ウソップはメリー号をルフィから奪うために、決闘を申し込んだ。その決闘は結局、ルフィが勝って終わり、それでもルフィは船をウソップに明け渡した。
その日の夜は宿をとっても、眠りにつけなかった。ロビンは見つからず、ウソップは一味を出て行った。あんなに楽しかったはずの時間が全て嘘のように思えて、苦しくなった。屋上に行くと、ルフィとゾロがいた。ルフィは屋根の上に乗ってる。
「…まだ起きてたのか」
ゾロはこちらを見てそう言った。今はもう夜中の二時、普段ならとっくに寝ている。
「ゾロも、寝てない」
「俺はいーんだよ。ガキは寝る時間だろ、さっさと部屋もどれ」
そう言われても、戻る気にはなれなかった。ゾロの方に行き、その隣に座った。ウソップが一味を抜け、ロビンは昼間に出かけたっきり帰ってこない。一味がバラバラになるような不安に襲われ、ゾロの横にぴったりとくっつく。ゾロはちらりとこちらを見たが、何も言わなかった。肩から伝わる温度に安心して、ゆっくりと眠りについた。
「ぅ…」
目を覚ますと何故かゾロの膝の上にいた。
「…起きたか」
「のど、渇いた…飲み物、飲んでくる」
「あぁ…」
ゾロの膝からゆらりと立ち上がった。飲み物を部屋に取りに行く途中で、ロビンの波動を感じて足を止めた。
「…ロビン?」
反応のある場所にかけていけば、そこにはロビンと仮面を被った男がいた。
「ロビン!!どこ、行ってたの?みんな、心配して…」
一瞬だった。仮面の男が目の前に来たと思ったら、身体に強い痛みを感じる。
「っ…消失《ロスト・タイム》」
みるみるうちに痛みがおさまる。
「ほう、やはりお前が”ハク”か」
「その呼び方…」
青キジと同じもの。怖くなって後ずさる。今手元には、スケートボードを持っていない。逃げる術が、ない。
「ロビン、なんで、政府の人間と…」
「お前を連行する」
「っ、無衝撃《ノーショック》!」
とっさに構えて能力をつかえば、相手の蹴りの勢いが落ちる。繰り出される攻撃の衝撃をおさえる。とはいえ、全てを抑えきれずに蹴りがあたって、身体が吹っ飛んだ。
「っ、はぁ…はぁ…」
私は攻撃する術を、知らなかった。だけど守りを固めるだけじゃ、やられるのを待つだけ。
「衝撃《インパクト》改!!」
だから無衝撃で自分に受けた衝撃を記憶し、自分の手から繰り出す。インパクトの貝なしバージョンだ。
相手に直撃し、油断していた男はもろにそれを食らってよろける。
「おとなしく捕まっておけばいいものを…指銃(シガン)!!」
胸に指を突き刺され、口から血が溢れ出す。
「かっ…はっ…」
「何してるの!傷つけないと約束したはずよ!」
焦ったようなロビンの声が聞こえた。
「殺してはない」
「っ、ろ、びん、」
ガチャ、と手に手錠をかけられたのを最後に、記憶は途切れた。
***
「大変なの!みんな!」
ナミは泊まっていた宿の屋上に駆け上がると、勢いよくドアを開いた。その音に目を覚ました。なぜかゾロの膝の上に移動していた。それにルフィとゾロだけではなく、チョッパーとサンジもいる。
「どうしたんだい、ナミさん」
「アイスバーグさんが、暗殺未遂だって街の人が騒いでるのよ」
「アイスのおっさんが?人に好かれてそうなのになんで…」
「そりゃ一体誰なんだ?」
「昨日お世話になったの。この街の市長で、造船所の社長でもあるんだけど」
そりゃまた随分大物が狙われたな、とサンジがタバコをふかしながら言った。
「ロビンちゃんも帰ってこねーし…一体どうなってんだ?」
「あれ?…ねぇ、ソラは?」
「ソラならのど渇いたって、飲みモンとりに行ったぞ」
「え?でもおれが来たときにはいなかったぞ」
「飲み物取りに行くだけにしちゃあ…遅くねェか」
その場にいる全員が顔を見合わせる。
「えっ!?じゃあどこに…」
「次から次へと…一体どうなってやがる」
ナミが驚き、サンジはそう言ってガシガシと頭を掻いた。
「おれ、匂いを辿って探してみるよ!ここから昨日の夜いなくなったなら、まだ匂いは撹乱してないだろうから」
「…おれは、アイスのおっさん見てくる」
「私もついていくわ。チョッパー、ソラのことよろしくね」
「うん」
ナミがルフィを追っていなくなり、サンジとゾロはチョッパーについて歩き始める。
「匂いは…ここで止まってる」
「…なんだこれ」
サンジがポツリと呟いた。そこには血だまりができていた。まるで誰かが争ったような形跡に、その場にいた三人は背筋が寒くなる。
「しかもこの血、ソラの血だ…」
チョッパーの声は震えていた。
「どうしよう!!こんなに血を流してるなんてっ…早く治療しないと!!もし能力使って治してたとしても、酷い熱が出てるはずだ!」
「っ、何があったんだ一体…」
「とにかく探すぞ!」
ゾロはサンジとチョッパーと別行動で動き始めた。サンジとチョッパーは歩きながらソラのいそうな場所を探す。
その途中、チョッパーはロビンとソラの匂いを嗅ぎつけてその場所に向かった。
「ロビン!!ソラ!!」
「ロビンちゃん、無事で良かった!ソラちゃんのこと助けてくれてたんだね」
ロビンの腕に抱かれた傷だらけのソラ。意識はなく、その腕には海楼石の錠がついていた。
「はやくソラを治療しないと!」
「そっちに行くからちょっと待ってて」
サンジがどうにかして水路を渡ろうとした時だった。
「いいえ、その必要はないわ」
ロビンの声が、その場に響く。
「…え?」
「彼女をこの状態にしたのは…私よ。この子は元海軍。あなたたちの手におえないわ。この子がいるべき場所は麦わらの一味ではない。そしてそれは私も」
「なっ!?」
「あなたたちには罪をかぶせてしまって申し訳ないと思ってるわ。けど、私に関しては全て事実よ」
ロビンが淡々とそう告げた。
「どういうことだよ…ロビンちゃん、ちょっと待って…待てよ!!」
「何言ってんだよロビン!」
さよなら、と告げて後ろを向いて歩き出したロビン。サンジとチョッパーの声に、彼女が振り返ることはなかった。