PEST   作:リボーンズ

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今回も少しだけ多いです。
普段のロボット系の戦いとは少し違った雰囲気になっております。


叡知の迷宮

「主任、どういうことですか!?やめてください!死にたく...死にたくないぃぃ!!」

 

一人の少女が、研究員と思われる複数の人物に掴まれながら泣き叫んでいた。

両腕をきっちりと掴まれ抵抗も虚しく引きずられていく。

向かう先にはガラス張りの小さな空間、そしてその中には3体の小型AAP。

 

「あーもう、うるさいですよ。命の危険はありません多分。さあ、早く入ってください。」

 

研究員が抵抗する少女に何やら注射器のような物を打ち込んだ。

刺された部分が脈打ち、恐怖がその少女を支配する。

 

「いやっ!いやぁぁあ!」

 

タオル一枚のみを身に纏ったその少女は研究員によって無理矢理そのガラス張りの空間に放り込まれた。

何も装備を持たされず、まさに丸腰。

 

その少女に気づいた小型AAPが、徐々に距離を詰めた。

隔離した空間の中の音は聞こえないが、今もなおその少女は助けを求めて声を上げているようである。

 

やがて小型AAPが少女と同化しようと触手を伸ばした。

徐々に近づき、それと比例して少女の顔が恐怖に歪んでいく。

 

しかし、その触手が実際に少女に触れることはなかった。

突然、小型AAPはその少女から興味を失ったように離れていったのだ。

奇跡に見舞われた少女はその場に座り込み、呆然とAAPを見ていた。 

 

実験の経過を見守っていたエドガー・スタインズや周りの研究員から喜びの声が上がる。

実験は、成功した。

 

「サリンジャー、実験の記録を。」

 

エドガーが傍らにいた助手の少女、ステラ・サリンジャーに指示を出す。

ステラは淡々と先程の実験の詳細を記録していった。

 

被験体番号21番、試作薬0.86

ml投与。

投与からの効果発揮までの推定時間、約28秒。

小型AAPは被験体21番を異物と認識せず。

 

「21番、おめでとうございます。一時間そのまま様子見ますね。後は別室で異変がないか数日に渡って観察しますので。」

 

ステラは、ガラス張りの空間に閉じ込められている少女を哀れとは思わなかった。

これも全てはエドガーが目指す理想のため。

どんなに非情なことでも人類の進歩には必要なことだと信じて、ステラは全てを受け入れていた。

例え、被験体としての姉妹や兄弟がどんな酷い目に遭わされたとしても。

ステラ自身も、いずれ実験台になることはわかっている。

恐怖は感じない、何故ならそういうように彼女は仕込まれているのだから。

 

「主任、緊急の連絡が。」

 

研究員の一人が慌ただしく研究室に駆け込み、エドガーの所へとやって来た。

あからさまに嫌な顔をしてエドガーは振り向く。

 

「今いいところなんですけど...。手短にお願いしますよ。」

 

「実は先程連絡がありまして...ディアンケヒトの研究施設が壊滅したと...。」

 

ディアンケヒト、その名を聞いてエドガーは少しばかり表情を変えた。

常に笑みを湛えた口許は、今や笑っていない。

 

「壊滅したとは、一体何事ですかねぇ?」

 

口調こそ普段のものを守ってはいるが、今回に限っては飄々とした態度が見えず、僅かに焦りの色を滲ませていた。

 

「恐らく、AAPとの同化実験に失敗したものと思われます...。実験区域からは大量のAAPが脱走、施設外にまで被害が出るのも時間の問題とのことです。」

 

ディアンケヒトの研究施設外に被害が出れば、まず間違いなくP.E.S.Tが動くだろう。

そして、エドガーにとってそれは都合が悪いことであった。

エドガーは顎に親指を当て、普段見ることができない真剣な面持ちで思考を巡らせた。

 

「サリンジャー、出撃の用意を。なるべく急いで下さいね。」

 

 

 

ゼシルの怪我も完治し、機体の補給も完了してようやく第88独立機動中隊は活動を再開することとなった。

戦線から離脱していた期間は凡そ3週間というところである。

動ける者は訓練に勤しんでいたものの、実戦での感覚は鈍りつつありメンバーには不安の影が見受けられた。

 

そんなとき、88中隊は司令部より召集がかけられた。

司令部から直接呼び出されたということもあり、思わず不安が付きまとう。

特にノエルとクーデリカは、先日に無断でMMSを使用した模擬戦を行っている。

連帯責任で説教をされるのではないかと、皆が不安であった。

 

ビシッと一列に並ぶ第88独立機動中隊の面々。

その様子を見た上層部が愉快そうに笑いながら口を開いた。

 

「まあ、そう固くなることはない。リラックスしたまえ。」

 

そう言いながら手元の書類をまとめている。

その横には中性的な容姿の少年。

先日、ゼシルが病室で出会ったエーベル・ハーネである。

 

「本日をもって88中隊に新戦力を配属する。ハーネ少尉、挨拶を。」

 

はい、と返事をしたエーベルは一歩前へ進み、88中隊の面々を眺める。

 

「本日からお世話になります、エーベル・ハーネ少尉です。よろしくお願いします。」

 

爽やかな笑顔と共に挨拶を済ませ、エーベルは元の位置に戻る。

話によると、『予見眼』の異名を持つ凄腕のパイロットらしい。

被弾率0%、単機による大型AAPの撃破、そして敵の行動を瞬時に見抜く予知能力。

上層部の人が嬉々としてエーベルについて語る。

 

88中隊の女性陣はエーベルに興味津々らしく、話の間にもやたらと見ていた。

クーデリカとシエルはともかく、ノエルまで興味深そうにエーベルを見ているのが少しだけゼシルには不愉快だった。

ムッとした表情を浮かべているゼシル、それをボマーがニヤニヤしながら見ていたのだった。

 

まるで転校生を迎えた学生のような反応をする彼女たちをよそに、咳払いをしつつ上層部の者が話を続ける。

 

「また、ノエル・バニミールを大尉へ昇格させる。ゼシル・ミラーガは中尉へ昇格、シエル・バニミール中尉と共に88中隊の副官を務めてもらう。」

 

突然の昇格に、ノエルもゼシルも驚きを隠せなかった。

もっとも、ニュージーランド戦の功績が大きいのだろう。噂程度には聞いていたことだ。

 

さらに隊長であるノエルにはパーソナルカスタム機が与えられることとなった。

プレディカドールの一般機と指揮官機は見た目はほとんど変わらず、単に通信機能において差がある程度だ。

しかし、今回与えられるカスタム機は違う。

個人の要望に合わせて見た目をある程度まで変えることが許される。

例として挙げるならば、ニュージーランド戦の際にゼシルと共闘したヴィンセント・ランドール大尉のプレディカドール壱式であろう。

彼の機体は通常の腕に加え肩からも追加で腕を付けており、さらには腰にも展開式のサブアームを搭載している。

 

一般兵からは羨望の眼差しを浴びるカスタム機。

この制度を設けることで兵の士気が高まるらしい。

 

「今後もさらに精進するように。我々も君らには期待しているからな。」

 

「は、はいっ!」

 

声が裏返りそうになりつつゼシルとノエルが返事をする。

二人の反応に満足そうに頷く上層部の者は、すぐにその表情を深刻そうなものに変えていった。

 

「さっそくで悪いのだがな、君らに極秘任務だ。」

 

新メンバーを迎えたという浮わついた空気は、その言葉を聞いた瞬間に真剣なものに切り替わった。

極秘任務、それは88中隊にとって初めてのことである。

全員に緊張が走るのは無理のないことであった。

 

「君らは『ディアンケヒト』という言葉を聞いたことはあるかね?」

 

ディアンケヒト、その名はゼシルも聞いたことがあった。

何かの企業名だったのは覚えているが、一体何だったか...。

そのとき、おずおずとした様子でシエルが口を開いた。

 

「え、ええと...。医療技術を研究、開発する民間企業のことですよね?」

 

シエルの言った通り、ディアン・ケヒトとは医療技術を開発する民間企業である。

最近では高性能の治療薬やAAPとの同化を遅らせる薬品などの開発に成功している。

しかし、何故この場でその名前が出てくるのだろうか?

 

「その通りだ。で、先日そのディアンケヒトが運営する研究施設で大規模な事故が発生したらしい。研究施設は壊滅、そして施設からは大量のAAPが逃げ出したそうだ。」

 

「つまり、我々がAAPの鎮圧に向かえということですね?」

 

ノエルの言葉に肯定を示す上層部。

 

医療技術の研究施設から、何故かAAPが逃げ出した。

何故医療の研究施設にAAPがいたのだろうか?

AAPの構成物質が医療に使えそうだから、という理由にしては不可解なことが多い。

そもそも施設を壊滅させることができる程のAAPが医療研究に必要だろうか?

施設内で鎮圧することができなかった程の事故。

医療の実験でそんな事態が起こるとは考えられない。

 

「表面上は施設外に逃げたAAPの鎮圧という名目で君らを派遣する。だが、上層部の中でもこの事故を不審に思う者が多くてな。そこでだ、88中隊にはディアンケヒトの研究施設を調査して貰う。」

 

電子モニターを展開させ、ゼシル達にとある映像を見せた。

広大な敷地を持つ研究施設から出てくる多数の小型AAP。

これは恐らく研究施設の近くに設置されていた監視カメラの映像だろう。

自衛組織の隊員と思われる人物が自動小銃で応戦している様子が映されていた。

数人では抑えきることができず、小型AAPは次々に研究施設のある区域を突破していく。

このままでは、居住区など人々が生活する場所にも被害が出てしまうだろう。

 

「事態はまだ小さいままだ。島の自衛組織が持ちこたえている間に増援を送り、その傍らで研究施設の情報を洗いざらい持ってきてほしい。」

 

数刻後、第88独立機動中隊は民間企業ディアンケヒトが運営する人工島へと出発した。

 

 

 

ディアンケヒトが運営する人工島は人口約5000万人の規模である。

大量に現れたAAPや他の植物に本土を追われた人類には、こうして人工島を築いてその中で生活する者も多い。

大企業が出資して社会的な貢献を果たすことも珍しくなく、P.E.S.Tや国際連合が造り上げた人工島以外の島は基本的に大企業が運営している。

 

「あれね、例の人工島。」

 

前方を飛ぶ純白の色で染められたプレディカドール弐式。

ノエルが駆るプレディカドールのカスタム機である。

それに続くように他のメンバーの機体が隊列を維持しつつ飛行していた。

 

「それにしても大きいな。さすがは大企業が運営するだけあるね。」

 

光信号で増援に駆けつけた旨を伝え、そのまま人工島の上空へ差し掛かる。

島の中心周辺には所々で煙が上がっており、自衛組織とAAPとが交戦したことが伺えた。

 

「シエルとクイーガーとボマーは逃げ出したAAPの駆除に向かって。他のメンバーで先に施設内に侵入するから。」

 

「「了解。」」

 

広大な敷地に建つ大きな建造物。

その中心部には巨大な塔が聳え立っていた。

これが、ディアンケヒトの研究施設である。

 

ゼシル達は研究施設の外に機体を停めるなりすぐさま特殊スーツへ着替え、施設へ侵入した。

島の自衛組織には施設内の人命救助という名目で話を通していた。

 

「まるで、ホラー映画ですね。」

 

ぼそりとクーデリカが呟く。

その言葉に怖じ気づいたノエルは背中を震わせていた。

 

「クーデリカ、変なこと言わないでよ...。」

 

二人のやり取りにゼシルは違和感を覚える。

悪い意味ではなく、良い意味でだ。

その正体はすぐにわかった、ノエルがマナロフ少尉の呼び方を変えたのだ。

クーデリカ、と名前で呼んだということは恐らく二人の仲に入っていた亀裂はなくなったということであろう。

ゼシルはどこか嬉しい気持ちで二人を見た。

 

少し歩き、ロビー周辺の状況を確認した。

いくつか扉や階段を見つけ、予想通り大規模な建物らしいことがわかった。

非常電源の薄暗い光の中で闇雲に進むのは非効率である。

どこかに地図でもあればいいのだが...。

 

「しらみ潰しに探索するのは骨が折れるわ。何か、施設内の地図でもあれば助かるんだけど。」

 

ノエルの言葉にエーベルが反応した。

懐中電灯をロビーの奥の壁に当てている。

 

「これ、使えないかな?」

 

エーベルが示したのは施設の案内板。

確かに、これならある程度の構造は把握できそうである。

ヘルメット内に搭載されたカメラの撮影機能で案内板を保存し、道順を確認してみる。

 

「ノエル大尉、まずは奥の方の実験区域から調べた方がいいんじゃないかな?」

 

「うーん、そうね。実験区域もそこそこ広そうだし、二手に別れましょう。」

 

ゼシルの提案に肯定を示し、二手に別れて進むことが決定した。

ノエルとクーデリカの組と、ゼシルとエーベルの組である。

 

「危険だと思ったら退いて連絡すること。単独で深追いはしないこと。いいわね?」

 

「わかってるよ。ノエル達も気をつけてね。」

 

 

 

薄暗く不気味な施設内をゼシル達は慎重に進んでいた。

かれこれ暫く歩き回ったが、特にこれといった発見はなし。

ただ、時折見かける研究員と思われる人物の死体が事態の異常性を示していた。

一体、この施設で何が起こったというのか?

 

ヘルメット内の熱源探知機の通知アラートが鳴った。

近くの熱源、主に生命体を察知して知らせてくれる機能である。

次の角を曲がった辺りに、熱源を発見したらしい。

恐らくはAAP。

 

「次の角にいる個体はこっちに気づいてるみたい。たぶん待ち伏せして飛び出してくるから気をつけて。」

 

エーベルが静かに呟き、ゼシルは気を引き締めた。

角を曲がろうとすると、突然小型AAPが姿を現した。

人と同化したタイプのようであり、恐らくはこの施設の研究員であろう。

 

エーベルの能力は本当らしく、見事にこの一撃を回避することができた。

慎重に進むことは心掛けてはいるが、待ち伏せしているかどうかなどは判別のしようがない。

AAPも、少しずつだが確実に知能を身につけているという証拠だ。

 

エーベルが冷静に自動小銃を放ち、すぐにAAPは動かなくなった。

 

「お見事。予知能力は本当だったんだね。」

 

ゼシルが言うと、エーベルは照れたように笑った。

 

「まあ、なんで僕にそんな力があるのかはわからないけどね。――さあ、早く奥の方も探索しよう。」

 

ゼシルとエーベルは再び歩き始めた。

 

 

 

一方、ノエルとクーデリカの組も探索を続けていた。

途中、いくつかの部屋を見つけて中を見てみたが、特に研究に繋がりそうなものはなかった。

必然的に奥へ奥へやって来たが、その頃には二人の足取りはとてつもなく重いものになっていたのだった。

 

「ほんと、こういうの苦手なのよね...。」

 

ノエルが先程からずっと怖がっている。

もちろんクーデリカも怖いことには怖いのだが、二人揃ってビクビクするわけにはいくまいと必死に恐怖を抑えていた。

 

「特に何も出てきませんよ。それに、大尉のヘルメットには熱源探知機能があるじゃないですか。」

 

何故人間が暗いところを怖がるのかというと、突然の敵の襲来を本能的に恐れているからだ。

熱源探知機能で予めAAPの位置を掴んでおけば、問題はない。

しかし――。

 

「あー、そのことなんだけど...。あたしのヘルメットの熱源探知機能、壊れちゃってるみたい。」

 

「えぇ....ど、どうするんですか?」

 

様々な機能が搭載されているタイプのヘルメットは基本的には階級が上の者にしか与えられない。

コストが高いこともあり、各隊に1つか2つ程しか支給されないのだ。

故に、クーデリカのヘルメットは単なる通信機能を積んだだけのヘルメットである。

 

「た、頼んだわよクーデリカ。」

 

なかなか無責任な話である。

いくらコミュニケーターだとは言え、確実に敵の位置を察知できるわけではない。

やれやれといった様子を見せたが、それでも精神を研ぎ澄ませてAAPの気配を感じ取る。

 

前方、この先に微弱な気配を感じた。

人間の発する脳波も微かだが感じることができた。

恐らくAAPに同化された研究員といったところか。

 

「ノエル大尉、近くに奴らがいます。注意してください。」

 

「う、うん。わかった。」

 

足音を殺し、周りを警戒しながら進むノエルとクーデリカ。

とある部屋を通り過ぎようとしたときだった。

突然、部屋の扉が開き、その中から研究員、いや、AAPが襲いかかってきた。

 

「ひっ!」

 

「大尉!」

 

ノエルが悲鳴をあげそうになったが、反射的に得意の格闘術を発動させたようであった。

頭部を蹴り上げ、そのAAPは軽々と天井まで飛んでいく。

 

「お、お見事です、ノエル大尉。」

 

ノエルの格闘センスは聞いていたが、目の当たりにするのはクーデリカ自身初めてであった。

並の人間にはできない芸当であろう。

聞くところによると、妹のシエルも格闘術においては凄いらしい。

 

「ちょっと、休憩しない?腰抜けそうで。」

 

ノエルが普段とは余りに違いすぎて、クーデリカは思わずクスッと笑った。

普段ならば休むことなく部下を引っ張っていくタイプだが、今回ばかりは弱気なようだ。

意外な一面を見つけられたことが、クーデリカには少し嬉しかった。

 

 

 

「とりあえず、一階は残すところこの部屋だけだね。」

 

ゼシルとエーベルは、一階の最も奥に位置する部屋の前に来ていた。

ロビーから2つに別れた道は、ここでまた1つになる。

ノエル達ももうじき来るだろうが、二人は先に部屋を調べることにした。

 

「やたらとこの部屋の周辺はセキュリティがしっかりしてるな。」

 

ゼシルがそう呟くと、エーベルは辺りを見渡した。

監視カメラや、セキュリティロックのかけられたドアが目立つ。

もっとも、電源が落ちているため警報も鳴らなければカメラも作動しておらず、ドアは重火器を用いて無理矢理に突破することができた。

 

「たしかに、この部屋は怪しそうだね。」

 

セキュリティロックに構わず、部屋のドアを力ずくで解放する。

二人は銃を構えて部屋の内部へと侵入した。

 

「なんだ、ここ...?」

 

部屋の中にはガラス張りの空間があり、そのガラスは割られていた。

辺りに散らばる赤い液体と複数の死体、そして無数の注射器。

 

「気味が悪いね。一体、なんの実験をしてたんだか。」

 

天井に付けられているダクトには不自然に空いた大きな穴がある。

 

辺りを見ると、1つだけ電源の入ったコンピューターがあった。

エーベルはどうやらそれを弄っているらしい。

 

「非常用プログラムで大半のデータが消されてるみたいだ。」

 

「異常なのは確かだし、具体的な研究内容に繋がるものでも見つかればいいけど...。」

 

ゼシルが床を見ると、そこには1冊のノートがあった。

血で赤く染まっているが、無事なページも多そうである。

ノートを開き、書かれた内容に目を通してみる。

 

 

――ようやく提出できる程の試薬品が出来上がった。

これで奴からの資金が途絶えることはない。

薬物投与からの事後観察は不十分であるが、理論上問題はない。

まずは奴に成果を見せる方が先だ。

これで人為的に緑の化け物に近い存在を作り出すことができる。

あとは、それをAAPの神経系と繋ぎ合わせてコントロールすることができれば...。

後日、それらの実験を行うとしよう。

奴が『最終浄化』と呼ぶ人類の滅びの日は近いらしい。

それまでに全てを終わらせて、掲げる理想を実現させなくては。――

 

 

適当に開いたページを読み終えたゼシルは言葉を失った。

ここでは、恐らくAAPのコントロールに関わる研究が行われていたのだ。

そして、その制御ユニットとして、生きた人間を用いるという非道な技術の開発を行っているようだ。

それに、記されている『奴』とは誰のことだろう?

『最終浄化』とは何のことだ?

 

唐突に訳のわからない物事が頭に入り込んできて、ゼシルは混乱する。

 

「ゼシル中尉、大丈夫かい?」

 

エーベルがコンピューターを操作しながらゼシルに声をかけた。

大丈夫なはずはないが、とりあえず落ち着こうと深呼吸をする。

 

「う、うん、大丈夫。早くノエル達を呼ばないと。」

 

ヘルメット内の通信機能を使おうとしたとき、施設内に女性の悲鳴が響き渡った。

この声は、恐らくノエル、そしてクーデリカのものだ。

 

悲鳴を聞いた途端に、ゼシルとエーベルはすぐに駆け出していた。

 

 

 




雰囲気がカプ○ンのゲームに近くなってしまった気がします。
この話は随分と前から決定していたのですが、タイムリーに最近3DSのバイ○ハザードをやり始めまして。
どことなく雰囲気を参考にさせていただきました。

最初は単に未知の生命体との戦いでしたが、今後は戦いが複雑化していきます。
では、また次回m(__)m
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