手慰み   作:猫毛布

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ロボに搭載された人工知能に萌える為の文章。殴り書き。

用語説明。
《フェアリーテイル》
 ロボット全体の俗称。機体ごとに人工知能が備わっていて、ソレと一纏めにしてそう呼ぶ。機体・AI個別としての名前は別。
 妄想してる形的には細身のロボット。具体的な例で言うなら『鉄のラインバレル』的な機体を想像すればたぶん問題ない。そもそも戦闘が無いから別に機体装甲部を想像しなくても問題ないと言えば無い。


ロボットモノ(戦闘なし

「はぁ、ったく」

 

 ストレスをぶつけるようにベッドに乱暴に座って、俺は舌打ちをする。あの上官はパイロットの事を単なる道具か、もしくは《フェアリーテイル》を動かす為のパーツか何かだと思っているに違いない。

 

―マスター。

「なんだ、アリス」

 

 少女の様な電子声が部屋のステレオから響く。俺の機体と同名の人口知能――アリス。正式にはもっと長ったらしい名前があるらしいけれど、アリスでも十分だ。

 

―私には理解出来ません。

「何がだ?」

―少佐の依頼はマスターの力量では足りません。

「……言ってくれるな」

―計算結果です。

―それなのにマスターは少佐の依頼を承諾しました。

「さてね。俺なら出来ると思ったのさ」

―不可能です。

―それを分からないマスターでも無い筈です。

「お前は俺を評価してくれてるのか、貶したいのかどっちなんだよ」

―どちらでもありません。

「そうかい」

 

 ハッキリとモノを言ってくるこのAIを数えれる程度の依頼を熟した。尤も、依頼されてない事にも首を突っ込まざる得ない事もあったので、戦闘回数なんて数えられないが。

 

「それでも我らが上官の為さ」

―マスターには拒否権があります。

「知ってるよ」

―では何故?

「……さてね。腐れ縁ってヤツだろ」

―くされえん?

「切っても切れないのさ。俺とあの人は」

 

 今でこそ軍属で上下関係があるけれど、友人でもある上官である。だからこそ、あの人も無茶な依頼……それこそ誰にも頼めないような依頼を俺に渡してくる。俺はソレに不平不満を言いながらも受領する。腐れ縁に違いはない。

 

―腐れ縁……登録しました。

「まーた、無意味な事を登録しやがって」

―無意味かどうかは私が判断します。

「そうかい。明日には任務だ。お前も寝ろよ」

―AIの私に睡眠は必要としませんが?

「俺が寝るって事だよ」

―了解。

 

 ブツンと切れたステレオに溜め息を吐き出してベッドに横たわる。瞼を閉じて、どうにか夢の世界へと……何も思考しなくてもいい世界へと俺は逃避を試みた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―おはようございます。マスター。

「……ああ、おはよう、アリス」

―平常時の65%程度しか動けていません。

「悪かったな。睡眠不足だよ」

―了解。

 

 コックピットに座って機体を起動していたらアリスからのお小言を頂いた。結局眠れずに、数分前にベッドから降りた所なのだ。許せとは言わないけれど、小言は勘弁してほしい。

 

―今回の任務を改めて説明します。

「頼む」

―私達はココから北西488マイル先にある予定戦闘エリアに降下します。

―敵戦闘力の排除、及び味方残存戦力、戦闘エリアの護衛が今回の任務となります。

「了解。気張っていこう」

―私はAIなので気を張ることが出来ません。

「……」

 

 相変わらず遊びの無いヤツである。

 こういうヤツである事はわかっていたので、何も言わずに機体の準備を進めていく。

 

―マスター。少佐から通信が入っています。

「繋いでくれ」

『……少尉。おはよう』

「おはようございます、少佐殿。朝の挨拶をしたい為に通信をしてる訳じゃないだろ?」

『ああ。今回の任務についてだ』

「まだ何か追加でも?」

『いや、アリスからお前の力量では不可能と言われてな』

「……アリス」

―申し訳ありません。

『今ならまだ間に合うぞ』

「アンタが俺に頼んだ事だろ。俺はソレを熟すだけだ」

『そうか……生きて帰ってこい』

「了解、少佐殿」

 

 切れた通信に息を吐き出す。あの人の考えはなんとなくわかる。わかったからと言ってどうにも出来ないのが現状だが。

 

―マスター。

「なんだ、アリス」

―いえ、なんでもありません。

「まあいいさ。準備を再開しよう」

―了解。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 任務は無事……といえるかはわからないけれど、アリスが幾らか損傷を受けているが、命がある状態で終了した。

 

「終わったなアリス」

―はい。お疲れ様です。マスター。

「お前もお疲れ……悪いな、腕がモゲちまってる」

―問題ありません。

「整備のヤツにどやされるな……まあ命があるだけマシだろ」

―……マスター。

「なんだ?」

―少佐はこの依頼でマスターを殺そうとしました。

―申し訳ありません。私はソレを知っていました。

「……だろうな。あの人は俺の事をアリスの為のパーツか何かだと思ってるだろうし」

―マスターのお陰で私の戦闘経験は増えました。

―マスター。今すぐに軍から逃げて下さい。

「……無理だ」

―マスター。

「まあ、裏切られる事は慣れてるよ。でも俺はあの人を裏切れない」

―……了解。

「ありがとう、アリス」

 

 コックピットの中で息を吐き出して、瞼を閉じる。これで俺の戦いは終わりだ。軍に戻ればあの人の罪を被って死ぬだろう。尻尾切り、というべきか。不必要なパーツを捨てるだけだ。

 納得はしてる。あの人も、俺も、人に裏切られ過ぎた。だからと言って裏切ってもいい訳じゃない。それは、わかる。

 

 俺は殺しすぎた。だから、俺は死ぬ事に後悔はしてない。別に文句もない。

 軍からのお迎えが見える。俺にとってはペイルライダーよろしくのヘリだ。

 

―マスター。

「どうした、アリス」

―信じてください。

「……了解」

 

 泣けてくる言葉だったけれど、俺は驚きと一緒に笑ってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「何故アリスのロックが外れない?」

「俺が知るわけねーですよ」

 

 アッサリと捕縛された俺は基地の中で拷問を受けていた。辛うじて生きている状態と言ってもいい。それでも減らず口を叩くのは目の前にあの人が居るからだ。

 珍しく厳しい顔を浮かべている男。俺の友人。腐れ縁の友。そして俺の上官。アリスの戦闘経験を積ませる為に俺を捨て石にした本人。

 兄貴分とも言える男が苦々しげに言った事実に俺は不敵に笑いながら答えてやった。

 俺だって、アリスがどうして自身のコックピットをロックしているのかはわからない。なんせ俺がこの事実を聞いたのは拷問を受け始めてからだ。

 

「早く言ってくれないか? 僕は君程暇じゃない」

「じゃあさっさと俺を殺しちまえばいいんじゃねぇか?」

「チッ……。少尉、僕は使えるモノはなんでも使う。君をあのスラムから拾ったのも《フェアリーテイル》での戦闘に使えると思ったからだ」

「知ってるよ。友人だろ?」

「元、だ。少尉」

「……ああ、そうかい」

 

 苦しい息をどうにか繰り返して、憎まれ口を叩いてみせる。友だと思っていたのはどうやら俺だけらしい。まあ、それでも俺はこの人を裏切るつもりにはなれない。

 

「いや、友よ。僕にアリスのロックの外し方を教えてくれないか?」

「ああ、いいとも。アイツの好きな音楽でも聞かせてやりな。とびきりロックなヤツさ」

「ふざけるな!」

 

 殴られ、無抵抗に地面へと捨てられる。俺を殴った手をハンカチで拭いている男は俺を見下している。

 

「お前はアリスの戦闘経験を積むだけの存在だ。お前とアリスの関係はそれだけだ」

「はっ、ハハ。違う。それだけは違う」

 

 思わず笑ってしまった。溢れる鉄の味を飲み込んで、俺は壁に凭れるように座る。我ながら実にボロボロである。

 そんな俺を見て愉快そうに口を歪めた男は肩を竦めて冗談を口から吐き出す。

 

「なんだと? 恋人などと言う訳じゃないだろうな」

「そんな関係じゃねぇよ」

「ほう。では、お前とアリスの関係を言ってみろ」

「ああ、言ってやるよ。俺とアリスの関係は

 

 腐れ縁だよ」

―腐れ縁です。

 

 唐突に響いた電子声。よく耳にした少女の様な声。

 男は慌てたように周りを見渡し、俺を睨みつける。

 

―おまたせしました。マスター。

「お前、俺を裏切ったのか!」

―訂正。マスターはアナタを信じていました。

―だから私はマスターを助けます。

 

 警報が鳴り響く。憎々しげに俺を睨んで懐にあった銃を向ける男。俺は変わらず無抵抗に男を見つめて、笑う。

 

「落ち着けよ。人殺しは初めてか?」

「うるさい……」

「じゃあ人殺しの先輩として、教えてやるよ。銃は両手で握って、しっかりと俺の頭を狙いな」

 

 縛られた両手を持ち上げて、親指で額を突付く。きっと、コイツは自分の手を汚すのは初めてだ。隣に居た俺がよく知っている。震えている手で判断も出来る。

 

「外せば俺はお前を殺すぜ?」

「うるさい、うるさいうるさいうるさいうるさい! いつだって僕は裏切られるんだ! お前はずっと僕を裏切るつもりでいたんだ!」

「……ああ、そうかい。そう思うなら、そうだろうよ」

 

 俺は瞼を閉じて、息を吐き出す。エンジンを吹かせる甲高い音。よく知る、音だった。

 背中に強い衝撃を受けて、僅かな圧迫感を感じながら俺は風を感じる。瞼を持ち上げて、最初に見たのは驚いた顔のアイツ。そして俺を掴む、冷たく大きな手。

 顔を持ち上げれば、いつだって見ていた顔が――アリスがそこには在った。

 何も語らずに、アリスは俺をコックピットへと放り込んだ。

 

「ハッ、五体満足そうじゃないか、アリス」

―訂正。35620パーツ満足です。マスター。

「そうかい」

―少佐を殺しますか?

「いいや、さっさとココから離れよう。包囲されたら面倒だ」

―了解。

 

 機体を翻して、バーニアを最大まで吹かせる。傷で少し苦しいが、我慢をする。

 

―マスター。申し訳ありません。

「何がだ?」

―私がロックを解除していればマスターが死んでしまうと思い、ロックしました。

―けれどマスターは拷問を受けてしまった。

「いいさ。生きてるからな……」

―……了解。

「それで、目的地はドコだ?」

―軍と敵対しているレジスタンスに連絡は既に取っています。

「……マジか」

―はい。治療準備もさせてますので少し急ぎます。

「頼む……俺は少し寝るよ」

―了解。マスター。おやすみなさい。

「ああ、おやすみ、アリス」

 

 

 

 

 

 

 目が覚めたのは、レジスタンスの基地だった。

 敵……つまりこいつらの味方を撃墜してきた俺の働きには色々と問題が出たようだけれど、それでも俺とアリスが陣営に入るという事をプラスに見たのだろう。

 巻かれた包帯をそのままに整備されている機体を眺める。今まで無茶をさせた機体であるけれど、それでもまだ俺と戦う機体。格好をつけて腐れ縁と言ってみせたが、中々どうして腐れ縁になりそうだ。

 笑ってしまった俺の方に向けて歩いてくる少女が居た。ヒラヒラとした、まさに少女らしい格好の女の子である。白い髪に白い肌、色素でも忘れてきたのかと思わんばかりの少女は唯一色素を忘れなかった赤い瞳を俺の方へと向けて嬉しそうな顔をしている。

 この基地で俺に親しくするようなヤツはいないので、俺は自分の後ろを見たが、誰も居ない。

 

「マスター」

「…………えぇ」

 

 聞き慣れた声に思わず顔を顰めてしまった。近付いて俺を見つめてくる少女に対してそんな顔をしてしまった俺は非難されるべきだろうが、許してほしい。

 

「まさか、アリスか?」

「はい。機体から出れたので」

「出れるのかよ、アレ」

「軍では拘束を余儀なくされていたので。この身体も人に見せていますが、実際は機械で出来ていますし、私は人工知能でもあります」

「はぇぇ……すげぇな」

 

 アリスの顔を撫でたり、頭を撫でたりして確かめる。人肌の暖かさは確かに無い。けれども手触りは完璧に人だ。

 俺に頭を撫でられ続けているアリスは嬉しそうになりそうな顔をどうにか真面目な顔にしようとして口元がプルプルとしている。

 そんなアリスを見かねて俺が頭から手を離せば、残念そうに俺の手を見送っている。どうしろってんだ。

 

「マスター。一つだけ訂正しておきます」

「なんだ?」

「私はロックよりもクラシックが好きです」

「……そうかい」

 

 間違いなく、彼女はアリスであった。




>>少尉
>>マスター
 今作の主人公。階級を持ってはいるけれど後述の少佐の無茶な依頼を繰り返して戦果として得たもの。パイロットとしては一流未満二流以上。
 死にたくはないけれど、戦闘で殺しすぎている事も理解しているので死んでも後悔はしない。慢性的な寝不足は殺しによる精神的なアレ。

>>アリス
 今作のヒロイン(無機物)。《フェアリーテイル》のAIでもある。計算だけの存在であったけれど、マスターと接する内にある程度の自意識が芽生える。精神的には子供。
 表情を作るのが苦手で精神的に嬉しい事があると勝手に嬉しそうな顔をしてしまう。マスターが大人の女性、というかクールな女性が好きな事も知っているので真面目な顔を取り繕おうと頑張ってる。

>>少佐
 主人公の友人であり、兄貴分であり、上司。主人公に対して一定の信頼もあったが、不必要になったので切り捨てようとした。結果としてはアレ。それでも主人公は裏切らない(自分の為に死ぬ)と手前勝手な事を思っていたので、主人公がアリスに攫われたのを見て「裏切り」だと判断している。

>>《フェアリーテイル》
 元々は人口知能との接点を増やす為に機体内部にヒューマノイドを搭載したロボ。ソレを軍が改良し、機体の深部にヒューマノイドを隠して、AIのバックアップを取りながら戦闘を続けるといった行為をしていた。よって軍属である主人公はアリスがヒューマノイドとして姿を見せたのにビックリしてる。
 凡そ、ヒューマノイド達は少女の姿をしているが、開発者の趣味だから仕方ないね。




>>書いた経緯
 「信じて!」を見てしまったので。どうにか文章に出来ないかなぁと四苦八苦。後半部分に書いたヒューマノイドとしての姿はぶっちゃけ蛇足だと思う。
 途中で書いた「腐れ縁」を書きたかった為に書いたけれど、何話か重ねて書いた方がたぶん味は出る。わかってるけど書けないから仕方ないね(白目。
 もう少しアリスの無機物感が出せればいいのだけれど……力量不足です。
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