THE WHITE GUARDIAN   作:ひなたロボっち

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21.海軍中将 ガープ

砲撃が撃ち落とされるような、ものすごい音に目を覚ました。

 

「ぅ…」

 

「やっと目を覚ましたか」

 

「ゾロ…?」

 

「さて、どうしたもんか…」

 

辺りは火の海だった。島全体が、炎に囲まれている。ここにいたほとんどの人は、海兵だったはず。ここに住んでいた海兵を海兵が殺したのだ。

 

「どうしたもんか、じゃないわよ!ルフィはあいつを倒したはいいけど動けないし、砲撃が襲ってくるし…あたしたちこのまま何もできずに死ぬの!?」

 

「ルフィ…?」

 

ルフィは塔の中で、仰向けに横たわっていた。

 

「く、そ…動けねェ…」

 

炎に包まれていく島に視線を向ける。

 

「これが…バスターコール」

 

ゆらりと立ち上がる。声が、次々に消えていく。罪なき人々の叫びが、頭の中に響く。

 

「どうした」

 

どうしてこんなにも命を粗末にするのか。海兵にだって待っている家族や友人がいる。助けてくれ、死にたくないと、叫んでいる。その悲痛な叫びに、耳を塞いだ。けれどなおも頭に直接響いてくるその声に、涙が、嗚咽が止まらない。

 

「ルフィ!!逃げろおおおお!!」

 

ウソップが叫んだ。弾かれたように視線を向けると、砲弾がルフィに向かって撃ち込まれていた。それを見た瞬間、体中の血がドクリと脈を打ち、まるで世界がスローモーションになったような感覚に陥る。その砲弾に手を伸ばした。

 

 

「消えろ!!!」

 

 

喉が張り裂けんばかりにそう叫んだ次の瞬間、私を中心に風が巻き起こった。その風は光を帯びて、広がっていく。

 

「っ、なんだこれ!?」

 

「火がっ…消えてく!?」

 

ルフィに向かっていた砲弾が、消えた。島を包んでいた炎が消えた。周りにいた軍艦が、波に煽られて後ろに下がる。

 

 

ーー海軍の船の上。

 

「なにが起きたんだ!?」

 

「っ、構うな!撃て!」

 

「しかしっ…砲撃が消えました!!」

 

 

ーー島の上にいる海兵。

 

「っ…くそ、逃げ遅れ…あれ?傷が消えた?」

 

「おい!火が消えたぞ!」

 

「助かった…のか?」

 

 

ーーフランキー一家と大工。

 

「なにが起きたかはわからねぇが…今の内だ!」

 

「さっさとこの島から逃げるぞ!!」

 

「「「おう!!」」」

 

 

一瞬で起きたこと。しかしその一瞬で島にいた多くの人間が助かり、同時に世界に”あの”力を持った者が復活したことを知らしめることとなった。

 

 

「はぁっ…はぁっ…」

 

ガクン、と膝をついた少女を、ゾロはとっさに支えた。

 

「大丈夫か?」

 

「平気…」

 

なにが起きたのかわからず、呆然とする麦わらの一味。

 

「おい!下を見ろ!!」

 

ウソップの声に、みんなが下を見る。

 

「っ!」

 

そこにいたのはずっと共に航海をしてきた仲間、ゴーイングメリー号だった。

 

「みんな、海へ飛べ!!」

 

船の声に導かれて、全員が船に飛び乗った。

 

 

***

 

 

小さな船の上、ずっと航海を共にしてきた仲間が燃えていくのを見送った。ぼろぼろと零れ落ちる涙を、止める術を知らなかった。

 

ーーそして、メリー号と別れた後。

 

「ゾロ、剣…錆びたの?」

 

「あぁ…どうすっかな」

 

私は二日間ほど生死をさまよった後、身体をなんとか動かせるまでに回復し、ゾロと港に来ていた。もちろん、ゾロの迷子防止のためだ。アクアラグナのせいで、ガラクタが山積みになってとても綺麗とは言えない港だったが、潮風が気持ちいい。

 

「…ゾロ」

 

「なんだ?」

 

ゾロは怪訝そうな声を出し、こちらを見た。スッと息を吸う。

 

「思い出した」

 

「…なにを?」

 

「昔、海軍、いたこと」

 

その記憶は朧げで、断片でしかないけれど。確かに私は海軍にいた。青キジにも会ったことがある。

 

「そうか」

 

「…それでも、いい?みんなと、一緒にいても…いい?」

 

溢れそうになる涙をこらえて、聞いた。ゾロはガシガシと頭を掻いて、ためいきをついた。

やっぱり、迷惑だろうか?私が仲間だったら、必要以上に海軍に狙われることになるかもしれない。ぎゅっと拳を握り締める。

 

「何度言わせればわかるんだよ。お前は仲間だ、ここにいちゃいけねェなんてことあるわけねェだろ」

 

弾かれたように顔を上げれば、そこにはいつもの仏頂面をしたゾロがいた。

 

「っ…ゾロっ」

 

感極まって、ゾロに抱きついた。彼はしっかりと私を受け止めてくれる。

 

「まだまだガキだな」

 

「ガキ、違う!!」

 

軽口を叩くゾロに、唇を尖らせた。ふいに、強烈な波動を感じて海の方を見る。

 

「どした?」

 

「…くる」

 

「来るって…」

 

だんだんと見えてきたのは、海軍の船だった。

 

「なっ…もう嗅ぎつけてきやがった!」

 

「急いで、知らせる!ゾロ、こっち!」

 

みんなのいるところに向かって走り出したのに、ゾロは少し目を離したすきに違う道に行こうとする。そのせいでなんどもタイムロスをする。

 

「もう!!ゾロ、ちゃんと付いてきて!!」

 

「だからちゃんと付いて行ってるだろーが!!」

 

付いてきてないから私がゾロを追いかけて元の場所に戻る羽目になってるというのに。

 

「〜っ、肩車して!!」

 

「はぁ!?」

 

「いいから、早く!!」

 

 

***

 

 

戻った時にはすでに海軍が付いていた。

 

「もう、ゾロ、手がかかる」

 

「お前にだけは言われたくねェよ!!何度か道間違えやがって…」

 

それはゾロが変な道に逸れようとするからだ。

 

「降りてろ、こいつらは俺が片付ける」

 

肩からおろされ、地面に足をつける。

 

「先、行ってる」

 

かかってくる海軍を、ひょいひょい避けながらルフィ達の元へ進む。みんな無事ならいいんだけれど。

 

「やはり、まだ生きておったか…ハク。まぁ、これは本当の名前じゃなく政府の呼び方じゃけどな」

 

その声の主に、顔を向けた。

 

「ガープ…」

 

「こりゃまたずいぶん小さくなっとるのう。そんな身体じゃ満足に力が使えんじゃろ。そんな身体でよくあんなに力が使えたもんじゃ。ずいぶんと派手にやらかしおって…全世界に”お前”が生きていることが知れ渡ったぞ」

 

ガープには、私が中将として働いていた頃にお世話になった。

 

”よう、チビ!元気にしとるかァ?ガキにこんな仕事をやらせるとは、あいつも酷いやつじゃ”

 

”…ガープ、うるさい”

 

ガープは隙を見て、私を仕事から連れ出してくれていた。もしもガープがいなかったら、私の精神が壊れていたかもしれない。

 

「あの頃もガキじゃったが、今も変わらんのう」

 

「うるさい」

 

そう口にすれば、ガープはガハハハ、と豪快に笑った。

 

「わしは知っておったぞ。お前の”うるさい”は嬉しい、って意味だったとな」

 

「っ…違う」

 

「そう意地をはるな。なにもお前を捕まえに来たわけじゃない。孫の顔を見に来ただけじゃ」

 

「孫?」

 

「モンキー・D・ルフィ、わしの孫じゃ」

 

「ルフィが!?」

 

ガープに孫がいたとは驚きだ。

 

「ところでお主、自分の存在を”消した”んじゃろ?ハクハクの実の能力については覚えておるのか?」

 

ふるふると首を横に振った。

 

「ガープのことも少ししか、覚えてない」

 

「まぁそうじゃろうな。昔のお前なら、あんな無茶な使い方せんかった…違うな。止める人間がいたからあんな使い方はできなかったんじゃ」

 

「どういう、意味?」

 

「お前が嫌っとった赤犬に、お前は守られている部分もあったっちゅうことじゃ。もちろんそれ相応の代価は払わされていたようじゃがのう」

 

「あか、いぬ…」

 

ゾクリと背筋に寒気が走った。かつて私に仕事を強要したのは、赤犬だった。

 

「さっきルフィ達にも話しておいたんじゃが…お前本人にも話しておこう。ハクハクの実の力について。ハクハクの実というのは、万物を還す力と言われておる。つまり、すべての物質の根源じゃな。悪魔の実の能力の中で最も強いと言われとるもののうちの一つじゃ。

ただ、その能力には一つ問題がある」

 

「なに?」

 

「その実は…命を削る」

 

「っ、」

 

「自分に使う分にはさほど問題ない。じゃが…他人に力を使った場合、その分だけ自分の寿命を縮めることになる。お前の一族はもともと寿命が普通の人間より長い。確か三倍くらいあったはずじゃ。そうじゃなきゃその力を手にしてもすぐに死んでしまうからのう。

ロジャーの船にいた時はどうやら、海楼石を常につけて力を使うのを禁止されとったそうじゃ。しかしお前はそれを破り、船を去ったとあいつは言っておったわい」

 

懐かしそうに目を細めるガープ。

 

「そのあとお前は自分の存在を消した。だから誰も…わしもお前の名前を覚えとらん」

 

自分の存在を消した?一体なんのために?

 

「お前の力は強大で危うい。使い方を間違えるんじゃないぞ」

 

ガープは私の頭を撫でると、その場を去っていった。

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