THE WHITE GUARDIAN   作:ひなたロボっち

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12.力の片鱗

 第三試合はぐるぐるローラーレース。ルフィはなぜかチョッパーではなくシェリーという馬を取り返したために、チョッパーは未だ敵のチームにいた。

 

「ソラちゃん本当に大丈夫か?さっき大怪我したばっかなのに…」

 

「うん!もう平気だよ」

 

 第三試合はもともと出るつもりのゲームだった。それにルールもただの妨害がありなだけのレースで、危ないものではない。

 

「それならなるべく負担のかからない…いやでも、速さでいったら#bソラちゃんが一番だし…ソラちゃん、三番でもいいか?」

 

「うん!」

 

 一番がウソップ、二番がナミ、三番が私で、四番がロビン、五番がルフィということになった。

 

「よし!じゃあ行くぞ野郎ども!!」

 

 

 ーーしかし一試合目、二試合目、ともに負けてしまった。

 

「睡眠、ずるい…」

 

 一試合目はウソップが妨害によりコースアウトし、二試合目は起き上がったときにはすでに勝敗が決まっていた。そのときの絶望感は言葉では言い表せないほど。

 

「ソラ!頼んだぞ!」

 

「うんっ」

 

 三試合目、相手はシキチーター。見るからに速そうだ。5分間コースを回り、5分間たったときに多くコースを回っている方が勝ち。

 

 ピー、と笛が鳴り響く。

 

「位置について…よーい」

 

 パンッ、という合図とともに、コースを滑り始める。

 

『これはなんということでしょう!!白き少女ソラ!シキチーターのスピードに劣っていないぞ!今までシキチーターの速さについていけるものがいたでしょうか!?いや、いない!!』

 

「速すぎて妨害できないなんて!」

 

「行けー!ソラー!」

 

『今までこんなにもレベルの高い勝負を見たことがあったでしょうか!?この私、感激で前が見えません!!』

 

 邪魔してくるものすべてを読むことができる。どこのコースが一番速いか、どうすれば速くなるのか。そしてどうすれば相手を走りづらくさせられるのか。曲がるときにしっぽを使うシキチーター。それを使わせないようにすれば、カーブをうまく回れずに速度が減速する。

たったそれだけのこと、と思うかもしれないが、何周も回れば回るほどそれは大きなタイムロスになる。

 

 ピーー!!

 

 試合終了のホイッスルが鳴る。

 

「っ…そんな、」

 

 がっくりと膝をついたのはチーター。

 

『ななななーんと!シキチーターに正攻法で勝利を収めたのは麦わらの一味の船霊、ソラだーー!!』

 

「うおおおおおお!!」

 

「よくやったソラ!」

 

けれどソラは喜べなかった。というのも…

 

「っ、止まれないーー!!」

 

走ることに夢中になりすぎて止まれなくなっていたのだ。

 

「っ、何やってんだあいつ!」

 

 ゾロがコース上に立ち、ローラーで走ってソラをザザッと後ろに足を擦りながらも受け止める。

 

「はぁっ…はぁっ…止まること、忘れてた…」

 

「アホかてめェ!」

 

「っ、ゾロのバカっ」

 

そう言ってぎゅうっと抱きつく。

 

「なにっ!?てめ、」

 

 ゾロは途中で言葉を止めた。自分にしがみつく少女の身体が小刻みに震えていることに気がついたのだ。

 

「っ…」

 

 ソラはレースの三週目、自分が負けたらゲームにも負けるというプレッシャーの中で戦っていた。ゾロやルフィ、サンジのように強くはないのだ。

 けれど勝たなければならない。怖くても、戦わなきゃいけない。

 

「…はぁ、お前はよく頑張ったよ」

 

 そう言ってゾロはソラの頭を撫でた。

 

 

 次に行われるのは海賊ドッチボール。先ほどぐるぐるローラーレースでなんとか勝ち、チョッパーを無事に取り戻した麦わらの一味は八人全員で参加することになる。

 外野はナミとロビン、内野はルフィ、ゾロ、サンジ、チョッパー、それからソラ。

 

 圧倒的に向こうの人数が多く、こちらの人数が少ない。特に外野が多いから、もしもボールを外野に取られたら厄介なことになるだろう。

 

 チョッパーとルフィがボールを先取し、次々に敵のチームを倒していく。人数が多いのが仇になっているのだろう。ウソップが避けられずにあたり、サンジが美女軍団にやられた。

 

 ゾロが機械から出てきたボールを割ってしまいアウトになる。とはいえ、敵はあとオヤビン一人。

 

「な、何これ!?」

 

 フォクシー軍団が取り出したのは大量の偽ボール。その上ルフィのボールが奪われてしまう。

 

「ど、どれが本物!?」

 

「んにゃろ~!全部取ればいいんだろ!」

 

 ルフィが投げられるボールを掴もうとするが、いくらルフィでも四方八方から投げられるボールが取れるわけない。このままでは全滅してしまう。もしそんなことになれば、またチョッパーが向こうに取られてしまう。

 

 ドクリ、心臓が波を打った。

 

「消失《ロスト・タイム》」

 

 そう呟いた次の瞬間、その場にあったボールがひとつ残らずすべて消えた。…本物だけを残して。

 

「消えた!?」

 

「今…何が…?」

 

 動揺する観客と参加しているメンバーたち。その中でロビンは目を見開いた。ボールを消したのは少女だった。自分でも何が起こったのかわかっていないのか、手を見たり周りを見たりしながらキョロキョロしているが、間違いなく少女がやったものだ。空島での謎の文字、ガン・フォールが見たという姿。ーーそして、彼女が今ボールを消したという事実をロビンの頭で整理していく。

 

「まさか…」

 

 いや、そんなことはないと首を振る。もし”彼女”が生きていたなら、彼女は”すべて”を知っていることになるのだから。

 

「何だったんだ今の?消える魔球かァ?」

 

 ルフィは首を傾げる。

 

「今のうちにっ…」

 

「きゃっ!」

 

 バンッ、と少女にボールが当たる。少女は反応しなかった、いや、できなかったといったほうが正しいか。

 

「大丈夫かソラ!?」

 

「うん、ごめん…ルフィ、頑張って」

 

「おうっ、任せとけ」

 

 少女は不思議そうに自分の手を見ている。ロビンは立ち上がると、少女ーーソラの近くに行く。

 

「お疲れ様、船霊さん」

 

「あ、ロビン…さっき、ボール消えた!」

 

「見てたわ。あれは貴女がやったの?」

 

「うーん…わかんない。けど、ボール、消えた…ロビン、これ、悪魔の能力?」

 

 ロビンは少女の言葉にゴクリと唾を飲み込む。

 

「えぇ…おそらくそれは、ハクハクの実の能力よ」

 

「はくはく?」

 

 歴史を知ろうとする彼女にとって、それは最も恐れていた力であり、嫌悪している能力だった。無意識に、ロビンの顔が強張る。

 

「…ロビン?」

 

 少女が首をかしげた時、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

 

 

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