最近攻略を始めた6-4が辛すぎる。これどうやって攻略するのさ・・・
『“赤城”隊、“加賀”隊は、準備出来次第攻撃始め』
その指示が、防空指揮艦となっている“利根”より届くや否や、“赤城”戦闘機隊長妖精はスロットルを一杯に開いて、発動機の調べも高らかに、機を加速させた。愛機としている“烈風”は素直にその操作に応え、轟音と共に四翔プロペラを回転させる。強烈な加速が、戦闘機隊長妖精を座席に押し付ける。
“赤城”から発艦した戦闘機隊長妖精麾下の機体は、“烈風”十二機、零戦八機。一方の“加賀”隊は、“烈風”二十四機。計四十四機の戦闘機が、艦隊に迫る脅威を排除せんと、高空から敵攻撃隊に迫る。
小隊ごとに編隊を組む僚機たちを確認し、戦闘機隊長妖精は前方の空を見遣る。彼の目は、ゴマ粒のように小さな影を、先の空域に捉えていた。
高度は三千メートルでほぼ同じ。どちらが優位ということもないだろ。
問題は、敵戦闘機の種類だ。もしも、春島上空で初見参した新型戦闘機だった場合、少々厄介なことになる。
日本海軍が防空戦闘の基本に据えている、戦闘機による迎撃は、最も効果的な戦術だ。ただし、欠点がないわけではない。
性能的優位と、数的優位。この両方を満たしていなければ、戦闘機による迎撃の効果は大きく減じてしまう。どれほど性能が優れていても、数の優位がなければ、攻撃隊に手が届かない。どれほど数があっても、性能が追い付いていなければ、護衛戦闘機の壁を破れない。
“烈風”は、新型戦闘機に対して互角以上に戦える。しかし、零戦ではそうはいかない。零戦が新型戦闘機に対抗するには、少なくとも二倍以上の機数が必要というのが、各母艦戦闘機隊長の共通認識だ。
果たして、目の前の敵機は、どちらだ。
攻撃隊から、機体が分離してくる。おそらくは制空隊の戦闘機だ。“赤城”隊、“加賀”隊は、あの機体と戦うことになる。
改良された無線機に指示を吹き込む。先陣を切るのは“赤城”隊だ。
お互いが発揮しうる最大速力であるがゆえに、距離が縮まるのはわずかに数十秒の出来事だった。ゴマ粒は小さな種ほどの大きさに、やがて肉眼でもそのディティールを確認できるほどの大きさになる。
まるでエイが空を飛んでいるような影は、日本海軍が“デネブ”のコードネームをつけた従来の艦上戦闘機だ。新型機ではない。
深海棲艦もまた、こちら同様、新型機を全部隊に行き渡らせるのには時間がかかるらしい。
これならば、十分勝機はある。内心ほくそ笑みながら、猛速ですれ違おうとする敵機を見据える。お互いが反航している以上、その一回目の射撃機会はほんの一瞬だ。
目の前の敵機、そして照準装置内の敵機。それらを素早く確認しながら、その機会を探る。
照準環内の敵機が、息をする間にも大きくなる。先頭の一機が照準環から溢れようかという時、ほんの一瞬だけ、機銃の発射把柄を握る。そのまま機体を横ロール。
長銃身の二〇ミリ機銃から、一連射分の射弾が飛び出す。逆に敵機から放たれた機銃が、青白い曳光を伴ってロールした翼端を掠める。
両者の会敵はコンマ数秒という時間だった。頭を巡らせながら、本能的に機体を動かし、格闘戦が始まる。
真っ先に敵機に取り付いたのは、零戦だ。例え旧式となっても、良好な格闘性能は健在である。鋭くカーブを描いた二機ずつのペアが、同じく二機ずつで編隊空戦を挑もうとする敵機を追い込む。四つの翼たちが入り乱れ、時折火箭が飛ぶ。
“烈風”も負けてはいない。零戦の直系となる機動部隊の新翼は、大型な機体に似合わず優秀な格闘性能を持つ。後ろにつこうとした敵機の射線をひらりとかわし、横旋回、縦旋回などを繰り出しながら、その後ろを狙う。射線にさえ捉えてしまえば、強力な二〇ミリの火矢が機体を貫く。
戦闘機隊長妖精も、自らの“烈風”で手頃な敵戦闘機に襲いかかる。他の零戦を狙っていた敵戦闘機の不意を突く形で、添の横っ腹に突っ込む。こちらに気づいたらしい敵機が慌てて翼を翻すのも織り込み済みだ。弱点であるその下腹部に狙いを定め、発射把柄を握る。翼内の二〇ミリ機銃と機首の一三ミリが火を噴き、真っ赤に燃え盛る礫を投げつける。機体にミシン目が走るように穴が開いた敵機は、そのまま黒煙を吹いて落ちていった。撃墜確実だ。
“赤城”隊が敵制空隊をかき乱したところで、“加賀”隊が加勢に加わる。これで敵戦闘機と数はほぼ互角。否、まだ艦隊上空には、攻撃機を虎視眈々と狙う零戦が五十機も残っている。敵攻撃隊の漸減は、十二分に可能なはずだ。
彼我の機体が網の目状に飛行機雲を引きずる中、戦闘機隊長妖精は、わずかに高度を取り、空戦場の様子を確認する。
激しい旋回戦の末、敵機の後方を取った零戦が機銃を浴びせかけ、ずたずたに引き裂く。
上方からの襲撃を受けた敵機が、為す術なく弾丸に貫かれ、爆発四散する。
機体のコントロールを失った敵機は、錐揉みになりながら高度を下げ、やがて海面に激突する。
逆に、敵機に背後を取られ、尾翼を撃ち抜かれた零戦がフラフラと落ちていく。
エンジンカウルを撃ち抜かれたらしい“烈風”は、自慢の「ハ四三」発動機から黒煙を吹きだし、その息吹を止める。
全体としては、日本海軍側が有利だ。さらに、格闘戦が続いていることで、徐々にではあるが、敵制空隊を攻撃隊から引き剥がすことに成功している。
そろそろ頃合いであろうか。戦力の薄いところに再度突撃しながら、戦闘機隊長妖精がそんなことを思った時だ。
『“千歳”隊、“千代田”隊、攻撃始め。“飛鷹”隊は高度を下げ、敵雷撃隊を警戒』
入れっぱなしにしていた無線機から、艦隊上空に残っていた零戦たちに向けた新たな指示が聞こえてきた。艦隊との距離は、間もなく三万メートルになろうとしている。
通信が入った後、“赤城”隊と“加賀”隊の戦い方は、明らかに変わった。敵機を執拗に追い回し、必要以上に格闘戦を挑む。全戦闘機妖精が、今自らが果たすべき役目を理解していた。
攻撃隊を襲撃する他隊の邪魔はさせない。その一心で、敵機に追いすがり、機銃を叩きこむ。
“千歳”隊と“千代田”隊の攻撃が始まった。
戦闘機隊長妖精たちが空戦を繰り広げる空域からいくらか艦隊よりの位置。十分に高度を稼いでいた計三十二機の零戦は、獲物を見つけた猛禽類のごとく、急降下で敵攻撃隊に襲いかかる。陽光を浴びてその翼端が、あるいはキャノピーが、一瞬白銀に輝く。
編隊が敵攻撃隊の下方に抜ける間に、射撃機会は一度しかない。ましてや、急降下という、ただでさえ操縦の難しい状況だ。それでも、効果は抜群だった。
とっさに機体を傾け、回避運動を取った敵攻撃隊だったが、全機が機銃弾の洗礼を逃れることはできなかった。四機が一瞬にして火達磨になり、十機近くが煙を吐き出して落伍する。
直掩の護衛戦闘機が、一航過を終えた零戦に挑みかかる。しかし、いかんせん数が足りなかった。熟練の零戦たちが護衛戦闘機を翻弄している間に、残った機体が再度攻撃を仕掛ける。
味方攻撃隊の危機に気づいたのだろう。“赤城”隊と“加賀”隊が相手取っていた敵機が、にわかに翼を翻し、攻撃隊の方へと戻ろうとする。
が、そうは問屋が卸さない。
それを見逃すほど、戦闘機隊長妖精も、また他の戦闘機妖精も、甘くはなかった。
空戦場から抜け出そうとした敵機に、“烈風”が襲いかかる。速力ではこちらの方が上だ。逃げられると思ったら大間違いである。
不意を突かれたのか、二機の敵機が同時に炎を上げて、真っ逆さまに落ちていく。
“烈風”の射弾を素早い身のこなしでかわして、なおも攻撃隊に戻ろうとする敵機もいたが、上方から現れた零戦の二〇ミリ機銃が操縦席に命中して、原形を留めたまま海に吸い込まれる。
それでも、こちらの追撃を振り切って、攻撃隊へ辿り着いた敵機が、“千歳”隊と“千代田”隊を妨害する。これを追って、“赤城”隊と“加賀”隊も攻撃隊の方へと機体を傾けた。
『敵編隊、距離二五〇』
“利根”が読み上げる艦隊までの距離に、戦闘機隊長妖精は大きく息を吐く。まだだ。まだ、十分に迎撃の時間はある。
その時、敵攻撃隊が二手に分かれた。雷撃隊と爆撃隊であることは明白だ。“千歳”隊、“千代田”隊は迷いなく爆撃機の方を追った。戦闘機隊長妖精は、バンクでついてくるように促し、雷撃機を追う。
残存の敵戦闘機が、なおも追いすがって来る。戦闘機隊の奮戦もあり、多くを落としたが、残っているだけでも邪魔だ。
チラリと、機体の残弾を確認する。半分を切ったが、後二、三回戦ぐらいは行けそうだ。
自らが直率する小隊を引き連れ、雷撃隊の上空からこちらを妨害している敵戦闘機に襲いかかる。
初撃はかわされた。すぐさま二機ずつのペアに分かれ、格闘戦に移行しようとする。しかし、敵機は乗ってこない。あくまで雷撃機の守りに徹するつもりのようだ。それならば。
目線だけで小隊に指示を伝える。無線機がなくとも、最も気心知れたこの四人内なら、やることはわかる。小隊は再び二機ずつのペアに分かれた。
目の前の雷撃隊と艦隊の距離は、もう間もなく一万五千メートルになろうとしている。狙いは恐らく、外縁の“利根”、あるいは中央の“加賀”だ。
雷撃機に対して、“赤城”隊が攻撃を加える。最後まで艦隊上空に残っていた“飛鷹”隊も、別方向の雷撃隊を迎撃中とのことだ。
雷撃機上空の敵機が、“烈風”と零戦の射撃を妨害する。決して深追いせず、そのまま再び雷撃機の上に戻る。
そこが狙い目だった。
戻ろうとした敵機に、分かれた小隊の二機が襲いかかった。これを手慣れた動きで回避。
が、その先に、戦闘機隊長妖精の“烈風”と僚機が待ち構えていた。
敵機が気付いた時にはもう遅い。未来位置に照準をつけていた戦闘機隊長妖精は、三連射分発射把柄を握る。先頭の二機が、火箭の只中に突っ込んで、蜂の巣になった。
“烈風”を避けようと、さらに機体を傾けた敵機の横っ腹から、待ってましたとばかりに零戦が襲いかかる。勝負はあった。
まだ敵戦闘機は残っていたが、“赤城”隊を相手取るその数はすでに一桁だ。これでは満足に妨害もできない。必死に雷撃機を守ろうとする敵戦闘機を強引に突破して、“烈風”や零戦が射弾を浴びせる。
揚力を失って、正面から海面に突き刺さる機体。
魚雷に誘爆したのか、盛大に火の粉を振りまいて粉微塵になる機体。
一連射ごとに、雷撃機が数を減じていく。
しかし、さすがの“赤城”隊も、そう何度も攻撃はできなかった。多くの機体が、敵戦闘機との空戦で弾薬を消費しており、すぐに弾切れが来た。かくいう戦闘機隊長妖精も、二〇ミリ、一三ミリともに使い果たした。
後は、艦隊の対空火器に任せる他ない。戦闘機隊に引き上げを命じ、高度を稼ぎ始めた丁度その時、“利根”から無線が入る。
『全戦闘機離脱せよ』
それはすなわち、対空砲火の危害圏から離れろという意味だ。
ほどなく、艦隊の各所で砲炎が迸り、大気が微かに揺れる。輪形陣先頭の大型駆逐艦、主砲を前部に集中配備した巡洋艦、さらには空母までもが、自らに牙を突き立てんとする小さな狩人を火焔と硝煙で出迎える。
発砲から十数秒後、攻撃隊の進路に、真っ黒い花の絨毯が敷かれ始めた。
これはまだまだ序の口です。作戦初日を、一機艦は無事に乗り越えることができるのか
・・・はい、お察しの通り、当分パラオ艦隊の出番はないです