拙い文章ですがお付き合いいただけると幸いですm(__)m
南アフリカ鉱山基地から数キロの地点。
侵攻するAAPの規模を確認、及びMMSの到着まで時間を稼ぐべく出撃した戦闘車両部隊の姿があった。
「思ったより数が多いぞ!」
「前に出すぎるな!」
搭乗員の声が通信の間で飛び交う中、戦闘車両『オルーガ』の部隊はAAPの侵攻を食い止めようとしていた。
戦闘車両オルーガ。
MMSが開発されるまでは戦車に代わる次期主力兵器としての座にあった。
形状は芋虫をモチーフにされており、頭部の横に大型の車輪を備えている。
背部は展開可能の武装コンテナになっており作戦に応じてミサイルやガトリング砲などを装備可能、汎用性において非常に優れていた。
「2番機沈黙!自爆装置を起動した模様です!」
状況は不利、予想よりもAAPの群れの規模が大きかったこと、そして大型AAPの戦闘能力が高かったことが原因とされる。
既に数機のオルーガが沈黙しており、AAPに寄生、同化されないよう自爆装置を起動する者も少なくなかった。
「くそっ!脱出装置の1つでもつけてくれりゃいいものを!コストが高まるとか言っといて自爆装置は漏れなく搭載かよ!」
聞こえもしない悔しさと哀しみともつかない悲痛な叫びを上げるものの、また1機と沈黙していくオルーガの数は増していった。
残るオルーガが数機となったとき、MMS所有の中隊が間もなく到着するという連絡が入った。
「やっとかよ...。各機に通達、戦線を離脱せよ!繰り返す、戦線を離脱せよ!」
飛行する3機のプレディカドール弐式、それに続く4機の空中バイク。
南アフリカ鉱山基地から出撃したノエル・バニミールを隊長とする中隊である。
ゼシルはコクピット内で緊張を沈めようと試みたものの、慣れぬMMSでの実戦のためにその試みは失敗した。
常に通信回線を開いているため、同じく緊張しているのであろうノエルの息遣いまで聞こえてくる。
「ゼシルぅ、緊張してんのか?ヒャハハハ!」
ゼシル機の後ろを飛行している空中バイクに搭乗しているクイーガー・ネルソン少尉がゼシルをからかうように言ってきた。
凶暴な性格で空中バイクでのAAP撃破数はP.E.S.Tの中でも上位にランクインしている。
その凶暴さが味方を巻き込むのではないかという危惧に繋がり、こうしてMMSではなく空中バイクが割り当てられていた。
「仕方ないだろ、MMSでの実戦は初めてなんだから。」
「俺にもプレディカドールの1機くらい用意してくれりゃあAAPなんざ一瞬で消せるのによ。」
クイーガーにプレディカドールを与えたら敵だけでなくこちらも消されるだけだと考えたそのとき、ノエルから各機への通信が入ってきた。
「各機へ通達、もう少しでAAPの大群とご対面よ。気を引き締めてかかるわよ!」
各々に返事を返しつつゼシルはモニターで外の様子を確認する。と、いくつかの煙が上がっていた。
先に出撃したオルーガの部隊だろうか?
「2体ほど厄介なデカブツがいるみたいだ。」
ボマーの報告に視線が大型のAAPに移る。
大型AAPが2体、片方は大型戦車に寄生したタイプ、もう1体は細長い4本の足の先にそれぞれ車両をくくりつけているタイプ。
「こりゃどっちも面倒だな。」
ゼシルが呟いたそのとき、ゼシル機の後ろに続いていた空中バイクのクイーガー機が急に加速し、AAPの群れに突っ込んでいった。
「ヒャハハハ!先行くぜぇ!」
「クイーガー!勝手な行動は許さないわよ!」
「早くしねえと芋虫全滅しちまうぞ?」
芋虫、と称したのはオルーガのことであろう。
散らばった破片から考えるに既に何機ものオルーガが失われたとわかる。
空中バイクに備え付けられた機関砲で弾幕を張りながら小型AAPの群れを切り裂くクイーガー。
クイーガーの勝手な行動は軍隊としてはあるまじき行為だったが、オルーガ部隊が危険に晒されている以上、一概にクイーガーを責めることはできなかった。
それでもやはりノエルはやや不満な表情を見せた。
作戦中の仲間割れは最悪だと判断したゼシルは自分達の行動について話題を変えた。
「隊長、分担は?」
「私とボマーで戦車型をやるわ。ゼシルはあの足長いやつね。空中バイクは小型及び中型の殲滅を。」
「了解。」
ゼシルはプレディカドールを上昇させ、目標である大型AAPに狙いを定めた。
両腕と同化した武器『ガン・シックル』が続けざまに火を噴く。
ガン・シックルは名前の通り射撃武器と小鎌が融合した武器である。
刀身を折り畳むことで現れるガン・モードと刀身を展開させて使用する近接戦闘用のシックル・モードに切り替えることが可能で近~中距離での戦闘ができるようになっている。
ゼシルが放った銃撃は大型のAAPにかすることなく地面に当たり、砂埃を舞い上げた。
「思ったより速いっ!」
ゼシルが分担した大型のAAPは大きな口を持つ楕円形の胴体に、そこから生えている4本の足には同化したのであろう軍用車が備えれており、これにより見た目に似合わぬ高機動の移動を実現させている。
楕円形の胴体からはさらに人型に近い胴体があり、頭部には毒々しい熱帯花、そして両腕の触手の先には食虫植物のようなものがついている、非常に奇妙な形をした姿であった。
足を止めさせるため、くくりつけられた軍用車を狙って再びガン・シックルを撃つ。
軽快な動きで弾丸をかわされ、流れた弾は地面や周りをうろついていた小型AAPに当たった。
小型AAPから吹き出るのは体液ではなく赤い血。
一部の小型AAPは本体が植物なのではなく人間に寄生するタイプである。
人間としての生命を失った者ならまだマシで、人として意識があり、けれども自分の意思で動けない者が一番厄介なのだ。
人と同化したタイプを初めて殺したときのことをゼシルは忘れない。
そして今回も、ゼシルに精神的苦痛をもたらすのだった。
ゼシルの攻撃を回避して蛇行しつつ後退した大型AAPは、沈黙したオルーガから丁度這い出てきたパイロットに狙いを定めたようだった。
オルーガに急速に迫るAAP。
ゼシルは何も考えずにプレディカドールを一気に加速させ、低空飛行で勢いを弱めずそのまま大型のAAPに体当たりをかました。
縺れるように倒れ込み、地面を引きずりながらもゼシルはモニターを見て、オルーガのパイロットが助かったことを確認した。
その後どうするかまでは考える余裕がなかったのだが、今度はゼシル自身に危険が迫っていた。
縺れるように倒れ込んだため、大型AAPとプレディカドールの距離は0、そして鳴り響く機体の警告音。
大型AAPの触手に捕らわれていたと気づいたのはそう時間がかからず、そしてプレディカドールの左腕から同化されつつあることにもすぐに気づくのだった。
「まずい、同化される!?」
プレディカドールが下に抑えつけられている状態であり、まともに動けるわけはなかった。
アラームがけたたましく鳴り続け、左腕損傷を知らせていた。
ガン・シックルをシックルモードに切り替え、目の前にある大型AAPの胴体を力の限り引き裂いた。
生々しい音と共に吹き出る緑色の体液を浴びながらもなんとか縺れた状態からの脱出を試みる。
「これでもダメか...!」
何度も何度も胴体にシックルを突き刺すも一向に大型AAP は離れず、さらにはプレディカドールの左腕と同化を始めた逆の触手でこちらの頭部に掴みかかった。
まずい、このまま頭部まで同化されたらいよいよ視覚まで奪われることになりかねない。
さらに周辺からは小型AAPの群れが集まり始めていた。
「情けねえなぁ、ゼシルぅ!」
クイーガーと他数名の空中バイクが機関砲で大型AAPの頭部に集中砲火を浴びさせた。
通り去り、そして旋回、ゼシル機に迫る小型AAPを蹴散らした。
「クイーガー!」
彼らが生んだ大型AAPの僅かな隙。
それをゼシルは逃さなかった。
右腕のシックルで同化された左腕を根本から切り離し、そのままの勢いで頭部に掴みかかった触手を半ばから切断する。
流れ出る体液を浴びながらも反射的に背部の羽を展開し、暴風を巻き起こして一気に上昇した。
眼下の大型AAPにガン・シックルを立て続けに発射する。
数発が命中し、体の至るところから体液を吹き出して高音の奇声を上げる大型AAP。
完全な不意打ちに繋がったこの連携により、大型AAPは堪らず仰け反った。
しかしそれでも大型AAPは倒れず、それどころか残る1本の触手をゴムのように伸ばしプレディカドールに襲いかかった。
直線的に伸びた触手を軽やかに回避するゼシル機だったが、今度はゼシルが不意を突かれる番であった。
背後からの攻撃を知らせるアラームが鳴り響いた。
「後ろ!?」
それがノエルとボマーが分担した戦車タイプのAAPからの砲撃だと気づいたときには既に遅かった。
右羽を撃ち抜かれ、墜落するゼシルのプレディカドールは受け身を取ることもできずに地面に叩きつけられた。
「ゼシルっ!」
「ゼシル大丈夫か!?」
衝撃で気を失わずに済んだのはノエルとボマーの声のお陰であろう。
「ああ、こっちは大丈夫。」
「隊長、やっぱり俺はゼシルの援護に!」
ボマーは必死な声色でノエルに分担の変更を申し出た。
「ありがとうボマー。でも、与えられた仕事くらい、やり遂げて見せるよ...!」
機体の損傷が危険域に入ったことを知らせるアラームが鳴り響く中、堕ちたプレディカドールを逃すまいと急速に接近してくる大型AAPの姿を確認した。
楕円形の胴体から覗く大きな口が刻々と迫っていた。
左腕、頭部、右羽を損傷したプレディカドールをなんとか立ち上がらせ、迫り来る大型AAPに対して構えを取った。
「なんだろう...。やけに頭がスッキリする。」
頭が冴えている状態とでも言うのだろうか?
考えずとも次にすべき行動が頭に浮かんでくる感覚。
一人呟いたゼシルは残った左羽を使って迫り来る大型AAPに向かってプレディカドールを加速させた。
さながら弾丸のように飛び出したゼシルのプレディカドールと徐々に速度を上げて急迫する大型AAPの相対速度は凄まじいものであった。
プレディカドールの突然の動きに対処しようと大型AAPは急ブレーキをかけるものの、ゼシルの攻撃はすぐ目前に迫っていた。
しかし、あと数メートルでプレディカドールの小鎌が届こうとした時に、大型AAPは脚の先に備え付けられた軍用車を盾として使ったのだ。
ゼシルの手に伝わる固い感触。
そしてそれはプレディカドールの小鎌にヒビが入った感触に変わった。
軍用車の装甲は並みの自動車の比ではない、故にガン・シックルでも切り裂くには至らなかったのだ。
「だとしてもっ!」
大型AAPの脚部をすれ違い様に切り裂こうとした試みは失敗したものの、頭がクリアとなったゼシルは頭をフル回転させ次の行動へ移った。
加速したエネルギーをシックルと軍用車の接点を軸とした遠心力に変える。
くるりと宙を舞ったプレディカドールは大型AAPの胴体の上に舞い降りた。
6本の脚で大型AAPにしがみつき、ガンモードへと切り替えたガン・シックルを大型AAPの頭部に突き付けた。
「チェックメイト、だね。」
言い終わらないうちにガン・シックルから吐き出された弾丸は大型AAPを貫き、やがて脚の先の軍用車にまで達し、そこから引き起こされた爆発の中で大型AAPはついに活動を停止した。
基地へと帰還したバニミール隊。
この隊の中での犠牲者は0。
目立った損害としてはゼシルのプレディカドール弐式の中破、そしてボマーのプレディカドールの頭部が欠けたくらいだった。
「み、皆さんお疲れさまです!それと、ご、ごめんなさいっ!」
特に損傷が酷かったゼシルのプレディカドール補修のためにメンバーの何人かが整備兵と共に作業をしていたのだが、突然そんな声が聞こえてきた。
やってきたのは、シエル・バニミール中尉。
名前からわかる通り、隊長のノエル・バニミールとは血の繋がった姉妹である。
「寂しかったぜ?シエル副隊長殿。」
「わ、私のプレディカドールの整備が遅れてしまって...」
しょんぼりとしたシエル。
こんなにおどおどとした性格ではあるが、ボマーが言った通りこのバニミール中隊で副隊長を務める。
人を引っ張るようなタイプではないが、的確な洞察力と冷静な判断で姉のノエルをサポートしている。
「あんまり副隊長からかうと姉貴が来ちゃうよ?」
ゼシルがボマーにそう忠告した矢先、
「誰!シエルいじめたの!」
颯爽とノエルが現れたのだった。
ボマーとノエルがごちゃごちゃやってるのをゼシルはどこか温かい気持ちで眺めていたそのとき、ふと視界の端に空中バイクを整備しているクイーガーの姿を見つけた。
「クイーガー。」
「なんだぁ?ゼシルかよ。」
ちらりとこっちを見ただけで再び作業を始めるクイーガー。
「クイーガー、さっきは援護、ありがとうね。」
ゼシルが言ったのは、大型AAPに押さえつけられていた時のことである。
クイーガーや他のメンバーの空中バイクが来てくれなければ、大型AAPか、小型AAPに同化されていたかもしれない。
「らしくもねえなぁ。」
はぁ、と溜め息をついたクイーガーはこう続けた。
「自分が助けた側のときは礼なんざ要らないとか言ってる癖によ、自分が援護されたときはきちんと言うんだな。」
「それはそうだけど、うーん、でも感謝はほんとにしてるから...。」
クイーガーに図星を言われて言い返せないゼシルであったが、自分はやはり感謝を示したいと思っている。
「ヒャハハハ!やっぱゼシルは面白い奴だぁ。今回は礼を受け取っといてやるよ!」
照れ隠しなのか、最後の方は早口になっており、またすぐに整備作業へと戻った。
そのとき、
「あ!クイーガー!作戦行動時によくも勝手に突っ込んでいったわね!」
ノエルがクイーガーを見つけるなり怒号を上げて走ってきたのだ。
クイーガーの顔がみるみる青ざめていくのがわかった。
「やべ、ここは退散かな。ヒャハハ!」
作戦を終えた中隊は、どこか温かい雰囲気に包まれていたのだった。
今回は主に戦闘シーンでした。
やっぱり戦闘シーンは難しいです(笑)
どうしたら戦場の臨場感が出せるのか、まだまだ勉強しなければなりませんね。
今回登場した戦闘車両『オルーガ』ですが、完全にゾイドに登場する『モルガ』をモチーフにしましたごめんなさい(笑)
一段落ついたような終わりになりましたが、まだまだ彼らの、そして人類の戦いは始まったばかりです。
ある程度の物語は決まっておりますが合間合間がまだまだ構想が足りておりませんので、遅くとも1週間に1話程度のペースになるかと思います。
さて、ここまでお付き合いいただいた皆様、ありがとうございますm(__)m
ご指摘、ご意見、ご感想は遠慮なく言っていただけると嬉しいです。
では、また次回に続きます。