第1話 未知との遭遇
「ハッ、ハッ・・・・!」
町はずれの廃屋で、少年は駆けていた。
決して広いとは言えない廃屋の中を、時につまずき、時に何かにぶつかりながらもその動きは止まることはない。
その姿はまるで、何かから必死で逃げているようにも見えた。
事実、少年は逃げていた。
彼には理解しえないナニかから、自分を守るために。
だがそれも、やがて終わりが来る。
(畜生・・・!)
逃げていた少年は、ついに行き止まり、廃屋の一番奥の部屋にたどり着いてしまった。
少年は窓を探すが、見つからない。せわしなくあたりを見回しながら、少年は考える。
(どうする?どうする?何か方法は?逃げ道は?解決策は?ないのか?ないのかっ!?)
だがそれも無駄と悟った時、少年から血の気が引く。
来る。
来る。
「アレ」が来る。
呼吸がどんどん速くなり、それに比例するかのように心臓も早鐘を打つ。
手足は震え、冷や汗が止まらない。
(なんだってこんな目に・・・・!)
恐怖に半ば精神を支配されていく中、その少年、
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時は数時間前にさかのぼる。
駒王町と呼ばれる町に住む男子高校生、左馬 満。
彼はこの町にある、駒王学園という高校に通う高校二年生だ。
彼は学校から帰る道すがら、ぼんやりと考え事をしながら歩いていた。
(これは、今年も入らねえかなあ、部活。)
駒王学園には多数の部活があり、部活動や生徒会に参加している生徒も多いが、帰宅部の生徒は少ないとはいえ、いないというわけではなかった。
その少ない生徒の一人、満はなおもぼんやりとしたまま思う。
自分は飽きっぽい性格だ。ただ一つの例外を除いて何一つ特定の趣味や活動が長続きしたためしがない。
そんな自分には部活という、忍耐を要求されるようなものは似合わない。と、偏見の入り混じった屁理屈をこねつつ、歩みを進めていく。
ふと気づくと、満はいつの間にか自分の住む二階建てのアパートにたどり着いていた。
(俺にはやっぱり・・・・)
アパートの前を掃き掃除していたアパートの管理人に挨拶をし、自分の部屋へと入る。
(・・・こいつしかないかあ。)
学生かばんを降ろした彼の視線の先には、自分のベッドに立てかけられている、模擬刀が映っていた。
基本的に飽きっぽくて面倒くさがりの満だが、唯一執着し、続けているものがあった。
それは刀であり、剣術であった。
満は幼いころから刀に対して非常に深い関心を示し、またそれを扱う術である剣術についても知りたがった。
有名なものから、マイナーなものまで。体の動かし方から、剣を持つ者の心構えまで。
彼は刀については、ありとあらゆるものについて知りたがった。
満は制服から動きやすいジャージに着替えると簡単な食事を済ませ、模擬刀を刀袋に入れ、ついでにいつの間にか住み着いていた黒猫にもエサをやり、部屋を後にする。
管理人に出かける旨を伝え、町はずれの廃屋へと向かう。
アパートの自分の部屋は模擬刀を振り回すには狭すぎるし、アパートの前や公園等で振り回せば、通報されるのが目に見えていたからだ。
普段人が寄り付かない廃屋ならばそう簡単に見つかりはしまい、と満は考えていた。
時刻は午後六時を回っていた。
思えばこの時思いとどまるべきだった、と後に満は語る。
その時刻が昔、なんと呼ばれていたかを失念していた、とも。
陰と陽が
廃屋についた満は模擬刀を取り出し、振るっていく。
五年以上に渡り振るい続け、染みついた各流派の基本の型。
ただそれだけを愚直に、何度も何度も振るい続ける。
自らに課したノルマである、各流派50回の素振りを終えるころには、あたりはすっかり暗くなっていた。
(そろそろ帰るか、管理人さんに心配させたらまずい。)
最悪、夜出歩けなくなると、そう思った満は模擬刀をしまい、廃屋を後にしようとした時だった。
突然、満の耳にその音は聞こえた。
小さな音だったにもかかわらず、満の耳にははっきりと聞こえていた。
かつん。かつん。どす。どす。
何か硬く、力強いものが床を突き、踏みしめる音。
振り返った先に、ソレはいた。
まず目に入ったものは、美しい女性の上半身だった。
何も身に着けておらず、それだけを見れば満も見惚れていたかもしれない。
だが満は下半身を次いで見た。見てしまった。
人の胴体をいびつにデフォルメした異形の下半身に、蛇のような尾。
その姿を見た瞬間、満の脳内に駆け巡ったのは、絶対的な死の予感と、圧倒的な恐怖。
こいつには勝てない。ヒトの手に負えるモノではないと、本能が警鐘を鳴らす。
異形が、口を開いた。
「お~っほっ・・・」
その瞬間、満は駆けだしていた。
とりあえず、アレからなんとしてでも距離を取りたかった。動いた瞬間殺されるのではないかと思ったが、相手もこちらの反応が予想外だったらしい。
満からは見えていなかったが、その異形はしばらく呆けた後、ニタリと笑うと、
「うふふ、今宵はツイてるねえ。餌が飛び込んできてくれたんだからね。さあ、狩りの時間ね。」と言い、ゆっくりと満を追いかけ始めた。
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時は再び現在へと戻る。
逃げ場を失った満は、模擬刀を抜き、震えながらも部屋の入り口を睨んでいた。
(逃げ場がない以上、ヤツの横をすり抜けるしかねえ。こんなモンが効くとも思えねえが、やるだけやるしかねえ。痛がってくれたら恩の字だな。)
どす。どす。音が近づくにつれて、体の震えが強くなっていく。
(くそったれ、どうせ死ぬならやってやる。)
そう自身に喝を入れると、大きく深呼吸して入り口を再度睨む。
すでに足音は止んでいた。
「み い つ「おおおおおおおおああああああ!!!!」」
全身全霊をかけて目の前のモノに突っ込む。
模擬刀といえど、これならば突き刺さると、半ば確信すら得た会心の突きだった。
「け た あ」
が、無駄だった。
前足でまるで虫をはたくように打ち据えられ、壁に叩き付けられる。
「ッッッッッッ!!??」
苦痛の声すら出なかった。視界が赤黒く染まっていく。
朦朧とする意識の中で、ケタケタと笑う異形の声と、自らを呼ぶ誰かの声を聞いた。
初めまして、ルルガルウと申します。
この度、ハーメルン様で小説を投稿させていただくことになりました。
何分初めてなもので、お見苦しい点多数あるとは思いますが、どうぞよろしくお願いします。
誤字脱字等、ありましたら感想欄にて、ご連絡ください。