ソードアートオンライン~剣士達のensemble~   作:宮橋 由宇

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久々の更新です_(´ω`_)⌒)_ ))ズリズリ


一章七節『進むべき道、選ぶべき選択』

 

 

 

「これからの話をしようか」

 

 そう切り出して、僕はユウキの隣に座った。

 場所は二層主街区《ウルバス》の転移門からは少し離れた小洒落た店。門の付近は下から移って来た人たちでごった返しておりとても静かに話なんて出来る雰囲気ではなかった。ユウキが憔悴しきっているのもあって、僕たちは一度転移門から離れ、この店に退避してきたのだ。

 

「……大丈夫?」

 

 ユウキはまだ元通りとは言いがたい。話が出来るほどには回復してきた物の、未だ意気消沈している。テーブル越しに対面するように席に着き、俯いたその表情に影を落としていた。

 ……先ほどのことを気にしているのは明らかで、僕はそんな状態のユウキを前に何も出来ない自分が歯がゆかった。

悔しくて、情けなくて気付けば右手を握りしめていた。慌てて戻す。ユウキは数瞬の後僕の言葉に弱々しいながらも返した。

 

「……うん、大丈夫……ごめんね?心配かけて……」

「ううん、気にしないで良いよ。僕が……好きでしてる事だから」

 

 そう。本来僕はユウキの問題とは何も関係ない。勝手に僕が首を突っ込んでいるだけだ。

 勝手に思い込み、勝手に割り込んで、勝手に突っ走っている。ユウキが助けてくれと言ったわけでもない。ただただ自己満足のためだけにユウキの内に入り込んでいる。

 ……だが、助けたいと思ってしまったんだ。それは誰に向けての言い訳か。願わくば、この行動が無駄にならないと信じたい。

 

(……にしても……)

 

 今更だが、我ながら物凄いことを言ってしまった物だ。つい数時間前の自分自身の言動を思い出し顔から火が出そうになる。僕が君を守る。などと……騎士にでもなったつもりか、僕は。

 

「……思い出したら恥ずかしくなってきた……」

「何が?」

「い、いや、何でも無いよ……」

 

 自嘲気味の返事にユウキは不思議そうに首をかしげた。

 

 

 

 

 けど、まあ……

 

(言った言葉は、嘘じゃ……ないんだ……)

 

 あっさりとあんな言葉を言えてしまうほど、僕のハートは強くない。自分ではそれなりの覚悟を持ってあの言葉を言ったつもりだ。守ると言った言葉にも、頼ってくれと投げかけた叫びにも、偽りはなかった。あれは、僕の本心だった。

 ユウキはそんな僕の手を取ってくれた。こんな頼りない僕に頼ってくれた。自分が出来る範囲でも、自分の手の届く範囲でも、その心に答えたい。

 

 ……今まで、誰かのためにこんな人生を左右するような行動を起こしたことなど無かった。自分がよければそれでいい……とまでは言うつもりはないが、それでもやはり他人は他人。適度に距離を保ってきた。

 だが、どうしてだろうか、この少女は、ユウキだけは僕の懐にするりと入り込み、気付けば僕の中でその存在を大きくしていった。僕の中で自分がこれほどまでに大きな存在になっていることに、ユウキはきっと気付いていない。僕自身、情けないことに自分で自分が分からなくなっていた。

 

「?」

 

 ユウキの目をまっすぐ見据える。ユウキは小首をかしげ、僕はそれに苦笑いで何でも無いと答える。

 

 ──今はまだ判らなくてもいいか。

 

 やるべき事は見えているんだから、ゆっくり理解していけば良い。分からないことに固執しすぎるな。そう言ったあの人の姿を思い出して、僕はそっとこの思いに終止符を打った。

 そして、

 

「……ねぇ、ハクア」

「何?」

 

 静かに椅子に座りうつむいていただけだったユウキが、覚悟を決めたのか、僕に話しかけてくる。

 

「これからのことって……このアインクラッドをどう攻略するか……ってことだよね?」

 

 最初に告げた議題を自分なりの解釈で僕に確認してくる。

 

「まぁ大きく言えばそうなるかな。もっと小さな枠組みで言うなら、これから僕たちはどうしていくか」

「…………」

 

 簡単な話、生きていくためにどうするか、と言うこと。何をして、何を得、何になるのか、まずはそれを決めなければならない。

 

「幸いにもこのアインクラッドには幾つもの進める道がある。モンスターと戦ってレベルを上げる。武器を作ってお金を稼ぐ。他にも採掘、料理、裁縫……色々だ。そんな中から何を選んで歩んでいくか。何を捨てて生きていくか。僕たちは決めなきゃならない」

 

 選択肢(カード)が豊富な分、困難や障害も多い。だから僕はユウキの道はユウキ自身に選んで欲しい。

 

「ユウキ、君は何になりたい?どんな生き方をしたい?この世界での生活はもう人生そのものだ。だからちゃんと考えて決めて欲しい。僕と行動を共にするとしても、分かれて行動するにしても、自分がどんな道を歩みたいのか。それをちゃんと決めておいて欲しい」

 

 僕自身まだ気持ちの整理が付いてない部分もある。そのせいか、無意識に捲し立てるようにユウキに言葉を投げかける。ユウキはただ真剣に僕の言葉を聞いていた。

 守ると誓った。けれど守るべき少女がその手をはね除けるなら、僕はおとなしく引き下がる。そのつもりでいた。けれど──

 

「……どんな生き方をするにしても……ボクはハクアと一緒が良い」

「!」

「今までずっと一緒だったのに、今更離れて行動なんて出来ないし、したくないよ……」

「…………そっか……」

 

 どんな思いがあるにせよ。その言葉は単純に嬉しかった。それだけ信頼されている、それだけ必要とされている。それが何より心に響く。

 たった一ヶ月だったけど、ずっと行動を共にしてきたんだ。信頼されるのはうれしいし、僕だってユウキを信用してる。

 

 ──だから問う。

 

「じゃあユウキは、何になりたい?」

「……ボク……は……」

 

 決めあぐねているのか、ユウキはしばし沈黙する。だがそれもつかの間で──

 

 

「ボクは……剣士になりたい」

 

 しっかりとした眼差しで、そう告げた。

 

「守られるだけじゃない、誰かを守れる強さが欲しい!……ボクだって、誰かを失うのはいやなんだ。他人任せじゃない、自分だけの強さが欲しい!」

「…………そっか」

 

 よかった。ユウキは……ユウキだ。打ちのめされて、現実に押しつぶされそうになって、それでも何度でも前を向く。

 

「それでこそ、だね。……うん、なら──」

 

 ──なら僕も尻込みをしていられない。

 ユウキだけが進むべき道を決めて僕が取り残されたのでは守ると誓った意味が無い。

 けれど、違う道を歩んだとしても守ることは出来ない。だから僕は、

 

 

 

「僕たちは、アインクラッド攻略を目指そう」

 

 

 僕はユウキとともにあることを選んだ。

 

 大仰でも、叶えられない夢じゃない。その希望は今は無き彼の指揮官が繋いでくれた。

 希望が希望であり続けられるように、黒衣の剣士が陰を背負ってくれた。

 一人一人が希望なんだ。皆で一つの希望なんだ。

 僕たちは英雄じゃない。ただの歯車の一つに過ぎない僕らに、世界を変えるだけの力は無い。

 …………でも──

 

「僕一人の力じゃ何も変えられない。だから──ユウキ、僕と一緒に来てくれるかい?」

 

 でも、ユウキと一緒なら、世界は変えられなくても、世界の変わる要因の一つくらいにはなれるだろう。だから僕はユウキと同じ道を往く。

 

 

「──うんっ!」

 

 僕たちは勇者じゃない。有名でも何でも無い今日なったばかりのなりたて剣士だ。

 

 それでも僕らは生きている。明日もまた生きていくために、今日も必死に足掻いてる。

 生きているなら、まだ戦える。理不尽な運命と、不条理な世界と、非情な現実と。

 

 諦めさえしなければ、いつかは報われると信じて。

 

「それじゃ、改めて──これからもよろしくね、ユウキ」

 

 進む道が茨道だったとしても、ユウキとならどこへだっていけるだろう。そう思えるくらいには僕も彼女を頼りにしているようだ。守るなんて言っておきながら、そんなことを考える自分に少し笑いがこみ上げる。

 

 

 あぁ、そうだ。と、ふと思いいたるとある少女の姿。こういうことに詳しい……かは分からないが、情報通の彼女のことだ、もしかしたら詳しい人物を知っているかもしれない。

 

(一応、メッセージを送っておくか)

 

 そう思いながらメニューウィンドウを呼び出す。そして 彼女に簡易なメッセージを送った。

 

 ──そう、件の情報屋に。

 

2

 

 

「それデ?それからすぐにオレッちを呼んだのカ?」

「うん、ごめんね?急に呼び出して。少し気になったことがあって」

「良いって良いっテ。金さえもらえればそれでいいヨ」

「相変わらず、守銭奴みたいなこと言うね」

「事実だからナ」

 

 そう言ってカラカラと笑う少女を、呆れ半分、感嘆半分で見つめる。

 

 少女の名はアルゴ。

 くすんだ色合いのフードを目深に被り、全体的に地味めな格好で統一した、ともすれば乞食か、あるいは浮浪者のような印象を受ける。

 だが、その実は恐らくはアインクラッド初であろう《情報屋》を生業とする最前線攻略組(トップランナー)の一人である。

 通称《鼠》。そのグレーカラーを基調とした格好と、頬に三本ずつ描かれたまるでヒゲのようなフェイスペイントからそう呼ばれている。 

 一度そのヒゲの理由を聞こうとはしたのだが、「その情報は10万コルダ」と言われ、すごすごと引き下がらざるを得なかった。

 アルゴは腰に手を当て僕を見上げるようにしながら続きを促す。

 

「デ?気になったことってのは何なんダ?」

「……一応、プライベートなことだから他言はしないでね」

「オレッちは情報屋だからナ。確約はできナイ……と、言いたいところだが他ならぬシロッちの頼みダ、良いさ、ネタにはしないと誓うヨ」

「……ありがとう」

 

 軽い言葉だけど、アルゴの情報屋としての信念がこもった一言。おそらく彼女は今回のことは絶対に誰かに話すことはないだろう。

 

「僕が聞きたいことだけど、多分もう薄々気づいてると思うけどね……僕のコンビの、ユウキのことだよ」

 

そういった僕を見てアルゴは、特に驚くでもなく「ま、だろうナ」と呟いた。

 

 まぁ、直前に話していた話を考慮してもアルゴに相談することなんてそれ以外ないだろう。彼女の反応は当然と言える。

 

「……アルゴはユウキのことについてどこまで知ってる?」

「個人の情報を無償で売るのはオレッちのポリシーに反するんだが……まぁ、情報が情報だしシロッちなら良いカ」

 

 コンビ組んでるんだしな、と続けたアルゴは一呼吸置いてから、

 

「オレッちが持ってる彼女の情報はそれほど多くはないヨ。アバターネームは《yuuki》、装備はレザーシリーズで統一してル。武器は《アニールブレード3S2Q》かなりの業物だナ。攻略組の一人で、同じく攻略組の《hakua》とコンビを組んでいル。容姿は悪くなく、寧ろ良い部類。幼い部分はある物のそれはそれでかわいらしい部分でアリ、彼女を狙っている男達も少なからず居る模様。……とまあ、こんなところだナ」

「……いくつか聞き捨てならないこと聞いたんだけど……まぁいいか」

 

 誰を好きになるかは個人の自由だ。同じようにもしユウキが好きになった人が居たとするなら僕はそれを応援しよう。

 

「……それと、そこまで分かってて『それほど多くない』っていうのもどうかと思うよ」

「情報屋としては、及第点以下なんだヨ」

 

 そう言っていたずらが成功した子供のように笑うアルゴに、僕は苦笑しか返せない。

 

「まぁとにかく……そこまで知ってるなら改めての説明は必要ないね。……後はボス部屋でのことについてどこまで知ってる?」

「キー坊やアーちゃんと一緒にボスを倒した……ってのは聞いたナ」

「キー坊にアーちゃん……ああ、キリトとアスナか。……その後の話は?」

「いや、オレッちが聞いたのはそこまでダ」

「そうか……」

 

 となると、ユウキの変化に気づいて誰かに話した人はあの場では居なかったことになる。まぁそれも仕方が無いと言えるだろう。あのときは他人を気にかけていられるほど誰も余裕がなかった。

 

「それじゃ話すよ。あの後何があったのか」

「アア」

 

 そして僕は、僕が見たユウキの変化をアルゴに語った。アルゴは静かに僕の話を聞いた後、腕を組んで「ウーン……」と唸った。

 

「オレッちは医学には詳しくないからナァ……ただ、話を聞いた限りだと心的な物の気がするナ。いわゆるトラウマって奴ダ」

「……まぁ、そうか」

 

 その結論には僕も行き着いた。だが、詳しいことは分からなかったため、アルゴなら知ってるかもと思い聞いたのだが、

 

「まぁ、アルゴはSAOの情報屋だからね。知らないのもしょうが無いか」

「悪いナ。代わりって訳じゃないが、知り合いに一人そういうのに詳しい奴が居るから、聞いてみようカ?」

「本当?ならお願いして良いかな」

「ワカッタ」

 

 そう頷いてアルゴは誰かにメッセージを送り始めた。暫くしてピロリンとメッセージを送信したことを伝えるサウンドエフェクトが鳴り響く。

 

「ん、これでいいダロ。マメな奴だからな、すぐに帰ってくるサ」

 

 そしてメニューウィンドウを閉じて、背後の木にもたれかかるアルゴ。暫くして「そうだ」と小さく声をあげた。

 

「どうしたの?」

「シロッちサ、今回のお代はどうするつもりなんダ?」

「うっ……」

 

 それは……どうした物か。今回の話をするとき、今となって分かることだが少し焦っていた節がある。それ故に何も決めないままにアルゴに相談してしまった。彼女が情報屋と言うことは分かっていたはずなのに。

 

「まぁ、シロッちにはいつも懇意にして貰ってるからナ。情報料はただで良いサ」

「本当!?」

「ただ、オレッちの方も仕事だからナ。情報料をまける代わりに、一つ手伝って欲しいんダ」

「手伝う……って何を?」

「そんなの決まってるダロ」

 

 そう言ってアルゴはニヤリと笑い、

 

「情報屋としての仕事を……サ」

「え……」

 

 そのアルゴの言葉に僕は固まってしまう。そんな一瞬の静寂の中に響いたのは、ピロリンという先ほども聞いたしかし先ほどとは違い受信を知らせるサウンドエフェクトだった。

 

「ん、返ってきたみたいだナ」

 

 アルゴは再度メニューウィンドウを開くと受信したメッセージを読み進めていく。その間に僕も硬直は溶け、取りあえず今はユウキのことと、アルゴが読み終わるのを待った。

そして数分後、

 

「……ンー……専門用語満載でいまいちわかんないとこがあるんだよナ……アイツこういう所の配慮は無きに等しいからナァ……」

 

 そう難しい顔をして頭をポリポリとかくアルゴ。僕はアルゴに「何が書かれてたの?」と問いかけた。

 

「……やっぱりというか何というか、結論から言うなら、心的外傷後ストレス障害……カ?まぁトラウマが原因だろうとサ」

「……そうか」

「『その状況から考えるに子供の頃、家族か、あるいはそれに準ずる親しい人……親友や恋人などだね。を失ったのが原因ではないだろうか。仲間や友人といった人たちを失うことを極端に恐れているように見える。直接見たわけではないから詳しいことは分からないが、恐らくはそのキリト君を罰するような……それこそ、死で償えとでも言うような空気がその場に流れていたのではないかね?恐らくだが、ユウキというその少女はキリトという少年を失うことを過去自分が経験した恐怖と無意識のうちに重ね合わせてしまい、自分でも理解できないままに恐れを抱いているのでは無いかと思うよ』だとサ。全くもっと簡潔に書けないのカ……」

「…………」

 

 ……或いは、このメッセージの送信者が言っていることはまるで見当違いのの世迷い言なのかもしれない。ただ、なぜだろうか。完璧にすべてを言い当てたわけでないとしても、それでも大まかには彼の言うことは間違いではないような気がした。アルゴが書いたただの状況説明の文章からここまでの推測をたてるとは。まるで……直接見たかのような正確さに感じる。

 

(いや、それは流石にないだろう……)

 

 医者は少ない情報から患者の病気を正確に見分けるために、観察眼や想像力を鍛えると聞く。彼が本当に医者なのかどうかは分からないが、もしそうなのであればこれくらいの状況推察は可能と言うことなのだろう。

 

「んー……と、まぁ、重要なのはそこだけカ……後は細々とした考察と……専門用語満載のよく分からん説明文だナ。ホラ、そっちにも送っとくヨ」

 

 そう言ってアルゴが件のメッセージを僕に送る。すぐにピロリンと音がして新着メッセージを知らせるアイコンが僕の視界端に現れた。

 

「ありがと、アルゴ」

「ン。オネーさんに感謝するようニ」

「はは、そりゃーもちろん」

 

 当初考えていたことではあったが、やはりアルゴの情報網は質も量も圧倒的だ。結果的には相談して良かった。……まぁ、自らの勇み足のせいで、少しばかり問題は発生しているが。

 

「それで、お代ハ?」

 

 で、まさにその問題の発生源である話に特に何の躊躇いもなく突っ込んでくるアルゴ。──まぁ、躊躇いを混じてるのは僕だけだけどさ……

 

「……はぁ、まぁいいか。今回はアルゴの言うことにデメリットはほとんど無い。うん、いいよ。情報屋の仕事、手伝わさせて貰うよ」

「上から目線なのが気になるけど……まあ良い、契約成立、ダナ」

 

 ニヒヒと笑うアルゴ。何だかその笑顔が悪魔の笑顔に見えて、彼女との契約を早速後悔しそうになる。

 

「まぁ、安心しな。助手みたいに働いて貰うのはこの層までサ。まぁ、その後も時々手伝っては貰うと思うけどナ」

「……要は、体の良い小間使いってことじゃないか」

「そうとも言うナ」

「……はぁ……」

 

 ただ、まぁ、彼女と共に行動することはそれなりにメリットがあることでもある。だから全くもって自分に益の無い話というわけでもないんだが……いや、ネガティブな思考はやめよう。そもそも借金になるはずだったものをこうして別の物で代替してくれたんだから、感謝を述べるべきじゃないか、うん。

 

「今回のこと、感謝するよ、アルゴ」

「……うん、そんな字面で分かりづらい片言で感謝されてもナー……まぁ感謝の言葉には違いないし素直に受け取っておくサ」

 

 微妙な顔をしながらも、最早なれたことなのか普通に受け取るアルゴ。……ちくしょう……

 

「ま、短い期間とはいえこれからは仕事仲間なんダ。仲良くヤロウじゃないカ」

「……後でどんな追加代金が発生するのか不安でしょうがないんだけど、まぁよろしくね」

「アア。…………チッ、バレテタカ…………」

「ねぇ、今なんて言った?ねぇ?」

 

 全くもって不安になるが、しょうが無いだろう。

 一つだけ、結果的に一人にさせてしまう少女のことが気がかりではあるが……帰りにケーキの一つでも買っていってやるか。

 

(トレンブリングショートケーキだっけ……美味しそうとは思ったけど、あれ値段がなぁ……)

 

 自分の所持金を見てうんうん唸りながら、僕の足は重いながらも件の店へと向かっていった。

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