THE WHITE GUARDIAN   作:ひなたロボっち

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13.一難去って、また一難

「え!?負けた!?」

 

 残りはあとオヤビン一人だったというのに、ルフィは負けてしまったらしい。さっきのことについてロビンと話していたから気づかなかったけれど。

 

「次に俺たちが指名するのは…麦わらの一味の船霊、ソラ!!」

 

「…え?」

 

 自分の名前を呼ばれたような気がして、目をぱちくりさせる。いやいやいや、そんなはずはないとキョロキョロと辺りを見回すが、みんなの視線は私に向いている。

 

『おおっと我らがオヤビンが指名したのは先ほどから目覚ましい活躍を見せている可愛らしい少女ソラ。隅に置けないねェ!』

 

 凄腕航海士のナミとか、狙撃手のウソップ、一流コックのサンジ、剣豪のゾロ、船長のルフィ、考古学者のロビン、優秀な船医のチョッパー。どう考えても、すばしっこいだけが取り柄の私が彼らより価値があるとは思えない。

 

「小さいから、と油断していたが毎回お前に邪魔されている!それに、育てば極上の女になりそうだ」

 

 オヤビンのいやらしい目に、ゾクリと鳥肌が立つ。

 

「なんつー目で純真なソラちゃんを見てやがるこのエロ頭!!」

 

「エロ頭はお前もだろうが」

 

「なんだとこの天然記念物が!」

 

 指名、された。近くにフォクシー海賊団の船員が来て、私の手を取る。

 

「さぁさぁこっちにおいでお嬢ちゃん」

 

「初めっから仲間に欲しいと思ってたんだ」

 

「フィーッフィッフィッフィッフィッ、ほらソラ、あんず飴だぞ〜」

 

 そう言って飴を差し出してくるフォクシー。

 

「飴、いる!嫌い、割れ頭!」

 

 飴をひったくるように受け取り、それを舐める。フォクシーはガーン、という効果音とともに地面に膝をついた。

 

「われ、割れ頭って言った…」

 

「いやんオヤビンっ!」

 

 なかなかにメンタルが弱いらしい。ポルチェがオヤビンを慰めている。ハンバーグはその様子を見て笑っていたが。

 

「ルフィ…」

 

 後ろを振り向けば、ルフィは私の方をジッと見ていた。

 

「待ってろソラ、すぐに取り戻す」

 

 その言葉に涙を飲み込んで大きく頷いた。

 

 

 

 だるまさんが転んだ、というゲームはあと少しで麦わらの一味が勝つ!と言ったところで、ゾロのミスによって負けてしまった。次に指名されたのはチョッパー。

 

「ソラ~!」

 

「チョッパ~!」

 

 二人でひしっと抱きしめ合う。

 

『なんと、なんと可愛らしい光景でしょう!周りのヤロー共もキュンキュンしています!』

 

 バカにしてんのかコラァ!!と内心では怒ったが不安でたまらなかった。ゲームは泣いても笑ってもあと一回。つまり次のゲームでルフィが勝っても、一人だけしか奪い返せない。

 

 

「…どうするよルフィ、次のゲームで終わりだから、勝っても一人しか取り戻せねぇぞ」

 

「チョッパーかソラ、どっちかなんて選べねェよ~!!」

 

「ざけんな、二人とも取り返す!」

 

「だからどうやって取り戻すんだよ」

 

「面倒くさいから、全員叩っ斬るかこの際」

 

「いや、一応ゲームだからな、これ」

 

 麦わらの一味の間で交わされる会話。唇を噛み締めた。あのドッチボールのとき、ボールが消えたことに気を取られて油断したのは私だ。もしあのときちゃんとやっていれば、負けることはなかったかもしれない。

 

「みんな!!」

 

「ん?」

 

 大声で呼びかければ、船員のみんながこちらを向く。

 

「わ、私は、いいっ…勝ったら、チョッパー、戻して!!」

 

「なっ、何言ってんだソラ!」

 

 チョッパーが私を見て目を丸くする。

 

「だって船医、必要…私、何もできない…」

 

 みんなとの付き合いも浅い。笑顔を作る。みんなを困らせたくない。

 

「なーにバカなこと言ってんだソラ」

 

「え?」

 

「お前も俺の、仲間だろうが!!」

 

 まっすぐなルフィの言葉に、目を見開いた。空島に行く途中でたまたま出会って、なり行きで船に乗り、仲間になった。素性もしれず、子供の身体で、何の取り柄もない私を、彼は仲間だと叫ぶ。嬉しくて、胸がいっぱいになって、涙が零れ落ちた。

 

「待ってろって言っただろ、ソラ。勝手に諦めてんじゃねェよ」

 

 ポロポロと涙をこぼしながらも、こくりと頷いた。

 

『なんて美しい仲間同士の絆でしょう!!これぞデービーバックファイト!この私、感激で前が見えません!!』

 

 そんなやりとりの最中、ナミはオヤビンに取引を持ちかけていた。

 

「ねぇオヤビン、この勝負五人がけにしない?」

 

「なんだと?」

 

「もしオヤビンが勝ったら、私たち全員があなたの子分になるわ。その代わり私たちが勝ったら、二人を返してもらう」

 

 ナミの提案に、オヤビンが考え込む仕草を見せる。それからなぜか、500人賭けということで話はまとまった。

 

 

 

 ルフィは立ち上がる。

 

 何度叩きのめされても、何度殴られても、何度ノロノロビームを受けても。

 

「俺の仲間は…死んでもやらん!!」

 

 血だらけになってそう叫ぶルフィに、胸が痛む。もうこれ以上、ルフィが傷つく姿を見たくない。

 

 ーーコンバットは、ルフィの勝利で幕を閉じた。

 

「うわあぁあん!!」

 

 ルフィにチョッパーと二人で抱きついた。

 

「おー、よしよし、お前ら。待たせたな」

 

 それから船のシンボルと残りの497名を指名した。

 

「覚えてろよ麦わらァ!!」

 

 そう言って割れ頭のフォクシーはポルチェとハンバーグと一緒に小さな船に乗って、海へ出て行った。けれどルフィはすぐに解散させ、497名はフォクシー海賊団が元に戻る。すぐに解散というのもおかしな話だが、こうして元の八人に戻った。

 

 

 ***

 

 

「竹馬のおっさん、勝ったぞ」

 

 ルフィはそう報告し、笑った。どうやらルフィはシェリーという竹馬のおじさんの馬を助けるためにデービーバックファイトを受けたらしい。

 竹馬のおじさんの嬉しそうな顔に、私も嬉しくなった。一時はどうなるかとヒヤヒヤしたけれど、終わり良ければ全て良し、だ。

 

「それにしてもすごい活躍だったなー、ソラ」

 

 ウソップの言葉に、嬉しくなって頬を緩ませる。

 

「それにしてもなんの能力なのかしら」

 

「そのことについてなのだけれど…」

 

 と、ロビンが口を開いた時だった。

 

「なにか、いる!」

 

 すぐ近くに強大な力を感じて、あたりを見回す。家の向こう側に、確かに誰かがいる。

 

「うわぁっ、びっくりしたなぁ!もう!何かってなんだよソラ…」

 

「あーらら、ばれちまった」

 

 出てきたのは大男。その姿を見たとき、頭の中で何かがはじけた。

 

 ”青キジくんは助けてくれても、私を逃してはくれないんだね”

 

 ”無茶言うなって…赤犬のお気に入りを逃がすなんざ、自殺行為でしょーが”

 

 これはいつの記憶?薄暗い牢屋の中、手足に枷を付けられている。ゾクリと鳥肌が立った。

 

「誰だあいつ?」

 

 ロビンがガタガタと震えだす。その怯え具合は、いつも落ち着いてるロビンからは考えられない。

 

「ロビン!」

 

「なんでお前が、固まってんだよっ?」

 

 みんながロビンに呼びかける。ただ事ではない空気が流れる。

 

「あらららァ?そう殺気立つなよ、別に指令を受けてきたわけじゃないんだ。天気がいいんで、ちょっと散歩がてら」

 

「指令?なんの組織だ」

 

「世界政府の最高権力、海軍本部の大将…青キジ」

 

「あーららら、こりゃいい女になったなァ…ニコロビン」

 

 海軍の、大将。

 

「ロビンがそんなに取り乱すなんて…誰?」

 

「たっ、大将って…どんだけ偉い奴だよ」

 

「海軍の中でも大将の称号を持つものは三人、赤犬、黄猿、そしてそこにいる青キジ。その上には海軍をまとめる元帥が一人いるだけ」

 

「なんで、そんな奴がこんなところにいるんだよ!どっ、どっかいけェ…」

 

 ゾロの後ろに隠れ、語尾の弱くなるウソップ。ドクンドクン、と心臓が音を立てる。海軍、大将、赤犬、青キジ、黄猿、最高権力ーー。

 

「あーらららん?こっちにも悩殺ネーチャン、スーパーボイン。今夜暇?」

 

 ナミを見てそう言う。

 

「なーにやっとんじゃノッポコラァ!」

 

「話聞けコラァ!」

 

 サンジとウソップが突っ込む。青キジは緩んだ口調で、先ほどまで話していた竹馬のおじさんとシェリーのことを解決するという。疑心を抱くみんなに、ロビンはその男ならできると言った。それから男は海を凍らせた。

 

「まぁ、あれだ。一週間は持つだろう」

 

「すごい…」

 

「これが大将の力…」

 

 ”だらけきった正義”を掲げる青キジ。ニコロビンを見に来た、彼は確かにそういった。けれど今すぐにでも逃げなければならない、と本能が警告する。

 

「俺がここに来た理由はニコロビンとモンキー・D・ルフィーを見るためだったんだけどね…そこのお嬢さん、どこかで見たことがあるような気がするんだよ」

 

 ジッとこちらを見る青キジに、私は後ずさる。

 

「っ…!」

 

 ゾロが咄嗟に、私を背中に隠した。

 

「なんだお前!ソラに手を出すつもりか!?」

 

「んー…まぁいいか。それにしても、モンキー・D・ルフィ、お前はじいさんそっくりだよ。自由奔放なところとか、つかみところがねぇところとか」

 

「なっ、じいちゃん!?」

 

 ルフィはだらだらと汗をかいていた。何かおじいちゃんに関して嫌な思い出でもあるのだろうか?

 

「だからさぁ…やっぱお前ら、今死んどくか?」

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