東方永命伝   作:璃蘭

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第九話 永久の命の製造者の願い

夢叶が実験材料として攫われてから三日が経つ。実験資料や参考書、さまざまな薬品などが置いてあった机の上に、この都市全体の地図を広げ、その上に格地域の縮尺を拡大した地図を置いている。もう調べた場所なのであろう場所には赤ペンで×印をしている。いなくなったその日、夢叶が通ったであろう道には青の蛍光ペンらしきもので色を塗っている。当の本人は、イスに座り、あれはだめ、ここは違う、ここは調べていないなどと思考を巡らせながら、机に広げた地図を険しい表情で眺めていた。

 目の下にクマができていたり、実験などそっちのけで捜索をするあたりから察するに、夢叶をどれだけ大切に思っていたのが分かる。まぁ、もしかしたら自分の実験結果をなんとしてでも取り戻そうと躍起になっているだけかもしれないが・・・。

 

 

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 永琳side

 

 夢叶がいなくなってから三日が過ぎた。夢叶がいなくなった日に通ったであろう道を調べ、その周辺にいる人たちに話を聞き、それらの情報を基にこの三日で移動できるだろう範囲を計算し、その計算を基に探し回った。私は、天才、鬼才などと呼ばれ、さまざまな薬を作ってきた。その薬を使い、多くの患者を救ってきた。そのためか、今ではかなりの地位や、いろいろなパイプを持っているため、いろいろな人に頼み込んで探してもらうことができた。

 

 しかし、今だ見つかっていない。その事実に胸が苦しくなり、大きな不安に苛まれた。なぜこれほど不安になるのか。それは、彼が不老不死だからだ。

 

                  不老不死

 

 これを欲するものは一般市民ではあまりいないだろう。ハッキリ言って嘘っぱち、眉唾物だ、本当にあるわけが無いなどと言い、相手にはしないだろう。もしなれたとしても、大半の人はなろうとはしないのではないだろうか。しかし、これが欲望にまみれた権力者や、知識欲の強い研究者。国をより良くするために不老不死を夢見る者などならば話はまったく逆の方向に向くだろう。このなかでもっとも永琳が恐れていることは、研究者に対してである。

 

 研究者にとって不老不死の身体を持つ人間というのは、ハッキリ言って、

                 『研究材料』

としか言いようが無い。とくに私のような薬物や、化学兵器などを作る者にとってはなんとしてでも手に入れたいものだろう。なぜ研究材料なのか。それは、

       壊れることが無いため、『人を使った人体実験』が、いつまでもできるからだ。鼠には一分もかからずに効果のあった毒薬だが、人間にはどれくらいの効果があるのかができたり、もしかしたら実際に動いている状態の脳の中を肉眼で、生で観察ができたりするのだ。

 

 不老不死は、ある者にとってはほしがったりするものだろう。もしかしたら一度は夢見たことがあるのかもしれない。しかし、ある者にとっては不幸を招くことしかないただの疫病だ。

 

 そして永琳は、このような事態を招いてしまうかもしれない薬を作ってしまったことに恐怖を覚えてしまった。国からの命令で不老不死の薬を作れなどと言われたときは、自分が一番研究したかったことができるなどと馬鹿なことを思ったが、いざ作ろうとしたとき、その薬を今のところの理論で作ろうとするならば、数百、数千という命を使用するという結論を出したとき、この依頼を断ろうともした。

 

 人をより長く、安定して、安全で、健康に、幸せにするために薬を、薬品を作っていたというのに、膨大な量の人の人生をつぶして、不老不死という、ハッキリ言えば人の健康に必要の無いものを作るなど誰ができるというのだろうか。確かに私はいろいろな薬を作ってきた。その過程で犠牲にしてきた命は数知れない。しかし、それができていたのは人を使っていないからだ。ほとんどが鼠だろうか。しかし、それでも、やはり多くの人を犠牲にしてまで、数人の欲を埋めるものを作りたくは無かった。

 

 しかし、ここでいきなり圧力をかけられた。作ろうとしなければ国から追い出すとまで言ってきたのだ。永琳は、弓をそれなりに扱える。国の外に放り出されても数週間程度なら生きていられるだろう。しかし、それは数週間なのであって、いつまでもということではない。妖怪が闊歩する国の外で、いつ襲ってくるか分からない状況の中で、疲労もたまっていき、体力も奪われていってしまうため、生き延びろというのがおかしな話である。

 

 結局、永琳は断りきれなかった。だれでも自分の命は惜しいものだ。そして、初の実験の被検体が、夢叶になったのだ。身寄りの無い子供や、お年寄り、どこからか誘拐してきたのか分からないが、多くの材料(薬草なども含む)を一つの錠剤に凝縮させ、不老不死の薬第一号として完成させ、それを飲ませた。

 

 実験は成功した。確かに不老不死になることに成功した。だが、その事実を夢叶に突きつけたとき、泣き叫び、元に戻してくれとすがり付いてきた。それに、薬の副作用なのか、記憶もかけてしまい、自分の親や友人の名前、顔、特徴、声などを忘れてしまっていたことに絶望していた。私は、そのとき大きな大きな後悔の念を抱いた。

 

(なぜ、こんなものを作ってしまったんだろう・・・)

 

 と・・・。

 

 永琳は怖かったのだ。夢叶が自分が想定した、『人体実験』という名の拷問を、精神改造を受けているのではないのかと。だから必死に探そうとした。そして、必死に神様に対して願った。なにも起きてませんように。なにもされてませんようにと。自分が作った、この不老不死の薬によって不幸に陥ってほしくなかったから・・・。

 

 

 

 

 

 そんな、永琳の願いは、数時間後に砕かれるはめになることを、このときの永琳はまだ知らない。

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