「ん…」
目がさめると揺れを感じた。船の上か、と思いもう一度目を閉じようとして、ハッとして目を開けた。
「ここ、どこ!?」
隣には綺麗な女の人がいた。
「…えっと?」
「あら、やっと目が覚めたのね」
確か…ウソップとルフィが喧嘩して、宿に泊まって…でも喉が渇いて、ロビンが…
「ロビン!!」
「彼女なら、この列車に乗ってるわよ」
「…列車?あ、カク」
「昨日ぶりじゃのう、娘っ子」
「どうして、海列車に…?」
「言っただろう。政府に連行する、と」
そう言ったのは、身体が巨大な男だった。その聞き覚えのある低い声に、身体が震えた。
「イヤ!!政府、行かない!!」
ガルルル、と噛みつくように言う。ここにいるってことは…おそらくカクも綺麗なお姉さんも政府の人間だろう。どうやら私は政府に連行されているところらしい。味方がいないなら、この状況はかなりやばい。
その上ご丁寧に付けられた海楼石のせいで、残念ながら能力が使えずに付けられた傷がジクジクと痛む。
「お飲み物はいかが?」
「飲む」
りんごジュースを飲む。喉の渇きがおさまり、ホッと一息…
「つけるか!!」
「お菓子もあるぞ」
「わーい!」
サクサクとしたクッキーを食べる。ほどよい甘さで…
「って食べ物で釣る、ダメ!!」
いけない、危うく子供の本性が顔を出して相手のペースに巻き込まれるところだった。
次の瞬間ものすごい音がして、何かが吹っ飛んできた。
「きゃっ…」
後ろを向くと、そこにいるのはタバコをつけるサンジの姿があった。
「サンジ!!」
「ここにいたのか、ソラちゃん!見つかってよかった」
立ち上がって、サンジの方に行こうとしたら身体を掴まれる気配がして咄嗟に避ける。
「っ、セーフ」
「あーう!!」
「っ…」
屋根が崩れて落ちてきたのは青いリーゼントをした海パンの男。
その混乱に乗じて、サンジの方に走る。体当たりする勢いでサンジにぶつかった。
「っと…大丈夫かい?」
「うん!!っ、ゲホッ、ゲホッ…」
勢いよく返事をしたら傷に響いて、思わずむせかえった。
「こりゃいけねェ!早く治療しねェと!」
「そいつを返せ」
そう言ったのは、肩に鳩を乗せた男。おそらくこの中で、一番強い。
「誰が返すかよ」
サンジがそう言ったとき、サンジが入ってきた方と反対のドアが開いた。
「ロビンちゃん!!」
「ロビン!!…と、誰?」
赤いマントをして仮面を被っている男。
「え!?そりゃマジで言ってんのかソラちゃん。よく見てみなよ」
ジッと仮面の男を見る。よく見ると誰かに似ているような…
「あ!わかった!」
「だよな、わからないのはチョッパーとルフィくらいで…」
「ウソップの親戚!!」
どこかで見たことがあると思ったら、波動がウソップそっくりだ。
「…その純粋さが眩しいぜソラちゃん」
「ふっふっふー、残念だったなソラくん。私はウソップくんの親戚ではなく、親友のソゲキングなのさ!!」
踏ん反り返るソゲキング。
「…かっこいい」
目を輝かせると、そげキングは腰に手を当てて高らかに笑った。
「はっはっはー、私が来たからにはもう安心したまえ。さ、サンジくん、やってしまいなさい」
「おれに命令すんじゃねェよ!ったく…コリエシュート!!」
サンジが男を蹴るが、あの大きな男はビクともしない。
「聞き分けのない人たちね…言ったはずよ、私はもう戻らないと!!」
「っ…」
そげキングがロビンに投げ飛ばされて、こちらに飛んでくる。ロビンは何かを怖がっているような、恐れているような表情だった。
ロビンと仮面の男にあったあの時も、ロビンは同じような顔をしていた。ロビンは何を恐れているの?
ウソップの奇策により、なんとかロビンを連れて海列車が引き離された。ホッとしたのも束の間、綺麗な女の人の出した
「っ、わたしは逃げも隠れもしない!何度言ったらわかるの!?」
「ったく、見てられねェぜ…どいつもこいつも意地ばっか張りやがって…」
海パンの男はそう言うと、列車の壁ごと向こうに飛んだ。
「フランキー!?」
どうやら彼はフランキーという名前らしい。ん?フランキーって…どこかで聞いたことあるような。
「待って!私は逃げたりしないっ」
「おいおいロビンちゃん、ここまで来て何言ってるんだい?俺たちは全部知ってて迎えに来た。ロビンちゃんが俺たちのために命を投げ出そうとしてるのも、全部知ってる」
不意に気配を感じて、サンジを押しのける。
「危ない!!」
「おっと…気配を掴まれるとは」
「ソラちゃん!」
こちらに伸ばされた腕を、難なく避ける。相手の動きが読めてるから、避けるのは難しくない。
「チッ、面倒な…お前の相手は後だ。
「っ…」
「サンジ!!」
吹っ飛んだサンジに駆け寄る。
「や、やる気かおい!!おおお俺には八千人の…」
「そげキング後ろ!!」
けれど彼が気づいた時にはもう遅かった。
「指銃(シガン)」
「っ、ぐはっ…」
「ウソップ!!」
サンジが素早く起き上がり、攻撃するが相手が固くなってビクともしない。簡単に地面に叩きつけられたサンジに、背筋がゾクリとした。なおも攻撃しようとする男。サンジを庇うように倒れてる体に抱きついた。
「もうやめて!」
「なら、大人しくついて来い」
「わかった、わかったから…」
もうこれ以上、傷つけないで。
「っ、行くなっ、ソラちゃん…!」
息も絶え絶えなサンジに、私は涙をこぼした。ポタリ、それはサンジの頬を濡らす。
「ごめ、なさい…」
この手錠さえなければ、治せるのに。そう思ってなんども手錠を取ろうともがいたせいで、手首は赤く腫れて血が噴き出していた。それでもサンジやウソップの痛みに比べれば、こんなものかすり傷みたいなものだ。
「ソラ、ちゃん…」
「いきましょう」
ロビンに手を引かれる。
「っ、まって!ロビンちゃんっ、ソラちゃん!!」
空間に開けたドアの中に、入っていった。振り返ることは、なかった。ドアの向こう、戻ってきたことに驚いたのか、フランキーは目を丸くしていた。
「なんだってんだよ…おい、大丈夫か嬢ちゃん。手が血だらけじゃねェか」
「こんなの…痛くも痒くも無い」
戻ってきたドアの男を睨みつけた。
「この錠、とれたら…覚悟しろ」
ビリビリとした緊張が車内に走る。たった一人の少女の威嚇に、その場にいる誰もが威圧感を感じてゾクリと鳥肌が立った。
少女を含めた罪人たちが前の車両に移動し、CP9のメンバーは口を開く。
「なんじゃ、あの威圧感は…」
「ほんと、なんだったのかしら」
そこにいる誰もが無邪気な少女だと思っていた。自分を守る術も知らない、弱い少女だと。けれどそれが一気に覆される。
「…青キジがバスターコールを使ってまで手に入れようと思った意味が、少しだけわかった」
そう言って肩に鳩を乗せた男ーールッチは愉しそうに笑った。