病に蝕まれる少女は家族やカード達と共に舞う   作:寝床

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余命を言い渡された少女は、新たな一歩を踏み出す。

彼女、彼、彼らに待ち受けている脅威は、ゆっくりと忍び寄っていく。




私は、俺は、また会う。そして、悲劇を知る。

 

 

私は観客席に行き、兄さんの元へ向かった。

 

「おかえり」

 

兄さんは壁に背を預けて、私に手を振った。

私も手を振り返し、兄さんの隣に行く。

 

「ただいま、兄さん」

 

「ああ。良かったぞ、デュエル」

 

「ありがとう。兄さんはいつ?」

 

「明日の二試合目だ。相手はナイトオブデュエルズ…だったっけか?」

 

「あの騎士のような姿をした人達ね。あれ、動けないんじゃないかしら」

 

「あれが彼らのポリシーなんだよ、言ってやるな」

 

本当の事を言っただけなのだけれど…。だって、あんな重そうな鎧を着ていたら、アクションカードが取れないでしょう?もしかして、魔法・罠で組み立てていくのかしら。それはそれで楽しみ。

兄さんとそんな話をしていると、次の試合が始まる。

 

『次は、LDS融合コース所属、光津真澄選手と、遊勝塾所属、柊柚子選手ぅぅーー!!』

 

出てくるのは、黒髪の褐色の少女と、私達を見ていたツインテールの少女だった。

あの子、柊柚子って言うのね。可愛らしい名前じゃない。

 

「兄さん、試合は最後まで見ていくつもり?」

 

「ああ。相手がどんなデュエルをするのか、知っておかないとな。二回戦で当たるかもしれないし」

 

「もう勝った気でいて…」

 

「だって、『勝つからな』」

 

兄さんは自信満々でそう言った。

確かに、兄さんは強い。出場条件である6割以上を、最も簡単にクリアしてしまったのだから。

私も兄さんとデュエルをした事はあるけど、あまり勝ってはいない。五分五分と言ったところだろうか。

それくらいに兄さんは強い。でも、私だって負ける訳にはいかない。

残り一年しかないこの命、精一杯、楽しい事に使ってやろうではないか。

そうでしょう?お兄ちゃん。

私はいるはずもない人に、声をかけるように隣を向いた。

そこには当然いない。でも、いる気がした。

……見ててね、お兄ちゃん。兄さん。

私の、最後の悪足搔きを。

 

『戦いの殿堂に集いし決闘者達が!』

 

『モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!』

 

『フィールド内を駆け巡る!』

 

『『見よ!これぞデュエルの最強進化系!』』

 

『『『『アクショーン!!』』』』

 

『デュエル!』

 

『デュエル!』

 

YUZU

LP4000

 

MASUMI

LP4000

 

そして、二試合目のデュエルが始まった。

 

 

 

ーー

ーーー

ーーーー

 

そこから三試合目、四試合目と続いていく。

三試合目は権現坂昇さんと暗黒寺ゲンさんという方々だった。迫力のあるデュエルだったが、リアルダメージが多そうで少し肝を冷やした。

四試合目。今日のデュエルで最も盛り上がった試合と言っても過言ではなかった。

榊遊矢さんと、私の友人、唯一、私の事を知っている友人、シンちゃんがデュエルした。

言うのを忘れていたけど、私とシンちゃんは小さい頃からの幼馴染と言ってもいい。それくらい、私とシンちゃんは長くいた。だけど、小学三年になった頃から、私とシンちゃんはあまり会わなくなった。お互いに何も言わず、こうして時が過ぎた。

シンちゃんは私の病気の事は知っている。唯一、友人の中で詳しく話した人だ。

その時のシンちゃんは良くわからなかった。ただ『……そうか』って言うだけで、それ以上は何も言わなかった。

それは悲しんでいたのか、どうでもいいのかは知らない。出来れば前者でいて欲しいが、後者でいて欲しいのもある。

兎に角、彼を悲しませたくない。でも、言わなくてはならなかった。

彼が、私にとって唯一の、信頼できて、身を置ける友人だから。

……話が逸れてしまった。榊さんとシンちゃんは、私達観客を盛り上げ、楽しくデュエルをしていた。見慣れないカードを使っていたシンちゃん。榊さんだけしか使えないと噂されていたペンデュラム召喚を使い、注目を浴びていた。

その時、私は悲しくなった。

シンちゃんは、大舞台であんなに激しく動いている。

楽しんでいる。

だけど私は、動けない。動いたら、死んでしまう。

……シンちゃんは、遠い存在になってしまった気分になって、嫌になった。

でも、デュエルは見てて楽しかった。それだけでも十分だった。

結果は榊さんの勝ちだけど、ね。

 

「凄かったな、シンゴ君」

 

兄さんはシンちゃんの事を知っている。兄さんとシンちゃんは顔見知りだから。

そして私は、無性にシンちゃんに会いたくなった。

 

「ごめん兄さん、少し抜けるわね」

 

私は兄さんの返事を聞かず、シンちゃんの元へ走り出した。

 

 

 

 

沢渡はLDS内部を歩いていた。

先程の遊矢とのデュエル。胸が熱くなるほどに、楽しんだ。

あんな感覚初めてだった。今までのデュエルとは、まるで違っていた。

憎き榊遊矢を倒すと意気込んでいたのに、結果としては彼と楽しんでしまった。

悔しいような嬉しいような、良くわからなかった。

沢渡は息を吐き、先程のデュエルよりも前のデュエルを思い出す。

そのデュエルとは、伊吹十羽対松野晋作のデュエル。

十羽とは小さい頃からの付き合いだ。良く遊んでもいたし、良くデュエルもしていた。近所の人達から仲良し夫婦と呼ばれていた程にだ。

しかし小学三年を境目に、沢渡は十羽から離れた。理由は、取り巻きと言われる者達とつるむのが多くなったから。パパと出かけることが多くなったから。

その時は十羽も一緒にいたはいたが、だんだんと来なくなり、ついには何年かの歳月が経ってしまった。

世間では短いと言われるが、彼らにとっては長い月だった。

しかし、今の自分と十羽は違う。

自分はアンティールールに手を出し、人を騙した。もう汚い所に入っている。

純粋な十羽の側にいれば、十羽が汚れてしまう。そう思ってしまった。

その時は持ち前のポジティブさで気づかれないようにしたが、しかし。

十羽は今の自分を、どう思っているのだろうか。

十羽は今の自分の体の状態を沢渡に連絡していた。

それは、信用していると受け取っていいのか、はたまたなんとなく連絡したのか、わからなかった。

しかし、まだ信頼しているのなら、と沢渡は歩き出そうとする。

しかし。

 

沢渡は歩みを止めた。

それは何故か。何故なら沢渡の目の前には。

 

懐かしの、美しき少女が立っていたから。

 

「沢渡さん」

 

少女はそう呼ぶ。

沢渡は我に帰り、鼻で笑った。

 

「んだよ十羽。そんな変な呼び方やめろ。昔の呼び方でいい」

 

「……昔の呼び方で呼んだら、拒絶されるのかと思ったわ、シンちゃん」

 

ああ、それだ。

沢渡はそれだけで笑みを浮かべ、話を続けた。

 

「……久し振りだな」

 

「ええ、四年ぶりくらい?」

 

「もう少しあるだろ」

 

「そうかしら」

 

長くなった群青色の髪の毛を掻き上げ、耳にかける。

その仕草さえ、懐かしいと感じてしまった。

 

「まさか、あなたも出ているなんてね」

 

「俺が出ちゃ悪いか?」

 

「いいえ。寧ろ、あなたが出ていてよかった。あなたのおかげで、私たち観客は幸福に満ち溢れたわ」

 

「ハッ、だろお?この沢渡さんに、不可能はねえんだよ!」

 

「でもあの登場衣装はなんだったの?」

 

「ふっふっふ…あの衣装はな、昔の俺じゃないっていう証明をするために、わざわざ準備したものなのさ!」

 

「……そう、かっこよかったわよ」

 

「……そうかよ」

 

何気ない言葉に少し照れる。

そして話題は、あの話題に。

 

「……一回戦おめでとう」

 

「ありがとう。そしてシンちゃんは残念。でも、お疲れ様」

 

「ああ。すっきりしたからな。……で、お前、体は?」

 

「大丈夫よ。何も苦しくないし。心配しないで」

 

「……本当にか?本当に、苦しくないんだな」

 

しつこく聞いてくる沢渡に、十羽は肩をすくめる。

 

「本当に平気よ。でも、もしもの時は、守ってね?私のナイト様」

 

「……その約束、覚えてたんかよ」

 

「勿論よ。忘れたとは言わせないわよ」

 

「……ハッ、なら最後まで守ってやるよ、お姫様」

 

上品にお辞儀をする。

約束。それは、小さき頃、沢渡と十羽が何気なしに告げた事であった。

沢渡がお前を一生守ってやる!といい、十羽はそれを受け入れたのだ。

それが約束。それを十羽は覚えており、沢渡も覚えていた。

沢渡のお辞儀に十羽は満足そうに傾き、そして背を向けた。

 

「じゃあ、私は兄さんの元に戻るわ」

 

「ああ」

 

「シンちゃんは見ていかないの?」

 

「今日は見ていかねえよ」

 

「そう、兄さんにも、お兄ちゃんにもよろしくって、言っておいてね」

 

「………ああ」

 

コツ、コツと鳴らしていく音を立てながら、十羽は沢渡の元を離れ、兄の元へ向かった。

沢渡は手で顔を覆い、そして吐く。

 

「……クソ、」

 

それが何を意味するのかは、沢渡しかわからない。

 

 

 

 

久し振りにシンちゃんと話せて良かった。

私は兄さんの元に戻るまで、気持ち悪いニヤけ顏をしていたのかもしれない。

でも、本当に嬉しかった。シンちゃんと会えて、本当に良かった。

そして私は、観客席に続く道の入り口に足を踏み込む。

 

「……ぇ…?」

 

私は、目を疑った。

会場は子供達の泣き声で埋め尽くされ、そして爆音が鳴り響く。

私の目の前には、三体の人形の頭が貫かれたような、大きなモンスターがいた。

恐らく、そのモンスターが、子供達を泣かせているのだろう。

それよりも、この状況は一体何?

何が起こっているの?

私は兄さんの元に走り出した。

 

 

「兄さん!」

 

私は兄さんの元へ行き、この状況の説明を申し出た。

 

「兄さん、これは…?」

 

「……お前が最後まで、シンゴ君の所にいればと思ったが…」

 

「何があったの?」

 

兄さんはフィールドに視線を移す。

 

「それが、俺にもわからないんだ。あそこにいて戦っているのは、黒咲隼と紫雲院素良。最初は紫雲院という少年が、その愛らしい姿で会場を沸かせていたが…徐々に状況がおかしくなった?」

 

「え?どういうこと?」

 

「俺だってわからないよ…狩られるものとか、ハンティングゲームとか、アカデミアとか。何がなんだか…」

 

その直後、爆音が鳴る。

私は無意識にフィールドに視線を向ける。

そこには、まるで戦争のような光景が広がっていた。

鳥の機械のようなモンスターが爆撃を落とし、アクションフィールドを壊していく。

いや、戦争のようなではない。

 

本当の、戦争だ。

 

大きな建物が少年を巻き込み、破壊されていく。

その直後、アクションフィールドは解除された。

 

「……なんだったんだ、今のデュエルは」

 

「そうね…ゴホッ」

 

途端に、私の口から咳が溢れる。

いけない。さっき少し走ったせいかしら。しかしそれ以上咳は出なかった。

けど、兄さんには聞かれてしまった。

 

「!十羽、大丈夫か?さっき走ってきたのが原因か?というか、なんで走ってきたんだ!」

 

「ケホッ。あのデュエルを見せられたら、嫌でも気になって。つい走ってしまったわ。ごめんなさい」

 

「素良ァァああああああああああああああああああああッッ!!」

 

少年を呼ぶ声に視線を向けると、係員に押さえつけられている榊さんが目に入った。

……あの子、榊さんの塾の子だったのね。

少年は係員によって運ばれ、そして。

 

初日の試合は、幕を閉じた。

 

 

 

 

「明日は、俺が旅立つ番だな」

 

蒼斗は一つの墓石にそう言う。

手には、一輪の白い花を持って。

その白い花を、その墓石の前に、優しく置いた。

 

「十羽も、新しい一歩を踏み出したんだ。俺も、いつまでも過去に囚われてはいけない。だから、俺は出たんだ。……って言っても、お前にはわかるか…」

 

月明かりが照らす墓石の前に蒼斗は笑い、そして空を見た。

 

「……もう、帰る時間だ。明日、また来るよ。いい報告を、待っていてくれ」

 

蒼斗は墓石に背を向け、歩き出した。一度振り返ったが、目を閉じて、また背を向けて、歩き出した。

 





題名
私は、俺は、また会う。そして、悲劇を知る。
私は→十羽
俺は→沢渡
悲劇→黒咲vs素良
という風です。
十羽と沢渡さんは、幼少期からの幼馴染という設定です。この作品の沢渡さんは原作とは少し違うかもしれません。人によってはかっこいいかも?憂いすぎてるかも?人それぞれです。
先に言っておきますが、今の沢渡さんに十羽に対する恋愛感情は持ち合わせていません。あくまで幼馴染という線でもありますし、何年振りの再会という嬉しさ。というのが顔に出ていると思います。それがあの照れ顔です。
しかし沢渡さんも心配性です。余命を言い渡された十羽をちょくちょく気にしますし、何かあったら即座に駆けつく過保護ポジ。それくらい十羽が大好きなんです(真顔)。
デュエル描写がなかったので短くなりましたが、それでも楽しんでもらえれば幸いです。
十羽と沢渡さんの関係は、今はこれくらいしか明かすことはできません。え、意味深だって?やだなぁ、情報公開がこれだけということで決して生えるなんて…(逸らし)
では、次回は蒼斗の試合です。相手はナイトオブデュエルズ。そしてナイトオブデュエルズがどんなデッキを使うか未だに把握していないどうしましょう誰か知っている人はいませんか。
……騎士っぽいのを使えば、なんとかなりますか。
では、次回もよろしくお願いいたします。

決して取って付けた設定ではありません。ちゃんと考えた設定なのであしからず。
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