THE WHITE GUARDIAN   作:ひなたロボっち

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7.船の声と還す者

ーーけて、助けてーー

 

 どこからか聞こえてくる声に、目を覚ました。あたりは暗く、先ほどまでの宴の名残が妙にもの寂しく感じた。ふわふわの感触の鳥の上で寝ていたらしい。体を起こし、目をこする。

 

「だれ…?」

 

 声のする方に向かい、歩いていく。不思議と怖くなかった。着いたのはメリー号。カーン、カーン、と船を治す音が聞こえてくる。少年は私に気づくと、微笑んだ。私は幻覚でも見ているのだろうか?それとも…夢?

 

ーーみんなをもっと遠くまで運んであげたいんだ。だから君の力を貸して欲しいーー

 

「私の力?」

 

 船を治すことなんてできるだろうか。そもそも材料も何もかも、足りない。

 

ーー君は”還す人”でしょう?今は力を封じているみたいだけど…僕が少しだけ君に力が使えるようにするーー

 

 ふわり、光が体を包み込む。泣きたくなるような、叫びたくなるような、懐かしさと悲しさに襲われる。

 

”おいで…ーー”

 

 どこかに埋もれていた記憶の中で、男の人が優しく笑う。顔は見えないけれど、張り裂けそうな胸の痛みを感じた。それからほとんど無意識のうちに、船に向けて手を伸ばしていた。

 

「在るべきものを、在るべき場所にーー還元(リセット)」

 

 船は光淡いに包まれたかと思うと、マストが元に戻っていた。羽みたいなところや、トサカは外れている。

 

ーーありがとうーー

 

 その声を聞いて、私の意識は薄れていった。

 

 

 ***

 

 

「…あいつどこだ?」

 

 目を覚ますといつの間にか白い少女が消えていた。他のクルー達はみんな眠っているというのに。ゾロは立ち上がり、森を歩き出す。

 

「おいゾロ、どこに行く気だ?」

 

 片付けをしていたサンジに聞かれ、あいつがいねェから船見てくる、と告げる。

 

「ソラちゃんがいない!?そりゃ大変だ。つかゾロ、そっちは船じゃねェ、逆だ」

 

 片付けをやめ、船の方に向かって歩き出したサンジの後ろをついていく。おかしいな、船はあっちだった気がするのに…と思いながら。

 

「あ…」

 

 サンジが声を上げた。それは思わず漏れてしまったような声。

 

「なんだァ?なんかあったのか?」

 

 サンジの視線の先を見て、ゾロは少しだけ目を見開いてから口元にゆるりと笑みを浮かべた。

 

「ずいぶん気に入られてんじゃねェか」

 

 動物達に囲まれてスヤスヤと気持ちよさそうに眠る少女がいた。その姿はまるで森の精霊だ。

 

「…お前はどう思ってんだ?」

 

ゾロはポツリと呟いていた。

 

「あ?なにを?」

 

「あいつのことだ」

 

 そう言うゾロの視線の先にいるのは、ソラだった。

 

「それが不思議なんだよな。神官って奴らはマントラが見えるのにソラちゃんのは何故か見えないらしいし…俺らが彼女に手当てしてもらったら傷がなくなったんだ」

 

「なくなった?」

 

「ああ、まるで初めからなかったみたいにな」

 

 サンジは煙草を取り出し、火をつける。サンジ独特の煙草の香りが鼻を掠めた。

 

「じゃあなんかの能力者なのか?」

 

「それは断言できねェな。でもただの子供じゃないのは確かだ。逃げ足もナミさんと同じくらい速いし」

 

 と、そこまでサンジが話したところでガサガサと森の向こうから音がした。二人は一気に警戒し、音のする方を見つめる。

 

「あー!!やっぱり船が直ってる!」

 

 そう言って騒ぐウソップに、安堵(あんど)して警戒を解いた。それから視線を船の方に向ければ、確かに昨日の焼けたはずのマストが元に戻っていた。他のところも戻り、焼けた跡も消えている。

 

「誰が直したんだ?」

 

「俺見たんだよ!!昨日の夜誰かがメリー号を直してるところ!」

 

 興奮気味に話すウソップの大声に、動物達が逃げて眠っていた少女が起きてしまったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 麦わらの一味は起きてから黄金探索組と脱出組に別れ、島を捜索することになった。私は黄金探索組に志願した。

 

「大丈夫?なにがあるかわからないのよ?」

 

「うん、だけど遺跡、見てみたい!」

 

「そう…それなら止めないけど。ロビン、お願いできる?」

 

「えぇ、遺跡に興味があるなんて気が合いそうね」

 

 ふふ、と微笑んだロビン。その美しい笑みに思わず見惚れる。

 

「ナミ、黄金、待ってて!」

 

 そう言って笑うと、ナミにガバリと抱きつかれた。

 

「なんていい子なの!!ソラはうちの船霊(フナダマ)ね!」

 

「船霊?」

 

「船の守護神のことよ。確かに貴女にぴったりね」

 

 クスリ、とロビンが笑う。

 

「守護、神…なんか、かっこいい…」

 

 目を輝かせた私を、みんなは優しい目で見ていた。

 

 

 ***

 

 

「大丈夫かしら、ソラ…」

 

「そうだな…それにしても、この船ってやっぱりあいつが直したのか?」

 

 ウソップはそう言って、昨日壊れたはずのマストが元通りに戻っているのを見つめた。そこは焼け跡もなく文字通り”何事もなかったかのように”戻っているのだ。

 

「でも本人が覚えていないんでしょう?」

 

 今日の朝、起こった出来事。ソラは目がさめるなり、船が直ってることに驚いていたのだ。それは何かを隠している、という様子もなく、良かったね!とはしゃいでウソップの手を取りくるくると回っていた姿は記憶に新しい。

 

「そうなんだよなァ…あれが嘘だっつーならおれはなにも信じられなくなるぞ」

 

「バカ言え。ソラちゃんが嘘つく理由がどこにあんだ」

 

 二人の会話を聞いていたサンジがそう言ってウソップに怒る。

 

「確かにそうね。私もあんなに純粋な子、見たことないもの」

 

「さすがナミすわん、よく分かっていらっしゃる!」

 

 くねくねと身体をくねらせながら目をハートにするサンジに、ナミは一つため息をついた。この船には教育に悪そうな男が多い。となれば自分がしっかりしなければ、とナミは思うのだった。

 

 

 ーーそんなナミの気も知らず。

 

「あっ、その棒、いいな!」

 

「本当だ!いい雰囲気の棒だ!」

 

「おうっ、いいだろ。やらねェぞ?自分で見つけろ」

 

 探索組では和気藹々とした雰囲気が流れていた。ロビンを先頭に歩く一行。ソラはウソップに作ってもらったリュックを背負いながら、チョッパーの隣を歩いていた。

 

「この棒は…短い、これは太い…」

 

「棒がどうした」

 

 呆れたような声を出すゾロに、ソラは言う。

 

「あんな棒、欲しい!」

 

 ゾロは手を土まみれにさせながらちょこまかと歩くソラに小さくため息をついた。体の大きさがだいぶ異なるソラは歩幅も小さい。チョッパーも小さいが、彼は動物であり蹄もあり、地をあるくことに慣れている。

 

「転ぶなよ」

 

 危なっかしいソラにそう告げる。もし怪我でもしたらコックがうるさそうだ、と思いながら。

 

「子供扱い、しないで!」

 

 ムッとしたように頬を膨らませるソラ。

 

「どう見ても子供だろうが」

 

「子供、違うっ!」

 

 鏡見てみろよ、という言葉は飲み込んだ。

 ソラはゾロから離れ、ロビンの方に歩いていく。危なっかしいが転ぶことはなく、案外身軽な少女にホッとする。

 ロビンの隣を歩きながら、仲睦まじく話す姿は確かに普通の子供よりも少しだけ大人びているようにも見えた。話す言葉は片言だが。容姿よりも幼い、片言の言葉を話すソラ。

 

「しっかし何も起こらねェなァ」

 

 ルフィがそう呟き、自分もそれに同意する。試練だなんだと聞いていたが、大したものではないらしい。ガッカリしたような、けれどソラがいる今は何も起こらないほうがいいような。

 

「ふふ、おかしな人たちね。ハプニングが起こって欲しいなんて」

 

 クスリとロビンが笑ってすぐあとに、巨大なウワバミが現れて白い少女が悲鳴をあげた。

 

 

 

 なにこれ!?なんなのこれ!?なにをどうやったらこんなに大きくなるの!?と言いたくなるほど大きなウワバミ。ギョロリとこちらに目が向き、卒倒しそうになる。それからこちらに噛み付いてきたウワバミから、スケートボードに乗って間一髪のところで避ける。

 

「きゃあぁあああ!!」

 

「これは一旦逃げたほうが良さそうだな」

 

「確かに」

 

 ルフィはハプニングが起きたのが面白いのか、気にぶら下がりながら挑発している。なにしてんだアンタ!!と突っ込みたくなったが、それどころではない。

 

「ロビン危ない!」

 

 思わずそう叫んだが、彼女は慣れた身のこなしで難なくウワバミから逃れる。

 

「ソラ、逃げろ!!」

 

 こちらを向いたウワバミに、ゾロが叫ぶ。私は弾かれたように、スケートボードに乗ってその場をものすごいスピードであとにした。

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