それらを見つめるダージリンは来年度以降に向けて、思考を巡らすのであった。
GI6から入手した情報と、その他いろいろな手段で入手した大洗の戦車道部隊の情報を総合した結果。
―西住みほの作戦計画は破綻している場合が多い―
と言う結論にたどり着いた。
いや、作戦計画が上手くいく事など殆ど無いのだが―相手がいるので―これほどまでに、見事な破綻は珍しい。
初期の頃なら、素人集団を指揮するのであり得る事態と思えるが。
後半、姉妹での戦術の読み合いと言う特異な黒森峰戦を例外として。作戦が計画通りのモノになった例は少ない。
では、何故?大洗は優勝できたのか?
私の推測では、西住みほのリカバリー能力の高さと、各車に与えられた自由裁量の高さであると推測できる。
西住みほの性格的傾向からも強権で部隊を統制するタイプの指揮官ではない。その指揮スタイルが裏目に出たのが対プラウダ戦序盤の敵の罠に突撃していった瞬間だろう。
無論、車長の独自判断で動くのは間違いではない。
獲得目的が明確であるならば、独断専行を行うのは当然と言える。ソ連軍式のガチガチに固まった指揮系統で、プロセスを消化する様な指揮系統でも問題は無いが。
西側の軍隊―東側も多少は―は独断専行をある程度許容している。階級と部隊指揮官はその為に居る。趣旨の名言もある。
大洗は部隊規模が小さいと言う問題がある以上は、各車に自由裁量権を与え、全体的な作戦計画を修正する方が、運用はしやすいだろう。
それであっても、西住みほの極めて短時間で作戦計画を修正する能力は、希少な才能と評価できる。
では、その大洗相手にどう戦うか?私とドアーズは、カンネー、或いはタンネンベルクの再現を狙って包囲殲滅を計画した。
こちらの方は、ドアーズと連絡を取りながら計画の再検討を行っている。
では、代替計画はどうするか?それが私を悩ませている事だった。
聖グロリアーナ女学院戦車道部隊の伝統に従って浸透強襲。それを基本として、大洗の弱点狙う。そこまでは構想が固まっていた。
「コメットに求められる任務は、後方攪乱と重要目標の撃破…」
そう呟いて、大洗の戦車で重要目標を考える。
まずは、Ⅳ号戦車これは撃破が難しい。ならば、ポルシェ・ティーガーはどうだろうか?これはなんとも撃破したい。コメットの主砲と砲弾なら可能だろう。
あとは、駆逐戦車に突撃砲…結構多い。
「コメットのもう一つの任務。長い耳と…!」
私はそこまで呟くと脳内で代替計画のプランに重要なピースがハマるのを感じた。
いける。これなら、咄嗟に対処可能だ。
私は今回の練習試合様に格安で購入したノートパソコンを起動させると、鼻歌を歌いながら作戦計画書の製作をはじめた。
「奇襲、強襲…乱戦、分断…情報量の飽和…各個撃破…」
作戦計画は予想より早く仕上がった。今は、それを読み返して穴が無いか確認する。
この作戦計画は味方の損耗を最初から想定している計画である。無論、私達のコメットも損耗の駒の一つに含まれている。
その損耗をダージリン様は許容してくれるだろうか?
確実に数両が撃破される事を念頭に置いた計画など、士官学校等ではマイナス評価が付く事は間違いない。
戦闘の結果の被害ではなく、作戦の都合で部隊を損耗させる指揮官は、よほど外道かモラルブレイクを起こした組織ぐらいだろう。
しかし、私がやるのは戦車道だ。
ある程度は
ならば、接戦を演じて勝つのが最上かもしれない。
―なんで、練習試合でこんなこと考えているんだろう?―
私は自分の脳みそが疲れているのを感じて、ノートパソコンの電源を落として布団に潜り込んだ。
―数日後、聖グロリアーナ女学院 クラブハウス『紅茶の園』―
「以上で、作戦会議を終了いたします。以降の練習はこの場で決定したことを実行に移す練習になります。各員、励みなさい。解散」
練習試合参加の車長陣が退出する中。
ダージリンは、残ったオレンジペコに追加の紅茶を注がせながら口を開いた。
「こんな格言を知ってる?『将たるものは、怯弱の時あるべし。ただに勇をたのむべからず』」
「曹操ですか?」
アッサムが答える。
「そうよ。今回の作戦会議で様々なプランが提出されたわ。基本的に我が校の伝統を守っているけど、消極的なプランが多かったのも事実。これは、怯弱の時と解釈すべきかしら?」
ダージリンは提出された作戦計画書の山を軽く叩きながら言う。
「恐らくは皆、大洗の幻影に怯えているんでしょうけど。『指揮官は心を自由にしておかなければならない。偏見、先入観、固定概念を排除することである』と言う名言にもある様に、偏見、先入観、固定概念を排除した作戦計画は、見込んだ数名が提出したものだけ。ペコ、貴女の計画もその中に入っていてよ」
紅茶を注ぎ終わり。ティーポットを机に置いたオレンジペコは軽く頭を下げる。
「ありがとうございます。先ほどの名言は、フェルディナン・フォッシュですか?」
「えぇ、そうよ」
そう答えたダージリンは、アッサムの方へと向き直る。
「GI6に接触した人数と、最も、情報を欲していたのは?」
Gi6を束ねるアッサムは全てを記憶しているのだろう。流れるように答える。
「接触は4名、最も情報を求めたのはラミンです。彼女、なかなかの交渉上手です。また、カウンターインテリジェンスをくらいました」
その発言にダージリンは、目を細めて言う。
「意外に彼女、多彩ね。それに見事に『勇敢な臆病者』の資質を持っているわね」
ダージリンはそういうと、ティーカップを再度持ち上げ。
「楽しみねペコ。貴方の周りを固める人物が成長していくのを見るのは、貴女も努力しなければ抜かれるかもしれないわよ」
そう言って、愉悦を浮かべた瞳と、妖艶な笑みを浮かべるのであった。
作戦計画は後のお楽しみに。
計画が決まればそれに沿って訓練をしなければなりません。
果たして、ラミン一同は大洗に遊びにいけるのだろうか?
次回もベストを尽くして書きますので、よろしくお願いいたします。