着いたのは空の上。まるで本の中にいるかのような美しいその光景に、目を輝かせた。
「島だ…!!空島だ~~~!!」
船長のルフィの叫びが響く。ルフィとウソップ、それからチョッパーは我先にと船を降りて空島にかけていく。そんな中で
「あなたは空島の子なの?」
そう尋ねてきたのはロビンだった。大人びた雰囲気を持つ彼女に、ドキリとする。
「ううん、違うと思う…」
首を横に振る。でもなんだろう、ひどく懐かしいこの気持ちは。既視感に襲われ、泣きたいような、笑いたいような、なんとも言えない気持ちが胸にこみ上げてくる。
「ガキのくせにシケたツラしてんな。さっさと行くぞ」
ひょいっとゾロは私の身体を持ち上げると、空島に向かって投げた。…投げた!?
「ぅきゃあっ!!」
ふかふかな地面をゴロゴロと転がり、ナミの足に衝突する。
「わ、大丈夫?何やってんのよゾロ!!」
「ぅ…ごめんナミ」
ナミはゾロに怒鳴ると、私の身体を起こしてくれる。
「気にしないで。それよりソラ、見てあれ!何かしら」
指をさした先にあるのは、雲でできたようなふかふかのイス。チョッパーも引き連れてそこに向かい、座る。
「わっ…このイス雲でできてる!やっぱり雲で造形する技術もあるのかしら」
「うお、でもフカフカ雲とは別だな!マフっとしてるぞ」
このマフマフ感…私がいたところに似てる。ふかふかと遊んでいると、どこからともなく綺麗な音が聞こえてきた。
「…なにか、聞こえる」
耳を澄まして音の聞こえる方に目をやった。するとそこにいるのは小さな羽の生えた、可愛らしい女の人だった。彼女はこちらを向いて私たちに気づくと微笑んだ。それから口を開く。
「へそ!」
その天使のような容姿から発された意味不明な言葉に、首を傾げた。
***
天使のような少女の名前はコニスといい、その父はパガヤというらしい。ここの住民である二人は、無知な私たちに気さくにいろいろなことを教えてくれる優しい人たちだった。パガヤさんの乗っていたウェイバーを乗ろうとしているルフィを見ていると、彼は何を思ったのか私を持ち上げた。
「お前も一緒にこれ乗るか!背中に捕まっとけ!」
「えっ!?」
慌ててルフィの背中におぶさるように抱きつくと、彼はにししっと笑う。
「よし、踏めばいいんだな」
勢いよく動き出したウェイバーに、大人しくルフィの後ろに乗るんじゃなかった…と思っても遅い。
「きゃあああああ!!」
ウェイバーは見事なまでの大転倒をし、持ち上がった身体は宙を舞った。
「あぁ、大変!おケガはないかしら!!?」
「なんてことだ、すいません。ウェイバーをお貸ししてすいません」
ニコスとパガヤは、そう言って二人を心配した。
「そういや能力者に”この海”はどうなんだろうな…」
と宙に舞うルフィとソラを見ながらサンジが呟いた。
「そうか、普通の海とは違うからなァ…もしかして浮くかもしれねェ。つーかあのガキ泳げるのか?」
「「あぷ…」」
そんな会話がなされている中、容赦なく二人の身体は白い海に沈んでいった。
無事…とは言えないものの、ゾロとサンジの手によってなんとか助けられた。ナミはウェイバーを乗りこなし、「一緒に乗る?」と誘ってくれたが丁重にお断りしておいた。もうあんな怖い思いはしたくない。ぐずぐずと泣く私をゾロは背負い、ご馳走してくれるというパガヤさんの家に向かってみんなで歩き出した。ナミはそうとうウェイバーが気に入ったらしく、まだ乗っているが。
パガヤさんとコニスの住んでいる家に着くと、コニスさんがダイヤルについて教えてくれた。この空島では貝の形をしたダイヤルによって、文化が成り立ってきたそうだ。眠っているゾロの膝に座りながら聞いていた私は、落ち着いたのを機に彼の上から降りた。それから厨房にいるサンジのところに行く。
「ん?どうしたソラちゃん」
「手伝う?」
そう告げると、彼は目を丸くしてから微笑んだ。
「いや、危ないから気持ちだけ受け取っておくよ」
大きな手に頭を撫でられ、確かにこの小さい身体じゃ役に立たないかな、と思い素直に頷いた。なんせキッチンが高く見えるのだ。手も小さいし、包丁でも持ったら危なかっしくてサンジはきっと見てられないだろう。寝ているゾロを見ると眠くなって、彼の膝に戻ると彼に寄りかかって眠りについた。
「ーーん、」
いい匂いにつられて、目を覚ます。
「やっと起きたか」
そう言って笑うゾロ。子供扱いをされたことに、唇を尖らせる。
「先に寝たの、ゾ、ロ…」
料理が目の前に並んでいるのを目にして、反論しようとしていた言葉がつまる。テーブルに並べられた料理の豪華さに驚く。ゴクリ、と喉がなる。
「うっひょー!うまそーう!」
我先に、と口に運ぶルフィやみんな。その勢いに圧倒され、思わずポカン、としてしまう。それによく考えれば…いや、よく考えなくとも私は麦わらの一味ではない。
「ン…食わねェのか?」
そう尋ねてきたのは、ゾロだった。
「あの…私…」
「どうした?口に合わなかったか、ソラちゃん」
サンジもたべていない私に気づき、そう声をかけてくれる。
「わ、わたし、麦わらの一味じゃない…から…」
彼らが作った料理を平気な顔して食べるなんて、していいわけがない。さっきは何も考えずに食べてしまったけれど。
「なーに言ってんだおめェ、俺たちの仲間だろ?」
ルフィのその言葉に目をパチクリさせた。
「えっ…いつから?」
「そりゃソラが魚から生まれた時からに決まってんだろ。んで、ゾロが父さんな」
「はァ!?なんでそうなるんだよ」
にしし、と笑うルフィにゾロが目を丸くする。
「だってゾロがソラの父ちゃん(魚)斬っちまったんだろ?ダメだぞ、ゾロ。責任は取らねェと」
…いやいやいや、ちょっと待って。魚の腹にいたのは確かだけれど、魚から生まれたわけではないと思う。この容姿は確かに幼いが魚が父親だとは考えられない。海で溺れちゃうくらいだし。
「父親がどうのっつーのは置いといて、ルフィに目ェつけられちまったんなら諦めろ。お前はもう仲間だ」
ゾロのその言葉に、嬉しくなる。
「うんっ!」
私は満面の笑みで頷いた。ルフィたちは海賊だ、世間では悪者扱いされるだろう。それでも彼らは温かい。だから私は、できることなら彼らと一緒にいたい。
ーーなんて考えが甘かったと知ったのは、もう手遅れになった後だった。