以上です...
見落とした誤字脱字があればすいません!
あ、以上じゃなかった...
「げっ!明日サイコパス診断あんじゃん!」
夜の廃棄区画へ肝試しに来ている学生がまるで恐怖を消すために右隣の友人に話しかける。二人の男は歩く速度は緩めず、手に持った小さなペンライトだけを頼りに奥へ進んで行く。
右隣にいた学生はふざけた口調で。
「おいおい。大丈夫かよこんな所来て〜?サイコパス濁っちゃうんじゃね?」
「大丈夫大丈夫。俺らの学校、そこまで厳しくないだろ?何せ昔の日本で言うなれば『不良』みたいな奴ばっかりだからな。クリアカラーは居ねーし」
「不良は言い過ぎだろ〜?」
二人は笑うタネも無い話をしながら無理に笑っていると、目の前に頑丈そうな鉄製の引扉が現れる。鍵はかかっていなく、少し開いている隙間からは異臭が漂う。
「何だこれ。中に生ゴミでも置いてあるのか?」
「生ゴミの臭いじゃねーな」
好奇心から二人がかりで扉を開いていく。軋む音が周りに反響して、轟音のような音とともに扉は開いていく。より開かれた扉の先の異臭が悪臭と化す。
学生二人は袖で鼻元を抑えながらも奥へと進む。
「なんだこの臭い!?意識が飛んじまいそうだ...!」
「流石にキツイなこれは...」
適当に照らしていたペンライトが一点を集中して止まる。それと同時に二人は絶叫を上げ、腰が抜けそうになりながらもその場から逃げ出した。
落とされたペンライトは二人の悲鳴が反響してまだ飛び交う室内で、完全に首が切断された豊久の死体を照らしていた。
ーーーーーーーーーー
『エリアストレス上昇警報。世田谷区下北沢B-8廃棄区画付近にて規定値超過サイコパスを計測。当直監視官は執行官を伴い、直ちに現場へ急行してください』
公安局内の館内放送が室内を駆け巡る。
それをきっかけに午前二時、月が美しく輝いている最中、公安局刑事課一係は警察車両が並ぶ地下駐車場に集う。皆が腰につけたドミネーターは緑色に光りながら公安局の刑事の象徴として輝いている。
目を擦る道咲は眠気を払いながらも猟犬の鋭い目つきで呟く。
「全く。奴が現れたって言われた翌日にゃあこれか。物騒な騒ぎだなぁ」
「うん」と桜木が返事をすると、そのままパトカーに乗り込みながら運転席に座り、前を見たまま口を開く。
「でも、その男がこのシビュラシステムの支配下にある日本で捕まらないのなら、昔の日本では今より捕まえられる確率は低かったと思う」
桜木はパトカーをオートドライブにすると、パトカーは自動で発進する。
パトカーが公安局を出た時、助手席に座っていた桐ヶ谷が目線を下に落としたまま、桜木に言う。
「いや、むしろ逆だろう。俺はこのシビュラシステムが支配する日本が好きじゃない。その腹いせか、文句かの判断は任せるが、どんな悪行を果たした奴でも潜在犯でなければ処刑する事はおろか、捕まえる事さえできない。今の社会じゃあ、奴を処分できない」
桐ヶ谷の目線はいつの間にか桜木に向いていた。
後部座席に座っている浪河が桐ヶ谷の話の数秒後、桐ヶ谷を見つめながら質問する。
「じゃあ、どうやって処分する気?私には何もできなかった...。ただ、二人の同僚が殺されるのを見ていただけだった...」
浪河はホルスターからドミネーターを引き抜くと、それを力一杯握りしめる。
「これはずっとアンダーラインの犯罪係数を測定してるだけだった...!あんな奴、本当は300越えてるのが普通なのに...!」
車内が一気に沈黙と化す。一分一秒がかなり長く感じるのは人間としての本能だろうか。しかし、それは仕方のない事だ。ここにいる誰もが理解している。現状、その男をどうこうする力は公安局にはない事を。
現在の段階ではまだ誰もその男、金城 夜斗の名前を知らない。手がかりさえ掴めていないのだ。
数秒後、感覚では数分後、流石にこのまま現場に到着するのはまずいと判断したのはやはり桜木だった。
桜木はオートドライブで運転する必要のないパトカーのハンドルを掴みながら。
「その...すいません。私の発言のせいで場の雰囲気を悪くしてしまって...」
妙に口ごもりながら謝罪する。
それを聞いた桐ヶ谷は鼻で笑うと、窓の外を見ながら。
「いや、悪いのは俺だ。これは俺の軽率な発言が招いた結果だ。謝罪すべきは俺の方だろう」
桜木は少し微笑みながら、桐ヶ谷の方を向いて言う。
「そうですよ!桐ヶ谷さんのせいですよ!全く。あんな発言するから!」
桐ヶ谷も微笑み、それを受け流す。後部座席の浪河は呆れたようなため息をつき、道咲は助手席の桐ヶ谷と運転席の桜木の肩に手をつき笑顔で言った。
「やっぱりこうでなくっちゃな!一係は!」
ーーーーーーーーーー
豊久 茂雄、殺害現場に公安局一係の刑事が死体の前に並んでいる。
酷い悪臭はドローンによって消されたが、周辺に飛び散った血は生々しく残っている。
桜木は切り落とされた首に近寄り、傷口を調べる。
「こんなに綺麗に切れるなんて...。経験者ね」と呟くように桜木。
そこに浪河は近寄り、切断された首の内部を調べると。
「これは少なくとも二回がかりで切断してる。」
そう言いつつ、食道辺りを指さしながら続ける。
「ここ、周りの肉、血管とかに比べてぐちゃぐちゃになってるでしょ」
道咲は浪河に近寄り、まじまじと傷口を見る。
「あー。確かに。ここだけ損傷が酷いなぁ」
道咲は頭を掻きながらそう答える。
切り落とされた首を調べている桜木、浪河、道咲とは別に、胴体を調べていた桐ヶ谷は豊久の右腕に注目する。そこにはめられていたのは多機能腕時計だった。腕時計の左上部で赤いランプが点滅している。これは残り電源が少ない事を表すものだろう。
桐ヶ谷が腕時計に触った瞬間、腕時計の録音機能のフォルダが開く。
これはあらかじめ死ぬと分かっていた豊久が仕掛けたものだろうと桐ヶ谷は察した。
「おい、お前らこれを聞いてくれ」
桐ヶ谷は三人に呼びかける。
『お前ら』という事は勿論、監視官である桜木も含めての事だ。この場合、『執行官のくせに偉そうな口を利くな』というのが一般の監視官の考え方だが、桐ヶ谷が元監視官であった事も含め、桜木はそこまで上下関係を気にしていない。その為、桜木は文句を言う事もなく、疑問に思う事もない。
桐ヶ谷は三人が集まった事を確認し、記録されていた音声を再生する。
ー「や、止めてくれ!金ならいくらでもやる!だから命だけは...!!」ー
ー地面を歩く音がするー
ー「君は世田谷区ホログラムデザイナーアートの社長、豊久 茂雄だね?僕は金城 夜斗。これで僕達、友達だね」ー
その声を聞いた瞬間、浪河が一気に青ざめ、慌てた素振りで音声を停止させる。
周りの刑事は皆疑問に思った。しかし、その疑問はすぐに晴れる事になる。
今までに見た事ない程怯えている浪河に、道咲は心配した口調で問いかける。
「お、い。どうし...」
と先を言いかけた時。浪河がそれを遮る。
「こいつ...!この男...!金城...。こいつが『悪意の代償事件』の...あの時、二人の同僚を殺したのもこいつよ...!!」
ーーーーーーーーーー
都会の月は物寂しい。地上の光によって本来の輝きを発揮できていない。否、人間が発揮させていないと言っても過言ではないだろう。
その進化しすぎたシステムは人間も街をも変えた。
「あんな事して良かったの?金城」
女優並みのスタイルの女が発した透き通る声が、風に消されながら空を漂う。
ここはある廃棄区画の近くにある七階建てのビルの屋上。
このビルも数日すれば建て壊され、廃棄区画の一部となるものだ。
金城はフェンスを乗り越え、一歩踏み出せば奈落の場に立つ。
金城は忙しく動くドローン、そしてホログラムや街頭によって照らされた眠らない街を不機嫌そうに見つめながら女の問いに答える。
「ああ。良いんだ。あれは僕からのプレゼントと言って良いだろう」
女も街を見つめ、微笑みながらまた問いかける。
「あれ、相当高そうだったけど?」
金城も不機嫌そうな顔を微笑み変え、女の問いに答える。
「まあ、構わないよ。腕時計なんてそこら辺に売っているからね。今頃聞いているかな?無能な公安局よ。悪意の代償は悪意のある人間がいる次第、消えない。その悪意が別の悪意を呼び、その悪意もまた、別の悪意を呼ぶ。僕はそれを食い止めているまで。完璧な世界を創る為に」
女は自分の髪をいじりながら、ふと過去の事を思い出し、それを口にする。
「あ、そういえばあの時、女性の方の監視官に会ったんでしょ?でも生き残ったのは二人だから...。もう一人には会わなかったの?」
金城は美しい顔立ちの美しい微笑みを絶やさず、興味深々の子供のように話しだす。
「あぁ、あの男の方かぁ。見ただけだったからなぁ。是非一度会ってみたいと思っているんだ。でも君は会ったことがあるんだろう?僕は君が羨ましいよ」
髪を整え終わった女は、まるで無邪気な子供を見るように微笑みながらその言葉に返す。
「彼、見た目以上に鋭い男よ?向こうから貴方に辿り着く事も十分にあり得るわ」
女は吐き捨てるように言うと、眠らない街を横目に非常階段からその場を後にした。
一人取り残された金城は、街の光で見えない星空を見上げながら、満面の笑みを浮かべた。
今回は退屈な回になってしまったでしょうか?
今のところ出してる話数は二話しかないから、まだそんな事を言うには早すぎるとは思いますけど...。
でも、こういう警察ドラマ系は『経過』が大事だと思っています。
まあ、偉そうに言える立場ではないですが...。