Magical Girl Lyrical NANOHA StrikerS Lunatic   作:テラ吉

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はい、お久しぶりの方はお久しぶりです。
二次ファンからこちらに移ってきたテラ吉です。
これは合クレを再構成しています。


ONE

 昼の洒落たレストランの椅子に腰を掛け、目の前の料理に手を付けずしかめっ面で腕を組む男の姿があった。

 焼ける音と香ばしい香りを飛ばし、厚みのある肉料理は「早く食べてよ!」と訴えかけるがその訴えに男は耳を貸しはしない。

 それどころか店のサービスで置かれた水にも手を付けず、黙々とデートの待ち合わせで未だ来ない彼女を待つかのようにそこから動かない。

 店側にとっては何か気に食わない物でもあったのかと気が気ではなく、ハラハラと店員とバイトの全員が男のしかめっ面に事情を聞くに聞くことが出来ずただ遠巻きに見守る。

 そんな何とも言えないある意味険悪な雰囲気の中、店の扉が開いた合図を示す鐘がカラコロと鳴る。

 それは客が来た合図であり、近場にいたバイトAが険悪な雰囲気から抜け出れる喜びと共に最高の笑顔で客を迎え出た。

 

 

「いらっしゃいませ! 何名様でしょうか? お煙草は吸われますか?」

 

 

 在り来たりな接客マニュアルだが最高な笑顔が客を迎える。

 その在り来たりなマニュアルと最高な笑顔に客―――銀のサングラスを掛けた男はある方向に指を差し一言。

 

 

「あそこのと相席だ。だからNo smoking」

 

 

 そう言って指を差す方向はしかめっ面の男のいる席。

 バイトAは思わず苦虫を噛み潰した顔をするが現実は変わるわけもなく、男は気にした様子もなくバイトAを抜き去りしかめっ面の男の席に歩み寄る。

 周りでは薄情なバイト仲間たちがこちらを見た後にそそくさと逃げる姿が確認できた。

 

 

「時間ギリギリだろ?」

 

「一時間オーバーです」

 

「そうだったか?」

 

 

 しかめっ面の男はサングラスの男の軽薄な言葉に嘆息する。

 サングラスの男は悪びれた様子もなくウェイターを呼び止めるのに必死であり、その行動もまたしかめっ面の男が嘆息する原因となる。

 呼び止められたウェイターはにこやかに対応するが、早くこの空間から離れたいと言う感情がヒシヒシと伝わってきた。

 

 

「まったく、貴方は……管理局の人間としての自覚はないのですか……」

 

「ついこの前も違反切符を切られて言われたな」

 

「貴方と言う人は……!」

 

 

 目の前の男タクヤ・D(ディアーズ)・アルバトロスの話に、彼クロノ・ハラオウンは真剣に頭を抱えたくなった。

 

 

「いやー……バイクのタコメーターが壊れててな、法定速度二十キロオーバーだとよ。ただそれだけで財布の中身がごっそりと消えちまった」

 

 

 運ばれてきた厚切り肉を口いっぱいに頬張りながら、タクヤは困ったように笑う。

 それを見たクロノが、イイ気味だとばかりに口角を釣り上げて言った。

 

 

「少しは反省したらどうですか。駄目先輩」

 

「こいつは手厳しいね。エリート後輩は」

 

「事実ですから」

 

 

 やれやれとばかりにタクヤは肩を竦める。

 せっかくの休暇に男二人でレストラン、色気もないままに後輩に呼び出されたと思えばこれから説教でも始めそうな雰囲気だ。全くもって勘弁してほしい。こういう模範生みたいなのが提督と言う役職には相応しいかもしれないがどうしてこういうタイプは多少のルール違反も見過ごせないのだろうか。まぁ、違反切符やら遅刻してきた人間が相手の機嫌の悪いことをとやかく言うのもおかしい話だが。

 しかし、大人なクロノはグッと堪えて握られた拳をゆっくりと開く。

 

 

「まぁ、良いです……こうなることは最初からわかってましたから」

 

「違反切符か? それとも遅刻か?」

 

「両方だッ!」

 

 

 バンッ! と叩いた衝撃で僅かにテーブルに置かれた皿が宙に浮く。

 肉を頬張っていたタクヤも思わず敬語なしのクロノの迫力に椅子の前足が浮いた。

 「まったく!」と不機嫌そうにしながらもようやく置かれた料理にクロノは手を付ける。

 タクヤはデザートを顔を引き攣らせるウェイターに頼み、残りの料理を腹に収めながらクラナガンの通りに目をやる。

 休日だからかいつものスーツ姿で働き疲れた顔のサラリーマンや高いヒールを履いた厚化粧なOLもいない。

 ましてやいつもならばベンチにいるリストラされた連中もおらず、代わりに微笑ましい家族連れや甘ったるい恋心を持ったカップルばかり。

 そんな中、そこだけポツンと穴が空いたように陰気な雰囲気を纏った少年が目に付いた。親とはぐれでもしたのだろうか、彼は人の波に行ったり来たり揺られている。

 なんとも言えない、その寂しげな眼がタクヤの方を見た気がしたがタクヤは顔を逸らした。迷子は自分の管轄ではない、そう自分に言い聞かせるようにして。

 そうして再び見れば、少年の姿はなかった。否、すぐに見つかった。母親と父親らしき人物に両手を繋いでもらい、嬉しそうに笑う少年の姿が。

 

 

「―――新設の部隊の話は聞きましたか?」

 

 

 同じく微笑ましそうにしながら少年を見ていたクロノの話にタクヤは意識を切り替える。

 

 

「あぁ、こっちでも結構有名だ。名前は確か……時空管理局本局遺失物管理部―――機動六課だったか?」

 

「えぇ、その機動六課の目的はご存知ですか?」

 

「機動課なんだから目的はロストロギアの管理関係だろ?」

 

 

 さも当然と言わんばかりにアイスティーのストローに口を付け、一気に飲みきる。

 機動課と言えば、ロストロギアを管理するというその性質から危険な任務に着くことが多く、優秀な魔導師が数多く所属する、管理局の花形と言ってもいい部隊だ。

 そのタクヤの答えにクロノはそれだけではないと首を振る。

 

 

「ここ最近、レリックと呼ばれるロストロギアが度々管理局でも持ち上がっているのは知っていますよね?」

 

「アレだろ? 魔力注いだ瞬間にWham!(ドカン!) ってなる奴だろ?」

 

 

 両手を広げ、爆発する仕草と大きく擬音を発声するタクヤに他にいたレストランの客から注目を浴びる。

 間違ってはいない知識だが、恥ずかしいからその仕草を止めてくれと冷ややかな目でタクヤを睨む。

 睨まれたタクヤは気にした様子もなく、運ばれてきた食後のデザートの苺パフェを今度は口いっぱいに幸せそうに頬張る。

 

 

「その管轄は勿論機動課なんですが、現在5つある機動課で完璧に対応仕切れているかと言えば、必ずしもそうは言い切れないんです」

 

「だろうな。人材不足に本局と地上本部の仲違い、理由を上げればまだまだキリがないな」

 

「で、そうして新たにフットワークの軽い第6の部隊を作ろうということになって出来たのが、極めて独立性の高い―――機動六課です」

 

「……独立性? こいつは驚いた、管理局に独立性だなんて言葉があったとはね」

 

 

 シニカルに笑いながらタクヤは吐き捨てるように皮肉る。

 時空管理局とは巨大な組織であって、そんじょそこらの好き勝手やっていいという裁量権が与えられている安っぽい組織とは訳が違う。組織というものの特性上、力を持つ人間がいなければならないのだ。

 特にそれが色濃いのが時空管理局だ。

 そんな組織で独立性? 笑ってしまうに決まっているだろう。

 

 

「で? せっかくのHolidayにそんな独立性のお高い部隊の話を引っ張り出して何を頼みたいんだ?」

 

「気付いてましたか。でしたら話は早いですね―――機動六課に貴方の力をお借りしたいのですが」

 

「Rejection(却下)」

 

 

 クロノの提案をバッサリと切り捨て、自身の首を親指で掻っ切るサムダウンをする。

 寝言は寝て言え、と言わんばかりにタクヤは欠伸をしながら最初から出されていたお冷に手を伸ばす。

 自分に特に関係なく、得もなく、むしろ地上本部から睨まれていると自分の部隊でそう言う噂が流れている場所に誰が喜んでいくか。損して得をとれ、だなんて言葉はただの妄言だ。

 速攻で断られたクロノはわかりきっていた言わんばかりに嘆息する。

 

 

「俺が抜ければ誰があの暴君(タイラント)の相手をするんだ。それに一介の二等空尉に何ができる?」

 

「言い方を間違えましたね」

 

「……Why?」

 

 

 やれやれと首を振り、タクヤの分も書かれた伝票を手に取ったクロノは席を立つ。

 元からこの話はクロノが奢るという話になっていた為にそこは特に気にはならない。しかし、言い方を間違えたとは何か? なんとなくだが嫌な予感がタクヤの頭を駆け抜ける。

 そしてそれは次のクロノの一言により現実となる。

 

 

「―――それなら心配はありません。422部隊にはすでに異動願いを出していますので、正確には“力をお借りします”」

 

 

 思いもかけないその言葉に、タクヤは口付けていたお冷が気管に入りむせてしまう。この男は今なんと言った。聞き間違いでないなら、信じられないようなことをたった今口にしてくれた。

 らしくもなく呆けるタクヤにクロノは何気ない調子で言葉を続ける。

 

 

「部隊長が普通に話が通じる方で助かりましたよ。第97管理外世界の日本と呼ばれる国の日本酒の一升瓶を手土産に持っていけば、二つ返事で異動を貰えました」

 

「……Just a moment(ちょっと待て)」

 

「ああそうでした。貴方は聖王教会にも席を置いていましたから、そちらの方にも異動を貰いました。騎士カリムの笑顔と二つ返事で」

 

「……妹もかよ」

 

 

 ハッハッハッ、とクロノはわざとらしい笑い声をひとしきり上げると、深々と頭を下げた。

 

 

「本当はきちんと説得したかったのですが……。時間が足りないために、やむを得ずこういう形を取らせてもらいました。申し訳ありません」

 

「Go to the hell!(地獄へ落ちろ!)」

 

 

 サムダウンしながら吐き捨てられた言葉に、クロノは顔を上げ爽やかな笑みで応えた。

 

 

「で、勝手にっ! “出向”ではなくっ! “異動”でっ! 手続きが取れたのかっ!?」

 

「問題なく、簡単に、一時間もかからずに、です」

 

「That sucks!!(最悪だ!!)」

 

 

 頭を抱えるタクヤに、クロノは実に愉快そうに楽しげにタクヤを見る。

 

 

「どうやら先輩がいなくても422部隊は起動するみたいですね」

 

 

 タクヤは聖王教会の方は仕方がないとして、一升瓶で自分を売った安上がりで薄情な上司に信じていない神の裁きが下ることを祈った。

 本人の了承も得ずに勝手に異動扱い、これはひょっとしなくても暇を出された、つまりはクビにされたと思うべきなのか。

 

 

「では機動六課に行ってもらいますね?」

 

「Fuck You!(クソッたれ!)」

 

 

 最後の悪あがきと言わんばかりにタクヤは中指を立てた。




また後でこれは書き直すやもしれませんので悪しからず。
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