THE WHITE GUARDIAN   作:ひなたロボっち

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8.手のひらの温度

「はぁ、はぁ…」

 

 困った、ここがどこだかさっぱりわからない。スケートボードを緩やかに滑らせながら思う。前世でスケートボードをやっていたけれど、このスケートボードはかなり向こうの世界のものより乗りやすいし使い勝手がいいように思われる。

 このスケートボードで逃げ回ったせいか、十分にスケートボードに慣れた。歩くよりも楽だ。

 とりあえず進むしかないと思い、ロビンが言っていた南を目指す。ウソップにコンパスをもらっておいてよかった。とりあえずコンパスを頼ってまっすぐ南に行けばいい。

 みんな大丈夫だろうか、と思いながら後ろを振り返る。けれど、彼らはおろか、先ほどのウワバミすらも見えない。一番弱いであろう私が戻ったところでウワバミの食事になるだけ、そう思って前に向き直そうとしたときだった。

 

「うぶっ…」

 

 硬い何かにぶつかり、スケートボードから落ちて尻餅をついた。いてて、と顔をあげればそこには怖い顔をした男の人。

 

「青海人か。殺す」

 

 チャキ、と向けられた銃に、頭が真っ白になる。

 

「やめて!その子はまだ子供よ」

 

「んな甘いこと言ってるからおめェはダメなんだよ」

 

 チッと舌打ちして、男の人は先行くぞ、と言って行ってしまう。残されたのは長い黒髪の美人と私。

 

「…大丈夫?」

 

 その問いかけにコクコクと頭を動かして頷いた。

 

「ほんと、あいつって頭が固いんだから」

 

「あ、あの…あなたは?」

 

「私はラキ。悪いことは言わないから早くここから出たほうがいいわ」

 

 彼女は地面の土をカバンの中に入れながら、そういった。

 

「どうして土を?」

 

「私たちシャンディアの祖先はもともとこの地に住んでいたの。それを奪われて…私たちは故郷を取り戻すために戦ってる。これは…ヴァースは私たちの憧れなのよ」

 

 小さなカバンにいっぱいの土を入れ、彼女はカバンを見て微笑んだ。それだけでこの土がどれだけ彼女にとって大切なものなのか、わかった気がした。

 

「今から私たちはエネルを倒しに行く。巻き込まれないうちにここを出て」

 

「でも、仲間、遺跡、約束…」

 

片言ながら、なんとか伝えようとする。

 

「それなら、途中まで一緒に行きましょう。あなたは無害そうだしーー、」

 

「覚悟!!メェ~~!!」

 

「きゃっ…」

 

 パンパンっと銃が撃たれる。私を狙っていたヤギ…みたいな男が地に倒れる。

 

「一人じゃすぐに死んでしまいそうだもの」

 

 クスリと笑ったラキに、「ありがとう!!」とお礼を言った。

 

 

 スケートボードを扱えるために、移動するのにラキに遅れをとることはなかった。

 

「それにしても、その年でそんなに乗りこなせるなんてすごいわね」

 

「え?あ、うん」

 

 そりゃあ何度か死にかけましたからね、とは言えなかった。もしも使うことを迫られるような状況にならなければ、こんなに早く上達することはなかっただろう。

 

「ーーカマキリ!?」

 

 ラキはそう叫ぶと道をそれて、丸焦げになって倒れている男の人に近寄る。その姿は痛々しく、息があるのが不思議なほど。

 

「ラキ…エネルには、勝てねェよ。ワイパーを止めてくれ」

 

 男は息も絶え絶えにそう告げた。ラキは唇を噛み締めると、立ち上がる。

 

「ソラ、悪いけど…ついてこれなかったら置いていくわ」

 

「うん、わかった」

 

 

 

 すごい勢いで進んでいくラキの後ろをついていく。それから少しして、遺跡が見えた。

 

「いた!」

 

 鉄の檻のようなものがドーム状に遺跡を囲っている。森から抜けるて、そこに行くと檻の中に怖い顔の男の人がいた。

 

「ワイパー!もうリジェクトを使うのはやめて!エネルには敵わない!!」

 

 ラキが叫ぶ。鉄格子の奥に、ゾロがいるのが見えた。

 

「ゾロ!!」

 

 彼の名前を呼べば、こちらに気づいて目を丸くする。けれどその瞳はすぐに私の後ろに向けられた。

 

「やめろ!やめてくれ!」

 

「逃げろソラっ!!」

 

 男の人とゾロが焦ったように叫ぶ。なんのことかわからずに、後ろを振り向いた。途端に背筋が凍る。

 

「呼んだかな」

 

 そこにいるのは、耳たぶの長い男だった。先ほどまで…ほんの一瞬前までそこにはいなかったはずだ。いつ?どこから?そんな疑問は、声にならなかった。

 

「エネル…」

 

 ラキは呆然として、エネルに向かって銃を撃つ。けれどそれは体を通り過ぎ、まるでダメージを与えない。エネルは私に視線を向け、首を傾げる。

 

「なんでお前はマントラがないんだ?まぁいい、消せば同じか」

 

 恐怖で体がすくんだ。ゾロの方を向く。

 

「ぞ、ろ…」

 

 届かない手を伸ばした。ゾロが鉄格子を掴み、私の名前を叫んだ。次の瞬間雷に撃たれたかのような衝撃に襲われ、意識がプツリと途絶えた。

 

 

 

”ーー、やめろっ…それを使えばお前は!!”

 

 

今にも死にそうな赤い髪の男が叫ぶ。その場にいる誰もがわかっていた、彼はもう助からないと。それほどまでに酷い傷をおっていた。

 

 

”いいよ、私は。ーーを見殺しにするくらいなら、死んだ方がマシ”

 

 

微笑むのは女。

 

 

”ーー!!”

 

 

 

 

「っ、はぁ!死ぬかと思った!!」

 

起き上がり、大きく肩で息をする。自分の頬に手をやれば、そこはなぜか濡れていた。ーー懐かしい夢を、見ていた気がする。それが何だったのか、よく思い出せないが。

 

「それよりみんなは…ゾロ!!チョッパー!!ロビン!!」

 

あたりを見回せばみんなが倒れていた。酷い怪我だ。特にゾロとチョッパーが、今にも死にそうだ。リュックの中から消毒液とガーゼを取り出す。一番ひどそうなゾロの怪我を消毒して、止血する。

 

「う、ぎぎ…重いっ!!」

 

酷い怪我をしている上体に包帯を巻こうと思ったのに、起き上がらない。

 

ゴーン、ゴーン、と鐘が鳴り響く音が聞こえた。

 

「鐘?」

 

「ぅ…」

 

「ゾロ!」

 

呻き声を上げたゾロの方に向き直る。ゾロはうっすらと目を開けると、こちらを見た。

 

「…ソラ?」

 

「よかった…生きてた」

 

ポロポロと涙を流す私に、ゾロはギョッとしたように目を丸くする。

 

「つか…この鐘…」

 

起き上がったゾロに抱きついた。いてェ、とか言っていたが知ったことか。

 

「バカバカ…ゾロ、バカ!!」

 

なんで死にかけてるの!?私より強いくせに、という言葉は声にならなかった。

 

「…あー、もう泣くなよ」

 

ぽんぽん、と頭を撫でられる。それはサンジとは違ってぎこちないけれど、温かいものだった。

 

「ぅわああああん」

 

生きている、ということの尊さを実感した。

 

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