THE WHITE GUARDIAN   作:ひなたロボっち

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6.馴染んでいく少女

「ぅ…」

 

 目をさますと、見覚えのある天井があった。身体を起こし、ドアから外に出る。

 

「ソラ!目が覚めたのね」

 

いつの間にかボートの上で眠っていたらしく、私が寝ている間に船についたらしい。

 

「な、み…」

 

 大して時間は経っていないはずなのに、ひどく懐かしく感じた。感極まって、ナミに抱きつく。

 

「無事でよかった!!」

 

「大袈裟ねぇ。でも、ソラも無事でよかったわ」

 

 ナミはしゃがむと、頭を撫でてくれた。ふわり、ナミのいい匂いがする。

 

「みんな無事?」

 

「それが…」

 

 

 ***

 

 

「チョッパーー!」

 

「わっ、ソラ!起きたのか」

 

 小さい身体めいいっぱいに包帯をグルグル巻いたチョッパー。その痛々しい姿に目を見開く。

 

「だいじょーぶ!?」

 

 いや、見た目は大丈夫そうに見えないんだけど!

 

「医者、医者どこ!?チョッパー死んじゃう!!」

 

「えェ!?おれ死ぬのか!?」

 

「いやあぁああ!」

 

「うわあぁああ!」

 

 チョッパーと二人でギャーギャー騒いでいると、ダンッと音がした。そちらを見れば、仁王立ちしたウソップがいた。

 

「落ち着け二人とも!この俺が来たからにはもう大丈夫、その名もキャプテーン、ウソーップ!!」

 

「うおー!」

 

「ウソッープ!」

 

 ギャーギャー騒いでいたのが、ワイワイに変わった様子を見て、ロビンは優しく目を細めた。

 

「元気そうでよかったわ」

 

「ほんと。怪我もしてないみたいだし…サンジくんがいるから大丈夫だろうとは思ってたけど」

 

 ナミが賛同する。長くて綺麗なプラチナブロンドの髪を持ち、透き通るように白い肌と宝石のような青色の瞳を持つ少女。魚の腹から出てきたときは驚いたが、もうこの一味に違和感なく馴染んできている。

 普通ならば、子供を海賊の仲間にするなんて足手まといになって迷惑だろう。だけど彼女に関しては違った。なにが違うのか、と言われれば説明するのは難しい。けれどソラはこの一味にとって”必要”な存在になる気がした。あくまでも勘にすぎないが。

 

「ソラ!」

 

 ナミが名前を呼べば、透き通った青色の瞳が向けられる。

 

「少し手伝ってもらえる?」

 

「うん!」

 

 嬉しそうに笑みを浮かべてかけてくる少女とともに、旅をしたいと思った。

 

 

 

「黄金…」

 

 壮大な話を聞き、やっぱりみんなは海賊なんだな、と思う。火を囲みながら食べる食事はほっぺたが落ちそうになるほど美味しくて、自然と笑みがこぼれた。

 

「おいしい!」

 

「おかわりはたくさんあるからな」

 

 サンジの言葉に大きく頷く。ふとシチューを見れば、丸々と太ったカエルがいた。あげそうになった悲鳴を、すんでのところで抑える。カエルは苦手だ。それを自分が食べるとなると…ちょっと遠慮したい。でもせっかくサンジが作ってくれたシチューを残すのは申し訳ない。ちらりとゾロの方を見る。

 

「あ?」

 

 威嚇だかなんだかよくわからない声を出したゾロ。けれど彼にとってはそれが通常運転なのだと今日一日で知った。

 

「ゾロ、お腹空いてる。あーん」

 

我ながら片言だと思う。けれど、ずっと喋っていなかったせいなのか、うまくしゃべれないのだから仕方ない。

 

「んあ」

 

 普通に口を開けたゾロにホッとしつつ、それをゾロの口に持って行こうとしたときだった。

 

「ダメだソラちゃん!」

 

 その言葉にびくりと肩を震わせて手を止めた。サンジにバレたのかと思い、冷や汗が背中を流れる。

 

「そんなヤツに…そんなヤツに”あーん(ハート)”なんて!!ゾロてめェ、ソラちゃんになに馴れ馴れしくしてんだ!!」

 

 いや、ハートはつけてない。私にあーん、をされて嬉しい人なんていないだろう。それにこれは別に馴れ馴れしくしてるわけではない。よし、サンジは一旦無視しよう、そうしよう。

 

「ゾロ、」

 

「ちゃんと食わねェと、大きくなれないぞ」

 

「えっ」

 

 なにを思ったのか、そう言って自分のを食べはじめてしまったゾロ。手元に残っているのは、カエルのまる茹で。もう覚悟を決めるしかないのか…ゴクリ、と喉がなる。

 海賊になったんだし!仲間になったんだし!カエルくらい食べられなくてどうする!意を決して、口に運ぼうとしたそのときだった。

 

「きゃっ!」

 

 バサッと鳥が飛んできて、スプーンの上に乗っているカエルを食べた。

 

「なんだ!?」

 

 カチン、とゾロが剣を構える。私は慌ててそれを止めた。

 

「この子、昼間に助けてくれた鳥!!」

 

「カァ」

 

 カエルを丸呑みした鳥の頭を撫でる。よくやった、よくやったよ鳥!鳥は嬉しそうに目を細めて、その場で羽を休めるように丸くなる。

 

「なんだそれ、食えんのか?」

 

「ダメ、ルフィ!この子、私の友達!」

 

「なァんだ、そっか」

 

「それにしても、珍しい鳥ね。初めて見たわ」

 

 ロビンはそう言って、私の隣で丸くなる大きな白い鳥を見た。羽がふわふわして、柔らかい。温かな身体は、鳥が生きていることを主張している。

 昼間、ルフィもサンジもウソップも死にかけた。誰にも今日を無事に生き延びて、明日も生きられる保証なんてないのだ。ここにいる誰かが死んでしまうかもしれない、そう考えると胸が締め付けられるように痛くなった。

 

「どうした?」

 

 ゾロのその声に頭を横に振った。

 

「なんでもない」

 

 そう言って、笑った。

 

 

 

 

「寝ちゃったわね」

 

 鳥の上に寄りかかるようにして眠りについている少女を見て、ロビンが言った。先ほどまでルフィ達とドンチャン騒ぎをしていたかと思えば、ふらふらと歩いてきて鳥の上に寝転んだ。その際鳥がわずかに身じろぎしていたが、避けようとはしなかった。

 

「ったく…どんだけ寝るつもりだ」

 

 ボートに乗って再開した時、泣き腫らして眠る少女を見て肝を冷やした。ソラが傷ついた姿を見るのは嫌だった。そしてそう思ってる自分がいることに、驚かされた。

 

「フフ…エネルの住む地でこんなにバカ騒ぎをする者は他におらぬぞ」

 

「あら、お目覚めね。動いてもいいの?」

 

「迷惑かけた…助けるつもりが…」

 

「なに言ってる、十分さ。ありがとよ」

 

 空の騎士、ガン・フォールはそう言うと眠っている少女の横に座り、その頭を撫でる。

 

「この娘、どこかで見たことがある気がするんじゃが…」

 

「じゃあやっぱり、空島のガキなのか?」

 

 ガン・フォールの言葉に、ゾロは少しだけモヤッとした。空島の子供なら、ちゃんと親のところに帰さなければならない。けれど手放すのが惜しいと思っている自分がいたのだ。

 

「いや…そうではない。空島の子供であれば背中に羽があるはずじゃ、その少女にはなかろう」

 

「確かにそうね」

 

「まぁ、ワシの気のせいかもしれん。長く生きると記憶は曖昧になるものだ」

 

 ガンフォールはそう言って、ドンチャン騒ぎをする海賊達を見て眩しそうに目を細めた。

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