ゲーム小説 幻想水滸伝Ⅱ   作:月影57令

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前書き
 原作で○○イベントのあるティント編開始です。つまり……あとはわかるな?






第21話 ティント

 和議の申し込みをしてきたクルガン殿が去って二週間が経った。しかし場所の指定、デュナン湖の湖上で交渉をしようというティルさんの申し出に対する返事は来ていない。ジョウイが本当にこちらと休戦協定を結ぶつもりなら、それを了承した使者がやってきていいはずだ。しかし使者は一向に現れない。これはつまり、ティルさんやシュウさんの言うように、こちらを謀殺するつもりだったということだろう。

 

(ジョウイ……どうしてだ)

 

『僕は誓うよ。この地に平和を取り戻そう。ほんのわずかな力しかない僕だけど、僕はその為に戦うよ……』

 

『戦いを終わらせよう。僕らの大切なものの為に』

 

 そう言ったじゃないか。だというのにどうして俺を殺すような策謀を……。

 

「ジョウイ……私達のこと、嫌いになっちゃったのかなぁ」

 

 ナナミの呟き。

 

「そんなことないさ」

 

 そんなこと、あるはずがないのだ。俺がジョウイを思うように、ジョウイだって俺を思ってくれているはずだ。その、はずだ。

 

 そうしていると、シュウさんが部屋を訪れた。居住まいを正して応対する。

 

「リオウ殿……お話があります」

 

「何ですか。シュウさん」

 

「はい。この戦争を終わらせる方法です。ハイランドが偽りの休戦協定を申し込んできたこともあり、話しておこうかと」

 

 戦争を、終わらせる。平和をもたらす方法?

 

「それは?」

 

「はい……それは、この地に一つの大きな勢力を築くことです。それ以外に戦を終わらせる術はありません」

 

「そんな!」

 

 ナナミが反応する。それはつまり……。

 

「どちらかが滅ぶまで戦い続けろ、と? 俺達が勝ちたいなら、ハイランド王国を滅ぼせと?」

 

「はい、そうです。レオン・シルバーバーグを擁するジョウイ殿も、きっと同じことを考えているでしょう」

 

「…………」

 

「…………」

 

 ジョウイが……。

 

 それだけを言って、シュウさんは部屋から去って行った。

 

「ねえ、リオウ。シュウさんが言ってた通りなら、どっちかが勝つまで戦わなきゃいけないんだよね? そしたらリオウとジョウイは……」

 

 お互いに、殺し合えというのか。俺に、ジョウイを。ジョウイに、俺を。そんなの、そんな、の……。

 

 俺は、ジョウイと笑いあえる日が来ると信じて今まで戦ってきたんだ。戦ってこられたんだ。もしこのまま戦い続けたら、俺の希望は叶わなくなるだろう。俺の希望は「ジョウイとナナミ、三人で平和な生活を」というものだ。確かに平和が訪れないというのは嫌だ。止めたい。だけど、平和になってもそこにジョウイがいなかったらだめなのだ。片手落ちだ。だけど、「平和」と「ジョウイ」はどちらかしか取れないという。平和を求めるならジョウイを倒す。ジョウイを倒さないなら平和にならない。そんなふざけた話が、今俺の目の前にある難題だった。

 

「リオウ。……こんなことを言うの、もしかしたら間違ってるのかもしれないけど……。ここから逃げちゃわない?」

 

「え?」

 

 驚きの声が出た。逃げる? ここからも?

 

「だって、だって……。こんなのおかしいよ。どうして休戦協定じゃいけないの? どうして戦い続ける必要があるの? リオウも、ジョウイも、仲良しだったのに……。なんで二人が辛い思いをしなきゃいけないのよ……」

 

「ナナミ……」

 

「だからさ……このまま城を抜け出して、どこかに行っちゃおうよ。それで、こっそりルルノイエに行くの。ジョウイだけを連れ出して、私達三人だけでさ」

 

 今までにも、ナナミに逃げようと言われたことはあった。その度に断ってきた俺だが、今ほど逃げたいと思ったことはなかった。

 

「俺……俺は――」

 

 

     §

 

 

 二人がそんな会話を交わしているとは思いもよらない僕は、城を歩いて仲間達に声をかけていた。仲間になった後のアフターケアも大事である。

 

「うぃーひっく。よっとくらよ」

 

 昼間から酒とはいいご身分だな、アマダ、アニタ、バレリア、ビクトール、アナベルさん。というか酒場に大勢いすぎだろ!

 

「仕事がないときゃ飲んだっていいのさぁ」

 

 こいつらは……。レオナも何か言ってよ。

 

「酒飲みには何を言っても無駄さ。せいぜい飲ませていい気分にさせてやるぐらいさね」

 

 むぅ。

 

「あ、ティルさん。私、これから踊るの。貴方も良かったら一緒にどう?」

 

 僕はカレンの踊りを見るだけにしておくよ。君の踊りを見たいんだ。

 

「なあ、カスミさん。久しぶりに会ったんだし、また足の速さを競わないか?」

 

「あ、あの。スタリオンさん……」

 

 カスミが困っているでしょ、スタリオン。自重しなさい。

 

「もっと鍛えられた剣を見たいものですな」

 

「今度いいハンマーを仕入れてくれるという話ですから、それでもっともっと鍛えましょう」

 

 貴方達は名剣に目がないね、ゲンシュウ、テッサイ。

 

「たたかいがない時も剣をふるのだ」

 

「ゲンゲンさんカッコイイ」

 

「鍛錬も大事だが休息も大事だぞ」

 

 ゲンゲンにガボチャ、リドリーのコボルトトリオは和むなぁ。

 

「まったく凡人は、私の教えを受けられることをありがたいと思え」

 

 少しはその城のように高い性格を直しなよ。そうすればもっと感謝されると思うよザムザ。

 

「こっちの軍は女の子も多いなぁ」

 

 お前には何を言っても無駄だから言わないよ、シーナ。

 

「すってんてんだぁ!」

 

 ここ(賭場)では凄くかっこ悪いよリッチモンド。

 

「俺はまだいけるぜ」

 

「あんたも身包みはいでやるよ」

 

 タイ・ホー、シロウ。あんまりやりすぎは良くないよ。

 

「あ、ティルさん。お父さんがね……」

 

 愚痴を聞くのも僕の仕事。しかしホントに父親好きなんだねトモちゃん。

 

「ティルさーん」

 

 ニナからは逃げるのみ!

 

「おおおおっ」

 

「りゃああっ」

 

 ハンナにオウラン、何やっているんですか。え? タックルの練習?

 

 ボブ、この城はどうだい?

 

「人が多いよな……人じゃないのも多いけど」

 

 それには同意する。でも寂しんぼの君にはこれぐらいにぎやかな方がいいだろう。

 

 そうしてふらふらと歩いている最中に、城門の辺りから威勢のいい少年の声が。

 

「ここがデュナン城かい! おいら急いでるんだ。時間がないんだよぉ。門を開けてくれぇ!」

 

 無茶なことを言っているが、これは確かあの少年だな。リオウがいないけど、まあいいか。

 

「ば、ばっきゃろい! おいらを誰だと思ってんだ! 灯竜山(とうりゅうざん)の三兄弟、コウユウ様だ……むぐっ、うっ、この……」

 

 ああ、やばい。騒ぎになっている。収めないと。僕は素早く城門に向かう。

 

「皆、とりあえず落ち着いて」

 

「おお、ティル様」

 

「ティル殿、この者が……」

 

「デュナン城にそれと知って訪問してきたんだ。お客さんとして扱おう。君、大丈夫かい?」

 

 兵士に揉みくちゃにされているその少年、コウユウを助け出す。

 

「おっ、おお。悪ぃな。あんた」

 

 乱された服を直しながら、コウユウ。………………コウユウがこう言う、とか思いついてないよ。ホントだよ? ホントだからね?

 

「僕はデュナン軍の将が一人、ティル・マクドールだ。君は?」

 

「ああ、それなんだが……ここにリオウってえ人がいるんだろう。おいらはその人に会いに来たんだ」

 

 やはりリオウに救援の申し出か。なら広間に連れて行こう。

 

「わかった。リーダーのリオウだね。人に呼ばせるから、とりあえず一緒に来てもらえるかな」

 

「ティル殿、しかし、このような……」

 

「敵意もないようだし、攻撃もしてこない。普通の客人として扱うよ。僕が広間に連れて行くから、皆はリオウやシュウ、主だった人を集めてもらえるかい?」

 

「……はっ」

 

 散っていく兵士達。

 

「へえ、あんた偉いのかい」

 

「まあ主要なメンバーの一人だね。それよりこっちだよ。ついて来て」

 

 歩いて広間へ。待機して皆が集まるのを待つ。すると少し経って集合する面子。リオウは……どうやら嘘の休戦協定が堪えているようだ。表情が優れない。まあ初対面のコウユウにはわからない程度の揺らぎだから問題はないだろう。この後フォローしよう。

 

「あんた……いや、貴方がリオウ様でやすか。それでは……ええと、お初にお目にかかりやす。おいら……拙者……わたくし……ええい面倒くせえ!!」

 

 コウユウは足を広げて上体を低くし、右手を前に突き出してリオウの顔を見上げた。

 

「おいらはティントの北に砦を構える灯竜山三兄弟の末弟、コウユウと申しやす。こちらにおわしまするリオウ様さまに我らの願いをお聞き届け頂きたく、恥を忍んで参上しやした」

 

 何とも時代がかった仕草と言葉だ。だが信義を尽くそうという気概は充分みなに伝わった。

 

「灯竜山の三兄弟。ティントで名高い山賊か」

 

 シュウが確認するように頷く。

 

「そこらの山賊と一緒にしてもらっちゃあ困ります。狙うは悪徳あきんど、インチキ香具師(やし)どもよ。情に厚く義理に固い灯竜山の三兄弟でさぁ」

 

 仁義を切るコウユウに、あっけにとられるみな。話が進まないのでさっさと用件を聞こう。

 

「それで、ティントが大変だという話だけど、肝心の用件を話してくれるかな?」

 

「へい、それがまあ大変な話でやして。聞いておくんなせぇ」

 

 コウユウの話が始まる。グリンヒルに駐屯している王国軍は、ティントにもその手を伸ばしたらしい。だが、長兄ギジムに長女ロウエン、そして末弟コウユウら三兄弟を始めとする灯竜山の山賊達は、驚くべきことにこれを撃退してのけたという。

 

「ですが、ことは最近になっての話です」

 

 続けた話だと、最近異様な集団がティントに攻め込んできた。兵はみな青白い顔をした死人のようで、少し斬ったくらいでは倒れない。おまけに攻撃に対して痛がりもせずに、逃げもしないとのこと。

 

「死人……まさか、ゾンビか」

 

 うなるビクトール。

 

「そうそう、ティントに住んでるおいらの友達、マルロがそんなことを言ってましたぜ。そんなわけでおいら達もほとほと困り果てちまいやして。砦もいつ落とされるか……という段になって、ご迷惑ながら、音に聞こえたデュナン軍のリオウ様さまをお訪ねしたという次第です」

 

「そうだったのか……」

 

 神妙に聞くリオウ。

 

「ビクトール達が撃退したネクロードという吸血鬼がいたのは、他でもないここだ。ここから逃れてティントに向かったのかもね」

 

 そう言うと、因縁のあるビクトールは目が据わった。

 

「ゾンビの軍団、その後ろにいるのは間違いなくネクロードだな。ゾンビを作れるのは吸血鬼のあいつだけだ。こりゃ調査に行く価値はあるぜ。ネクロードの奴なら山、山賊の縄張りだけじゃなく、ティント市、いや、その周辺まで手に入れようとしてもおかしかねぇ」

 

「だね。さて、敵の正体はほぼわかったわけだけど、どうする? リオウ」

 

「ティントが狙いならば、新同盟軍としても放っておくわけにはいきません。しかし山あいに大軍を動かすのは危険です」

 

 シュウがリオウの目をのぞきこむ。

 

「……わかった。デュナン軍の手勢を率いて調査に行こう」

 

「よし! そうと決まったら急いで向かおうぜ。行くのはリオウと俺と……」

 

「私も行く!」

 

 ナナミは必ずついてくる。

 

「当然僕も行くよ。後は最近暇をしているルックでも連れて行こうか。吸血鬼や配下の相手なら、グレミオとヒックスも戦った経験があるね。それと……」

 

 一緒に行くメンバーを選定する。まあ僕の知識通りなら二人の人物が仲間になってくれるはずだ。だが油断はしない。二人が加わらなくてもネクロードを倒せる、それくらいの陣容で望まなくては。まああの二人がいないと完全にはネクロードを倒せないんだけどね。

 

「ありがてえ、恩に着ますぜリオウ様!」

 

 ということで、一路ティントへ向かうことになったのである。

 

 

     §

 

 

 今回の一件はコウユウさんが持ち込んだ山賊の救援だけど、ティントとも同盟が結べるならば結びたい。その為、ジェスさんも一緒に来てくれることに。今度の旅はコウユウさんを含めると十二人と膨れ上がったが、ゾンビの一軍にはこれぐらいの備えが必要、と言ってティルさんは自らが率先して旅装を調えた。

 

 まず船に乗ってレイクウェストを目指し、そこから街道を南西へと進み、竜口の村という所に到着。コウユウさんはその間に自分達のことを色々と話してくれた。

 

「元々は家族でも兄弟でもないんですがね。いわゆる義兄弟ってえやつでさあ。気持ちが繋がっていりゃあそんなことは関係ねえんです。血よりも濃い繋がりって奴がこの世にはある」

 

 ギジムさんとロウエンさんという男女についても話してくれた。血の繋がりがない家族、か。それなら俺とナナミ、爺さんの三人だってそうだ。それで三兄弟のことが身近に感じられた。

 

 そんなことを思いながらも、俺は別のことを考えていた。コウユウさん呼ばれたから途中になってしまったナナミとの話だ。俺はいったいどうすればいいのだろう……。逃げる、ジョウイに、会いに行く。それはとても甘い誘惑だった。ジョウイ……。

 

「リオウ」

 

 ティルさんが、馬を走らせる俺の隣に並んだ。

 

「君が何を悩んでいるのかはわからないけど……もし辛いなら、今の立場から降りたり、あるいは逃げたりすることだって一つの手だと思うよ」

 

 ドキリ、とした。この人は相変わらず俺の内心を読み取ったらしい。

 

「もちろん逃げずに今の場所に踏みとどまるのも、君の自由だ。だけどこれだけは覚えておいて欲しい。他の人達がどう思っているかはわからない。だけど、僕は君に何も強制はしない。君がどんな行動をとっても、僕は君を許すよ」

 

 俺が、逃げても? それでも俺を許すというのだろうか、この人は。

 

「もちろん、今まで通りに過ごしてくれるなら、僕はそれも全力をもって支えよう。助けるよ」

 

 今まで通りに、リーダーをやる。だけど、そうしたら俺はジョウイを殺さなきゃいけない……。

 

 デュナン城を出て十日は経った。竜口の村だ。と、山道の前に兵士が。

 

「これより先はティントの領土。今は何者も入れてはならんという命令だ」

 

 通すわけにはいかないと、両手を広げる兵士。

 

「おーいおい。そりゃねえだろコクト。かあちゃんが身重になった時に、金を用立ててやったじゃねえか」

 

「こりゃあ、コウユウさんじゃねえですか」

 

 コウユウさんは若いのに顔が広いようだ。

 

「貴方の頼みじゃあ断れねえ」

 

 ということで通過できた。山道を通って虎口の村という所に至り、俺達はティント市国に到着した。

 

「きなくせぇ雰囲気だ。竜口の村と違って見張りの兵士もいねぇし……」

 

ティントは話に聞いた通り、岩山の連なる市国だった。周囲の鉱山から採掘、または採掘した鉱石の加工などを産業としているという話だ。今まで訪れた市国とはかなり様相の違い場所だな。

 

「とりあえず灯竜山に行きやしょう」

 

 一泊して翌朝、虎口の村を発ち、灯竜山に向かう。山道を登ると、そこには歩いてくる一団が。

 

「あ……そんな」

 

 コウユウさんと似た、だけど上等な防具と二丁斧を身につけた男性。

 

「コウユウじゃねえか」

 

「ギジムの兄貴!」

 

 コウユウさんもそうだが、ギジムさんも山賊という服装が似合う人だな。まあ山賊なんだから当然か。

 

「まったく、面目ねえ。奴らったらよぉ、しばらく動きを見せないと思ったら、突然大軍で襲ってきやがったのさ」

 

 しかも自分達の手下だった連中もいた、というギジムさん。死者から作り操られるゾンビ……か。

 

「あいつら相手にはこの斧は振るえねえしな……砦は火を放って、橋は落として、追いかけられないようにして逃げてきたってわけよ。ロウエンの奴は……散り散りに逃げたからわからねえや。まあ、あいつならそう簡単にくたばりゃしねえよ」

 

 このままじゃ腹の虫が治まらないからティント市のグスタフ市長の所に行き、共に戦うつもりだと言う。

 

「あちゃあ、すまねえリオウ様、少し遅かったみてえだ」

 

 盛大に顔をしかめるコウユウさん。

 

「気にしないで下さい。残った人達を助けることに尽力しましょう」

 

「なんだ、こちらがリオウ様か?」

 

 そこでまた仁義を切られた。うう、こういうの慣れないな。ギジムさんはひとまず逃げてくる手下をまとめて駆けつけるとのこと。俺達は先にティント市へ行こう。

 

 

     §

 

 

 うーむ。戦争というほどではないが、さすがに多かったかな? 今回のメンバーは僕、グレミオ、リオウ、ナナミ、ビクトール、オウラン、ルックにヒックスとテンガアール、ワカバ、そしてジェスだ。……うん、多いね。でもほぼ戦に近い戦闘になるので、大軍を派遣できない以上手勢とはいえ人数が欲しかったんだ。

 

 とりあえずの救援要請があった灯竜山はやはり落とされてしまった。ネクロードを仕留められていれば、とも思うが、どのみちノースウィンドゥでビクトールがネクロード斬っても倒すことはできなかったのだ。奴を本当の意味で殺せる機会は、三人の人物が揃った今この時でなければ無理だったか。

 

 山道を行き来する中で魔物フライリザードを撃破する。すると窓セットを落としてくれた。倉庫にないと思ったらここで手に入るものだったのね。そんなことをしつつも歩く。

 

 ティント市国にはクロムの村という村がある。虎口の村から西に行ったところだ。ここで仲間が二人増える。

 

「がつがつがつ」

 

 タダ飯だと思って好き勝手に食らいやがって。

 

「本当に金はいいんだな?」

 

「ええ、好きなだけ食べて下さい。その代わりデュナン軍で格闘の教練などをお願いしますよ」

 

「師匠……」

 

 ワカバも呆れ顔である。この人に信用してもらう為に弟子のワカバを連れてきたのだ。戦力としても数えているけどね。

 

 しかし、本当に食うなぁ。戦争になったら歩兵としてこき使ってやる。タダ飯なんてものはないと思い知らせてやろう。とにかく無銭飲食を繰り返していた格闘家ロンチャンチャンが仲間に。一人走って城へ行ってなさい。

 

 民家を回る。毎度思うがこの宿屋とか道具屋にいるんじゃなくて、民家にいる人を探すのは疲れる。語ってないだけで追い返されたりとか家に入れてくれなかったりとか普通にあるしね。

 

「おやおや、私はただの窓職人じゃよ。お客さんなどをお迎えする身分じゃあないのだが」

 

 ではさっき手に入れたばかりの窓セットを食らえ! 窓職人のおじいさん、テンコウさんだ。

 

「おお、窓セットか。懐かしいなぁ」

 

 それをあげますから仲間になってよ。僕らデュナン軍です。

 

「わかりました。ぼっちゃんに力を貸すとしましょう」

 

 さてさて、では北東に移動してティントへ。ここにも仲間が二人だ。

 

 防具屋で見つけました音楽家アルバート。

 

「いやぁ、ミューズにいたけど戦争で追いやられてね。その頃は音楽家をしていたんだ」

 

 音楽家といえば、アンネリーという女性が今デュナン軍にいますね。彼女から貴方のことも聞いています。仲間になって共に音楽を演奏して下さい。

 

「アンネリーがデュナン軍に……わかった。心配だし行ってみるよ。デュナン城にね」

 

 市庁舎の近くでうろうろしている赤髪の女性を発見。

 

「私はラウラ。友人のジーンの家を訪ねたいのだけど見つからないの……ここって、トゥーリバー市ですよね」

 

「ここティント市です。それとトゥーリバー市で紋章屋をしていたジーンさんなら今はデュナン城でお店をやっていますよ」

 

 勧誘また勧誘である。

 

「迷いそうだから後で一緒にデュナン城に戻りましょう」

 

 釘を刺しておく。これで札職人のラウラが仲間に。色んな街の紋章屋で五行の紋章を仕入れて、札にしてもらおう。これで紋章が宿せない108星や兵士でも五行の紋章魔法が使える。戦争でも兵士の生存率があがるね。主に水魔法は大事。

 

 ティント市庁舎の更に上、そこには礼拝堂があった。うん、何故ここを拠点とするのかまったくわからないが、まあいいだろう。位置を確認しておくのは大切だ。

 

 市庁舎で、市長のグスタフさんとの話は簡単に済み、同盟が結ばれた。シュウに連絡をとって軍を出してもらおう。

 

「ならおいらがひとっ走り行ってきまさぁ」

 

 コウユウはフットワークが軽い。

 

「市庁舎の二階に部屋を用意させよう。大したもてなしもできんが、ゆっくりしていってくれ」

 

 とグスタフさん。そうして眼鏡を掛けた青年、マルロに案内される。聞くと市長の娘さん、その子の家庭教師をしているのだとか。

 

「リオウ殿って、あのルカ・ブライトを倒した強い戦士ですよね。僕とほとんど歳が一緒なのに、どうしてそんなに強いんですか? 僕なんて、本ばかり読んでいるから力はからっきしで、皆には馬鹿にされて……」

 

 力の大小は重要じゃないよ。マルロ。

 

「俺は強くなんてありませんよ」

 

 リオウは少し自信を失っているようにも見えた。リオウの心、それはリオウにしかわからない。だけど、もっと僕は彼の心を理解しようとしていれば良かったのかもしれないね……。そうしていれば、あんなことには………………。

 

 

     §

 

 

 ギジムさんと別れて、俺達はまた虎口の村へ戻った。山賊の砦が落ちてしまったなら、次に狙われるのはこの村か、それとも別の場所か。俺達は西にあるクロムの村を経由してティント市に辿り着いた。コウユウさんの案内で、市長のグスタフさんがいる市庁舎を訪ねた。執務室にいたグスタフさんは、すぐに俺と会ってくれた。

 

「慌ただしいっすね」

 

「こいつらは今まで自分達が攻められるなんて想像もしてなかったんだろうよ」

 

 確かに。ここは山に囲まれた天然の要害だ。しかし死者の足にはなんの関係もない。グスタフ市長は丘上会議で見た相手だ。会うとビクトールさんが口火を切った。

 

「今までこっちの使者を無視していたようだが、今更細かいこたぁ言わねえ。死者の群れが迫ってるんだ。手を貸すぜ」

 

「……確かに、今更力を借りようなんて虫のいい話だな。だがそれでも、守らなきゃならんものがある。……こっちの少年が新同盟軍のリーダー、リオウ殿か」

 

 いかついおじさんという風体のグスタフさん。

 

「お初にお目にかかります」

 

「噂どおりまだ少年だな。ほっそい腕をして。このティントじゃあお前さんぐらいの小僧はその倍は太い腕をもっとるぞ」

 

 いきなりご挨拶だな。まあゴルドーで慣れている。決して怒らずに、素早く事態について話す。

 

「ゾンビか……確かに厄介な敵のようだ」

 

 顎をぐっと掴んで思案するグスタフさん。コウユウさんの方を向く。

 

「お前達と手を組もうじゃないか。山賊よ。それに新同盟軍の方々ともな……」

 

 おっと、簡単に同盟について申し出てくれた。

 

「私達が新同盟軍に手を貸さなかったのは事実。あんたらがあのルカ・ブライトに勝てるなんて思ってもみなかったからな。だが、今は違う。あんたらの力を認めているし、敵が迫る中での援軍は正直ありがたい。こちらからもお願いしよう。リオウ殿、力を貸して欲しい」

 

「もちろん、喜んで」

 

 これでマチルダ騎士団のゴルドー以外とは同盟を結べたことになる。デュナン城に全ての力を集める。全ての力を一つに――シュウさんが言っていた通りに都市同盟はまとまろうとしていた。

 

 だけどそれは、ジョウイ・ブライトという皇王を倒す力なんだ。今まで俺が必死に積み上げてきたものが、力が、ジョウイを殺す。

 

 俺はその力のあまりの巨大さに、目を(くら)ませるのだった。

 






後書き
 今まで必死に汗や血を流して作ってきた「人と人が繋がる、同盟することで生まれる力」が、友のジョウイを殺す力となって襲いかかる。簡単には止められない。どうしようもない。
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