ソードアート・オンライン Dragon Fang《ゲーム版》   作:グレイブブレイド

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かなり遅くなってしまいましたが、ゲーム版の話もやっと執筆しました。

あらすじにも書いてますが、ゲーム版はリメイク版の方をベースとしてます。

タイトルはエグゼイド風にしました。それでは、どうぞ。


第1話 終わらないDeath game

 

2024年11月7日 浮遊城《アインクラッド》第75層 迷宮区 ボスの間

 

この場にいる全員が動けなくて倒れている中、2人のプレイヤーが武器を手に取り、向かい合っていた。1人は黒い片手剣と白い片手剣をそれぞれ左右の手に持った黒いロングコートを着たプレイヤー、黒の剣士《キリト》。そして、もう1人は赤と白の装備を身にまとって長剣と十字型の大型盾を持った血盟騎士団の団長《ヒースクリフ》……いや、このゲームのゲームマスター《茅場昌彦》だ。

 

「悪いが、一つだけ頼みがある」

 

「何かな?」

 

「簡単に負けるつもりはないが、もし俺が死んだらしばらくでいい。アスナが自殺出来ないように計らってほしい」

 

「よかろう」

 

「キリト君、ダメだよ!そんなの、そんなのってないよ!!」

 

涙交じりのアスナさんの絶叫が響く。しかし、キリさんは振り返ることはなかった。

 

茅場はメニューウインドウを操作し、自身の不死属性を解除する。そしてキリさんが床を蹴り、攻撃を仕掛けたことで戦いは始まった。

 

2週間前にやった時の戦いよりも激しい。この戦いはあのときと違って殺し合いだ。キリさんはソードスキルを使わずに剣を振るう。だが、茅場は涼しい顔をして盾でキリさんの攻撃を全て防ぎ、右手に持つ長剣で反撃してくる。

 

「くそっ……!」

 

目の前に転がっている愛剣の《ドラグエッジ》に手を伸ばそうとするが、麻痺状態のせいで思うように体が動かない。

 

今戦っている敵はモンスターのようにソードスキルを使えば倒せる敵ではない。ソードスキルは茅場がデザインしたものだ。当然、奴はそれを全て見切っている。システムに頼らず、自分の力だけで奴を倒すしかない。

 

キリさんは攻撃を与えられない焦りや4千人近くの人間を直接ではないが間接的に殺したことへの怒りのあまり、二刀流のソードスキルを発動させてしまう。連撃は《スターバースト・ストリーム》をも超える27連撃。だが、茅場はそれを見切って全て盾で防ぎ、右手に持つ長剣を構えようとする。

 

「キリさんっ!!」

 

俺の叫びが響く中、長剣がキリさんに迫る。

 

「っ!?」

 

その時、この空間にノイズが走り、一瞬だけ時が止まった。ノイズはすぐになくなり、キリさんと茅場は後方に跳び下がった。

 

キリさんはこのチャンスを逃してたまるかと、剣を構えて茅場に迫った。

 

対する茅場は先ほど見せていた余裕をなくし、防戦一方となる。キリさんの攻撃が当たった剣や盾には一瞬だけノイズが走り、それは茅場自身にも表れた。

 

それでもキリさんは攻撃を止めようとはせず、左右の剣で強烈な一撃を叩き込み、茅場の体勢を崩した。そこに、キリさんは雄叫びをあげ、左手に持つダークリパルサーで突きを放つ。そして、ダークリパルサーが茅場の胸に突き刺さった。

 

すると、キリさんと茅場の間にまたしても先ほどと同様のノイズが走り、この場一体に広がって辺りは光に包まれた。

 

目を開けた時には茅場の姿はなかった。同時に俺をはじめとする倒れていたプレイヤーたちの麻痺状態が解けた。

 

立ち尽くすキリさんに、アスナさんが後ろから抱き着く。

 

「キリト君っ!」

 

「アスナ……」

 

「バカバカバカッ!本当によかった……キリト君……キリト君……」

 

「ごめんアスナ……。でも生きてるよ俺……」

 

「よかった……キリト君。生きてる……本当によかった……」

 

キリさんは呆然とし、アスナさんは泣きながらキリさんの無事だったことに喜んでいた。

 

「茅場……ヒースクリフは?」

 

「あなたが倒したんですよ、キリさん」

 

「おいおいおいっ!やったじゃねーかキリの字っ!!」

 

俺がそう答えた直後、クラインさんがやってきてキリさんの背中を叩く。

 

「奴がどうなったのかはわからない。だけど、お前は奴を……このゲームのラスボスを倒した」

 

「そうだ。お前は勝ったんだぜ」

 

更にカイトさんとザックさんもやってきてキリさんに声をかける。

 

「カイト、ザック。そうか、俺があいつを……」

 

この場にいた全員の麻痺状態は解け、あちこちで歓喜が上がる。

 

「キリト君、よかった……」

 

「アスナ」

 

キリさんとアスナさんは俺たちがいることを忘れ、見つめ合って2人だけの世界に入り込んでしまう。これには俺も呆れてしまい、2人を連れ戻そうとする。

 

「あの~、俺たちがいるのを忘れて、2人だけの世界に入るのは止めてくれませんか?」

 

俺の一言に、2人はやっと気が付いてアスナさんは頬を少し赤く染める。

 

「羨ましいなぁ、キリトの野郎は。見てろよ、オレだってリアルに戻ったら彼女を作って幸せになってやるからな~」

 

クラインさんはキリさんのことを羨ましそうにして見て、そんなことを言う。

 

「どうだか……」

 

「カイト、どういう意味だっ!」

 

カイトさんに突っかかるクラインさん。そこへザックさんがやって来て「まあまあ」とクラインさんを宥める。

 

辺りはすっかり緊張感がなくなる中、俺はあることに気が付いてキリさんに言った。

 

「キリさん、俺たちはいつになったらログアウトされるんですか?」

 

この場は一気に再び緊迫とした空気に包まれる。

 

キリさんがラスボスである茅場明彦を倒してからすでに数分は経っている。しかし、誰もログアウトできていない。試しにメニューウインドウを開いてみるも、ログアウトボタンは何処にも見当たらない。

 

「ヒースクリフ……茅場晶彦は自分を倒せばゲームはクリアされて全プレイヤーが自分を倒せば解放されると間違いなく宣言した。茅場が嘘を言っている様子もなかった」

 

「だったらどうして……」

 

「もしかして、まだ戦いは終わってないの……?」

 

キリさん、ザックさん、アスナさんの順に言う。周りにいるプレイヤーたちからも不安な声が上がっていく。そんな中、エギルさんが走って俺たちの方へやって来た。

 

「おい!先に進む扉が開いたぞ!」

 

先に進む扉……第76層への入り口だ。つまり、俺たちの戦いはまだ終わってないってことか。

 

「キリさん、どうします?」

 

「このゲームは今も動き続けているのは間違いない。ゲームが終わらない以上、今は先に進むしかなさそうだ。行こう、76層へ」

 

キリさんはこの場にいた全員に言う。そして、俺たちは第76層へ続く階段を登って行った。

 

階段を上がると、俺たちは第76層の草原のフィールドへ足を踏みこんだ。しかし、何の変哲もないところで、プレイヤーたちがログアウトされる気配も全くなかった。

 

「ここが76層か……。75層の階段を上がったら、ログアウトできるかも……なんてちょっと期待してたんだけどな……」

 

そう呟いたクラインさんをはじめ、ここにいたプレイヤーの多くは落胆していた。ログアウトができないで、さっきまでの戦いの後だとこうなっても仕方がないだろう。

 

「……ん?何だこれ?」

 

俺の隣にいたザックさんが眉をひそめて声をあげた。

 

「どうしたんですか、ザックさん」

 

「メニューの中にログアウトボタンが出てきているかもしれないって思って、メニューウインドウを開いてみたんだけど、オレのアイテムの名前が文字化けしてるんだよ」

 

それを聞いた俺は急いでメニューウインドウを開いてアイテムストレージを見た。そこには文字化けした物が表示されていた。

 

「うわっ!俺のもアイテム名が文字化けしてる……」

 

「おい、おかしいのはアイテムだけじゃない。スキルリストも見ろ」

 

今度はカイトさんが声をあげ、続くようにクラインさんも声を上げた。

 

「なんだこりゃ!オレ様が必死こいて鍛え上げたスキルデータがああああ!」

 

俺もスキルリストを確認してみると、《体術》や《投剣》をはじめ、いくつかのスキルがロストしていた。でも、レベルの方は無事だった。

 

他のプレイヤーもアイテム名が文字化けしてる、スキルがロストしていると混乱している。すると、エギルさんが慌てた様子で大きな声をあげた。

 

「おい、こっちでも問題発生だ!転移結晶で下の層に転移できなくなっている!」

 

「おいおい、まだ続くのか。このわけのわからない現象がよ……」

 

「くそ!どうなっているんだ!」

 

ザックさんは困惑し、クラインさんは苛立って右の拳で近くにある木を叩きつける。

 

「転移結晶が使えないなら、歩いて下の層に戻ればいいんじゃないのか?」

 

「いや、それもダメらしい。そもそも今の話は、下のボス部屋の入り口が閉まったままだった事を不安に感じて転移結晶を使った奴からの話なんだ」

 

カイトさんの問いにエギルさんが答える。下の層に戻れないってことは、俺たちにはもう先に進むしか手段はないってことか。だけど、アイテムの文字化け、スキルデータのロスト、下層への転移不可という状況の中で俺たちは第100層までたどり着くことはできるのか。

 

かつてない事態に絶望的な未来しかなかった。

 

「……みんな!!聞いてくれ!」

 

こんな中、叫んだのはキリさんだった。

 

「このまま待っててもどうやら無駄みたいだ。だったら、これ以上致命的な不具合が出る前に先に進むべきだと俺は思う」

 

「確かにな。俺も同感だ」

 

真っ先にそう言ったのはカイトさんだった。

 

「俺たちはSAOをクリアするのを目指している攻略組だ。俺たちがこんな弱気でいたら、残されたプレイヤーはどうするつもりだ。攻略組はこんなものなのか?」

 

カイトさんの言葉を聞き、アスナさんとザックさんが反応する。

 

「うん。わたしたちがこんなことになっていたら、いけないよね」

 

「オレたちがこんなところで諦めていたら、オレたちを支えてくれているプレイヤーや死んでいったプレイヤーの気持ちを無駄にしてしまうからな」

 

2人に続くように俺も皆に言った。

 

「俺たちはまだ戦える。だったら、こんな絶望的な運命は俺たちが変えましょう!」

 

俺やキリさんたちの言葉を聞いた他のプレイヤーたちが徐々に活気を取り戻してゆく。

 

「皆さん、クリアを目指しましょう!!」

 

最後にアスナさんが言った言葉で完全に活気を取り戻し、この場にいた全員が声をあげた。

 

「お~~~~~し!一致団結した所で、さっそく76層の街を目指して出発するか!」

 

「なんでクラインが仕切るんだよ」

 

「まあまあ、今回だけはいいじゃないか。さっさと行こうぜ」

 

完全に気合が入ってこの場を仕切ろうとするクラインさん。そんな彼にカイトさんが冷静に突っ込みを入れ、ザックさんはカイトさんを宥める。そして、クラインさんを筆頭に俺たちは第76層の街を目指して歩き出した。

 

俺たちの不安が消えたわけじゃない。それでも、僅かな希望を目指して前へ歩こうとする。このゲームのエンディングを迎えるために。




次回の更新はいつになるかわかりませんが、これからもよろしくお願いします。
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