大洗の更なる情報を求めてGi6と接触を決意する。
ダージリン様から、代替計画を含めた計画の練り直しを命じられた私は、菖蒲経由でGI6こと情報処理学部第6課とコンタクトを取った。
実は以前からGI6とは連絡をとっていたが。直接、顔を合わせるタイプの接触では無かった。ある特定の場所に隠された文書やUSBメモリでやり取りをしていた。
この様な方法をデッド・ドロップと言う方法だと兄に教えられた。
「着いたわよ。私は帰るけど、迎え要る?」
菖蒲の言葉に首を左右に振り、迎えは不要だと告げる。
「じゃぁ。行ってくる。色々ありがとう。このお礼は後日精神的に」
「返す気ないでしょ。その台詞じゃ」
ブツブツと文句を言いながら去る菖蒲を見送って。
私はコーヒー・ハウス『
店員に菖蒲から教えられた合言葉を告げる。
合言葉を告げられた店員は無言で私を席まで誘導する。
―何事も芝居じみてる―
意図は解るのが少し自己嫌悪につながる。
あの馬鹿兄貴が諜報のイロハをさりげなく教えてくれたのは、学園生活で少し役に立ったが、こう言う場面では展開が予想できるのが恨めしい。
相手の掌でわざと踊るのも楽しいことだと、最近気がついた。
常に優位に立つ立場は、それはそれで良いのだが、円滑な学園生活を送りたい自分には精神的な負担があると思う。
最も、最近それは無理じゃないかと感じているけど。
自分の今後の学園生活計画について考えていたら、目的の部屋に通された。
中には三名の女子が座って私を待っている。値踏みするような視線を感じた。
「ようこそ、ラミン。こうして直接会うのは初めてですわね。私はフレミング。右隣りがル・カレ、左隣がフォーサイスですわ」
私は軽く会釈をすると、席に座る。
見事にスパイ小説の大家な人たちの名前を名乗っている方々揃っている訳ですが。
先輩方で、本名も知っているのだけど。
私がラミンである様にこの学園艦の上では彼女たちは名乗った名前で生活している。
さて、いきなり本題に入った方が良さそうだ。英国のスパイ小説の様な陰鬱な枕に付き合う必要はないだろう。
「さて、貴女方は私にどれ程の情報を開示してよいと、GI6の
向こう側が警戒する目つきになる。
現在、GI6を束ねているのはアッサム先輩と言う事は機密に属するのだろう。
種明かしをしないと、目的を果たせずに放り出されるか。
「カウンターインテリジェンス。私の兄を調べた様ですね。本業相手に無茶をなされたようですね。その兄に事前情報で詳しい事を教えて貰いました」
本職の情報関係者を調べれば、所属機関がカウンターインテリジェンスをするのは当然と言える。その為に私は無駄にGI6の内情に詳しくなった。
私は”まだ持ちカードはありますよ“と言うブラフを演じつつ、向こうの出方を待った。
「情報は種類により開示できるものが違います。先ず貴方が求める情報を言って下さい」
まぁ、そうだろうと思ったが。
向こうも私が知りたい情報をある程度は掴んでいる筈である。しかし、これはゲームなので、ルールに通りに要望を出す。
「大洗、戦車道履修者の性格的傾向の分析。それと、その情報を元にした各車両ごとの行動傾向予測。対価が必要でしたらバーターで情報をいくつか提供できます」
さらに持ちカードの中身を仄めかす。
『門前の小僧習わぬ経を読む』であるが、兄や姉は私に交渉術等をさりげなく身に付けさせてくれていたことに感謝する。
「その情報は提供できます。しかし、ラミンさん。貴方は此方向きだと思いますよ」
フレミング先輩がフォーサイス先輩に合図を送りながら私に言う。
「リクルートならお断りします。御褒めの言葉なら喜んで受け取ります」
私は笑顔で答える。正直これ以上、タスクを増やすと確実にオーバーフローするのを確信していたからだ。
「もちろん褒め言葉ですわ。こちらがデータになります。ご活用ください」
フレミング先輩は微笑みながらUSBメモリを差し出す。私はそれを受け取り眺める。
「データ、ダウンロードは一回限りでしたっけ?そして、複製不可能。ダウンロード終了後にはUSB側のデータは抹消される」
「えぇ。大体は合っています。なので、慎重にお取り扱い頂けると幸いです」
私はUSBメモリをしまいながら、フレミング先輩の言葉を記憶する。
―大体は合ってるね―
このUSBは今回の作戦立案用に購入したノートパソコンに挿そう。
データ以外に何が入っているか判った物じゃない。
「それでは失礼いたします。何れお世話になるかと思いますが、その時もよろしくお願いいたします」
私は礼を述べると、席を立ち歩き出す。
「また会える日を楽しみにしています。ご案内は必要ですか」
「来た時に覚えましたので、大丈夫です。ご配慮、感謝いたします」
再度礼を述べて、出口へと向かう。
事前に店の構造は把握していたから、案内は、最初から不要だった。
「ただいまー」
共同生活のアパートに帰った時には、私の精神は摩耗してボロボロだった。
「あ、おかえりなさい」
舞耶が出迎えてくれたので、共有スペースのソファーに倒れ込みながらお願いをする。
「紅茶淹れて、ミルクと砂糖マシマシで」
「はいはい。了解ですよ」
舞耶の軽い返事を聞きながら、私は淑女にあるまじき欠伸をもらす。本当に疲れている。ここ数日は、頭脳労働と、無駄に神経を擦り減らす事が続いた為に、本当に消耗している。
「次の作戦会議終わったら。どっかに遊びに行こう」
「良いですね。何処に行きます?」
舞耶が乗り気で私に聞く。乗員全員で一泊旅行とか面白いかもしれない。
「海があって、食べ物がおいしい所」
三浦半島か湘南海岸辺りを念頭に入れて答えた。しかし、舞耶は予想外の返答を私に返した。
「いっそ、大洗に行きます?観光地ですし、電車で行き帰りができますよ」
予想外だったが、それは面白そうだ。
「作戦会議と練習を終えて。コメットがオーバーホールに入ったら行こう」
私はそう言うと、各種手配を舞耶に任せて。彼女の淹れたミルクティに口をつけた。
出したかったGI6をやっと出せた。
新たな情報を入手したラミンは、どのような計画を立てるのか?
そして、大洗に行けるのだろうか?
次回もベストを尽くして頑張りますので、よろしくお願いいたします。