ハイスクールD×D 〜鬼を継ぐもの〜   作:ルルガルウ

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ルルガルウです。

今回は比較的早めに更新できました。

第40話、どうぞ。


第40話 神話に語られるもの

「ッ!"回収"しろッ!紫藤ッ!」

 

戦場に、満の叫びが木霊する。

だが、その声に反応するものはいない。

 

(…無理だとはわかっているが、これで"3人"が使い物にならなくなったッ!出来りゃあ嘘やデタラメであって欲しいんだが…)

 

「ふむ。人間にしては優秀だよバルパー。褒めてやろう。その事実に気づいていたとは。だが、あまり有能すぎる部下はいらん。聖剣は惜しいが、もはや必要はなくなった。用済みだ。」

 

尊大な口調でバルパーに話しかけるのは、光の槍を放った張本人。

コカビエルだった。

 

「…ふ、ふふふ。」

「ん?」

「む、報いとは思わん。それに、せ、聖と魔の組み、合わせという、あ、新たな研究っ、課題も出来た。」

「まだ無駄口を叩ける元気があるか。潔く死ね。」

「だ、黙らんさ。し、しかしこの課題は、来世までの宿題としよう。こ、コカビエル。さ、先に向こうで貴様のし、死に様、を…。」

 

そんな言葉を言い残し、絶命するバルパー。

それを一瞥すらせずリアス達の方へ向き直るコカビエル。

 

「…ふむ。フリードは逃げたか。相変わらず逃げ足の速いやつめ。…まあいい。それよりも先ほどの発言。人間。貴様はやはり卑しい鼠だったか。」

「よく言うぜ。最初っから疑ってしかいなかった癖によ。」

「…だが、貴様は俺の疑念を確信へとはついぞ変えなかった。そこは褒めてやる。しかし、俺の部下を皆殺しにするのだけは不味かったな。」

「…」

 

コカビエルの発言にコカビエルと満以外のその場の全員がギョッとする。

対して満は黙ってコカビエルに視線を返すのみ。

 

「恐ろしい男だよ。決行日となる本日、速やかに俺の部下を全員暗殺するとは。ああ、やはり貴様は鼠だったようだ。黒死病(ペスト)を蔓延させる、恐るべき病原体だ。」

「…言いたい放題だな。」

「それほどまでに貴様の行ったことは常軌を逸している。スパイもよかろう。共謀もよかろう。だが、諜報を行う者がほぼ全ての敵対者を皆殺しにするだろうか?目標(ターゲット)を直接狙わず、雑兵とも呼べるレベルの奴らまで根絶やしにするとは。それは既にスパイなどではない。何が貴様をそこまで駆り立てる?手段を選ばず敵を殲滅するその理由は?」

 

コカビエルは興味深そうな顔で満に問う。

 

「…仲間を守るためだ。」

「…何?今、貴様は何と言った?」

()()()()()()()()()。」

「…」

 

コカビエルはその答えにしばし口をつぐむと、

 

「クックック…ハッハッハッハッハ!」

 

突然笑い出す。

 

「…何が可笑しい?」

 

視線を鋭くして問う満。

コカビエルはおかしくてたまらないといったような様子だ。

 

「クックック…何、予想だにせんことを聞いたからよ。よもや"仲間を守る"とはな。」

「…どこかおかしいところでも?」

「おかしくなどないさ。いや実に辻褄の合う答えだ。そうかそうか、仲間を守るためか。ならば敵対者を尽く排除するのは当然だな、実に合理的だ。フッフッフ…」

 

肩を揺らして笑うコカビエル。

 

「…だが、それは本当に守るための行動なのか?」

「どういう意味だ。」

「フフフ、気づいていないのか?その行動は守るというにはあまりにもかけ離れているということに。」

 

そこで一旦コカビエルは言葉を止める。

 

「…仲間を守る、などと言う甘っちょろい奴らは、常にその弱さと共にあった。守るどころか、共に闘い、守られる始末。そういう奴らほど"仲間を信じる"とか"絆の力"だとか抜かしたものだ。そして、そういう奴らは仲間を失い、絶望の元で死んでいった。」

 

コカビエルは続ける。

 

「だが貴様は、仲間を信じてなどいない。」

「…何?」

「絆など求めてなどおらんだろう。」

「…そんなことはない!」

「貴様が求めている結果はたった1つ。"仲間が生きている。"その結果のみを貪欲に求めている。」

 

コカビエルは人差し指を満に向ける。

 

「壊れているのだよ、貴様は。過程や方法などどうでも良いのだろう。手段を選ばず、"仲間"を守ることだけを為す。」

「…」

「それは何故か?独りよがりのエゴか?違うな。エゴですらない。貴様にとっては善か悪かなど関係ないのだろう。」

 

コカビエルは得意そうに続ける。満は黙ったきり、何も返さない。

 

「マシン、と言った方がこの場合は良いのかな?貴様は戦う理由を他者に委ねているわけではない。しかし、ごく個人的な、独善的な理由でもない。」

「…ふむ、そうだな。」

 

「そうせざるを得ない、ある種の"運命"に縛られて、とでも言えばいいのか。」

 

無音となった戦場に、コカビエルの言葉が木霊する。

 

「…違うッ!」

 

声を荒げたのは満。

 

「違うッ!断じてッ!俺は、俺の意思で!」

 

運命など信じない、と考える満にとってその言葉は看過できるものではなかった。

その言葉に更に笑うコカビエル。

 

「では問おう、人間。何故貴様は守る?何の為に?貴様の行動の末に、何が残り、何が良くなるというのだ?」

「何故って…それは…」

「フフフ、答えられまい。貴様の本当の目的は"守る"などではなく、そこに何の感情も抱いていないからだ。自らの本当の目的、いやさ貴様自身の本能のために、そうあるべきだと思い込んで、必死に目をそらし続けてきたのだろう?なあ、現実を見ろよ人間。」

 

「貴様はただの殺人"鬼"だよ。どんな理由があるにせよ、他者を斬らずには居られぬ存在だ。それこそが、貴様ら"鬼"の本質なのだから。」

 

「…お、に?」

 

呆然としたままだったゼノヴィアが、その言葉に微かに反応した。

 

□□□□□□□□

「それを、どこで…!」

「フリードから貴様の"籠手"について聞いていたのでな、もしやと思っていたが…やはり合っていたか。」

 

苦しげな表情をした満が絞り出すようにそう言うと、コカビエルはしたり顔で頷く。

 

「しかしまあ、こんな議論には何の意味もない。いくら言葉を重ねたところで、所詮この世界は力のみがモノをいう世界だ。貴様が守るというならばそれでもいい。」

 

ー守れるものならな。

 

その言葉と同時にコカビエルは光の槍を満に投擲する。

 

「ッ!?」

 

咄嗟に炎龍剣を現出させ防御する満。だが、

 

(抑え、きれねえ…!?)

「ぐああああっ!」

 

防御しきることができず、吹き飛ばされる満。

 

「!ミツ!」

 

その光景に呆然としていたリアスたちも、気絶している祐斗、ショックから抜け出せないゼノヴィア、アーシア、そして近くに麗那の能力でワープしていたイリナを除き、戦線に加わる。

 

「消し飛びなさい!」

 

リアスは滅びの魔力をコカビエルに放つが、

 

「効かんなあ、魔王の妹。この程度しかその魔力を操れんのか?」

 

まるでハエを払うかのように滅びの魔力を霧散させられてしまう。

 

「うおおおおっ!」

「赤竜帝か。随分と歪な変化をしたようだが…笑止!」

 

赤龍帝の鎧・過剰加速を展開し、怒涛の連続攻撃を繰り出す一誠だが、そのことごとくを見切られ、あるいは勘で躱され、

 

「経験が違うのだよ、経験が。俺を楽しませるには貴様はまだ…未熟!」

「ごふっ…!?」

 

回し蹴りを腹部にカウンター気味に貰い、地面に叩き落とされる一誠。

 

「…シッ!」

 

その隙を突くかのように小猫がコカビエルの顔面に拳を放つ。

 

「…それは攻撃なのか?」

「!?」

 

その拳は確かにコカビエルの顔面を捉えていた。だが、コカビエルは顔面に拳を受けたまま、ニヤリと笑う。

 

「貴様の弱さは相手に失礼だと思うのだが?出直してくるがいい。」

「カハッ…!」

 

コカビエルはそのまま身体から衝撃波を放ち、小猫はなす術もなく弾き飛ばされる。

 

「イッセー君、小猫ちゃん!?よくも!」

 

追撃を防ぐため、コカビエルに向かって雷を落とす朱乃。

その雷はコカビエルに直撃する。

 

「ほほう、これはこれは…!珍しいこともあったものだ。」

 

だが、コカビエルはまるで効いている風な様子もなく、薄く笑みを浮かべる。

 

「俺の記憶が正しければ、これは()()()()()()()()。小娘、貴様は奴の血族か?」

「…関係、ないでしょう!」

 

コカビエルの問いを詰まりながらも朱乃は突っ撥ねる。

 

「ふむ。そういえば奴には娘がいたような気がするな。なるほどなるほど、貴様が…。」

「あの人とは、何の関係もありません!」

 

何かを振り払うように更に連続で雷を落とす朱乃。

しかし、

 

「ヌルいヌルい。奴に比べれば何とヌルいことよ。 さて、いつまで無様を晒している気だ鬼よ。このままではお仲間が死ぬぞ?」

 

そう言いながら朱乃に向かって複数光の槍を放つコカビエル。

朱乃は雷を当て打ち消そうとするが、

 

(消しきれない!私では力不足だというの!?)

 

ギュッと目を瞑る。瞼の向こうに幾つもの閃光が煌めく。

しかし、朱乃に襲い来るはずの衝撃、また痛みはない。

恐る恐る目を開けると、そこにはふた振りの金色の刃を構える、紅い鎧を纏った背中。

 

「満君…!」

 

嬉しそうに声を上げる朱乃だが、その背中に違和感を抱く。

力強く、がっしりとした背中。しかし朱乃の目にはそれがまるでとても脆く、不安定なものに見えた。

 

□□□□□□□□

「ククク、我が光を打ち消したか。その刀、凄まじい力を宿しているようだな。」

「…」

 

笑うコカビエル。無言で睨む満。

方やほぼ無傷。そしてもう片方である満は…

 

「しかし、始めのアレを打ち消すのは容易ではなかったようだな。少し強めに放ったから心配していたぞ?」

 

身に纏う鎧はあちこちに傷やヒビが入り、頭を切ったのか、額からは一筋の赤い液体。

初撃の凄まじさを物語るボロボロの姿の満。

 

「…わざわざご心配どーも、クソ野郎。」

(畜生め、アレで"少し強く"だと?十数メートル耐え切って初めて消えたアレが?)

 

満は内心で冷や汗を流す。

コカビエルにとっては挨拶代わりのようなものでしかないのだろうが、それですら今までの敵のどんな攻撃よりも強かったことに焦燥感がこみ上げる。

 

(今のうちに叩かなきゃマズイ、が…どう攻める?)

 

どう動くか、それを決めかねているうちにコカビエルが動く。

 

「そうら、仲間を守るのだろう?精々あがいてみせろ。」

 

手を広げるとそこには一本の光の槍。それに込められた力は先程までの比ではない。

 

(マズいッ!?)

 

咄嗟に前へ飛び出し、天双刃を交差して構える。

 

ギ ィ ン !

 

鈍い金属音と共に少し満の身体が退がる。

交差させた刃のちょうど重なるところに光の槍が突き刺さっていた。

その様子を見ていたリアスは愕然とする。

 

(見えなかった!?そんな!?)

 

リアスにもあの槍に物凄い力が込められていたのはわかった。だが、それをコカビエルがいつ放ったのか、いつ満が受け止めたのか、全く見えなかったのだ。

 

(…これが、神話に語られるものの力なの…?)

 

そして、それを受け止めた満。

勝てない。助けにすらならない。少なくとも、今の自分では。

無力感というより、どこか現実離れしているような、呆然とした様子でリアスは満を見ていた。

 

□□□□□□□□

ギリギリギリギリ!

 

「う、お…」

 

ズ、ズ…と少しずつ満の身体が後ろへ退がる。抑えきれていないのだ。先ほどのように吹き飛ばされるのも時間の問題に見えた。

 

「まさかそれだけで終わるとは思ってはいないだろうな?」

「!?」

 

コカビエルに視線を向ければ、そこには無数の光の槍。それも、自分が受け止めている槍と同じ力の込められた。

コカビエルはニヤリと笑うと、

 

「さあ、ハリネズミの出来上がりだ。」

 

その言葉と共に満に向かって光の槍、全てを射出する。

 

「…仕方、ねぇな。」

 

ボソリと満が呟き、手に持つ黄金の刃が一瞬、煌めく。

 

キン、ともシャン、とも聞こえる澄んだ金属音があたりに連続して響く。また眩い閃光が連続してその場にいる者の目を灼く。

音と光が止むと、そこにはコカビエルに向かって疾走する満の姿。

 

「…ほう?」

 

コカビエルは再び、無数の槍を満に放つ。

そして再び響く音と光。

先ほどまでよりコカビエルに近づいている満。

 

「ふうむ。どうやらアレは貴様には効かんらしいな。…ならば、コレならどうだ?」

 

今度は先ほどの無数の光を縒り合わせ、一本の槍に凝縮したものを放つ。

並の悪魔ならばそれが目に入った瞬間に目が灼け、近くを通るだけで消し飛ばされる代物だ。

そして三たび、響く音と光。

しかし、ソレは周りで傍観していた者たちにも見ることができた。

 

「…なるほど。」

 

目にも留まらぬ速さで連撃を放つ満。それは瞬く間にコカビエルの槍を削り、切り裂いていく。

 

鬼の武器の一つ、天双刃が奥義。

戦術殻・天。

その斬撃は正に神速。光の速さ。

それを連続して相手に叩き込み、一瞬で斬り伏せる奥義である。

その速度は雷斬刀の戦術殻・雷の比ではない。

 

「セアアアアッ!」

 

連撃が止む頃には、コカビエルの槍は跡形も無くなっていた。

 

「凄まじいな、鬼。ソレを受ければ俺でさえタダでは済まんだろう。それでこそ神を斬った一族よ。」

「え…?神を、斬った?」

 

満足気に頷くコカビエルの言葉にゼノヴィアが反応する。

 

「ククク、残念ながら聖書の神ではない。聖書の神は先の大戦で死んだからな。いや、それよりもタチの悪い神ではあったが。」

「ペチャクチャと…随分と余裕だな、オイ!」

 

気づけば、コカビエルの目と鼻の先まで満が迫っていた。

だが、

 

「当たり前だ。それでは俺には届かんよ。」

 

その刃が、コカビエルを捉えることはなかった。

コカビエルを覆うように、円形の光のバリアが現れる。

満はそれを斬り裂くも、斬り裂いた先からバリアが修復していく。

 

「我が光にはこういう使い方もあるのだよ。さて、貴様の体力はどこまで持つかな?」

 

嗤うコカビエル。

満は戦術殻を使用するが、攻撃の速度を上げれば上げるほど、バリアの修復速度も増していく。

 

「貴様らへの対策は万全だ。いかな"鬼"と言えど、対策さえ行えば恐るるに足るものではない!」

 

そのまま光の槍を放とうとするコカビエルだが、唐突に手を止める。

そうして顎に手を当て、

 

「ふうむ…よし。」

 

ニヤリと笑う。

その笑みにゾクリとしたものを感じた満は、更に攻撃の速度を上げる。

 

「確か貴様は仲間を守ることを目的としているのだったな。さて、ここに2本の光の槍がある。どちらも貴様ならば消すことは容易いモノだろう。ならば、これは誰に放つモノか?」

 

その言葉に満の顔から血の気が引く。

 

「ククク、気づいたようだな。さて、どれが当てやすい"的"かな?」

「クソッ!」

 

コカビエルの狙いを察した満は少しだけ距離を開け

 

「遅すぎるぞ。それでは間に合わんな。」

 

ようとした瞬間にはすでに光の槍は放たれていた。

 

一本はリアスの方へ。

もう一本は朱乃の方へ。

 

リアスの方へ向けられた一本は放たれた瞬間に満が斬り裂く。

そして、朱乃の方へ向けられた一本はー

 

「ッ!?朱乃、逃げ」

 

同じように斬り裂かれる。

 

「!?」

「…ふむ。」

 

リアス達は咄嗟に満の方を見る。

満はリアスの方へ向けられた一本を斬り裂いた場所から落下しているところだった。

しかし、その手に持っているはずのものはなかった。

 

満はリアスに向けられた一本を斬り裂いた際、戦術殻を使用していた。

そしてその速度を乗せ、朱乃の方へ放たれた槍へ向かって天双刃を全力で投擲したのだ。

 

「舐めてんなよ、このク「ならばもう一本。」

 

着地した満がコカビエルへ向かってニヤリと笑い、瞬間、更に光の槍が放たれる。

 

その矛先が向かう先は、改めて聖書の神が死んだことを告げられ、ショックで固まっている青髪に緑のメッシュが入った少女。

 

「ッ!?」

 

瞬間、満の脳裏に思考が閃く。

 

ー刀は

ー届かない。

ー回避は

ー無理。

ー結論。

 

ー彼女は死ぬ。

 

光の槍が、身体を貫く。

鮮血が、辺りに舞った。




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励みとなります。


気まぐれによる次回予告。

兵藤一誠は諦めない。
リアス・グレモリーは信じている。
では、左馬満は?
答えを出せない満の胸中に、少女の悲鳴が木霊する。

次回、ハイスクールD×D 〜鬼を継ぐもの〜

"鬼武者"

お楽しみに。
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