ソードアートオンライン~剣士達のensemble~   作:宮橋 由宇

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投稿遅れてしまいすいませんでした。_(._.)_
中々時間がとれず……もう少し早く投稿できるよう精進します。


一章四節『瓦解する希望の光』

 

 

 迷宮区の最奥、ボス部屋に響く、剣戟の音や人々の雄叫びを聞きながら、僕たちは自らの役目を果たすべく奮闘していた。

 

 

「ユウキ!スイッチ!」

「うん!」

 

 《ルインコボルド・センチネル》のポールアックスをSS(ソードスキル)で天高く跳ね上げ、生まれた隙に滑り込んだユウキがその喉元に空いた隙間を一突きにする。

 ユウキはセンチネルがひるんだ隙にすかさず離脱し、また僕がセンチネルの攻撃を相殺しに前に出た。

 

 先ほどから、そんな攻防を繰り返しながら着実にセンチネルのHPバーを削っていっていた。

 

 

 ボス戦が始まってから10分。今の所は大きなハプニングもなく順調に攻略は進んでいる。

 ボスである《イルファング・ザ・コボルドロード》のHPバーはあと少しで1段目が削りきれる、と言ったところだ。

 死傷者は勿論0、危険域になったプレイヤーも皆無だ。ディアベルの指揮は的確で、ここまではスムーズに事を進めることが出来た。このまま行くと良いのだが……

 

「っと……セイッ!」

 

 上段から迫るセンチネルのポールアックスを、いなすように曲刀を合わせて相殺させる。

重さでポールアックスに敵わない曲刀では、正面から打ち合ったのでは逆にこちらが押し負けてしまう可能性が高い。

 そのため、力の逃げ道をわざと作り、誘導して、そらせるしか無いのだ。

 勿論、簡単なことではない。タイミング1つ間違えれば、そのまま押し込まれてしまうだろう。ここは現実世界での経験が役に立った。

 

(まったく……あのスパルタ稽古に感謝する日が来るなんてね……)

 

 やはり運命というのは分からない物だ。

 

 

「グォォ!!」

 

 センチネルが、ポールアックスを大きく振り上げる。すると、その刃が赤いオーラを発し始めた。SSが出ている証である。

 

「ッ……セァァ!!」

 

 そして、僕も同じようにSSを発動させる。

 曲刀単発SS《リーバー》を、センチネルの攻撃に相対するように下段から一閃させる。

 

 煌めき奔る光芒は、黄金の奔流となり赤き閃光と吸い込まれるように交わった。

 巨体な衝撃音を響かせ、2つの光は互いに消滅する。

 

「スイッチ!」

 

 そして、僕が動き出すより早く、紺色の影が自ら宣言して飛び出した。僕はすかさずセンチネルの後ろに回り込むようにしながら飛び退く。

 

「やぁっ!!」

 

 そして元気なかけ声を発しながら、ユウキは片手剣単発SS《ソニック・リープ》を、先ほどと同様にセンチネルの喉元に袈裟切りに叩き込んだ。

 センチネルのHPバーはぐんぐんと減っていき──数ドットだけ残して停止した。

 

「しまっ!?」

 

 この攻撃で削りきれると思っていたのだろう。ユウキの離脱行動が少し遅れる。

 

「ユウキ!」

 

 迫るポールアックス。センチネルの表情は心なしか笑っているようにも見えた。

 

(──させないッ!)

 

 彼女をやらせるものか。僕は、離脱途中の不安定な体勢のまま体をひねり、センチネルの斜め後ろの位置から、曲刀の曲がった先端部分をそのがら空きの喉元に突き刺した。

 

「グァッ!?」

 

 驚愕の声をあげ、ポリゴンの塊となって砕け散るセンチネル。倒れそうになるのを何とか踏ん張り体勢を立て直した後、僕はユウキの方に振り向いた。

 

「わわ、わわわ!あぅっ!?」

 

 ユウキは、とん、とん、とんと何歩か後ずさった後、こらえきれずに後ろに倒れ込み変な声をあげた。

 

(何してんの……)

 

 つい、そんな感じに呆れてしまう。何とも緊張感の無い……まあいい

 

「大丈夫?」

「う、うん……大丈夫……」

 

 ユウキの手を取って起き上がらせる。どうやらHPバーは減っていないようだ。

 

「攻撃する前に倒せたみたいだね、よかった」

「ありがとね……あぶなかったぁ……」

「油断は禁物、だよ。それじゃあ次に行こう。戦いはまだ終わってないよ!」

「うんっ!」

 

 元気の良い返事に微笑する。互いのHPバーがまだ安全圏内なのを確認して、僕たちはする手近のセンチネルに向かって走りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……強い……)

 

 戦闘のさなか、ハクア達を見つめる1つの影があった。

 影、キリトはアスナと共にセンチネルと戦いつつも、時折ちらちらとハクア達の方に視線を向けている。

 勿論、戦闘に支障が出ない程度に、であるが。

 

(……やっぱ強い、あの二人。……ベータテスターじゃ無いのがおかしいくらいに……)

 

 このデスゲームと化したSAOの中で、タンクも居ないコンビパーティーを組んでいたこと、さらにその上で攻略組と同格のレベルだったこと。これらのことからあのコンビのことは、それなりに強いと踏んでいたが……訂正しなければならない。

 

 かなり(・・・)強い。

 

 それぞれの個人技量もさることながら、その連携技術には舌を巻く。

 

(……見た限りだと、ユウキの方が主体になって戦ってるみたいだな)

 

 ハクアが敵の隙を作り、ユウキが、そこに攻撃するという典型的なスイッチ戦法。だが、それ故に強い。基本の戦い方だからこそ、無駄なく、ムラ無く戦闘を進められている。

 

(それに……)

 

 これは、推測だが、恐らくユウキよりハクアの方が数倍強いのではないだろうか。

 

 確かにユウキの戦いは十分上位で通用するレベルだ。だが、それでもまだ拙さは抜けきれていない。先ほどソニックリープを打ったときも、HPを削りきれなかったというハプニングに対して対応し切れていなかった。

 しかし、ハクアは現状に対応どころかよりよい状況に改善すらして見せた。

 被弾したユウキを後ろに下がらせ回復させると言う安全策では無く、被弾する前にセンチネルを倒すという最善策を選び、実際にやってのけた。

 それには、多大な精神力(どきょう)とそれ相応の技量が必要になってくるはずだ。

 たった一月で身につくような物ではない。

 

(……何て言うんだろうな、戦い慣れしてる(・・・・・・・)……そんな感じがする)

 

 SAOに来る以前、現実世界で剣を振ったことがある。そう感じさせる戦いぶりだった。

 

(剣道か?……いや……)

 

 そうだとしても、おかしい。少しとは言え経験したことがあるから分かるが、剣道で身につくのは反射神経と動体視力だけだ。攻撃に対する対応力が身につくわけではない。

 所詮は籠手、面、胴の3つの場所にのみ警戒しておけば良いのだから。上下左右あらゆる方向から攻撃が降ってくる戦闘とは違いすぎる。

 

(……となると……)

 

 残る可能性は剣術。剣道と同じでしかし大きく違う、戦闘を、死合いを意識した実戦の技。この日本には、未だそんな古風の流派が受け継がれているという。なれば、その可能性も無くはない。

 

(けどまぁ今は!)

 

 現実問題、このボス戦をどうにかするのが先だろう。「スイッチ!」と叫んで飛び込んでくるフーディットケープの暫定パートナーを頼もしく思いながら、キリトは戦闘へと意識を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3

 

 

 そして、ボス攻略を始めてしばらくたった頃、今までより一際大きい歓声がボス部屋を包んだ。僕もセンチネルを屠り、ボスへと視線を向ける。すると、ボスのHPバーは4段目に入っていたところだった。

 

「さて、こっからだね」 

 

 誰に聞かせるでも無く、一人覚悟と共に呟く。

 この4段目に入ってから、ボスのイルファングの攻撃モーションはがらりと変わる。

 両手に持っていた骨斧と革盾を投げ捨て、腰に無造作に巻き付けてある湾刀(タルワール)を引き抜くのだ。

 そこから先は曲刀カテゴリの技を使ってくるようになる。幸いイルファングが使う曲刀の技は縦攻撃ばかりで、技の軌道さえ読めればボスの周りを取り巻いたまま攻撃することも出来るらしい。

 

「ハクア、次来るよ!」

「うん、分かってる」

 

 行こう。とユウキに返事をして、イルファングの武器変更と共に現れるセンチネルを狩りに向かう。最後にどんな武器なのか見ておこうとイルファングに視線を向けたところで、

 

 

 

 

 

 

「………………え…………?」

 

 

 

 

 

 

 その、異常に気付いた。

 待て、何かおかしい。何だ?色?形?場所?

 いや、違う。ボスじゃ無い。おかしいのは、ボスの引き抜く武器の方。

 あれは本当に湾刀なのか?鈍色に輝く刀身は、あれは………

 

「……………………刀?」

 

 そうだ、違う、湾刀じゃない。

 刀だ、漆黒の輝きを帯びた、まごう事なき日本刀だ。

 

「あ、あぁ……あああ!」

 

 イルファングが完全に刀身を引き抜く。

 それを見て、頭にフラッシュバックする光景。

 

 

──刀を持ち何者かと相対する幼い頃の自分。

 

──長身の男と、その手に持つ鈍い光を放つ刀身。

 

──そして、舞い散る紅い鮮血。

 

 

 バチバチと、視界に火花が散るような感覚。汗など出ないはずなのに、自分が大量の冷や汗をかいている錯覚に陥る。

 

 

「クッ!?……ハァ、ハァ!」

 

 落ち着け、落ち着けと心臓に言い聞かせても、限界まで速くなった鼓動が止まる気配は無い。思わず膝をつき蹲る僕の姿に、ユウキが気付き近寄ろうしていた。

 

 そんな時だった。

 

 

「だ……だめだ、下がれ!!全力で後ろに飛べ────ッ!!」

 

 大音量で響くキリトの叫び、そしてそれをかき消すほどサウンドエフェクトと轟音。

 

 恐る恐る、視界をボスに向けたその先に見たのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パリィンッ──

 

 

 

 

 青いポリゴンとなって砕け散る、指揮官ディアベルの姿だった。




何か主人公の強さがどんどん上がって行ってるような……(^ω^;)
ま、いいや。何とかなるでしょう。
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