PSYCHO-PASS/悪意の代償   作:フィルト

6 / 8
はい、全然遅れませんでした(笑)。なぜ遅れると思ったかというと、いつもより文字数が多いんですよね。それと、映画みたいに長く書こうと思ったんですけど、それは読んでて飽きるし...。って思ってこうなりました。

映画みたいな物はこのシリーズが終わったら特別編みたいな感じで書いてみようかと思います。


#6 悪意の代償 SHEPHERD 1

 

ある夏の夜。蒸し暑さとは裏腹に、緊張で背筋が凍りつくのが犯罪現場だ。

小雨の中でパトカーの回転警告灯が辺りを照らす。

 

「こちら一係シェパード1、二係と三係に告ぐ。一係は犯人を追い、西と東に別れる。二係と三係は北と南を頼みたい」

 

雨など気にせず、パトカーの横で携帯情報端末から二係と三係に連絡をとる一係監視官 桐ヶ谷 凛人。そして桐ヶ谷を中心に周りにはシェパード2一係監視官 浪河 雷花。ハウンド1一係執行官 菅谷 遥希(すがや はるき)、ハウンド2一係執行官 栗原 楓 (くりはら かえで)がドミネーターを手にしている。

 

桐ヶ谷は二係、三係と連絡を終えると、一係の仲間に告げる。

 

「よし。俺達は西と東を担当する。俺は西を担当する。菅谷、栗原は浪河を守りながら東を担当してくれ。ここは日本で一位二位を争う巨大廃棄区画だ。迷うなよ」

 

その言葉に栗原は戸惑いながらも反論する。

 

「そ、それは危険過ぎます!桐ヶ谷監視官の命が危ないです!」

 

それに浪河も続く。

 

「そうね。栗原さんの言う通りよ。貴方が危ないわ」

 

二人の発言をまるで予想していたように桐ヶ谷は早急に答える。

 

「菅谷。俺と来るか?」

 

すると、菅谷はドミネーターを持った手を自分の肩に持っていく。

 

「桐ヶ谷監視官が男好きなら行ってもいいけど?」

 

その顔は小馬鹿にしてるような、遊んでいるかのような無邪気な顔だった。

桐ヶ谷は鼻で笑う。

 

「という事だ。残念ながら俺は同性愛者ではない。執行官達、監視官を頼んだぞ。だが自分の命も考えろ」

 

浪河と栗原は不安そうだが、菅谷は生き生きとしている。

菅谷はドミネーターを振りながら。

 

「問題ねーよ監視官!任せろって!じゃ、ご武運を!」

 

ーーーーーーーーーー

 

元は都会だったこの廃棄区画。住居者は特定の人物を除いて激減。一つのマンションに四人住んでいれば良い方だ。だが、故障している物以外の電気は生きている。夜でも明るい廃棄区画を桐ヶ谷は既に一人で20分近く歩いている。

用心深くドミネーターを構え、あらゆる所に注意を払いながら進んで行く。

 

見上げても星など見えない夜空が広がる都会は物寂しく、人も少ない為にこの世から自分以外消えたような感覚に襲われる。

 

「あいつら、無事だと良いが...」

 

そう独り呟いた時、背後から缶を落としたような乾いた音が聞こえる。

 

「誰だ!」と叫びながら振り返り、ドミネーターを構える。が、それは迷い込んだ猫。猫は一瞬桐ヶ谷を睨みつけると足早にその場から去る。

 

「猫か...ビビらせやがって」

 

そう呟いた瞬間、左隣のビルの五階辺りから発砲音が聞こえるとともに、桐ヶ谷近くの地面から砂埃が舞う。

 

「!?」

 

上を見上げるとハンドガンを構えた女性のような影が見つめている。

桐ヶ谷は瞬時にドミネーターを構えると、ドミネーターは即座に計算を済ませる。

 

『犯罪係数・225・執行モード・ノンリーサル・パラライザー......』

 

桐ヶ谷の脳に指向性音声が届いた時、影は建物奥へ逃げるように消える。

 

「待て!!」と叫びながらビルに隣接している階段から一気に駆け上がる。階段からのビル入り口の脆くなった木製の扉を蹴り破ると、そのままの勢いで廊下を走り抜ける。

女が逃げたと思われる角を曲がった時。

 

ピピーーッ!

 

警告音が鳴った瞬間、すぐ横に設置されていた小型爆弾が起爆する。

桐ヶ谷は必死の受け身をとり、体を前転させるように起爆した場所からいち早く離れる。後ろを振り向くとそこは爆風で舞い上がった埃と、爆発によって破壊された地面と壁。その場に留まっていたら爆発によって木っ端微塵に吹き飛んでいたか、爆風によって五階の高さから落とされていただろう。

しかし、そんな事に構っていられない。桐ヶ谷は即座に走り出す。

突き当たりの部屋に入ると、そこには知っている顔が立っていた。

 

「お前は...!?」

 

桐ヶ谷は唖然とする。そこに立っていたのは右手にハンドガン、左手にドミネーターを持った三係にいる監視官二人の内の一人だ。

桐ヶ谷のドミネーターを持つ手が震える。いつもなら即時処刑しているはずなのに今回は手が動かない。

 

「あら、桐ヶ谷くん」

 

二十代半ばの女性監視官が桐ヶ谷を見つめる。桐ヶ谷は必死に口を動かし、質問する。

 

「さっき俺を撃ったのは...お前か...?」

 

女性監視官は薄っすら笑うと、桐ヶ谷に左手の銃を向けながら話し出す。

 

「ええ。そうよ。彼の命令で仕方なく...いや、自分の意思ね。今頃一係も二係も三係も大変なんじゃないかしら。私達刑事が現場に到着してから既に40分も経過している。さっき二係に連絡してみたけれど、誰からも返信はこなかった」

 

それを聞いた桐ヶ谷は一気に不安が押し寄せる。

 

「シェパード2!応答せよ!...おい!浪河!聞こえないのか!?...くそっ!!」

 

桐ヶ谷は女性監視官が目を逸らした隙にドミネーターを向ける。

 

『対象の脅威判定が更新されました・犯罪係数・332・執行モード・リーサル・エリミネーター...』

 

桐ヶ谷のドミネーターはエリミネーターモードへ変形。いつでも発砲可能な状態になる。

 

「彼って奴は主犯の事か...。今ならまだ間に合う。自首しろ。俺はこの銃でお前を撃ちたくない。お前のドミネーターで俺は殺せない。構えるのは拳銃の方が良かったな」

 

桐ヶ谷の言葉に女性監視官は「それはどうかしら」と言うと右手の銃を捨て、ドミネーターを右手で構える。その瞬間、女性監視官のドミネーターもエリミネーターモードへ変形。桐ヶ谷は驚く。

 

「貴方の犯罪係数は今、315。私と同じく、監視官としては桁違いの数値ね」

 

「何...!?」と桐ヶ谷は呟く。

 

どちらかが撃てば終わる。が、どちらも撃つ気配は無い。お互いにエリミネーターモードとなったドミネーターを構えながら時間が過ぎてゆく。

女性監視官はため息をつくと、ドミネーターを構える手は動かさずに話し始める。

 

「貴方が撃つ気が無いなら、少しお喋りでもしましょうか」

 

女性監視官の言葉に「ふざけるな!」と桐ヶ谷は叫ぶが、そんな事は気にしていない。

 

「私がなぜ貴方達の敵に回ったか、分かる?」

 

桐ヶ谷は歯を食いしばりいつでも発砲できる状態にしているが、手が小刻みに揺れ、まともに標準が定まらない。

女性監視官は数秒黙った後、桐ヶ谷の手を見ると、また話し始める。

 

「その前に...貴方が今手が震えてる理由が分かる?それは恐怖ではなく、緊張でも無い。貴方はまだ私の事を仲間だと思っている。撃つか撃たないか。その迷いと、他の刑事に対する心配が貴方の犯罪係数を悪化させた理由。迷いは時に良い案を出すときがあるが、時に最悪を招く。私が親切的に撃たないであげたから貴方はまだ生きているのよ。これはさっきの話の前者の方。だけど、もし私が撃ってたら?貴方や他の刑事にとっては後者の方になる」

 

桐ヶ谷は震える手を抑えるため、両手で構える。が、震えは治らない。

 

「じゃあ、俺がお前を撃てば良いのか...?」

 

女性監視官は首を少し右に傾げると、桐ヶ谷の問いに答える。

 

「もし貴方が仲間意識がある内に撃てば?その罪悪感から解放される事は無く、一生この数値は下がらない。施設送りか執行官へ降格。そうじゃない?貴方と一緒に仕事した時もあったけど、いつも即時処刑だったわよね。そんな貴方がなぜ迷ってるのかしら」

 

桐ヶ谷は戸惑う。目の前にしているのは潜在犯。だが、トリガーを引く事は出来ない。構えるだけで精一杯だ。

 

女性監視官は黙る桐ヶ谷を目にしながら。

 

「そこら辺にいる潜在犯を処刑しても罪悪感は無く犯罪係数も上がらない。それは自分が正義としてやっているから。正義は人を狂わす。正義の為なら人を殺し、正義の為なら隔離する。そうやってできたシステム(正義の世界)はプレイヤー視点じゃなく、ゲスト視点で見たら異常な世界よ。私を含めた刑事も、本来なら潜在犯となんら変わりはない。それが、貴方達の敵に回った理由よ」

 

桐ヶ谷はその言葉を耳にした瞬間、手の震えが止まる。そしてまた片手で構え直す。

 

「俺達は潜在犯か...。まあ、言ってる事はあってるな。だが、俺達はお前とは違う。一線を越えたお前は潜在犯じゃなく犯罪者だ。俺はこの世界が望むならずっとプレイヤー視点で居続ける。そうやって今まで過去の人々が創り上げてきたフィールド(世界)だ。それに逆らうのはシステムに逆らうよりもずっと重い反逆行為だ。様々な事から失敗をし続け、今の世界がある。この世界が間違っていたら、それは未来の人々が改善してくれるさ」

 

それを聞いた女性監視官は構えていた手をゆっくりと下げる。下げきった手は力が抜け、ドミネーターが地面へ落ちる。

そして、彼女の顔からは涙が零れ落ちているが、とても清々しい笑顔になっている。

 

「貴方ならそう言うと思った...!いつか、今度は違う形で...違う世界で逢いましょう...」

 

桐ヶ谷は悲しげな笑顔でトリガーに指を掛け直し、ドミネーターを構え直す。

 

「ああ、潜在犯同士、地獄でまた逢おう...」

 

ーーーーーーーーーー

 

事件発生から1時間20分経過。

 

桐ヶ谷はパトカーに戻り、浪河達を追おうとしてGPSマップを確認する。しかし、それを見た桐ヶ谷は驚愕する。

 

「二係と三係のアイコンが消えてる...!?」

 

それを見た瞬間、前方から何かから逃げるかのような足取りで、人混みを避けながら駆け抜けてくる。桐ヶ谷はそれにいち早く気づく。

 

「あれは...シェパード2...浪河か!?」

 

息を切らせながら、巡査ドローンの警備を抜け、桐ヶ谷に駆け寄り、浪河は俯きながら重い口を開く。

 

「共に捜査をしていた執行官が二名やられました...」

 

浪河の言葉を聞き、桐ヶ谷は険しい表情を見せると手を握りしめ、地面を見ながら言う。

 

「二係、三係ともに全滅。残すは俺達一係のみか...。くっ...この捜査は中止だ。これ以上犠牲を増やさないためにも...」

 

浪河は俯いたまま、辛い口調で桐ヶ谷の呟きに答える。

 

「それはできません...。公安局本部に掛け合ってみたところ、それは局長が許してくれませんでした。彼を野放しにしていたら犠牲者が増えてしまう可能性があるから、と...」

 

桐ヶ谷は歯を食いしばり、より険しい表情を見せると肩を震わせながら一人呟く。

 

「奴の犯罪係数さえ分かれば執行できるというのに...!」

 

桐ヶ谷の言葉に浪河は今、一番思い出したくないことを思い出し、半泣きになりながら。

 

「私は...彼の犯罪係数を測定しました...」

 

そう呟く。

 

桐ヶ谷は驚きの顔を見せると浪河に何か言おうとするが、それを遮るように浪河は続ける。

 

「彼の犯罪係数は......15です..........」




悪意の代償事件の桐ヶ谷バージョンが終わりました。

裏話ですが書いてる途中、桜木と浪河を間違えて何度も書き直しました(笑)。
最後にiPhoneに読ませてから間違い箇所を訂正してってやったんですけど...。これで間違いがあったら相当恥ずかしいですね(笑)
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