まあ、なんというか。アレです。
無理ゲーです。
どうぞ。
リアスがグレイフィアと呼ばれた女性と対峙している頃。
満は、自分の部屋で麗那と話し合っていた。
話題は、鴉天狗の能力についてだ。
「鴉天狗の能力には、通訳、念話、時渡りなどがあるわ。」
「ほう、時渡り?」
「そうよ。」
まず一つずつ説明していくわね、と麗那は続け、
「まずは通訳。これはそのままの意味で、私が近くにいればどんな言語も関係なく、言葉の意味が伝わるわ。」
「へえ、便利だな。ちなみに、近くってどんぐらいだ?」
「それがよくわからないの。どうも、近くっていうのは物理的距離じゃないみたい。」
「物理的距離じゃない?…だめだ、よくわからん。」
そう言って頭をかく満。
「まあ、私は基本的に満の側にいるし、気にしなくてもいいんじゃない?」
「それもそうか、それじゃ、次の…」
「念話ね。これは、いわゆるテレパシーよ。頭の中で思ったことが、」
(こういう風に聞こえるわね。)
「うおっ!」
「ふふ、素敵なリアクションどうも。これは一方通行じゃなくて、私が念話したいと思った相手なら双方向に意思疎通が可能よ。」
「ん?ならなんで朝使わなかったんだ?」
「使ったら絶対びっくりして悪目立ちしてたわよ。」
「…そうだな、それは否定できない。」
ジト目を向ける麗那に対し、スイ、と目を逸らす満。
「…それで?時渡りってのは?」
「…そうね。これは、まだ私も理解しきれていないんだけど…」
麗那の言ったことを要約すれば、こういうことだ。
曰く、
時渡りとは、つまるところタイムトラベルで、鴉天狗の業の中でも特に難易度が高いものである。
中にはそれを自由に扱い、鬼武者を補佐した者もいるらしい。
麗那はそれを扱うこと自体はできないものの、時渡りの技術を用いて悪魔にも堕天使にも天使にも感知されない転移術が使えるのだと。
「ふむ。ちなみにそれは、複数人で使用できるのか?」
「ええっとね、申し訳ないんだけど、私の力不足でやっとこさ1人余分に連れて行くのが精一杯ね。しかも一度使ったら疲れてしばらくは動かなくなるわ。」
「うーん…最終手段だな。ちなみに転移距離は?」
「これも特殊なんだけど、私が知っている場所ならどこでも行けるみたい。」
(…まるで○ーラだな。)
「あと、満が私に念話してくれればそれを辿って転移できるわ。」
「んー…。 便利なんだか使い勝手が悪いんだか。」
「悪かったわね。」
半目で睨む麗那を手であやしつつ、満は考える。
(今後俺では勝てない相手も当然出てくるだろう。この間の麗那クラスの相手が2人でもいたらそこでアウトだ。それに、
思い起こすのは目の前の少女と戦った時。
死力を尽くして尚、一歩届かなかった相手。
(もしもの時は、近くの奴をつれて逃げてもらうか。)
決して自分は逃げない。逃げるとしても、自分は最後。
そんな思考を半ば当然のものとしつつ、満は更に考える。
(もっと力が必要だ。仲間を守るために、何より、周りの奴らに心配をかけないように。)
次なる修行のプランを練っていると、
(!!気をつけて満!誰か転移してくるわ!)
(何?誰だ?)
(わからないから誰か、って言ってるんじゃない!恐らくは悪魔。それ以外はわからないわ。)
(なるほど、これが念話って奴か、便利だ。まあ、オカ研の誰かだといいが…そう都合よくはないんだろうな。)
麗那が慌てたように念話をしてくる。
そして模擬刀を構え、何時でも抜けるようにしていると、紅い転移陣が現れ、そこから紅い髪の、見知った顔が現れる。
「ミツ!」
「部長。どうしたんすかこんな時間に。あ、悪魔なら活動時間でしたっけ。」
「そんなことはいいの!それよりもお願いしたいことがあるのよ!」
「へ?俺にですか?部長が?」
「ええそうよ!あなたにしか頼めないの!お願い!」
「ま、待ってください。まずは落ち着いて、このお茶でも飲みながらそのお願いとやらを…」
「落ち着いてなんかいられないわ!あのね、よく聞いて!」
「私の処女を貰って頂戴!」
「…なんですと?」
「ゲホッゲホッ!?ガハゴホ!!」
リアスのその衝撃の"お願い"に、満は半目になり、麗那は盛大に咳き込んでいた。
(…どう思う?)
(ハニトラ、という線は無さそうね。突然すぎるし、何より彼女自身に余裕がない。ハニトラとしては失格の部類ね。)
リアスにバレないように、念話で麗那に話しかける。
(だよな。どう考えても不自然すぎる。だったらなんでこんな"お願い"なんて…)
(案外この前の満に言った、身体で払う、ってヤツかも?)
(お前、わかってて言ってんだろ。そんなことする人じゃねーよ、部長は。)
(まあね。…私が思うに、彼女は何かに追われてるのかも?)
(はあ?それがなんで処女云々の話に…)
(とりあえずこのまま黙ってるのはマズいわ。何か反応しないと。)
麗那にそう言われ、目の前で何かに焦っているリアスに話しかける。
「部長、落ち着いてください。何があったか知りませんが、まずは詳しい話を…」
「そんな悠長なことを言っていられる場合じゃないわ!早く、早くしないとグレイフィアが…」
(グレイフィア?って奴に追われてるのか?)「…わかりました。とりあえず部長は、そこの押入れに麗那と隠れててください。その、グレイフィア、って人に追われてるんですね?なら、俺が説得してみます。」
「無理よ!あなたでは彼女は…」
「無理かどうかはこちらが決めます。さ、早く。」(わかってるな?麗那。)
(ええ。…ホントはこんなことしたくないけど。)
またもや念話で麗那に話しかける。
(部長が逃げ回るしかない相手だぞ?力を直接は見たことねぇが、木場や姫島先輩を牛耳ってる人だ。弱いわけがない。)
(その人が逃げ回ってる、って時点で相当の手練れってことね。いいわ。転移先は一誠クンの家でいい?)
(ああ。ただし、戦闘になって俺が負けてからだ。敵を倒したタイミングが一番油断しやすい。)
(そんな!)
(最も転移がバレにくいタイミングを言ったまでだ。とにかくやれ。いいな?)
(…わかったわ。…死なないで。)
(おいおい、コッチに死亡フラグを立てないでくれよ。)
最悪の場合の対応を2人の間で即座に決めつつ、鬼の籠手を出し、模擬刀を鞘に入れたまま居合の形で待つ。
(現れた瞬間襲ってくるなら、斬る。違うなら、構えを解けばいいだけだ。)
じっとりと背中に汗が浮かぶ。
どこから来る。上か、下か、横か。
待つこと数十秒、ついにその瞬間が訪れる。
床に現れる魔法陣。そして現れる侵入者。
その姿を見た瞬間、
(逃げろ麗那ーッ!!!!)
(満!?)
ぞわり、と全身に鳥肌が立った満は全力で刀を抜き放つ。
その刀は抜かれるとすぐに雷斬刀へ変化し、侵入者へ叩き込まれる。
バギン!
何かが折れる音が聞こえ、ドッ、と床に刺さる尖ったモノ。
半ばから折れた雷斬刀の刃だった。
(…ああ、ゴメン、麗那。俺死ぬわ。)
(満!満!)
死を確信する。次の瞬間、自分は死ぬ。
目の前の
「やめてグレイフィア!!」
「!?」
たところで、リアスが間へ入る。
その光景に、思わず満は、
「何を!?逃げてください、部長!」
「もういいの、もういいのよ!ミツ!」
リアスへ逃げるように言う。
目を固く閉じ、首を何度も横へ振るリアス。
侵入者はかざしていた手を下ろし、
「…何故このような無駄なことを。ただの人間ではないようですが、所詮は人間、何を考えておられるのですかリアス様。重ねて申し上げますが、これは運命です。逃れることなどできません。」
と、先ほどの攻撃など何も無かったかのように話し始める。
「…わかったわ。連れて行って。その代わり、彼には手を出さないで。」
「いいでしょう。お父様もお待ちになっておられます。」
ガックリとうなだれ、諦めるリアス。
そこに、
「おい、待てよ。」
侵入者の前に、満が立ちはだかる。
「ちょっと、ミツ!」
「部長は黙っていてください。こちとらイライラして仕方ないんです。」
そう言って目の前の女に向き直り、言う。
「何が運命だ。そんなもんは、ただの言い訳だ。己の行動を認められず、かといって否定もできない敗者の言葉だ。それを運命だから諦めろ?テメェ、部長に負け犬って言いたいのか!」
「それはあなたの持論でしょう。それに、この場で最も負け犬なのはあなたでは?」
「ああそうだろうともさ。俺は負け、死を待つ憐れな虫ケラにしか見えんだろうさ!だがな、一寸の虫にも五分の魂だ!負け犬にだって、意地はあるんだよ!」
睨みつける。確かに自分は負けた。だが、それは最初から決まっていたことではない。自分の行動した結果なのだ。
運命など認めない。自分の行動してきた結果が、他人の書いた筋書き通りなど絶対に認めない。
それだけは決して容認できないと、全身で訴えかける。
こちらの眼を冷たく見つめる侵入者だが、ため息を一つつくと、
「…リアス様。ここはこの人間に免じて、一度引きます。ですが、次はないと思ってください。」
そう言って、魔法陣の中に消えていった。
立っていることが出来ず、崩れ落ちる。
「満!」
「ミツ!」
焦点の合ってない揺れた瞳をしながら、満はリアスに問いかける。
「…部長。説明、していただけますよね?」
「…わかったわ。」
そこには、負け犬と、少女2人を照らす、折れた模擬刀が寂しく光っていた。
如何だったでしょうか。
ええ。リアスがいなければ即死でした。
自分でも首を捻っています。
本来なら、原作通り夜這いシーンだったんですが。
あれよあれよという間に戦闘シーンに。
戦闘にすらならなかったんですけどね。
どうにも登場人物がここんところこちらの思惑通りに動いてくれません。
今話で満が言った、他人の筋書き通りはゴメンだ、みたいな発言の通りに動いているんでしょうか。
まあプロットが崩れていないのでいいんですがね。
それでは、次回。 またお会いしましょう。