ティントには乾いた風が吹いていた。砂の匂い……。それを与えられた一室で感じながら、俺は先ほどナナミと交わした会話を思い出していた。
「どうしたの? リオウ。元気ないみたいだけど……」
「ナナミ……俺は」
俺は迷っていた。ただ、ひたすらに。戦い、どんどん膨れ上がる都市同盟の力、ルカを失ったハイランド王国、そしてジョウイ……。
「ねえ、リオウ。もう、こんな戦いだけの生活なんてやめようよ。リオウが戦わなきゃいけない理由なんてないじゃない。戦って、傷ついて、武器を振るって、人を殺めて……そんなことをする必要はないよ。どうしてリオウがリーダーじゃなきゃいけないの? デュナン軍にいなくちゃいけないの? ビクトールさん、シュウさん、アナベルさん、ティルさん。リーダーをやってくれる人なら他にいるじゃない。それなのに、どうしてリオウがこんなに苦しそうな顔をしなきゃいけないの? このままじゃリオウとジョウイは……」
ナナミの気持ちが痛いほどわかった。ホントは俺もナナミやジョウイに戦って欲しくないのだ。
「ごめんね、こんなこと言っちゃって。でも、お姉ちゃんが心配してるってことを、忘れないで……」
俺は……爺さん、俺はどうしたら……。
「おやおや、あなた方もこりない方達だ。我が死者の軍団に膝を折りなさい。そうしなければ蹂躙されるだけですよ」
吸血鬼がティント市に宣戦布告してきても、
「お父さん、お父さん! 怪物が来るよ! 怖いよ!」
恐怖に怯える女の子がいても、俺の心は別の場所にあった。
逃げる……逃げて、ジョウイに会いに行く。どんな形でもいい、ジョウイと素の状態で会えれば、きっと心を開いて話せる。あいつの言葉を、意思を聞いて、俺の意思も伝えて。そして、そうすれば、きっと。
「リオウ……」
部屋に光が散った。これは、
「レックナートさん?」
またか。この人はいったい俺にどうして欲しいんだ。
「リオウ、久しぶりです。……少し見ない間に、あなたは逞しくなりましたね。ですが、貴方の瞳は悲しい色をしていますね……。ですが、たとえ悲しい思いをしていたとしても、貴方はそれを自分の力で変えることができるのですよ」
嘘だ。俺にそんな力なんてない。そんな力は――。
「俺は、俺達は力を得たいと思って紋章を宿した。でも、手に入れたのは、手に残ったのは、こんな“力“ばっかりだ。本当に欲しいものなんて俺の手のひらにありゃしない」
「わかっています。……しかし、貴方はそれを受け入れなければなりません。貴方は意思を持って体に紋章を宿したのです。紋章が与える運命も共に受け入れたのだから……」
なんだと?
「運命、だって!? 俺とジョウイが戦うことを運命だとでも言う気か! ふざけるな! 俺達が殺しあうことになったこの状況が、運命だとでも言うのか!」
運命なんてない。それはいったい誰の言葉だったか。
「リオウ、貴方とジョウイが宿した紋章は互いを求めている。引き合っているのです。それが運命の交わり……。たとえ苦しい道であったとしても……」
レックナートは俺の言葉を最後まで聞かずに光に包まれた。
「リオウ……。どんなに苦しく、困難な道のりであろうと、貴方は一人ではありません。貴方には思いを共にする多くの仲間がいるのです。それを忘れないで……」
そうして姿を消した。俺は、呆然となっていた。
………………………………………………。
俺はその夜。これ以上ないというほど周囲が闇に包まれた時間に、ナナミの部屋を訪れた。
§
僕は、それを知っていた。だけど、どっちに転ぶかはわからなかった。場合によっては最悪の事態にもなりうる。しかしそれについて何も手を打たなかった。リオウの道はリオウが決めるものだ。僕はどっちの道を選んでもリオウを許す。そう決めていた。だから、その夜に市庁舎の出入り口やティント市の外などで待ち伏せたりはしなかった。一度ティント市に現れて宣戦布告したネクロードが、ゾンビを操って襲撃してくるかもしれない。それに将として対応しなければならないという事情もあったが、リオウが逃げるのならば好きにすればいいと思った。だけど、その後に起きる悲劇を知っていたら、僕はそんな行動をとらなかっただろう。きっと。
「リオウがいない?」
「うん、部屋がもぬけの殻だったよ」
「どういうこった」
そんな会話をビクトールと交わす。朝、リオウの部屋をオウランと共に訪れたら、彼の姿はなかった。そしてナナミの部屋にも行ったが、当然のように彼女もいなかった。だが彼女の部屋には置手紙と瞬きの手鏡が残されていた。そして手紙にはデュナン軍から脱退するということと、この場所から逃げ出したことが書かれていた。
「これじゃボディガード失格だね」
「何故、姿を消したのだ。昨日はティントと同盟を結べたというのに」
悔やむオウランに不思議がるジェス。ジョウイのことが、僕が思っていた以上にリオウの精神を
「とりあえず、リオウがいないことはこの四人だけの秘密にしよう。今はティントとの共闘とネクロード対策だ。ネクロードを討ち果たしてティントの危険を解消したら、その時改めてリオウを捜そう」
そう言うと、一応三人は承諾した。政務はジェス、ネクロード討伐はビクトール。それぞれが担当すればいい。全体の指揮は僕がやればいいだろう。
と、考える暇もなくその日にティントへゾンビの大軍がやってきた。ネクロードめ、さすがに手が早い。
「――破魔!!」
破魔の紋章はここに来る前、左手に宿してある。当然の対策だ。これでゾンビの一個小隊は始末できる。
「ビクトール! このままじゃ分が悪い。撤退だ!」
「おう! だが市民が先だぜ! 俺はそれまで戦う!」
僕とルック、テンガアールが魔法を撃ち、ビクトールとオウラン、グレミオとヒックスにワカバが近接で戦う。僕は全体への指示や。額に宿した水の紋章で回復も担当する。気が抜けない。
「――輝く風!!!」
ルックが風のレベル五魔法を放つ。強力なそれは破魔魔法に劣らず、敵を遥か彼方まで吹き飛ばし切り裂く。同時に味方の傷もある程度回復するというおまけつき。さすが真なる風の紋章。
「――踊る火炎!」
テンガアールの火魔法も効果的だ。ゾンビは火魔法と破魔魔法に弱い。これ常識。
「よし、あらかた片付いたな。市民も避難したようだし、そんじゃ逃げようぜ。って、あん?」
ゾンビとは明らかに違う、全身黒い衣服のいでたち。
「お久しぶりです。ビクトール」
カーンが登場した。僕は初対面だね。彼も破魔の紋章を宿した、対アンデッド専門の人物、バンパイアハンターだ。やはり予想通りに仲間になってくれるようだ。
「おお、あんたか。ちょうどいいぜ。ネクロードの奴はどこだ?」
「奴はまだ遠くで私達を見ているでしょう。しばらくはゾンビの掃討を続ける他ありません」
「ん? あんたは奴を追ってたんじゃねえのか?」
「……実は、この近くの村に奴を倒す方法を持った人物がいるのです。その人物に会いに来たら、ちょうどネクロードも居合わせたということです。まずはその人物に会いに行きましょう」
「ネクロード討伐の切り札か……行ってみよう」
対ネクロードの第一人者である彼の言葉だ。素直に従おう。まずはティントから撤退だ。撤退撤退。こうやって逃げるのも久しぶり。ゾンビは「完全に倒すことが難しい」のが何よりやっかいだね。
目的地は虎口の村。だけどまずは一番近くにある、クロムの村に移動した。だがそこもゾンビだらけなので、いっそ虎口の村に市民を含め全員で避難しようとなった。グスタフさんの娘、リリィも行方不明。だがさらったのがネクロードならば、ある一定の期間は無事が保証されている。だけど急いで助けなきゃいけない。あの時のテンガアールみたいに。
「私が結界を作って貴方が星辰剣でネクロードの体を切り裂いても、“魂”を封じなければ再生するかもしれないのです」
詳しく説明するカーン。
「魂ねえ……」
ぼりぼりと頭をかいてビクトール。
「それでその方法というのは?」
「方法というか力を持った人がいるのですよ。虎口の村にいますので、とにかく行きましょう。ただし、相当に、そ・う・と・う・に、気難しい人物なので、対応には注意して下さいね」
「お、おう」
まあ確かに、気まぐれというかなんというか、な性格の人だからね。上手くあの人の機嫌をとるとしよう。クロムから東に移動して虎口の村にやってきた。すると人だかりが。
「…………」
「お前も怪物の仲間だろう!」
「そうだそうだ!」
「なんとか言いやがれ!」
「このアマが!」
「……アマ?」
ピクリ、と集団――人だかりの野次に反応する中心にいる女性。周囲をたくさんの村人に囲まれて糾弾されているが、堪えた様子はない。
「青白い顔をした奴が!」
「おいおい、やめろよこんな少女に」
「……少女?」
今度は大きく反応した。村人の無礼な態度と、止めに入ったビクトールに怒り、文字通り雷を落とす女性。雷魔法を使えるのか。
「おおぉわあぁああ」
「ひえぇぇ」
突然の雷魔法にわらわらと逃げる村人達。
真白い肌に白い髪、同じく白い服に青マントを羽織ったその女性は、知っている通りの性格だった。
「ふわぁ……寝不足じゃ」
「シエラ様ですね。私はネクロードを追っているマリィ家の人間です。どうかお力をお貸し下さい」
吸血鬼の始祖、ネクロードが持つ“月の紋章”の本来の所持者、シエラさんだ。確か年齢は八百歳以上だったはず。
「ほお、バンパイアハンターか。……確かにあやつめの盗んだ“月の紋章”を取り戻さなければならぬ。しかし人間なぞ足手まといじゃ」
と、そこで今まで静かにしていた星辰剣が喋った。そういや喋る剣だったっけ。
「よく言うな吸血鬼」
「!? おんしは星辰剣!」
旧知の仲らしく会話する二人……いや、吸血鬼と剣。
「……よかろう、その力を試させてもらうとしようか」
やはりというかなんというか、戦闘になってしまった。くそ、RPGの世界め。
戦闘では主に僕とカーンの破魔魔法で攻める。
「ぐっ。――黒い影!!」
闇の魔法を放つシエラさん。
「――守りの天蓋!」
闇の魔法による全体攻撃に、土魔法で対抗する。テンガアールに火と土の紋章を宿してもらっておいたのだ。抜かりはないよ。そして破魔連打ラッシュラッシュ連打連打である。
「――破魔!」
「――破魔!」
ダブル破魔。破魔、破魔。リオウがいれば輝く盾も有効ではあったけど、いないのは仕方ない。とにかく破魔だ。
「ほ、ほう、人間のくせにここまでやるとはの、おぬし、名前は?」
少し声震えていますよ。さすがに破魔連打は堪えたか。
「ティルです。ティル・マクドール」
「ティルか、よいよい。第一の従者にしてやろう」
「ありがとうございます」
な、なんとか仲間にできたぞ。上手くおだてないとヘソを曲げてしまうからな。
ティントとクロムの村がゾンビの群れに占拠されたのが現状。僕達はまだゾンビが来ていない虎口の村で対策を練ることにした。
夜。シエラさんとカーン、二人と会話をする。もちろん個別にだ。
「人間の里から、遠く遠く離れた場所に、わらわ達の住む地がある。“月の紋章”に呪われた種族。おぬしらの言う吸血鬼。全員がそれの村じゃ。人の血など必要はなかった。“月の紋章”が集める夜の精気だけで充分だったのじゃ。しかし禁を犯したネクロードが、紋章を盗み出した。その結果、里に残った者は二つの選択を迫られた。人を襲って血を吸うか、静かに死を待つか」
憂う顔で彼女はそう言った。
「…………多数の死者が出たのですね」
「ああ、自ら“吸血鬼”を選んだ者もいた。しかし多くの者はそのまま死んだ。それはそれは悲しかった。我が子達が死していくのはの。そして、“始祖”であるわらわは死ぬことができなかった。呪われた身よ」
「“月の紋章”を取り返さなければなりませんね」
「ああ、奴めをのさばらせるわけにはいかぬ……失われた魂は戻らんがの」
悲しげな人だな。僕も、テッドを失っていたら……。
そしてカーンも。
「祖父と父の仇。ですが、多分それだけではないのでしょうね。もう、既にネクロードを倒すことは私の存在する意味となり果てたのです。私の半生は、ネクロードを追う、滅することにのみ費やされました。ネクロードを倒した時、それが私の人生の終わりであり始まりなのでしょうね」
「今回の戦いが終わったら……デュナン城に来ませんか? きっと楽しいですよ。色んな人がいて」
「…………そうですね。考えておきましょう」
わずかに微笑んで彼は言った。もう夜も更ける。今は眠ろう。
………………………………。
翌朝、大変なことが判明。グスタフさんの娘リリィと、灯竜山の三兄弟ロウエンがネクロードに捕まっていたのだ。僕が予想(知識)していたことだけれど、改めてはっきりと判明した。
「俺のところの使用人、マルロが見ていたんだ。二人が連れ去られるのをな」
マルロは逃げ遅れていたが、なんとか命からがら逃げ出したという。そこにティント市とは逆方向から伝令が。
「シュウが軍を率いてティント市国に来たという話だったよ。まずはゾンビに対抗する為にも合流しよう」
なによりクロムからぞろぞろとこっちに攻めてくるゾンビに対抗しなければならない。まずは軍の力を得る。シュウを迎える為に山道を移動することにした。グスタフさんやギジムは虎口の村で踏ん張ってもらう。さあ行こう。
§
俺とナナミは深夜にティント市を抜け出した。理不尽で冷たい、俺を戦いへと駆り立てるものへの怒りと、ジョウイへの想い、それが俺を突き動かしていた。
「リオウ……うん。行こう!」
ナナミは頷いてくれた。もう限界だったのだろう、俺も、ナナミも。限界、だったんだよ。
「書き置きだけ残して行こうか。探させたら悪いしね」
手紙と、瞬きの手鏡をナナミの部屋に置く。これはデュナン軍のリーダーに必要なものだ。俺には必要ない。俺はティントの闇を裂いて歩いた。
歩いて二日。クロムの村に着いた。ここで一休みを……。
「そこのお前! スパイだな!」
と、いきなり村人にスパイ扱いされた。
「ティントが落ちたのはミューズ兵に化けたスパイのせいだって話だ。こいつらきっと……」
ティントが、落ちた? 俺達が離れたたった二日で? 疑問に思う中、数十人の村人に捕まってしまう俺達。だが、
「リオウ様!! てめぇら、何をしてる! デュナン軍のリーダー様だぞ!!!」
言付けを頼まれて難を逃れたコウユウさんだ。
「そ、それは知らぬこととはいえ、大変な失礼を……申し訳ありません」
村長を始めとして村人が謝ってきた。更に部屋を用意される。ここで休めばいいと。
「どうしよう。なんか悪いね。…………しょうがないよ。夜になったら抜け出そう」
そうして夜を待ち、玄関へ向かったら人の姿が。
「マルロ、マルロじゃねえか! 無事だったのか!」
コウユウさんとマルロさんだ。
「ちょっと疲れたけど大丈夫だよ」
「よく逃げてこられたな」
「ゾンビ達がティントを襲った時、タンスに隠れていたんだ。それで見つからずにすんで……。夜になって、こっそり坑道を伝って逃げてきたんだ。坑道の地図は把握していたからね」
「へへっ。お前の本も役に立つ時があるじゃねえか」
「だけど、大変なんだ。グスタフ様のお嬢さん、リリィ様。それからコウユウ君のお姉さん、ロウエンさんがネクロードに捕まっていたんだ。偶然見たんだよ」
「アネキが!?」
…………逃げられない。仕方ない。明日の朝早くに出よう。
そうして朝早くに逃げ出す。
「急ごうよリオウ」
しかし、敵はお構いなしだった。
「ゾ、ゾンビが! そんな!」
墓から土をかき分けて出てきたゾンビの集団がいた。村人に襲い掛かっている。
二人しかいないんだ。戦うより逃げよう。
「リオウ、あそこ! ゾンビに襲われてる人が!」
俺はビクトールさんの話を思い出していた。ゾンビに食われる人達……。
「っ! くそっ!」
俺は輝く盾の紋章を使って敵を退けた。その間に村人はあわあわと逃げ出した。……さすがに、目の前で殺されようとしている人を見捨ててまで逃げるつもりはない。だけど村人全員を救うつもりもない。俺は俺とナナミが大事なんだ。
「俺達もすぐ逃げるぞ」
ナナミと共に駆け出すが、行く手をふさがれた。なら元来た方向を……と振り向くとそこにもゾンビ。囲まれた!
「うわ、どうしよう!!!」
そこにまたもやコウユウさんが。斧でゾンビに攻撃する。
「おおおおっ!!! リオウ様、おいらがこいつらをやっつけます。リオウ様は逃げてくだせえ!!!」
「コウユウさんは!?」
ナナミが心配そうに尋ねる。
「おいら達がやられても大丈夫でさぁ。でもリオウ様がいなくちゃ、誰があのネクロードを、王国軍を追い払ってくれるんですか!!」
「ぼ、ぼくも戦います! コウユウくん!」
マルロさんまで……。俺を、俺達を逃がそうとして。俺達が、戦ってくれると信じて……。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
涙を目にして謝りながら走るナナミ。俺は……俺は……。逃げて、いいのか、ここの人達を見捨てて、俺は。
また、数日かけて虎口の村に辿り着いた。ここから山道を越えれば、さすがにゾンビも襲ってはこられないだろう。そう思ったが、来るときにはいなかった見張りの兵士が。
「お前ら、どこに行く!? 自分達だけ逃げるつもりか! デュナン軍のリオウ様やビクトール様、グスタフ市長達はティントを取り返そうとしているんだぞ。それをなんだ!」
俺は、俺が。
「く、う、う」
俺は、逃げることも……逃げることさえできないのか!?
「化け物だーーーー!!!」
すると遠く背後からゾンビに襲われる村人の叫び声が。
「なんだって!!!!」
そちらの方向に駆けていく兵士。不謹慎だがこれで山道に行ける。と、ナナミに袖を引かれた。
「私達……本当に逃げていいのかな」
「…………」
「……………………ごめんね、私が言い出したわがままだったね」
「いや、そんなことはない」
俺だって、俺だって限界だったんだ! これ以上どうしろっていうんだよ!
「わわわ!!」
「くそっ、またゾンビか!」
周囲に土の下から這い出るゾンビ。操っているネクロードが近くにいるのか? それともある程度離れていてもゾンビを生み出せるのか?
「輝く光!!」
ゾンビの群れを駆逐する輝く盾の紋章……うぅ。
「くっ、うぅっ」
意識が……途切れそう、だ。
「なんでだ。くそ」
急に、どうして……。もしかして、逃げた、罰なのか……。それとも、紋章を使った、から、か……。俺は思うように体が動かせなくなり、倒れてしまった。
「リオウ!」
ナナミ、逃げろ……。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんがちゃんと守ってあげるからね。大丈夫だからね!!! 行くよ。しっかり捕まって!!」
「ナナミ……俺は……」
俺を担いで逃げようとするナナミ。やめろ。俺なんか守るな。
「はぁ……はぁ……リオウ。リオウは生きなきゃ。生きるんだよ。リオウは私が守るんだ。じいちゃんと約束したんだもん!!」
ぼやけてまぶたが落ち行く中、大勢のゾンビが……。
「やだ! やだ! やだ! やだぁーーーー!!!!」
ナ、ナミ……。おれは……いいから……にげて、くれ……。
………………………………。
「大丈夫か? 少年?」
「……………………ぅ…………く」
俺は、目を覚ました。男性の声。誰だ?
「おれ……ここ、は……」
そのとき、
おれの、
めのまえに、
からだじゅうにきずがついて、
ちにまみれた、
ナナミが。
「ナ、ナミ?」
どうして、
なんで、
ナナミが、
「すまないな、少年。その子は助けられなかった」
うそ、だろ?
ナナミ、
ナナミ、
ナナ、ミ……。
「―――――――!!!!!!!」
おれは、さけんだ。
後書き
言い訳はしません。ただ一つだけ。この展開は本作品を書き上げる前から構想していたことです。私にとっては決まっていたことでした。批判があれば感想などでお願いします。