ソードアートオンライン~剣士達のensemble~   作:宮橋 由宇

11 / 11
お久しぶりです。第9節です。今回はけっこう短めです。


一章九節『情報屋 鼠のアルゴ』

「ごめん、待った?」

「イヤ、オレっちもいま来たところサ」

 

などと、恋人か何かのようなやり取りを終えて、アルゴと落ち合う。今日から、僕は情報屋鼠のアルゴのしたっぱ一号だ。

 

「……」

「なんダヨ、その顔」

「いや、改めて考えると謎だなぁって思って」

 

何がどうしてアルゴのしたっぱになることになったのか。自分でもいまいちよくわからない。

いや、過程がわかっていないわけではないのだ。ユウキの情報をもらう代わりに対価としてアルゴを手伝う。そのためにいま僕はアルゴと共に行動しているのだ。ユウキとは今日の朝一緒にケーキを食べてそのまま別れた。ユウキと共に行動できないのはすこし不安だったけど、キリト達に任せるしかないだろう。

と、それはそれとしてだ。僕が腑に落ちないのは僕が情報屋をしている、という点だ。……何て言うか……似合わない、と思う。

 

「何ダ?不満だったカ?」

「いや、そういう訳じゃないよ。アルゴのやってる事にも前から興味はあったし。渡りに船さ」

「そうカ。なら良かったナ、オネーサンの私生活が覗けるチャンスだゾ?」

「……いや、そういう意味の興味じゃなくてね」

 

まあいいや。アルゴは一事が万事この調子だし、深く相手にするだけ無駄だ。

 

「と、そろそろ仕事の時間ダナ。ちゃんとついてきてくれヨ?」

「わかってるさ」

 

頷き返し、アルゴと共に歩き出す。

さて、お手並み拝見……かな。

 

 

 

 

 

 

 

 

2.

 

結論から言うなら、アルゴはすごかった。

いや、ほんともう。

モンスターを巧みにかわし、崖を登り、草原をかけ、森を抜け、街を越えて、川の上を走った。

 

うん、僕の想像していた以上だった。アルゴは本当にすごかった。

 

「大丈夫カ?」

「あぁ、うん……大丈夫……」

 

僕はついていくのが精一杯だった。僕も速さには自信があったんだけど、アルゴは僕の二回りは速かった。

 

「全く……どうしてそんなに速いんだよ……」

「まぁ、AGI一極ビルドだからナ。そりゃオレっちの方が速いサ」

「これ僕必要だった?」

 

アルゴ一人でやった方が速い気がするんだけど……

 

「寧ろシロっちにしか務まらないサ。曲がりなりにもオレっちの速さについてこれるのはシロっちしかいないからナ」

「……そか」

 

そういわれると……まあ悪い気はしない。単純だとは思うが。

 

「ま、今日はあとちょっとダ、このまま頑張ってくれよナ」

「……わかったよ 」

 

確かに、もう日が暮れ始めてる。活動できるのはあと1、2時間程度だろう。

僕はアルゴの言葉に頷いて立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、1時間とすこしが経過して、

 

「お疲れサン」

 

そう言ってアルゴは僕にコーヒー(のようなもの)を渡してきた。

 

「ありがと」

 

僕はそう小さく断ってそれを受けとる。味はまんまコーヒーだった。

 

そのまま、二人でのんびりと端から暗く染まり始めた夕焼け空を眺める。こういう夕焼け空なんかを眺めていると、どうにもこの世界は、どこか懐かしさというか郷愁のようなものを思い起こさせる。こんな景色見たことも聞いたこともないというのに。

そしてふと、思い出したかのように僕はアルゴに問うた。いや、まあ実際前々から聞こうとは思っていたのだが。

 

「アルゴはさ、なんで情報屋になろうと思ったの?」

 

アルゴはその言葉を聞いて意外そうな顔をした。予想だにしない質問だったのだろう。いや、質問されることを予想してなかったのか。ただまあそれも一瞬で、アルゴは落ち着きを取り戻したあと薄く目を細めて喋り始めた。

 

「ンー、理由はまあいろいろあるケド……そうだな、一番になれるようなことがしたかった、ってのが大きな理由カナ」

 

そう告げるアルゴの顔は少し寂しげで、色々あったのだろうというのは察することができた。

 

「そんないい理由じゃないダロ?オレっちだって我欲で動いテル。ただ皆の役に立ちたいナンて高尚な意思を持ってる訳じゃないサ」

「ん……まあ確かに自分のためではあるんだろうけどさ……」

 

アルゴが自分を下比するかのように言うのが僕は少し納得がいかない。確かに一番になりたいと言うのは自分の我欲だし、それが理由というのも間違いではないのだろうけど……何て言うか、理由はそれだけじゃない気がする。上手くは言えないけれど。

 

「失望したカ?それならそれでいいサ。別に誉めてもらおうと思ってやってることじゃないしナ」

「っ!!」

 

そしてそうアルゴは自嘲気味に告げる。その姿がある日の影と重なる。

 

「別にいいよ。認めてほしいわけじゃない。僕は、僕のやりたいようにやってるだけだ」

 

そして、そんな彼を嗜めたあの人の姿も。僕は堪えきれずにアルゴの肩をつかんで強めの口調で訴えかけていた。

 

「そんなこと言うな!始まりがどうであれ、君のお陰で助かってる人がいっぱいいるんだ!それは誇るべきことだよ!」

 

どうしてそうしたのか、僕にもわからない。ただ自分を必要以上に悪者にしたてあげようとするアルゴになぜか腹が立ったんだ。気づけば僕はアルゴに詰め寄っていた。アルゴは驚き固まって僕の顔を見つめている。

 

「ア、アア………」

 

次第に落ち着いてきて、自分が何をしでかしたのかを遅まきながらわかり始める。

 

うん、完膚なきまでにやらかした。なんかアルゴの顔が赤くなり始めてるし。

 

「そ、そろそろ離してくれないカ……?」

「あ、悪い……」

 

赤い顔で小さく呟くアルゴ。僕は光の早さで手を戻した。何だか不思議な空気が二人の間に漂う。アルゴは俯いてなにも言わないし。

 

(やっちゃった……)

 

なんかこの空気感はユウキの服が溶けたときと同じ感じがする。あれももう一ヶ月前か。

そう、現実逃避気味にユウキとの馴れ初めを思い出していると落ち着いたのかアルゴがまだ赤いままの顔で小さく呟いた。

「……そう言うコト、面と向かって言われたのは初めてダヨ……アリガト……」

「あ、うん……こちらこそ」

 

いや、この反応はなんか違う!

そう思うがいかんともしがたい。この変な空気に当てられていい言葉が出てこないのだ。

 

と、ちょうどそのとき、

 

「ん、ユウキからメッセージだ」

 

助かったと思いつつ、メッセージを開ける。

 

「何てかいてあったんダ?」

 

アルゴも話をそらしたかったのかメッセージの内容を聞いてくる。

 

 

「えっとね、『キリトがなんか無理そうだったから、アスナと一緒に行動するね。ハクアも頑張ってね』だってさ。キリト、アスナと一緒に行動してなかったんだね」

「え、あ、ああ……そうカ……」

 

そう伝えたらなぜかアルゴの顔がひきつった。

 

「?……キリトについてなにか知ってるの?」

「イ、イヤなにも知らないゾ?」

 

ますます怪しい反応をするアルゴ。情報屋としてこの反応はどうなのだろう……

 

(ま、いいけど。アスナは一緒みたいだしね)

 

一人じゃないなら問題ないと思う。それにアスナとユウキ仲良いみたいだしね。

 

「と、そろそろ解散しないとダナ 」

「ああ、そうだね」

 

もう流石に戻った方がいいか。ホームに戻っても一人……なんだか不思議な気分だ。この世界に来てからは、ほとんどをユウキと共に過ごしてきたから。

 

「じゃあ、また明日」

「アア」

 

アルゴとそう言葉を交わして別れる。そのまま僕は自分のホームへと帰っていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。