終わりのセラフ《絶対零度の吸血鬼》   作:neirua

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今回は話の展開がかなり進んでいます。いつもより今作品の根幹に近づいている……かもしれません。
終わりのセラフの原作を知っている方にはお馴染みのワードがいくつも出てくるのではないでしょうか。
あとは……サブタイトルから察して頂けると思います。
それでは第16話、どうぞ!


第16話 【黒鬼】零命鬼

虎の形をした何かと睨み合うグレン隊。

 

「グレン。深夜」

クレハは2人を見て呼びかける。そして2人も私を見て頷く。

私が斬りあった手応えだと、この2人がまともにやりあえるだろう。

「深夜とクレハと俺で前に出る」

美十が言う。

「ちょっと、私達は?」

「後ろで援護しろ。小百合、時雨」

すると従者2人が、

「「わかってます!」」

と、言ったと同時にグレンは走り出す。

 

クレハも先に虎の背後に回り込もうと一歩踏み出した。

が、そこで1つの気配に気づく。

「美十、典人。接近する気配を1つ確認した。ここは貴方達に任せる」

そう言い、返事を待たずに駆け出す。

 

何か、黒い何かが秒読みで近づいている。そしてそれは、以前に感じたものとほぼ同質のものだった。

 

クレハがトップスピードから急停止する。

 

「……お前か」

「お前か、なんて冷たいじゃない。まあ、私は貴女には用が無いのだけれど」

 

そこに立っていたのは、柊真昼だった。

 

まあ、誰に用があるのかは、だいたい察しがつくが。

だが、この場にいるのは、真昼と私の2人だけ。

これは、またしてもない大チャンスだ。

 

やっと。やっと、私の____

 

「そう。でも私は貴女に用がある」

「……何? あまり時間は取りたくないの」

完全に冷めた口調だが、全く気にならない訳でもないようだ。これは、話す余地がありそうだ。

 

「単刀直入に言う」

「……………」

 

クレハが口を開く。

そう。学校への襲撃で出くわして以来、真昼にもう1度会えないかと思っていた。その理由は___

 

「”鬼呪の刀 ”を一振り頂きたい」

「…………え?」

 

真昼が怪訝な顔になる。そりゃ、柊の仲間のはずの私が禁忌の武器を個人的にくれと言っているのだから怪しみもするだろう。

それに、今のところ、真昼でさえ制御しきれていないようだし。

でも、

 

「私にはそれが必要なんだ。まさか、貴女が持っているその一振りだけ、なんてことないでしょう」

「…ええ。でも、渡す理由が私には無いわ。じゃあ……」

 

そういって、グレン達の方へ去っていこうとする。だが、逃がさない。その背中に向かって言う。

 

「渡さなければ、一瀬グレンを殺す」

 

真昼がピタリと止まる。振り返る彼女の表情は険しく、先程よりも冷たく、殺気を纏わせた目をしていた。

けれど、こちらも気圧されない。本気なのだ。

 

「貴女にそれは出来ない」

「そう? じゃあ、グレンが殺されるのを黙って見てなさい。その後、奪いに来るから」

 

そう言って真昼の横を通り過ぎ、グレン達のいる方へ駆ける。

が、ぐいっと引っ張られる感覚に立ち止まる。首を少しだけ回して視線を向けると、私の腕を真昼が、その細腕からは想像出来ない力で掴んでいた。

 

「何に使うつもり?」

「貴女の邪魔はしない」

 

手を振りほどき、痛みに顔をしかめながら向き合い、言う。ここまできたら落ち着いて話すだけだ。

幸い、彼女のように熟練した者だからこそ、私が難なく、いつでも愛しの人(グレン)を始末出来ることを理解してもらえている。

 

「……分かった。一振り差し上げます。ちょうど、どっちをグレンにプレゼントしようか悩んでいたの」

 

そう言って真昼がどこからともなく黒い鞘、というよりそのもの全体が黒い何かを纏っている日本刀を取り出した。

彼女の言いようだと、この後グレンにも鬼呪を使わせるつもりらしいが……邪魔はしないと言ったしな。

 

真昼がその刀を投げて寄越す。クレハがそれを掴み、抜刀する。

刹那。

刀から信じられないほど強大な力が体に入ってくるのを感じた。そしてそれは、決して入ってきてはならない、力 。その筈だった。

 

「貴女にそれが制御出来る?」

 

殺せ。

犯せ。

潰せ。

全部を壊せ。

思考が、強烈な破壊衝動で埋め尽くされていく。

怒りと絶望。

喜びと悲しみ。

それらがすべてない交ぜになって、黒く、黒く、なにもかもを埋め尽くして、

消えた。

 

何かの悲鳴と共に、思考が突如、クリアになる。

顔をあげると、真昼が驚いたような表情で私を見つめていた。

「どう…やって……」

「鬼呪を克服したか? これは私以外では無理。言う必要は無い」

 

そう。もとより、真っ当な克服法など知らない。この方法は私にしか出来ない。強烈な呪いを植え付けられている、私にしか。それよりも、

「……っ。ヨハネの四騎士が……早く行かないと…」

何か呟いて、真昼がグレン達の方へ走り出す。もう私になど用は無いというふうに。

確かに、あの虎の化け物を彼らだけで対処できているのかは気になるところだ。早く行かなければ。

 

真昼の後を追うようにクレハも走り出す。

が、走り出して直ぐに視界が白で埋め尽くされる。

突然のことにやや驚きながらも、意識をしっかり保つと、自分が真っ白な空間にいることに気付いた。

 

どこかに転移してしまったか、幻術をかけられたか、と思考を巡らせる。するといつの間にか、何かが目の前に立っていた。

 

ひどく綺麗な、中性的な容姿を持った 、人形(ひとがた)の何か。

どちらかと言うと、女の子のようだ。

短い、ウェーブのかかった青髪を揺らして、微笑む。

目が離せない、その美しい眼を見て、気づく。

こいつは《鬼》だ。《神鬼》と呼ばれる階級にいる、《鬼》だ、と。

 

《こんなところ、来たことないよ。君、よく今まで正気でいられたね》

 

その言葉に、《鬼》が若干疲れているような印象を受けた。そして、私の目的がうまく果たされているなら、その理由を知っている。

 

「死者の怨念のこと?」

《そう。ここ一杯にさ。しかも、あれは、そうだな、普通じゃない。飲み込まれるかと思った》

「……何も無いけど」

辺りを見回して答える。

《私が喰らってやったのさ。全て。全てね》

 

《鬼》が何故か得意げな表情になる。

そして、今見て気付いたが、こいつの綺麗な髪の間からは、その美しさとは相対的な、禍々しいまでにねじれ曲がった角が伸びていた。

そして、口元からは凶悪な牙が覗いている。

だが、その悪魔的な容貌がますます美しさを際立たせているのかもしれない。

 

「それは凄いな」

それは世辞でも何でもなかった。

私の心臓を起点とする呪いは、魔術系統の中でもトップクラスのものだ。普通なら触れるだけでも発狂する代物のはず。

それを逆に喰らい尽くした、というのが彼女の格の高さを証明している。

 

私がそう、賛辞を送ると、彼女はますます得意げな表情になって、まるでキラキラしたエフェクトがかかっているかのようだった。

 

《そうだろう。凄いだろう。で、その凄い力の代わりに、君は何を見せてくれる?》

そう言った彼女の顔は、いつの間にか私の顔に迫っていた。

どんなに可愛くてもやはり《鬼》だ。その笑顔は、既に狂気を帯びていた。楽しんでいる、とも言える。飲まれるな。呑まれるな。

 

少し考えて、言う。

「私の忠誠を、お父様が本当に裏切ったのか確かめる」

《…裏切っていたら?》

「……復讐だ。一族諸共、皆殺しにする」

《それは楽しみだ。裏切られているといいね》

「…………」

《まあ、とにかく。そういうことなら仲間なんていらないじゃないか。まずは、今、化け物と戦っている彼らを殺そう。私がついてる。私は裏切らない》

耳元で囁いてくる。甘く、誘惑するように。だが、少し言いたい。

 

「は? ここで柊の仲間殺したら海外に行きづらくなるじゃない。確かめに行くの手伝うって、貴女言ったよね。馬鹿じゃないの? がっかりだ」

《え、そんなこと言ってな…》

「だいたい貴女だって、もう私の仲間でしょう。何? まず貴女が自害でもする?」

《そういうことじゃ…》

「仲間って言い方が嫌なの? じゃあ友達?」

 

そこまで息継ぎ無しで言い切って急に思い出す。そういえば、友達がいた事はおろか、そういう単語を使ったことすらなかったな、と。

 

《…は、はんっ。君と私が、友達? 人間如きが調子に乗っ…うぐぅぅ 》

「何か言ったか?」

《くそっ、覚えてろよにんげ……ぐはっ》

 

照れながら悪態をつく《鬼》があまりに可愛くて 、思わず胸ぐら掴んで高い高いしてあげたら、急に大人しくなった。素直になってくれたのだろうか。

 

《げほっ……。くそっ、このマフィアめが……私は敬意を払っていたというのに……》

「敬意?」

払っていたとは、どこに?

《そうさ。あれほどの呪いを抱えて平然としている君の精神力にね。それに、うん、君はクールそうに見えて意外と面白い人間だ。そしてここには上質な食事がある。しかも涼しくて過ごしやすい》

「それはつまり……」

《だからその…なってやってもいい。君が望むなら、と、友達に》

 

これは……。《鬼》が油断させようとしているのか。それとも、単に俗に言うツンデレなのか。

あと、私は友達になってくれとは一言も言っていない。

そんなに友達が良いのだろうか。

さっきの人間がどうのとかはどうした。

 

「断わる」

《……え》

 

やめろ。そんなあからさまに落胆したような顔をするな。

 

「友達なってやって貰わなくていい。だってもう、私達は共に戦う友なんだから」

 

そう言って屈み、彼女の小さな体を抱き締める。不思議と、こうするのが自然だと思ったのだ。

 

しかし、意外と温かいな……と思っていると、彼女が強い力で、抱きつき返し来た。それも苦しい程に、骨が折れそうな程に。もがくが、びくともしない。

 

駄目だ。本当に苦しい。痛い。

「…離」

離せ。そう言おうとして《鬼》が遮る。

必死に目だけを動かして見た彼女の横顔は、不敵に笑っていた。

 

《良いだろう。さあ、目の前には敵だ。私の名を呼べ、クレハ。君の〈狂鬼〉に応えよう!》

 

そう、高らかに謳い、

瞬間、すべてが静かになった。

クレハの意識は現実に戻った。

自分の身体はちょうど、走りを止めたところのようだ。

いつの間にか、抜いていた刀は鞘に戻っている。

 

そこまで認識した瞬間、刀を持った左手からパキパキと、音がする。

亀裂が入ったと思い、反射的に刀を横に、鞘に目に近づけると、そこにあったのは青い亀裂。

いや違う。それは、亀裂のように走る、一線。氷のように煌めく文様だった。

 

そして、間髪入れず、感じ取った気配に前方を見ると、一人の男がクレハに向かって歩いて来ていた。

「…………」

いや、そいつは人間じゃ、なかった。

人間に良く似た形の、しかし、明らかに人間じゃない、生き物。

異常に白い肌。整った目鼻立ち。仰々しい、まるで貴族が着るような装飾が凝らされた服。

長い銀髪に、赤い瞳。

吸血鬼(ヴァンパイア)!?」

クレハは声をあげた。

そんなクレハを見て男はにやりと笑い____

 

そこで、クレハは右手を、つい先程貰った刀へかけ、叫んだ。それを、その名を、鬼呪の入ったこの身体が知っている。

 

「力を見せろ。零命鬼(れいめいき)!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Side マリア

 

遠目だが、クレハの中に潜むものが、突然変質したのを感じる。

天使の鎖の力が弱まったらしい。その代わりに、別のものがあの子の中に住みついた。

柊真昼との会話によると、それは鬼呪というものだそうだが。私はあまりそれのことを知らない。

知っているのは、それが《鬼》をおろして武器に定着させるものだということ。人に直接宿す実験などもあったようだが、上手くいった例はないと思っていた。

最近、開発が進んだのだろうか。

 

まあ、何にせよ鎖が弱まったなら丁度いい。少し、締め付けすぎだと思っていたのだ。

だが、《鬼》については警戒する必要がある。余計なことをしてくれなければ良いが。

 

懐から携帯を取りだして、一番上の着信履歴の番号にかける。

 

『プルルル…カチャ……マリア様、何の御用でしょう?』

「ねぇ。あの子(...)の様子はどう?」

『あの方の容態は安定しておられます』

「他には? 今、何か前と変わったところはない?」

『そうですね……あ、心なしか顔色が少し良くなったような…』

 

ああ、良かった。クレハにも1mmくらいは感謝しなくては。

 

「そう。引き続き見守ってあげてね。ああ、遠く離れて会えないのが寂しいわ」

『心中お察し致します』

「ありがとう。でも大丈夫。今までの年月に比べれば、あと少しだもの」

『……ええ』

「じゃあまた」

 

通話を切ってクレハに近づく男に目をやる。

そしてすぐにクレハに視線を戻す。

 

そうだ。私の目的、いや、悲願を遂げるまで、あと、少し。彼女には気の毒だが。

 

 

 

 




長い銀髪に赤い瞳……。一体、何バー○リーなんだ!?
そんなことより、オリジナル鬼呪装備・零命鬼、如何だったでしょうか。
《鬼》の角に関してはfateのエリザベートのものをイメージしております。

次回作の構想は出来ているのに、この小説でさえこの更新頻度ではねー。もどかしい……。
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