェ〜 Seau Parfait』

 

「立花さん……!」

「今回だけの特別サービス」

「ありがとうございます……!」

 

3人は口々にお礼を言った。3人の脳裏には、明日の朝にかずみが喜んで立花の首元に抱きつく姿が容易に想像できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、3人はもう一度お礼を言ってからその場で解散した。かずみら3人はそのまま店に泊めさせる事にした。

時刻は午前3時を少し過ぎた頃。2人きりになったタケルとまどかは、家の近くに流れる小川をしばらく眺めていた。今夜はうまく眠れそうにないかもしれない。

 

「……でも、良かったんだよね。あいりちゃんも雅彦君も、誰もいなくならなくて」

「そうだな」

 

まどかの呟きにタケルはそう呟いた。その内心で、彼は静かに怒りが込み上がっていた。

対象はもちろん、彼らの人生を狂わせたであろう、キュゥべえ。

 

「(キュゥべえ……! 今回の件で確信した……! お前は俺達人類の敵……! みんなの命を無感情に操るお前なんかに、絶対負けないからな……!)」

 

夜空を見上げながら、改めてキュゥべえという脅威と真正面から戦う決意を固めるタケルであった。

 

 




やっぱり食べてる時が一番幸せですよね。

それにしても、今年の秋アニメは本当に凄そうなものが多いですね。WIXOSSにVivid、魔法少女育成計画など、ファンタジー且つシリアス系が強そうなアニメが多い気がします。

さて、かずマギ編も一区切りついたので、次回からもう一つのスピンオフ作品の中の人物を登場させます! それに際して、個人的な都合もある為、しばらく投稿は出来なくなりますが、何卒ご了承ください。

次回もお楽しみに。
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