第一話 出発
「心、そんなもの見てないで、速く行くぞ」
「あ、待って」
高いビルが立ち並び、道路には、エンジン音を鳴らし、排気ガスを撒き散らしながら進む車やバイクの音。その端に作られている、大き目に作られた歩道には、信号を待ち立ち止まる人。待ち合わせをしているのか、壁にもたれてケータイをいじっている人。目的地へと黙々と歩く人や話しながらの人。時々自転車がふらふらと人と人との間を抜けていく。時々ビル風が吹き、頬をなでる。デパートからは、人が出たり入ったりを繰り返していく。
「繋。何で飛んでいかないの?」
「う~ん、そr「ウソ。飛んでも見つからないでしょ。夢叶の能力を使えば」
繋と呼ばれた青年は、苦笑し、そうだなと答える。
「まぁ、ちょっと見たかったんだよ。この町をな」
「ふ~ん」
心と呼ばれた少女は、そっけない答えを返す。あまり興味は無いようだ。
繋と呼ばれた青年は、ハッキリ言って美青年だ。顔は整っており、身体は、余分な筋肉をつけることなく、引き締まっている。身長は日本人の平均的な身長ぐらいで、艶のある長い黒い髪を腰まで流し、背中の辺りで一括りにしている。外見から推察すると、大体十八前後の年齢に見える。美人な女性といわれてもおかしくは無い容姿の持ち主だ。
心と呼ばれた少女は全体的に華奢で小柄な身体。小さな小顔で整っており、きれいよりもかわいいが似合う十五前後くらいに見える少女だ。繋と同じ、艶のある黒い髪を腰まで伸ばし、括らずに流したままにしてある。
「ほら、はy「早くしないと駅に電車が来てしまうから、行くぞ。うん。分かっている」・・・人のセリフを横取りするな」
繋はそう言い、心の頭にチョップを入れる。当然力はあまり入っていない。心の口からは、「あぅっ」と声が漏れ出す。
「はぁ、その癖速く直した方がいいぞ。そうしなければ、向こうについてもまた嫌われるぞ」
「いい、別に。繋がいるならそれでいい」
良くない、繋は言い、またチョップを入れようとするが、今度は避けられる。心は、フッと小さく笑い、
「私に二度も同じ手は通じn」
と言いかけたとき、またしても頭にチョップを食らう。そのため、「はぅっ!」と心から声が漏れる。心は涙目になり、手刀を叩き落された頭をさする。
「う~。能力の使用は卑怯」
「なら、心も卑怯者の仲間だな」
そんなこんなの他愛も無い話をしながら足を進める。向かう場所はこの町の電車の駅である。
「ほら、こんなことしてないで、さっさと行くぞ」
繋は、そう言いながら心の手を取り、駅へと向かうべく人ごみの中に消えていった。
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ぼろぼろになった、石で出来ていた階段。その周辺は、多くの木々が生えている。木の世話をしている者もいないのか、何の考えも無しに枝が生えているため、木々の下は薄暗い。木と木の隙間を埋めるように、草やコケが大量に生えている。そのような場所を、繋と心は進んでいる。階段を一段一段ゆっくりと上り、もう最近ではあまり見なくなった自然をたっぷりと堪能している。
「こんな場所、あったんだ」
「そうだな。あまり見れなくなったもんな。こういう、人間の手が加わっていない場所は」
「なんだか、ちょっと懐かしい」
「そうだな。俺も懐かしく感じるよ。ここ百年ほどで、このような場所は急激に減っていったからな」
繋も心も、懐かしむような表情をする。そのように、物思いに耽っていると、階段の一番上まで上がってきたようだ。ここから先は、獣道のようになっている場所を進む。あたりは木や草ばかり。繋と心は無言で進む。少しの間進んでいくと、少し開けた場所に出る。そこにあるのは、赤い古びた鳥居。鳥居の真下には、小さな、三段程度しかない階段。階段の前には三つか四つほどある飛び石。その周りだけは草が生えていない。
そして、その小さな階段から続くのは、石畳。ところどころに草が隙間から生えている。
この石畳の終着点にあるのは、古びた神社だ。見た目からしても、誰かが住んでいるような形跡は見られず、手入れもされていないような、忘れられた神社である。
繋たちは、この神社の鳥居の前に二人並んで立つ。鳥居には、薄く見えずらいが、書かれている。
『博麗神社』と。
「さて、目的地に着いたわけだが、こりゃまた古い神社だな。まさかここまでとは思わなかった」
「うん。そうだね」
「まぁ、考えたところでどうでもいいことだがな」
そう繋は言うと、目を閉じた。すると、急に繋の身体に異変が起こる。全てが黒かった髪の毛は、黒と金の入り混じった色になり、それと同じような色をした、狐のような耳が生えてくる。何も変化が起きなくなると、目を開る。その瞳は、左の瞳は黒に対し、右の瞳は金色に染まっている。繋は、そのまま心に言う。
「さて、行くか」
「うん、行こう」
心は繋の手を握る。それを繋は、苦笑しながら握り返し、同時に一歩を踏み出し、鳥居を潜った。
その後、彼らは姿を消した・・・。