反省点
短め。もう少し構成を練るべきだったかも。
ただ書きたい事は書けた気になっているので満足。
外は、思った以上に寒かった。
口から出た白い息も余計に寒さを感じさせ、逆に悴んだ鼻は冷たすぎて寒さも感じ無くなった。
家から逃げ出した僕は大した何かを持っている訳もなく、厚手のコートにあるポケットに片手を突っ込んで寒さを凌いでいる。
「寒い、ですね」
「そうだねー」
もう片方の手を繋いでいる彼女が僕と一緒に白い息を吐き出しながら、何でも無いように言った。彼女の名前は……知らない。シラナイ、という名前という訳じゃない。当然、苗字でもない。僕は彼女の事を全く、何も、これっぽっちも知らない。
小奇麗な顔に洒落たコート、マフラーまでしっかりした僕よりも幾分も年上の彼女。年齢も知らないけれど、母よりはたぶん年下だろう。
「少年、私のマフラーを貸して進ぜよう」
「どうも……」
「むふっふ」
僕を少年と呼ぶ彼女に一方的にマフラーを巻かれた。マフラーからは彼女の匂いがした。恥ずかしくなって巻かれたマフラーを少しだけ緩めてしまう。
そんな行動もオカシイのか彼女は笑って僕の手を繋いだまま街道を歩く。
街を歩く人たちは僕らの事なんて気にしてないし、僕も彼らの事なんて気にしてもない。
「私らはどんな風に見えるんだろうねー」
「……別に、姉弟か何かじゃないですか?」
「そだねー。まあクリスマスも近いし、宛ら仏頂面な弟を仕事帰りに連れる美人なお姉さま、ってところかな」
「自分で美人って言うんですね」
「そりゃぁ美人だからね」
「そうですか」
彼女がさも当然のように言ったように、彼女は美人だった。少なくとも、僕のクラスの誰よりも大人っぽくて――……それは当然か。
僕の素っ気ない態度が気に食わなかったのか、彼女は唇を尖らせてしまう。そのクセ、握っている手は離さない。むしろ歩く度に、その力は強くなっているような気がした。
広場に設置されたベンチに座って、彼女が買ってくれた温かい缶ココアをチビチビと飲み込む。彼女はそんな様子もニヤニヤと笑いながらブラックコーヒーを飲んでいた。
「少年はさー」
「はい?」
「どうして死のうなんて考えたんだい?」
僕の手が止まり、ジロリと彼女を睨んでしまう。僕の睨みなんて効かないようで、彼女は変わらず空を見上げながらコーヒーをチビチビと飲んでいた。
僕も空を見上げれば、生憎の曇りのようで星も月も見えない。
「別に、特別な理由がある訳じゃないです」
「ふーん。イジメとか?」
「イジメにはあってないです。残念な事に」
イジメられていたならば、僕はきっとソレを理由にアッサリと死んでしまっていただろう。逆説的に言えば、僕は死ぬ理由がなかったからこうして生きていた訳で、それはイジメにあっていない事を示している。
彼女は興味無さそうに「ふーん」と言葉を吐き出して、コーヒーを飲み込んだ。
「じゃあ特別じゃない理由は?」
「……死にたいだけです」
「少年の年齢で?」
「僕の年齢で、です」
精々十二支を一周と少しした僕であるけれど、彼女は僕の年齢を知らない。もしかしたら、僕が彼女を若く見えているように、彼女も僕が若く見えているのかも知れない。この場合は幼く、という方が正しいのかも知れないけれど。
彼女の形のいい唇がへの字に曲がり、納得出来ないように肩を竦めている。
「死ぬのが怖くないとか?」
「死ぬのは怖いですよ」
死ぬのは堪らなく怖い。怖くない訳が無い。
だからこそ、僕は死ぬしか解決策を見出すことは出来なかった。沢山の事を覚えて、沢山考えて、結果的に僕はこの恐怖に負けたのだろう。死にたくない、だから僕は死ぬのだ。
「ああ、なるほど。少年は私みたいに生きるのが疲れた訳じゃないんだね」
「生きる事は別に疲れる事じゃないです」
「そうだね。まあ、ソレを許されないのがオトナのセカイってヤツさ」
彼女はニッシッシ、と笑ってみせて近くにあったゴミ箱に空き缶を放り入れた。
僕は彼女に何があったかなど知らない。知った所で僕と一緒で答えなど既に出ているのだ。
「生きるのに疲れた私と
「僕らは死ぬしか無い」
「そうとも。私達は死ぬ事でしか結果を見出だせない」
だから僕らは出会った。だから僕らは死ぬ。一人では死ぬことが怖いから、ちっぽけな勇気すら生に奪い取られた僕らは二人で死に至る。
物言わぬ亡骸になる。こうして思考する事すら意味の無くなる、死。考えも、価値観も、記憶も、感覚も、何もかもが無くなる。
ふわりと舞い上がった風が僕と彼女の髪を持ち上げた。街の灯りも綺麗で、下には小さく人が歩いているのが見える。
「少年、今ならまだ引き返せるよ?」
「アナタが寂しくないように、引き返しませんよ」
「それはよかった。生が二人を分かつまで一緒に居てくれるなんてね」
震えていた僕は彼女の手を強く握った。彼女はやっぱり笑顔で、少しおどけてみせた。
僕らの手は震えている。死ぬ事は怖い事なのだから、きっとソレは当然なのだ。けれど、僕らは死ぬしかない。
「死んだ後は知りませんよ」
「ほら、えっと、
「
「それは探しやすそうだ」
「……また一緒に死ぬ気ですか」
「いんや、今度は死が二人を分かつまで、って言ってやるのさ」
「運命的ですね。無意味ですけど」
「ロマンの欠片もないなぁ、少年は」
「ロマンなんてモノは生きる為に生きてる人に言うべきですよ」
「それもそっか。ま、いいや」
彼女はニッコリと笑って僕の手を強く掴んだ。僕もソレに答えるように強く手を握った。
僕らは未来の為に一歩だけ足を進めた。
少年
所謂天才とか言われる死にたがり。
死ぬのが怖くて、それから逃げる為に色々と勉強をした結果、結局死ぬことでしか解決しない事が判明した。
根本的な恐怖は「生きている事」であるので、死にたがり。
彼女
所謂美人とか言われる死にたがり。
人間関係その他諸々、人間の汚れと黒さなどを知って修正出来ない事を知り、「生きる事」に疲れた女性。
生きていれば疲れる事が分かり、人生の休暇を取る。
Q.少年は矛盾してるんじゃない?
A.死にたい事と死ぬのが怖い事は矛盾してません。両立します。
Q.つまり、えっと、どういう事?
A.理解しなくていいです。理解してもいい事ないです。
Q.人間皆が抱えてる問題だから、死ぬのは逃げじゃないの?
A.逃げです。逃避です。死ぬ事が人間のゴールだとも言えるので非常に前向きな考えでもありますよね?(屁理屈
Q.つまり猫毛は何を書きたかったの?
A.私は前向きな思考の持ち主です(皮肉