ゲーム小説 幻想水滸伝Ⅱ   作:月影57令

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第3話 故郷へ

 グレミオとテッドを連れて、リオウ達の故郷キャロへ出発。

 

「急に逃げたりしないでね、ジョウイ君」

 

 一応警告しておく。勝手に動かれたら厄介だ。しかし……どうしよう。僕の知識が正しければ、リューベの村に旅芸人の三人がいるはずだが……まあいいか。もしかしたら途中で会えるかもしれないし。仲間にならなくてもそれはそれである。相変わらず108星集めは適当だ。というか僕じゃなくてリオウの108星だからなぁ。僕がどうこう考える必要はないか。

 

 途中で食事や水分摂取などの休憩もしつつ、傭兵砦から北にある峠を目指す。そしてぱかぱかと馬を走らせて一日が経った。リオウ達二人は軍人なので、野宿でも文句は出なかった。

 

 二人は同じ馬に乗って何かを話している。聞きたいが自重しよう。

 

 で、燕北(えんほく)の峠に着いた。都市同盟の詰め所にいる兵士さんには、ビクトールから一筆書いてもらってきた。事後承諾だけど、ミューズ市市長のアナベルさんに許可をとるから、というものだ。ビクトールは二人をキャロの街に帰すことに少しばかり苦い顔をしていたが、少年達が故郷に帰りたがっているというと納得してくれた。謀殺される危険性があるが、僕ら三人がついて行き守る、と。

 

「わかりました。できれば事前にご連絡頂けると嬉しかったのですが」

 

「すみません。急なことだったもので」

 

 頭を下げて峠に踏み込んだ。兵士さん達は少し落ち着かなげな様子だった。ってことはあの三人を通行させてしまった後なんだろうか? まあいいか。進もう。峠だけど道幅は充分だから馬でも通れるね。ここには体力を回復できる泉があるはずだけど、必要ないかな。

 

「ほい」

 

「はっ」

 

 素早く棍を閃かせる。グレミオも斧で攻撃し、テッドが弓矢で援護する。これで充分敵は死ぬ。

 

「強い……」

 

 ジョウイの言葉通り、僕らは強かった。簡単に言えば、僕らは赤月帝国を解放した、そのままのレベルだってことだ。ゲームであるなら、Ⅱに登場するⅠの人物はレベルに調整が入る。データの引き継ぎ、コンバートがあってもね。だけど現実の世界では、解放戦争で戦闘の経験をしたそのままだということだ。強すぎるからってレベルが調整されたり下がったりなんてしないのである。というかレベルが下がるって何よ? という話だ。だから僕らはリオウ達二人に比べたら強いのだ。歴戦の猛者ってやつだね。

 

「まあこれぐらいは軽いものだよ。僕らは傭兵になる前、トラン共和国で解放運動に参加していたんだ。戦闘も戦争もそれなりに経験しているよ」

 

「トラン共和国……」

 

 嘘は言っていないよ。解放運動に参加していたよ。リーダーだったけどね。

 

 そうして先に進む。カットバニーという兎の魔物を蹴散らしながら。キラービーという蜂の魔物もでるが、全然大したことはない。

 

「山賊!」

 

 人間の敵が登場。しかし……。

 

「ひぃぃぃ!?」

 

「や、やつだぁ!」

 

「やめろォ!」

 

「逃げるんだよぉぉぉぉ!」

 

 山賊が一目散に逃げる。

 

「……ティルさん。何をしたんですか」

 

「いやぁ。傭兵になってしばらくの間、ここで山賊の討伐をしていただけだよ」

 

 ここを通るのはわかっていたからね。スムーズに通れるよう掃除をしておいたのだ。おかげで僕の風体は山賊共の間で知れ渡っている。悪魔のような扱いだ。酷いなぁ、僕はこんなに善良なのに。すいません嘘つきました。

 

「…………」

 

 沈黙するなよぅ。ジョウイ君。

 

 さて、峠も下り坂になった。奴の出番だな……。

 

「気配を感じる……皆、気をつけて」

 

 すると、僕達の先に巨大な魔物と三人の男女が。一人は黒髪が艶やか女性、雰囲気は占い師といった感じだ。もう一人は、腰布を巻いて、首から鎖を()げた上半身裸の大男。それが口から火を吐いている。確か紋章の力だったはずだけど、凄いなぁ。そして最後の一人、黒髪を肩口で綺麗に切りそろえた女性、大きめの赤いスカーフを腰に巻いて、耳には綺麗な耳飾り。と、つぶさに見ている場合じゃないな。加勢しよう。

 

「加勢します!」

 

 叫んで三人の前にでる。三人はしばらく戦った後なのか、はぁはぁ言っている。

 

 霧が集まって巨大な人型をなす。霧型の魔物ミストシェイドだ。リオウ達にとっては、初めてのボス戦かな? 戦闘の経験を積ませた方がいいよね。普通に戦おう。

 

 まあ、

 

「――大爆発!!」

 

 火の紋章が文字通り火を噴くんだけどね。

 

 バゴォォォン! と詠唱した通り大爆発する敵、ミストシェイド。これは酷い。情報(弱点属性)が漏れていると簡単すぎるね。左手に宿した火の紋章で一撃である。リオウ達なんて突然のレベル四魔法に目を白黒させているし。

 

 ぎぃやああああ!!

 

 こうして、霧の化け物は倒れたのである。

 

 

     §

 

 

 ……凄い魔法だった。紋章魔法が使われるところは見たことあるけれど、あんな規模の魔法は初めて見た。ティルさん達は南のトラン共和国(旧赤月帝国)で解放運動に参加していたらしい。三年前に終結したという戦乱だけど、ティルさんやテッドさんってその頃もっと歳が若かっただろうから、俺達と同じ歳の頃、戦争に参加していたということになる。

 

「敵対しなくて良かったな、ジョウイ」

 

「……ああ」

 

 ジョウイも呆然としている。

 

 とりあえず、三人の男女と挨拶をする。

 

「私はリィナ」

 

「おれはボルガン」

 

「あたしはアイリ。よろしくな」

 

「はい、よろしくお願いします。ところで三人はどうやってここまで来たんですか? 峠の入口には兵士がいて通行を制限していたはずですが」

 

「あ……」

 

「うう……」

 

 ティルさんの言葉にうめく三人。逆方向、ハイランド王国側から来たという可能性はないだろう。あの霧の化け物と対峙していた方向がこちら側だったんだ。都市同盟側から入って進んでいたのは自明の理だ。

 

「はぁ……まあ、あの兵士さん達には後で確認しておきましょう。通ってしまったものは仕方ありません。僕達はこの先にあるというキャロの街に行くところです。同行しますか?」

 

「え、ええ。そうですね」

 

 三人の中で一番年長のリィナさんがそう言ったので、俺達は一緒に峠を下ることになった。一晩だけ一緒に過ごす。

 

「なあ、リオウ」

 

 アイリさんに話かけられた。

 

「あんた、これから故郷に戻るんだろう? それってどんな気分なんだい?」

 

 戦々恐々だよ。という本音は置いておき、

 

「そりゃあ嬉しいよ」

 

 と嘘をつく。

 

「ふぅん。そうか。あたしらにはわからない感情だね」

 

 聞くとアイリさん達は、西にある山岳地と平原の地域、グラスランド出身らしい。

 

「って言っても、帰ったって何かがあるわけじゃなし。その時その時で楽しい場所を見つけるその日暮らしさ」

 

 旅芸人の女性はそう言って笑った。

 

「そういう生き方もあるんだな」

 

 わずかに微笑むアイリさんを見て、そういう生き方も悪くないな、と思う。自分には故郷があって、お金の問題で軍人なり、かと思ったら祖国に裏切られて仲間皆殺し、そして敵国の傭兵に捕虜とされた。……自分で言ってみたらかなり不幸だな。なんだこれ。

 

 まあいつまでも落ち込んでいても仕方ない。思考を切り替えよう。とりあえずティルさんの好意でキャロの街に帰れるんだ。前向きに考えるか。

 

 そうして俺達はキャロの街に戻ってきた。

 

「じゃあここで別れよう」

 

 これまでの移動中に話していた通り、別れる。俺とジョウイはキャロの街に戻る。アイリさん達三人共お別れだ。彼女達は皇都ルルノイエに行って巡業するのだとか。と、ティルさんがアイリさん達に聞かれないよう、声を潜めて言ってくる。

 

「僕らもしばらく街に留まって様子を見る。二人がもし始末されそうになったら助けるよ。何もなければ家で暮らすといい。君達は自由だよ」

 

 ……ホントに自由にしていいのか。

 

「一日だけですけど、楽しかったです」

 

 微笑むリィナさん。

 

「あたし達はこのまま皇都ルルノイエに行くよ。……楽しかったよ。あ、でもさ、あんたたちの家を教えてくれないかい? またこの街に来たら顔を見に寄ってみるからさ」

 

 とアイリさんに言われたので素直に家の場所を教える。そうして旅芸人の三人とは別れた。街中に入りジョウイとも別れてそれぞれの家へ。

 

「気をつけろよジョウイ」

 

「リオウも、ナナミによろしく」

 

 で、俺は街に入り、まずは情報を集めることにした。俺達の勘違いだったら馬鹿らしいからな、しかし――。

 

「リオウ……どうしてここに!? 早くナナミちゃんを連れて逃げた方がいい」

 

「俺、志願するよ!! こんなひでぇことされて黙っちゃいられねぇ!!」

 

「休戦協定なんて嘘っぱちだったんだ!!! 都市同盟の奴らめ! なんて汚い!!」

 

「また戦争になる……私も都市同盟のしたことは許せないけど……でも嫌だよ……」

 

「リオウ! 縛り首にしてやるって皆騒いでるんだ。ナナミちゃんを連れてすぐ逃げな!」

 

「きゃあ! あなたリオウ! どうしてここにいるのよぉ!」

 

「お前はリオウ! へっ、裏切り者の子供は裏切り者だな!」

 

「あのね、お兄ちゃんがまだ帰ってこなくてね……お父さんに聞いてもいつ帰ってくるか、おしえてくれないの……」

 

 ……………………。

 

「アトレイド家のぼっちゃん、軍隊に入隊してたけど、敵のスパイをやっていたんだって……」

 

「あの街外れにある道場の子供がそそのかしたって話よ」

 

 …………ジョウイまでもが……俺に付き合って軍に入ったばかりに……。

 

「いやぁ。ラウド隊長は立派だなぁ。同盟の卑怯な襲撃でも、一歩も退かなかったらしいじゃないか」

 

 ……あいつはゲスだ。

 

 よし、街を回って大体の状況はわかった。やはりユニコーン少年兵部隊は都市同盟に壊滅させられたという話になっている。逃げ延びた俺達二人は始末する為、口封じする為に、都市同盟のスパイという冤罪をきせられて指名手配されている……と。そんであのゲスが勇敢に戦った隊長になっていると。くそが。

 

 俺は情報が得られたので、急いで家へ帰った。この分じゃジョウイの方もまずいことになっているだろうが、まずは無関係なナナミから逃がさなければ。

 

「ナナミ!」

 

 ナナミは家の裏手、爺さんの墓前にいた。懸命に手を合わせている。何かを祈っていたのか。

 

「あ、あーーーーー!!! リオウ!!!」

 

 膝丈の深い緑のズボンに桜色の服、肩の辺りで切り揃えられた黒髪、ぽっちゃりとした頬。懐かしい。変わらないナナミの姿がそこにあった。

 

「ほ、ほ、ほ、本当にリオウ!?」

 

「こんなボロ道場に帰ってくるのなんざ、俺以外にいないだろ」

 

「あ、あああああ、その憎まれ口、リオウだああああ!!!」

 

 だっと飛びかかってきたので普通に避ける。地面にどしゃっと腹を打ちつけるナナミ。

 

「あほう」

 

「う、うぐぐぐぐう。リ・オ・ウ~~~~!!」

 

 怒りに燃えるナナミをなだめて話を聞く。うんうん。都市同盟が休戦協定を破って攻めてきた。ユニコーン部隊はそれで全滅。そして攻めてくる契機となったのは少年兵部隊に二人のスパイがいたから、だそうだ。……あのゲス野郎とルカって奴のせいだ。

 

「二人、のスパイ? リオウとジョウイ……」

 

 首をかしげるナナミ。

 

「…………逃げよう! リオウ!」

 

 ……俺はスパイじゃないのに何故逃げる、という結論になったんだ。ああ、誤解したのか。まあ丁度いいけど。

 

「大丈夫、リオウが何をしても私はリオウの味方だから!」

 

 だからスパイじゃねえっての。二人で最後に爺さんの墓に手を合わせる。そうして家を出た時だった。

 

「リオウ、スパイ容疑で逮捕する!」

 

 ハイランド王国の軍装、水色の鎧を着た兵士がわんさかやってきやがった。もう手が回ったのか。

 

「駄目ー! リオウは捕まえちゃ駄目なの!」

 

 自分の武器である三節棍を構えるナナミ。俺もトンファーを取り出して構える。

 

「じいちゃんの教え、見せてあげる!」

 

 二人で兵士を倒す。トンファーの片方で武器を捌き、もう一方で敵を打ちつける。ナナミとの連携は、鍛錬を積んでいるからそう簡単に崩されたりしない。だが、さすがに多勢に無勢だ。そうしていると……。

 

「よう、リオウ。久しぶりだな。あんまり手こずらせるなよ」

 

 ゲスが現れた。

 

「…………」

 

 こいつに話すことなど何もない。

 

「色々あるんだよ、世界には」

 

 うるさいゲス野郎。

 

 しかし剣術の腕が達人級のゲスにはかなわず、打ち倒されてしまった。はっきりとした形で処刑したいからこの場では殺さないとのこと。不幸中の幸い……なんて思えるか! このゲス野郎が。

 

「あぅ……」

 

「ナナミ……くっ」

 

 ナナミが倒された。俺は、ナナミを守れなかった。……すまない爺さん。武術を教わったのはこんな時の為なのに。俺は傭兵の三人を思い、できるだけ早く助けてくれるように願った。……別に自分の力で全ての問題を打開することなんて望んじゃいない。人の手が借りられるならそれでもいい。だけど自分の意思で物事を決定できないというのは、実に嫌なことだった。金がなくて軍隊に入った時と同じくらいには、嫌だった。

 

「リオウ、ナナミ……二人も捕まってしまったのか」

 

 牢屋に入れられたらジョウイの姿が。

 

「ああ……」

 

 本当はすまないと言いたかった。自分に付き合って軍人になったジョウイ。だが、ここで謝るのは彼に対する侮辱だ。

 

「頑張ったけど、やられちゃった。……でも、どうしてスパイなんてことに?」

 

 ナナミの疑問に、

 

「それは俺が教えてやろう」

 

 と、ゲス登場。牢屋の外で笑みなんぞ浮かべてやがる。死ねよこの野郎。

 

「あの酷い急流に飲まれたってのに、よく生きていたな」

 

「何故……都市同盟の急襲なんて嘘を……それにあの男は本当にルカ皇子なのですか」

 

 ジョウイが真相を知りたいと声を上げる。

 

 そうしてゲスは語る。ユニコーン少年兵部隊をなぶり殺した非情な都市同盟により、休戦協定は破られた。それがハイランド王国にとっての事実。

 

「どうだいお嬢ちゃん。都市同盟は酷い奴らだと思うだろう? そう聞かされたなら」

 

「た、確かにそう聞かされたらそう思うだろうけど……でも、本当のことを知らなかったから……」

 

「嘘もバレなきゃ真実になる。ルカ様の野望には生贄が必要だった」

 

 さしずめあの男の野望とは都市同盟を滅ぼしたいとかそういうものだろう。確かそんな感じで話していた。

 

「あの方の野望。そして俺の望み……金の為には、お前らは憎むべきスパイとして死んでもらうことになるな」

 

「そんなことの為に! 仲間を……皆の命を奪って……!」

 

 死んだ仲間達の姿が脳裏に浮かぶ。血や臓物の臭いが蘇る。こいつらが殺したんだ。まだ少年だった仲間達を、こいつらが――。

 

「すまんな。それじゃあ面倒な裁判はサービスしといてやる」

 

 裁判もなしに俺達は処刑されるらしい。ははは。何だこれ。あまりの酷さに笑い出しそうだ。

 

「ちくしょう……ちくしょう……」

 

 ジョウイは涙を流して悔しがっている。ダンッと地面に拳を打ちつけた。俺もこのまま殺されるとしたら確かに悔しい。

 

 縄をかけられて引き立てられる。

 

「お前らのせいで、息子が!!」

 

「あの子を返してよ!!」

 

 男も女も激しい罵声を浴びせてくる。中には母親だろう女性にすがりついて、俺達を恨めしそうに睨む小さい女の子。妹とかだったのだろうな。俺の胸には少しばかりのすまなさが生まれた。スパイというのは誤解だけど、大勢の少年兵の中で生き残ったのは自分達二人だけなのだ。

 

 そうして街を歩いた。途中むかつく皇女様に出会ったりしたが、俺達は無事(?)処刑台に引きずられて行く。大勢の兵士が処刑台の周りにいる。ゲス野郎もいやがる。これではあの三人が協力してくれても逃げられないのでは……。と、

 

 ざすっと音を立てて縄が切られる。

 

「今助けますね」

 

 縄を切って助けてくれたのはグレミオさんだった。ティルさんは? と見た瞬間、

 

「――火炎陣!!!!」

 

 強大、なんて言葉では言い表せない災害のような魔法が発動した。炎を纏った雷が、轟きながら落ちたのだ。

 

「あおらアアあああっ!!?」

 

 奇妙な声を上げて崩れ落ちるゲス。そして燃え上がる大勢の兵士達。雷と火? いったいなにが……。

 

 これは後で聞いた話だが、この時ティルさんが使ったのは合体魔法と呼ばれる技法だったらしい。なんでも紋章魔法の最上級魔法を、特定の二つの紋章で組み合わせ、同時に放つと魔法が合体して、二つの効果を併せ持つ魔法に変化するらしい。今回使ったのは雷と火を組み合わせた「火炎陣」。単体の敵に雷を落とすと同時に焼き尽くす炎で燃やし、周囲に雷火の余波でダメージを与えるらしい。左手に火の紋章を、額に雷の紋章を宿して二つの紋章で最上級魔法を放ったのだ。……そんなことができるとは知らなかった。軍でも教わらなかったぞ。燕北の峠でもそうだったが、ティルさんは熟練の魔法使いみたいだ。「僕なんてまだまだだよ」とか言っていたが充分化け物だ。

 

「さて、逃げようか」

 

 涼しい顔でティルさん。……恐ろしい人だ。決して敵に回してはいけない人だと思った。

 

「ジョウイも大丈夫だ。さっさと逃げようぜ」

 

 ジョウイの縄を切ってくれたのはテッドさんだ。良かった。疑いをかけられて逮捕、処刑される寸前という酷い状況ではあるが、死ぬことはなんとか回避できた。これでジョウイが死んだら目も当てられない。

 

 ぷすぷすと燃えているゲスや兵士達はどうでもいい。死ぬギリギリみたいだが、どうせなら死ねばいいんだ。というか死ね。

 

「待って下さい。姉が……ナナミが牢屋に捕らえられているんです。すみませんが助けてもらえませんか」

 

 ナナミを自分の力で助けられないのは業腹だが、今は三人の手を借りたい。

 

「わかった。牢屋に行けばいいんだね」

 

 頷いてくれたので、俺達は急いで牢屋へ向かう。死んで欲しいゲス達にとどめを刺すことはしなかった。そんなことをしている間にナナミが害されては何の意味もないからだ。

 

「やれやれ、ぼっちゃんのお供は大変ですね。」

 

 グレミオさんのぼやき。

 

「別にいいじゃん。忙しくて飽きないよ」

 

 と気楽なテッドさん。そうして牢屋に行くと、我が姉は俺の想像を超えていらっしゃった。

 

「どけ! どけ! どっけー!」

 

 どかどかと兵士を打ち倒しているナナミ。……なんであんた自由になってんだ。

 

「もぉぉ、怒ったわよ! ゲンカクじいちゃん直伝! 奥義、花鳥風月百花繚乱竜虎万歳拳を食らわすわよ!!」

 

 なんだそりゃ。

 

「待ってなさいリオウ! ジョウイ! 今すぐお姉ちゃんが助けてあげるからね!」

 

「…………良かったね、リオウ。助けてくれるそうだよ……」

 

「言うな、ジョウイ」

 

 気が抜けた。

 

「あ、あれ? リオウにジョウイ! 良かったー」

 

 俺達二人の首を抱えるナナミ……ああ、良かったな。とりあえずさっさと合流して街の外へ行こう。いつまでもグズグズしていられない。おっと、俺達の武器も取り返して、と。

 

 俺達六人は走って街の正門まで逃げて来た。

 

「とりあえず街の外に出る方向でことを進めちゃったけれど、三人はそれで良かったのかい?」

 

 ティルさんが聞いてくる。

 

「キャロは故郷ですが、こんな仕打ちをされて黙っていられるほど大人しい性格はしていません。とりあえず指名手配されるハイランドからは逃げるつもりです」

 

 故郷を思う気持ちより今の生存だ。

 

「…………僕も、今は……」

 

 これも後で聞いた話だが、ジョウイは家の人間、父親によって軍に突き出されたらしい。そして母親とは一目も会うことができなかったんだとか。母親を大事に思っている彼のことだ、会いたかっただろうに。

 

「うん……リオウとジョウイを殺そうとするような場所にはいられないよ。……でも、さ。私達、ここに戻ってこられるのかなぁ」

 

 俺はもう故郷になんて一欠片も心を残していなかった。爺さんの屋敷と道場、そして墓には少しばかりの未練がないでもなかったが、これだけのことをされたハイランド王国になんて一秒たりともいたくなかった。だからこう言った。

 

「さあね」

 

 冷たい言葉。だけどどうでも良かった。ナナミが帰りたいと望んでも、命を落とすくらいなら帰らせてはいけないと思った。

 

「……きっと、戻ってこれる日がくるさ」

 

 それに比べてジョウイは優しい。俺達は故郷を眺めた。そして気持ちを振り払うように(きびす)を返した。

 







後書き
 返し刃の封印球は出しません。素早く二回攻撃できるって、それ体の速度が上がる神行法の紋章や、(SSの設定上は)力が三倍になる必殺の紋章と被っているじゃん。ということで。自分でプレイする時は乱獲しますけどね。六個ぐらい獲得しちゃいます。そうすると後が楽で楽で。

 戦闘の経験を積ませようとは何だったのか。ティルがいることでリオウが成長しなくなったらまずいような気がする。まあちょっとこのまま書いてみますけどね。

 ジルとの出会いはジョウイにとっては大事だけど、二人にとっては些事なので、カットです。別に彼女が嫌いだとかそういうわけじゃないですよ。ただ二人もの主人公がいるのに、ジョウイまでは手が回らねーってばよ。

 ムクムクカット。公式小説では登場した彼(?)ですが、それは無茶だろ……と思ったのでカットです。
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