だが、今回は寝ずに済みました...。
良かったぁ!
では、第五話です!
「まったく〜。事件が無い日は無いのかね〜」
道咲が大きなあくびをしながら椅子にもたれかかりデスクに足を乗せている。
現在、一係は禾生に呼び出された桜木以外の執行官の面々がオフィスに残っている。
退屈そうな道咲を横目に、浪河は黙々と状況整理を行っている。立体ホログラムのキーボードから打ち出された文字が波のようにディスプレイを彩ってゆく。
一方、桐ヶ谷は左腕に装着された携帯情報端末で昨日の気翔の体内から排出された録音音声を聞いている。以前、豊久の腕時計から流れた男の声と声の波長を合わせている。そして、その波長が同じ事を確認すると一つため息をつきながら壁にかかった時計を眺める。
現在午前11時34分。もう少しで昼時という時、指を動かすだけの退屈な作業しのぎか、浪河は指の動きは止めずに道咲へ質問する。
「そういえば道咲って『大切なものは命をかけても守る』とか言ってるけど何か守ったことあるの?」
道咲デスクは浪河の後ろだ。つまり、背中を合わせて作業をするという事だ。
退屈そうな道咲は首を背もたれの上部で曲げ、顔を逆さにしながら浪河の背中を見る。
「あ?あ〜。あるよ。一回だけ」
その言葉に桐ヶ谷は道咲を見ながら呆れた声で言う。
「一回だけなのによく今まで言えてきたな...」
浪河はそのセリフに微笑する。笑われた道咲は勢いよく姿勢を整えると、後ろのデスクにいる二人を見ながら。
「いやいやいや!あれほど俺の人生でテンション上がった事はねーよ!聞いたらマジで驚くぜ!」
若干興奮気味で話す道咲に期待した浪河は「じゃあ聞かせてよ」と言うと、道咲は少し姿勢を楽にして話し出す。
「あれは俺が中三だった頃なんだけど、シューティングゲームって知ってる?あのバンバン撃つやつ。あれのせいで俺のサイコパスが規定値を超えて公安の人達が来たのよ。家に」
桐ヶ谷は最初退屈そうに聞いていたがその態度は一変した。
「お前...ゲームで潜在犯になったのかよ...」
「ま、まあな。まあ、それはいいとして。俺とそのゲームを公安局へ引き渡すって言うのよ。最初はふざけてんのかと思ったけど、あいつらガチで俺のゲーム盗って行こうとしたから、ちょっと抵抗したら三人来た内の二人を意識不明の重体にしちゃって...。まあ、その後あとから応援に来た奴らに取り押さえられちゃったんだけどね〜」
道咲の昔の楽しい思い出話を聞いた浪河はキーボードを打つ手を止める。
そして、呟くように言う。
「道咲と喧嘩したら殺されるわね...」
続くように「同感だ...」と桐ヶ谷。
そんな二人を見た道咲は手を一つ叩く。
「はい!嘘話は終わり〜!どうだった?騙された?ねえ、どうだった?」
道咲は二人を問い詰める。すると浪河はまたキーボード打ちながら。
「壮大なオチを期待してたけど、壮大過ぎて反応に困る嘘ね」
続いて桐ヶ谷は「嘘とは思えない嘘話だな」と評価。
二人の感想を聞いて満足した道咲は顎に手を当てながら小声で呟く。
「これ桜木監視官にも言ってみようかな...」
それを聞いた浪河が「やめなさい」と言ったと同時にオフィスの扉が開く。真っ先に反応したのは道咲だ。
「監視官様おっ帰りー!局長から説教だった?」
桜木はオフィスに入ると同時に「そんな訳ないでしょ。昨日の気翔の体内から出た録音音声についてよ」と言いながら一番奥にある自分のデスクへ向かう。
桜木は椅子にどっと座ると、一つため息をつきながら手元の資料を眺める。
それを見た浪河は桜木に「お疲れですね」と一言。
それを聞いた桜木は「最近いろんな事が起きすぎてね...」と吐き捨てる。
監視官の疲れを実感している二人を除いて、一人だけニンマリとした笑顔を見せる男がいる。
道咲 登。あの話をする気満々だ。
「そういえば監視官。俺が何で潜在犯になったのかというと...」
ーーーーーーーーーー
「気翔を使った計画は失敗ではない。例えあの場で気翔が起爆スイッチを押したとしてもこちらでは何もするつもりはなかった」
爽やかな金城の声が室内を漂う。
金城は今廃棄区画のアジトにいる。淹れたてのコーヒーを飲みながら向かいのソファに座っている美しい女性と話している。
「それってどういう事なの?」
女は金城の話を理解できていない。すると金城はさっきまで持っていたコーヒーカップを前方のテーブルへそっと置くと、足を組み直しながら手を組む。
「公安局の出方を見たのさ。彼らがどう出るか。つまり、すぐ殺すか状況を伺うか」
金城のその言葉に女は続く。
「で、結局殺した...と」
金城は一つため息をつく。またコーヒーカップを手にすると、コーヒーを少し口に含む。
「小型録音機に『愚かな公安局』と吹き込んでおいて良かったよ。彼らは愚か過ぎる...」
数秒の沈黙の後、女が話を切り出す。
「どうやって気翔の体に録音機を?」
金城は一瞬だけ目線を女へ移すと、いつもの微笑みで答える。
「この機器は君のサイコパスを隠してくれるって言ったらすぐに飲んでくれた」
女はクスッと笑うと金城に続く。
「そんなすぐに飲むなんて。素直過ぎる子ね。本当は街頭スキャナーをハッキングしたのは私なのに」
金城は微笑んだままコーヒーを口にする。そしてコーヒーカップをテーブルへ戻すと、一瞬真顔になる。
「彼は...簡単過ぎた...」
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午後2時を過ぎたところ。ようやく桜木と浪河の資料整理が終わる。
桜木は疲れから思いっきり伸びをすると、ふと思い出す。
「あ、道咲。二係の清宮さんが資料を整理して欲しいって連絡入ったよ」
ゲームをしていた道咲の顔が一瞬で桜木の顔へ移る。
「それって俺じゃないとダメっすか!?」
桜木はため息をつくと「ダメです」と言い放つ。
それを聞いた道咲は苦の顔をすると、独り言なのか桜木に言っているのか分からない視線と聞こえないような低い声で「え〜。なんで俺なんだよー。確かに李世さんとは親しいけど別に俺じゃなくたって...」と愚痴を漏らす道咲を浪河が細目で睨む。
「うっし!やる気出てきたー!!桜木監視官!二係に資料を取りに行っていいですか!?」
「どうぞ...」と桜木は蔑む目をしながら言う。
すると道咲はオフィスから勢い良く出て行く。三十秒足らずで帰ってきた道咲は作業を始める。道咲は紙の資料を順々に見ていくと「ん?」と声を上げる。
それに反応した桜木は「どうしたの?」と聞くが、道咲は「何でもない」と答える。
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現在午後9時丁度。
「よっしゃぁぁ!!」という声とともに道咲の仕事が終わる。桜木も「ふう...」とため息をつくと、
「今日はもう終わり!皆良くやったね」
と言う。その言葉に道咲は「そんじゃ、また明日〜」と一番にオフィスから出ようとすると、浪川が止める。
「ちょっと待って道咲」
道咲は丁度自動ドアが開いた所で止まると、疑問顏で浪川を見つめる。
浪川は束の紙の資料をデスクに軽く叩きつけて整えると、
「今日は、事件無かったわね」
と笑顔で言う。道咲もそれに笑顔で答える。
「おう!そうだな!」
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「いい加減話してもいいんじゃないの?」
女が金城へ言う。
金城は一つため息をつくと、ゆっくり口を開く。
「まったく。どれだけ言っても無駄か...。本当に君はしつこいな」
女はその言葉に笑みを浮かべる。髪を整えながら金城に対して言う。
「それはそうでしょ?危険を犯してまで貴方の手伝いをしてるんだから」
それを聞いた金城は笑みは見せずに顔の前で手を組むと呟いた。
「分かった。じゃあ教えてあげよう。事件の真実を」
多分次回は投稿遅れるかもしれませんね。
遅れなかった場合はいつも通りですが、遅れた場合は理由を書きますね!
今書いたらネタバレになりそうなので...。