PEST   作:リボーンズ

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いつしか思い付いた物語を投稿してみました。
文章に関してはまだまだ拙いところだらけですが、個人的に楽しんで続けていければいいなと思っております。


抗いの虫

「私は、世界の知能である。」

 

この言葉を残したのは、近世に生きたと言われている天才を遥かに越えた科学者、ノア・シュタインベルグ。

 

彼はその時代には実現不可能とされた高度に発達した技術の開発に成功し、現代の技術は全て彼の研究があってこそ実現している。

 

核兵器、無人戦闘機、レーザー兵器などは彼の発明であり、軍事利用以外の、例えば寿命を延ばす技術やクローン技術など、幅広い面でノアは研究の成果を上げたのだった。

 

なにより、彼の研究の中でも最高の傑作とされたのが、『無限機関』である。

1度起動させると無限にエネルギーを生み出し続け、人類の発展に大きく貢献することは間違いなかった。

しかし、彼はこの無限機関を世間に発表する前に、何者かに暗殺されてしまう。1990年の事件であった。

 

それから50年後、ついに無限機関の存在が世間に出回った。

 

ノアの技術で発展を遂げた各国はこの無限機関を巡って対立、さらには2042年に世界大戦を引き起こした。

他国より上へ、自国の発展を求めた各国はノアの技術を大いに活用し、その戦いは熾烈を極めた。

度重なる無人戦闘機による爆撃、容赦なく放たれる核ミサイル。

この大戦での犠牲者は1億を越えるとされ、開戦から2年後の2044年に終戦を迎えることとなる。

 

ノアの技術は全て『ノアの遺産』と呼ばれるようになり、世界の知能と自称した彼の技術はすなわち世界で共有すべきとされ、ここに新たな条約として『ノアの遺産条約』が採択された。

 

一方で、ノアの遺産を共有した各国は再び開発を促進させた。

各国が特に集中的に研究を進めたのは、やはり無限機関であった。

しかし大戦中にオリジナルの無限機関は失われ、残されたものは無限機関に関する資料のみであった。

ノアの高度な技術で作り上げられた無限機関は現代の人類には再現不可能とされ、無限機関の数多の研究も次々と脱落していくことになる。

 

無限機関以外の分野でもノアの技術の研究は進められた。

 

 

一方で、人類は気づかぬ内に新たなる危機と直面していた。

度重なる開発や実験、先の大戦の傷痕も合間ってか、いつしか地球の環境は甚大なまでに汚染されてしまったのである。

 

大戦の後に設立された新国際連合では、この嘗てない重度の地球汚染に際し、各国へ対して汚染物質の排出量の規制を行った。

しかし、一向に効果は表れず、この状況の打開策を見出だせないまま、実に大戦後から10年の月日が経った。

 

 

2054年 地球数ヶ所同時大地震

 

これはヨーロッパ、中国、そして南米で同時に起こった大地震である。

この自然災害は、地球全土を恐怖の底へ突き落とすには十分すぎるものだった。

なにより、これはただの大地震ではなく、不可解かつ恐るべき事態が伴っていたのである。

 

「超巨大な塔のようなものが一瞬のうちに天高く聳え立った。」

 

震源地からやや離れた地域で、偶然震源地の方角を見ていた人物はこう語った。

 

現地へ事態の原因を調べるため派遣されたチームは、目撃者が話した「塔のようなもの」は巨大な樹木であることを確認した。

 

この巨大な樹木は、丁度3ヶ所で同時に起こった大地震の震源地から聳え立っており、専門家はこの巨大な樹木が急速に成長したことにより大地震が引き起こされたと推測した。

 

皮肉にも大地震をもたらした巨大な樹は、汚染した地球をたちまち浄化していった。

汚染された大気は清められ、失われた緑も確実に戻りつつあったのだ。

 

汚染された地球を清めたこれら3本の巨大な樹木は、人々から『世界樹』と呼ばれるようになった。

 

しかし、大地震から2年後の2056年、人類は再び大きな災害に見舞われることになる。

 

2056年 世界多発地震

 

これは先の大地震ほどの規模ではないが、世界の全数十ヶ所に及ぶ多数の地点で連続的に起こった地震である。

3本の世界樹よりは遥かに小型だが、例によって大型の樹木が現れた。

 

さらには3本の世界樹、そして今回新たに加わった数十本の大型樹木を中心に、急激な速度で自然が発達する現象が起こった。 

 

この現象のさなか、世界各地で植物が人間を襲うという奇妙な事件が多発した。

最初は誰もそんなことを信じなかったが、急速に増加する自然、度重なる目撃情報により、いつしか人類は滅びの窮地に立たされていることに気づくのだった。 

 

人を襲う植物。

さらに自ら移動することも可能にしたそれらの植物は進化を続け、様々なものに寄生、同化するまでに至った。

車と同化し暴走を起こすといった事件も、この頃には多発していた。

国際連合はこの植物を自律活動型植物『AAP』と名付けた。

 

これら一連の出来事に際し国際連合は非常事態宣言を発令。

軍備を固めた都市部に人々を避難させ、全ての軍隊はこのAAP駆除のための多国籍軍として再編成された。

 

ノアの技術で開発された兵器を以てしても、AAPの成長スピードに駆除が間に合わず、わずか数年のうちに地球の8割が自然に埋もれる事態に陥った。

 

この頃には無限機関の研究が進み、有限ではあるが莫大なエネルギーを生み出す装置を作り出すことに成功。

『疑似無限機関』と名付けられたその装置の試作タイプが完成したのだ。

 

国際連合はこの疑似無限機関を軍事利用することを考え、対AAPの切り札として期待していた。

しかし、疑似無限機関搭載型の兵器が完成する前にAAPの侵攻が熾烈を極め、ついに国際連合は既存の兵器でAAPに反撃の鉄槌を下すことを決定する。

 

AAPの研究チームの報告によると、全てのAAPはあの3本の『世界樹』を核として活動しているという。

 

そこで国際連合が発案した作戦は、手始めに比較的小規模のヨーロッパに現れた世界樹、通称『第三世界樹』に対し攻撃を行うというものだった。

 

一部の者は第三世界樹への集中砲火による環境汚染を懸念し、疑似無限機関搭載型の新型兵器の完成を待つべきという意思を表明したが、国際連合は環境汚染もやむ無し、として作戦を実行に移した。

 

2058年7月7日 第三世界樹攻略作戦

 

後に『七夕の惨劇』と呼ばれるようになるこの作戦は、地上、空中、そして地下の三方向から世界樹に接近し、戦略兵器を用いて世界樹ごと爆破するというものであった。

 

地下からの進撃部隊は予想を越えるほどに蔓延っていた世界樹の根に苦労し、予定時刻に遅れて戦略兵器の設置を完了させた。

 

そのときであった。

 

地下進撃部隊が撤退する前に、地上、空中部隊の総攻撃が開始されたのだ。

予定では地下進撃部隊が戦略兵器を起動させ、万が一にも世界樹爆破まで至らなかった場合に地上、空中部隊が総攻撃で畳み掛ける手筈になっていた。

 

AAPの発する不明の電波により通信が困難になっていたため、作戦本部には世界樹の根による戦略兵器の設置が遅れた旨が伝えられておらず、故に本部は地下進撃部隊の作戦が失敗したと判断したのである。

 

総攻撃により地下進撃のトンネルは崩れ、また、衝撃により誤って起動した戦略兵器が地上部隊を巻き込むという事態が発生。

 

第三世界樹の殲滅には成功したものの多大なる犠牲を生み出す結果となってしまった。

 

作戦を強行した上層部には非難の声が上がり、これにより疑似無限機関搭載型兵器によるプランが多くの支持を集めることとなる。

 

 

2060年 

 

疑似無限機関の量産化に成功。

多脚機動兵『MMS』の完成。

 

 

MMS(Multi legs Mobile Soldier)は疑似無限機関を搭載した多脚戦闘マシンである。

足場の悪い戦場を想定し多脚を備え、実用性を突き詰めた結果、虫をモチーフにすることとなった。

 

従来の戦闘車両と違い植物が蔓延る樹海でも、その多脚を活かして難なく侵攻することができる。

また、小回りがある程度利くため小~中型の素早いAAPの殲滅も可能で地上での作戦に幅が広がるという点で非常に期待がかかった新型兵器であった。 

 

また、MMSを運用する対AAP特務組織『P.E.S.T』が設立され、2061年にはこのP.E.S.T指揮下のもとユーラシア大陸に現れた世界樹、通称『第二世界樹』に対しての攻撃作戦が行われた。

 

この作戦には初期型MMSが21機投入され、最終的に5機が第二世界樹の内部に侵入することに成功、内部から爆破させることで見事に第二世界樹の殲滅を完了させた。

 

この活躍によりMMSの量産化は多くの支持を受けさらに促進することになる。

 

翌年の2062年には新型MMS『プレディカドール壱式』が完成。

 

残す攻撃目標は南米の『第一世界樹』のみとなったこの時に人類は微かな希望の光を見出だしていた一方で、AAPの侵攻がさらに促進していることにも気づいていた。

 

やがて第一世界樹への攻撃の目処が立たないうちに人類とAAPの争いは均衡状態に陥り、第二世界樹攻略からすでに3年余りが経とうとしていた。

 

 

 

 

 

2063年

 

南アフリカ鉱山基地。

ここは名前の通り南アフリカに位置する鉱山採掘基地である。

比較的AAPの侵攻が少ないこの地域は、採掘資源が豊富ということもあってP.E.S.Tの基地の1つとして機能している。

 

資源の採掘、及び金属の生成やMMSの生産も行っているためこの地域は特に重要な防衛対象ともなっている。

 

「暑いな。」

 

そんなことを口にして炎天の空を見上げたのは、ゼシル・ミラーガ少尉。

彼はP.E.S.Tの中でも有名な中隊のナンバー3の地位にあるMMSのパイロットである。

 

「そんなこといって、汗水垂らす女の子が見れるいい天気だとか思ってるんだろ?」

 

「それはボマーが思ってることだろ。」

 

ボマーと呼ばれた軽い感じの少年はイーサン・ザウート。

訓練兵の頃からのゼシルとの付き合いで、ボマーという愛称は訓練中の敵襲に際し得意の重火器でAAPの群れを一掃したことに由来する。

 

「まあ、それはそうだけどな。」

 

最後に笑ってそう流したボマーは不意にげんなりとした表情になった。

 

「それにしてもここ、敵来るのかな?」

 

比較的AAPの侵攻が少ないこの地域にゼシルとボマーが所属する中隊は派遣されてきたのだが、激戦区ではなくこんな安全圏に回されたことにボマーは不快を示しているのである。

 

「ボマーが不快に思ってることもわかるけどさ、観測基地からの指令だよ。こっち方面にAAPの大群が向かってるって。」

 

「観測基地の言うことなんざ当てになるか。こっちに回されてもう1週間だぞ。」

 

この南アフリカ鉱山基地に派遣されて1週間、現れたのは軍用車と同化したタイプのAAPのみ。

MMSが出撃するまでもなく片付く程度のものだった。

 

「万が一本当だったらヤバイだろ?ここも貴重な基地なんだし。」

 

「まったくゼシルはお利口さんなことだな。」

 

ゼシルの正論を気にも止めずに受け流したボマーだったが、次の瞬間動きが凍った。

動きが凍ったのはボマーだけでなくゼシルを含め基地にいるほとんどの人間だった。

 

けたたましく鳴り響くサイレン。

 

一瞬凍りついた場が、すぐに慌ただしく活動を再開した。

 

「わざわざサイレン鳴らすってことは、来たんだな?」

 

ボマーは動揺した気持ちを抑えつつゼシルに確認を取った。

 

「だろうね。遅れると隊長殿に怒られるぞ。」

 

 

 

 

 

ゼシルとボマーの二人が駆け込んだのは彼らが所属する中隊に宛がわれたMMS格納庫。

 

整備兵が慌ただしく動き回る合間を縫って自分の機体に乗り込む。

 

『プレディカドール弐式』

 

これがこの隊に配備された機種の名だった。

全高約8メートル。

蟷螂をモチーフに開発されたこの機種は安定した多脚、長距離飛行も可能とする格納式の翼を搭載している。

また、蟷螂をモチーフにしたため左右に腕を備えており、より戦闘に特化したタイプとなっている。

 

機体に乗り込み機体を立ち上げて現れたモニターには、多少ご立腹な様子の隊長の顔があった。

 

「ったく、遅いわよ!何時間待ったと思ってるの!」

 

「5分くらいですかね、隊長殿。」

 

いきなり怒号を飛ばす隊長をさらりと受け流すゼシル。

隊長とはいえゼシルやボマーと同年代の少女であった。

 

ノエル・バニミール。

 

ゼシルやボマーと同じ時に訓練兵から正規の隊員に昇格、今はゼシルより1つ上の階級の中尉である。

 

「おやおや、ノエル隊長はお怒りのご様子か~?」

 

悪気を感じてすらいなさそうなボマーはいつもと同じように隊長をからかう。

 

「ボマー晩ご飯抜きね。」

 

「それは!それだけはご勘弁を!」

 

いつも出撃前はこんな感じであるが、こんなやり取りが少しばかりか無駄な緊張を解してくれるのは確かであった。

 

そうしているうちに整備兵からMMS及び支援用の空中バイクの出撃準備完了の合図が出され、格納庫に出撃前のアナウンスが流れる。

 

『バニミール隊出撃準備完了を確認、これより作戦行動に――』

 

アナウンスが流れる中、ノエルから各機へ通信が入る。

 

「MMSを使っての初任務よ、貴重な機体壊さないでよね。空中バイクはプレディカドールとの間合いに気をつけて。

それと、絶対に死なないこと。...じゃあ、バニミール隊、出撃するわよ!」

 

「「了解!」」

 

ゼシルを含め、さっきまでノエルをからかっていたボマーまでも顔付きを変え、隊長に続いた。

 

若き彼らの中隊の戦いは始まったばかりである。

 

 

 

 




だいぶごちゃごちゃした始まりでしたね(笑)
とりあえず、AAPに対して虫型のロボットで対抗するってことです。
ここから徐々に設定を増やしていくかもしれません。
また、用語が多くなってきましたら(既に多いかもわかりませんが)説明をまとめたものも投稿します。
ご指摘、ご感想、ご意見などがあれば遠慮なく言っていただかると幸いです。
拙い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。
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