地獄のテストラッシュという、学生たる者の試練がありまして(;つД`)
ですがなんとか更新できて良かったです。
「間に合った、みたいだね...。」
朦朧とする意識の中で、エーベルは声を絞り出す。
フォートレスから放たれたレーザー攻撃。
その射線上にはゼシル達がいたのだった。
エーベルはほとんど反射的にプレディカドールを動かし、その射線上に姿を晒した。
レーザーはエーベル機のコクピット付近を貫いたものの、拡散したレーザーはゼシル達に届くことはなかった。
コクピット内に響く警告アラート。
モニターに表示される機体の損傷度は、コクピット付近に重大なダメージがあることを示している。
爆散しなかっただけ幸運かもしれないが、しかし、エーベルは自らの体の異変に気づいた。
「冗談が、過ぎるよ...。」
自嘲気味に笑おうとするものの、体に走る激痛に思わず顔を歪める。
レーザーはほとんどコクピットに直撃したと言っても過言ではなく、レーザーの熱と小爆発による破片が、エーベルの左腕を奪い去っていた。
レーザーによって蒸発したか、どこかに転がっているか。
どちらにせよ、エーベル自身の左腕は失われていたのだった。
「エーベル、早く脱出して!」
ゼシル達からの声が聞こえるが、朦朧とする意識のせいでよく聞き取れない。
操縦系にもダメージは届き、システムがダウンしていく。
身動きもとれないまま、エーベル機は地表へと落下。
重力に引かれ墜落していくプレディカドールの中で、視界の端に赤く輝くエネルギー光を見た。
「ああ、懐かしい...。悲しみの、光だ...。」
消えそうな意識の底から、膨大な量の情報がエーベルの脳内に流入していく。
失われていたかつての記憶が今、彼の元へと還っていくのだ。
「僕は、責任を取らなきゃ、ならないのか...。」
自分が何故、予見眼の能力を持っているのか。
そして、自分は何をしなければならないのか。
自分は何者なのか。
全ての記憶が繋がる。
死ねない、全ての責任を取るまでは。
ノーヴィアントレーネーが無数の光の筋を生み出し、やがてそれは一点へと集中していく。
それぞれの筋が意思を持つかのように、一点へと一斉に飛んでいった。
凶暴で美しき光はフォートレスを貫き、やがてフォートレスから生体反応が消失する。
ノーヴィアントレーネーから過剰なまでに放出されるエネルギー光は、エーベルにとってひどく魅力的なものに見えたのだった。
それは、高エネルギーに対する本能的な欲求。
フォートレスがMMSから放出される高エネルギーに反応したように、エーベルもまた、高エネルギーを欲した。
「せめて、再生分のエネルギーだけでも...。」
焦るように操縦幹を握り、残る右腕でプレディカドールを動かそうとする。
システムダウンを起こしている現状では、起き上がることすら厳しいものの、プレディカドールはエーベルに応えてみせた。
残る少ないエネルギーを動力へと回し、やがてプレディカドールはノーヴィアントレーネーへと向かって飛び出した。
ノーヴィアントレーネーに搭載されたパーピリオブースターが暴走しつつあることに気づくには時間は要らなかった。
クーデリカはコクピットの中で精神的に追い詰められながらも、常に機体の状況に目を配っていた。
パーピリオブースターの羽はコミュニケーターの能力を用いて動かすのだが、精神的に追い詰められたせいで制御が利かない。
また自分の無力さで仲間を危険に晒してしまった。
いや、『また』ではない。
それはクーデリカというかつての人間の記憶なのだ。
きっと、彼女は辛かったに違いない。
だが、今のクーデリカも辛いのだ。
自分が信じてきたもの、全てが造られた偽りの記憶なのだから。
「クーデリカ、しっかりしてよっ!」
ノエルがコクピット越しに話しかけてくるも、それに答えていいのかさえ躊躇ってしまう。
「クーデリカ、どうしたの?何かあったの?」
やめて、やめて...。
造り物の私を心配しないで。
その名前で呼ばないで。
ひたすら念じ、拒絶の心を送信型コミュニケーターの能力として一気に拡散させた。
私が送る、最初で最後のメッセージ。
皆には感謝と、謝罪をしなければならない。
直接言えない臆病さには、本当に嫌気がさす。
だが、今の自分にはこうして皆に意思を伝えることしかできないのだ。
造り物の私を、仲間だと言ってくれた皆にはどれだけ感謝しても足りないぐらいだ。
だが、所詮私は造られた人形。
だから、私は本来の目的に沿っていかなければならない。
心の底では、88中隊の皆といたいという気持ちがある。
だが同時に、役目を放棄した人形に存在価値などないということも理解している。
その葛藤が私を苦しめる。
少し前の自分なら、それでも平然としていたかもしれない。
だが、ノエルやゼシルと出会って、人間らしさを学んだ。
人との繋がりが、こんなにも素晴らしいのだと知った。
だが、造られた存在の私はもう皆といられない。
今まで、本当にありがとう。
そして...
さようなら。
それだけを伝えて、機体の自爆装置へと手を伸ばす。
どちらにせよ暴走した機体を止めるにはこうするしかない。
普段なら脱出装置を使うところだが、そんなことはしない。
未練はあるが、ここで死んだ方がラクになれる。
4桁のパスワードを入力すれば、すぐに意識ごと消え去る。
そう覚悟していても、自然と涙が溢れ出ていた。
淡々と入力し、最後の1桁を押そうとする。
これで、本当に終わり。
逃げ出した私を、どうか許してほしい。
「クーデリカ、何考えてる!?そんなことしたって意味ないだろ!?俺達にとって、クーデリカはクーデリカだ、生い立ちなんてどうでもいいよ!」
「死んだら絶対に許さないから!生きろ!死ぬな!逃げるな!勝手な行動は、許さないって、言ってるでしょ...!」
皆が私を止めようしてくれている。
本当に、皆は優しい。
その優しさに、思わず笑みが溢れた。
同時に、涙も溢れる。
ごめんなさい。
これ以上生きていても、エドガーの駒として生きる他ないから。
目を瞑り、指先に力を込めようとしたその瞬間、機体全面から大きな衝撃が襲ってきた。
「な、何!?」
その衝撃で指先が狂い、入力に失敗してしまう。
画面モニターにはエラーの文字が現れるのみだった。
前面モニターに映るのは、プレディカドールの姿。
コクピット付近が大きく損傷したエーベル機であった。
「何を...しているの...?」
「僕は、こう見えて...効率重視の...性格だからね..。」
エーベルが途切れ途切れに言葉を発する。
そしてプレディカドールのガン・シックルをノーヴィアントレーネーの背後にあるパーピリオブースターに突き立てた。
漏れ出すエネルギー光がノーヴィアントレーネーとプレディカドールを包み込む。
「君を止めて...機体の暴走を止めて...一石二鳥、いや、一石三鳥かな...。」
やがてノーヴィアントレーネーのエネルギーが尽き、地表へと落ちていく。
それをゼシルがプレディカドールで受け止める。
彼らは、とりあえず安堵する他なかった。
クーデリカの真実を知り、それでも彼らは彼女が大切な仲間であると言い切ることができる。
こうして防衛都市でのフォートレス殲滅作戦は幕を閉じたのだった。
「今回の件は見事であった、エドガー・スタインズ。」
薄暗い会議室で、数人の幹部が席についていた。
彼らはP.E.S.T上層部にしてエドガーを支持する派閥である。
彼らがエドガーのその非人道的な研究をある程度まで隠蔽している。
MMSの提供から研究施設、基地までエドガーに与え、いわゆるスポンサー的な立ち位置にいる者たちである。
「計画の方はどうなっている?エーリッヒ・アイヒンガー大佐殺害の件で貴様はこれ以上堂々と動けるわけではなかろう?我々とて完全に隠蔽工作ができる訳ではないからな。」
「ご心配はありませんよ、皆様。もうじき『最終浄化』が起こります。こちらも既に新型兵器の開発に成功しております、計画のゴールも目の前です。」
幹部が各々に頷き、小さく拍手が沸き起こる。
「これより私は最後の準備に取りかかります。皆様には最後のお願いがあるのですが...。」
わざと申し訳なさそうにエドガーは幹部に言う。
もちろん、これはパフォーマンスであることは幹部らにもわかっている。
「かまわん、言え。」
「ニュージーランド基地までの密輸空路を確保していただきたいのです。そして、多数の機体を詰め込める大型輸送機の手配も...。」
やや考えている様子を見せる幹部らは、やがて顔を上げて了承の意を示す。
不適な笑みを浮かべたエドガーは深々と礼をしてその場を去ろうとする。
しかし、幹部らに引き止められる。
「最後にもう一度貴様に聞こう。この戦いが終われば、理想の世界が出来上がるのだな?」
「ええ、もちろんですよ。争いとは無縁の世界、そして人類は次のステップへと進むのです。」
ゼシル達は作戦終了後に、ブリーフィングルームに来ていた。
ここでは聞かれたくない話もできる。
「クーデリカ、大丈夫かな?」
第一声は、ゼシルが発したその言葉だった。
一番ショックなのはクーデリカ自身だろう、ずっと信じてきたものが、他人の物であったのだから。
帰還後、すぐに技術開発局の局員が彼女を運んでいった。
そのこと事態不安なのだが、ゼシル達にできることは限られている。
「あの技術開発局だもの、言っちゃ悪いけど、あり得なくはない話よね。」
人間をモルモット同様に扱うエドガー・スタインズの機関。
人間の複製を行っていても、ノエルの言う通り、不思議ではない。
「たぶん、クーデリカと同じような子はたくさんいるわ。」
「他にもクローンがいるってこと?」
ややノエルは考える素振りを見せ、やがて口を開いた。
「ディアンケヒトの研究施設を調査したとき、襲撃してきたプレディカドールに乗ってたパイロットが、どことなくクーデリカに似てた。見た訳じゃないけど、コミュニケーター特有というか、クーデリカみたいなオーラというか...。」
そもそも、技術開発局は何故コミュニケーターを増やそうとしている?
AAP殲滅の主戦力とするため?
いや、だとしたら人間とAAPを用いた合成実験など行うはずがない。
AAPを利用するつもりなのか?
だとしたら、何のために?
思考を巡らせているうちに、ある人物達がこちらへ向かってきた。
服装から見るに彼らは一般兵ではないようである。
本部の事務関係の人物だろうか。
「第88独立機動中隊隊長ノエル・バニミール大尉は貴官で合っているな?」
ゼシル達はすぐに立ち上がり、その人物に敬礼する。
ノエルは警戒した表情を向けていた。
「そうです。何か私に用ですか?」
「我々は人事局だ。本日20時より第88独立機動中隊所属クーデリカ・マナロフ少尉及びエーベル・ハーネ少尉は除隊となる。補充要員については追って通達する。異論は認めん。」
いきなりのことでノエルは驚きを隠せなかった。
もちろん、ゼシルもその場にいたボマーもシエルも、同じ様子であった。
「ど、どういうことですか!?こんないきなり除隊通達なんて普通ありませんよ!」
「隊長殿落ち着けって。」
食ってかかるノエルを必死に止めようとするボマー。
だが、彼女は気にも止めない。
「仕方ないだろう。技術開発局の要請だ。それに上層部も承諾しているのだ、諦めることだな。」
それだけを言い放ち、人事局の人物はその場を後にした。
ただ呆然とする88中隊のメンバーのみが残され、誰も言葉を発しない。
「何よ、いきなりすぎる...。」
ぽつりと呟くノエルを残し、ゼシルは走り出した。
「ゼシルっ!どこ行くんだ!」
ボマーが声を上げるも、ゼシルは無視して走る。
クーデリカは恐らく技術開発局の監視下にあるだろうから、今すぐに会いに行くことは叶わないだろう。
ならば、エーベルのもとへと行くしかない。
やがてエーベルの病室の前へやってきた。
先の作戦で負傷したと聞いているが、それにも構わず扉を開けた。
「エーベル!」
突然の訪問者に驚いた様子のエーベルは、窓際で花に水を与えていた。
「もう人事局から話は聞いたのかい?」
「うん。それより、怪我は大丈夫?」
見たところ、どこにも酷い怪我はなさそうである。
左腕が痛むのか、頻繁に気にしている様子はあるが、それ以外に気になる点はない。
コクピット内部は出血の跡が酷いと聞いていたが本人は元気そうである。
「ああ。一時はどうなるかと思ったけど、なんとかね。」
やや言葉を濁しているようにも見受けられたが、ゼシルは話を本題へと移す。
「除隊されるって本当なの?拒否はできないの?」
「上からの命令だし、拒否は難しいだろうね。この後は技術開発局直属の部隊に編入されるみたいだ。恐らく、彼女も一緒にね。」
彼女といったのはクーデリカのことだろう。
技術開発局の直属の部隊、いや、直属の部隊と称したモルモットの集まりに過ぎないのではないか?
エーベルも予見眼としての能力があるし、クーデリカは元々技術開発局所属のパイロットである。
優れたパイロット達を用いて、何かを企んでいるように思えてならない。
なにより、嫌な予感が胸の中から消えないのだ。
「エーベルも聞いたろ、クーデリカの真実を。そんなことをする技術開発局の部隊に所属したら、何をされるかわからないよ。」
ふっ、と小さく笑うエーベル。
窓の外を見上げ、目線はそのままに口を開いた。
「先程の作戦中に、記憶が戻ったんだ。僕が何をすべきなのか、なぜ予見眼の能力があるのか、やっとわかった。その上で、僕はスタインズについていくことにしたよ。」
エーベルの告白に、思わずゼシルは声を荒げて反論する。
「スタインズは何を企んでいるのか、わかってるのか!?私利私欲で実験を楽しむ、非人道的な奴のところに行ったって――」
「彼は争いのない世界を造ろうとしているんだ。AAPを用いて、人類を統制する。それが彼の目的だ。」
力で力を屈服し、統制する。
かつてどこかの国で実際に行われていた、独裁政治を思わせる。
そんかものが平和に繋がると、本気で思っているのだろうか?
「そんなもの、正しいとは思えない。俺はそんな世界、望んでない!」
力を用いて争いを根絶したところで根本的な解決にはなっていない。
ましてや、人類を危機に陥れたAAPを用いるなど、さらなる対立を生み出すだけではないのか。
「正しいか間違いか、これは価値観の対立になるね。例えどうなろうとも、僕は全ての責任を取るために、スタインズについていく。勝手な行動を許してほしい。」
俯くゼシルに、さらにエーベルは言葉を続けた。
「物事の片面だけを見てはいけない。難しいことだけど、裏にある思惑を感じ取るのも重要なことだ。」
「それは、どういう――」
ゼシルがそこ言葉の意味を訊ねようとしたところで、エーベルは部屋を出ようとする。
まるで、これ以上の話はしないと言っているようである。
「君が正しいと思えることは、敵を作ってでも遂行すべきだよ。――それと、1つだけ教えてあげるよ。今夜、マナロフ少尉と僕はスタインズに連れられてニュージーランド基地に向けて出発する。彼女を取り戻したいなら、君の正しいと思うことに忠実であることだね。」
皆といたいと、コミュニケーターの能力を用いて話していたクーデリカ。
それでも彼女は自分の生い立ちを嘆き、ここにいるべき者ではないと言っていた。
ならば、答えは自ずと見えてくる。
彼女が距離を置くなら、こちらから距離を詰めるまでだ。
わざわざエーベルが今夜に出発することを伝えてくれたのには意味があるのだろう。
クーデリカは、かつてのクーデリカの記憶を移植されているのだ。
ならば、全ての記憶を消すことも可能なわけだ。
スタインズなら、都合の良い駒を作るためなら簡単に実行しそうなこと。
残された時間は少ない。
ゼシルはクーデリカを取り戻すべく、決心を固めたのだった。
深夜1時を回る頃、ゼシルはMMSハンガーへと繋がる通路へと向かっていた。
エーベルの話では、今夜の内に出発すると言っていた。
わざわざ深夜に動くには、何かしらの理由があるのだろう。
彼らが出発した後に、プレディカドールで後を追跡する算段である。
夜間ならば放出エネルギーを最小限に抑えることで察知されにくい。
走っていく内に、通路の奥に人影を見つけた。
その姿は段々とはっきりしていき、その正体がはっきりとする。
「あ、ゼシル。こんな時間にどうしたの?」
眠れなかったのか、ノエルがいたのだ。
普段なら寝ているであろう時間だが、今日に限っては眠れなかったようである。
「ちょっと、トイレに...。」
あからさまな嘘はノエルに通じない。
「なーんか、怪しい。」
真っ直ぐな目で、まるで心の中まで見透かされそうな目で、ゼシルを見つめる。
「あんたが何か企んでそうなのはわかったわ。でも、勝手な行動は許さない。」
洞察力に優れる彼女はすぐにゼシルが何かを企んでいることに気づく。
ゼシル自身、嘘が下手であるのも要因であるが。
「時間がない。そこを退いてほしい。」
ゼシルも、必死な表情で訴える。
ノエルに協力を頼むのも、気が引ける。
帰還したら間違いなく違反行為で罰を受けるのが目に見えているからだ。
それがわかっていて、ノエルまで巻き込む訳にはいかない。
「男の子なら、力ずくで通ってみなさい?」
仕方ない、女相手に手を上げるのは気が引けるが、これも試練だ。
一気に距離を詰め、鳩尾に拳を入れる。
相手が仲間だから、どうしても力が抜けてしまう。
これなら、完全にノエルは回避して反撃できてしまうだろう。
だが、ノエルは避けることもしなかった。
「なんで...?」
彼女は避ける気どころか防御することもせず、反撃もしなかった。
「ふーん。あんたがあたしに手を上げるなんてね。あんたが本気なのは、よくわかったわ。」
その瞬間、一瞬でゼシルは背負い投げを食らった。
流石としか言いようがないが、最初の攻撃をわざと受けたのには驚いた。
罪悪感もあるし、だけど、ここで退くわけにはいかないと言う使命感もある。
「白状しなさい。何しようとしてたの?」
ゼシルは全てを白状した。
クーデリカを取り戻したいという願望と、馬鹿げたゼシルの作戦内容を。
「いいわ、その話乗ってあげる。そもそも一人で行ったってハンガーの扉開けるの、誰がやるつもりだったのよ?」
そこまで言われてようやく気づく。
一人ではこの作戦は不可能であったことに。
今や強い味方を得たことに安堵を感じ、それと同時に巻き込んでしまったことに対する罪悪感もある。
二人で通路を抜け、吹き抜けとなっているMMSハンガーへと辿り着く。
彼らの機体は整備中のようであり、動ける機体は旧型となっているプレディカドール壱式のみである。
「1つ聞きたいのですが、向こうの壱式に疑似無限機関は搭載済みですか?」
近くにいた整備兵に聞く。
なぜそんなことを聞くのかと不思議そうな顔をしていたが、搭載しているとだけ答えてくれた。
深夜というだけあって、整備兵は数人しかいない。
ハンガー内の管制室にも1人のみ。
行くなら今しかない。
「ゼシル、失敗は許さないわよ?」
「わかってる。ノエルも管制室は頼んだよ。」
二人で頷き合い、行動を開始する。
プレディカドール壱式の前までこっそりと移動し、すぐに乗り込む。
コクピットが閉まる音が異様に大きく感じられ、すぐに整備兵が異変に気づいたようだ。
こちらに向かってくるのがコクピット内のモニターから見える。
内部からロックをかけ、プレディカドール壱式のシステムを起動していく。
メインカメラの光が灯り、やがて機体は動き出した。
「壱式のパイロット、すぐに機体から降りろ!今なら単なるおふざけで済むぞ!」
整備兵からの呼び掛けを無視し、ゼシルはハンガーの扉の前へと機体を動かした。
整備兵が警報器を鳴らしたのか、すぐにサイレンが鳴り始めた。
ノエルの方は大丈夫だろうか?
いや、今は彼女を信じるしかない。
まもなく、壱式のコクピット内モニターに管制室と通信が繋がった。
画面越しにノエルが見える、どうにか管制室の制圧に成功したようだ。
「じゃあ、扉を開けるわね。絶対に無事に戻ってきなさい。クーデリカも連れて。」
帰還後の処罰など、今は微塵も気にならない。
今はただ、クーデリカを取り戻すことだけを考える。
「ノエル、本当にありがとう。この借りは絶対に返すから。」
「いいわよ、別に。早く行かないと保安局の鎮圧部隊が来るわ。」
人も随分と集まってきた。
ノエルも恐らくは保安局に捕らわれるだろう。
改めて自分がやろうとしていることの重大さを感じる。
だが、正しいと思うことをやる、エーベルの言葉を信じて今は前に進むしかない。
「行ってくるよ。必ず、クーデリカと一緒に帰るから。」
プレディカドール壱式を飛翔させ、暗闇の空へと飛び込んでいった。
読んでいただきありがとうございますm(__)m
今回は少しだけ文字数が多かったです。
次回の更新も2週間後くらいになってしまうかも知れませんが、なんとか頑張ります。
あと4話くらいで完結しそうな感じです。
次回クーデリカ奪還編で、その後に最終決戦編ということになります。
では、また次回m(__)m