Magical Girl Lyrical NANOHA StrikerS Lunatic 作:テラ吉
タクヤは訓練場が廃墟へと景色を変えたのを確認し、FW陣へと支持を出しているなのはに視線を向ける。
廃墟へと足を進めるのはFW陣であり、彼女たちがこれから模擬戦として戦う相手は教導官としては些か同情せざる終えない。
情報も何も与えられず行き成りに戦場に放り込まれ、しかも相手はAMF持ちであるポークピッツの形をした機械兵器。
俺ならストライキするな、と考えつつ宙に浮かぶパネルを叩いて魔法陣を展開する。そこから現れたのはポークピッツ―――ガジェット8体。
「ガジェットの能力はどうする? 新人で初対面ってことを考慮すれば能力は下げるべきだろ?」
「いえ、ここは高めで動作レベルA、攻撃精度Bでいきましょう」
ガジェット8体を動作レベルA、攻撃精度Bで初対面で情報も何も与えられていない新人たちと戦わせる。
そう聞こえたような気がしたタクヤはパネルを叩いていた手を止め、なのはを見ながら自分の額を人差し指で叩いた。
「……気のせいだろうか? なのは、俺の耳が確かならばあの青臭い若者たちに実戦さながらのポークピッツをぶつけると聞こえた気がしたんだが?」
「いえ、タクヤさんの言う通りこのレベルのガジェットをあの子たちにぶつけます」
真顔で言われ、額をトントンと叩いていた指はいつしか止まっている。
果たしてこの少女は何をトチ狂って新人たちに実戦さながらのことをさせるのだろうか、と普通ならば思うやもしれない。
だが生憎とタクヤはそんなに心優しい教導官を目指す気なんてこれっぽっちもない。
口角を吊り上げ、素早くコンソールを撃ち込み、動作レベルをAに攻撃精度をBに上げる。
「じゃあ、そろそろ始めようか。ルールをお浚いするね。ミッション目的、逃走するターゲットの捕獲、又は破壊。15分以内でだよ」
『『『『はい!』』』』
簡単に言ってくれるな、とガジェットの性能を知るタクヤは何も知らないFW陣を哀れみ嗤う。
意気込むのは良い事であるが、果たしてこのポークピッツとの戦いを終えた後の彼女たちに今のような元気はあるのだろうか?
神様でもなく、聖王様でもないタクヤに先のことなどわかる筈もなく、ただ彼は彼女たちのプライドが折れないことを祈りつつ、8:2の確率を予想する。
新人たちがミッションを攻略出来ない確率が8で、攻略出来る確率が2というシビアな数値で。
「―――それじゃあ、ミッションスタート!!」
声高々にスタートの合図をするなのはとは裏腹にタクヤは嘆息しながらパネルを叩いた。
「……恨んでくれるなよ?」
開始早々にケツを見せて逃げ出すガジェットを追いかける新人たちを見ながら、俺には関係ないと笑いながら。
「―――I was blown away.(おったまげた)」
初の模擬戦訓練の15分はすぐに終わった。
この男の言葉から察するにFW陣のミッションは成功―――ではなかった。
やはりと言うべきか、ターゲットを全破壊をするのは不可能であった。天秤は8の数字がある方に傾いたのだ。
ミッションは失敗すれば、幾ら成果を残したとしても失敗にしかならない―――けれどもこれは褒めるべきではないのだろうか?
今彼の視界に入るは破壊できなかったホログラフのポークピッツの残党、半壊しかけの二機。
だからタクヤは素直に驚き、ヘトヘトで座り込むFW陣を見て賞賛の口笛を鳴らす。
「情報なしで実戦同様の強さのガジェットを6機破壊し、尚且つ2機は半壊……想像以上ですね」
なのはの分析する声には僅かばかり感嘆の色を帯びており、その顔は教導官さながらの“これからが楽しみで仕方がない”という顔だった。
対してタクヤの顔はまた犬歯を剥き出しにした獰猛な笑みである。ただし、その目に浮かぶ文字は“これからが楽しみで仕方がない”というなのはと同じ物であった。
「次の訓練は、」
「もう少し難易度を上げてみよう、かな? Good あいつらは地獄を見るだろうな」
「地獄を見れば見るほど現場は楽になりますからね」
「楽になりすぎて気が抜けないことを祈るよ」
「それはあの子たちの気の持ち様ですね。さて、10分の小休憩を挟んだら―――タクヤさんの模擬戦でも見てみようか?」
『『『『はい!』』』』
「………Why?」
彼女たちのこれからの訓練のことを考えていた為に、何を言われたのかを把握するまでに数秒掛かった。
「―――来い、ディアーズ」
そこらの男よりも漢らしい台詞を吐く、良い女であるシグナムは生足が覗くバリアジャケットを装着し愛剣レヴァンテインを構えながらタクヤを見据える。太陽の光に照らされた銀色の刃先は反射光を放ち、主の獲物は貴様だと言わんばかりにその光をタクヤに向ける。
その眩しい光を目に受けたタクヤは目を細め、どうした物かと思案しつつ困ったように頭を掻く。
対照的にシグナムの目は鷹、というかもう確実に死合いしか望まないという危ない物である。
とてもではないがこの組まれたカードには危険性しか感じられず、その元凶である白い悪魔に一瞥をくれるが彼女は笑って流すだけだった。
「どうした? さっさとセットアップをしろ」
「焦んなよ。これからたっぷりダンスの時間だ―――Set Up」
セットアップ。そう短く告げた次の瞬間、左腕の髑髏の腕輪の目が紅く光り、足下に黒色の魔法陣が現れた。それは、歯車のようにクルクルと回転すると、一際強い光を放ってやがて弾け飛ぶ。
その間、僅か一秒にもならなかったであろう。
タクヤが着ていた真新しい制服はいつの間にか、黒を基調とし左胸に十字架を始めとする所々に金刺繍が施されたロングコートへとその姿を変えていた。
そして両手には白と黒の大型の二丁拳銃があり、タクヤはそれを玩具でも扱うかのようにトリガーガードに指を掛けると、そこを支点に勢い良く回転させた。華麗に弧を描く銃身はタクヤの手から吹き飛ぶことはなく、その回転を維持しつつタクヤは腕を交差してシグナムに銃口を向けて構えた―――その瞬間。
《―――Wow! FoFoFooooooooooooo!!!》
二丁の拳銃が吼えた。物凄い音量が訓練場に響き、タクヤのパフォーマンスに魅入っていた者たち全員が思わず耳を塞ぐ。
持ち主であるタクヤは僅かばかり眉間に皺を寄せると、未だに犬のように吠えるその二丁拳銃を―――
ガィン! ガィン! ガィン!
三回ほど二丁の銃身、グリップ、撃鉄の部分を火花が出る勢いで互いに衝突させた。
「Give it a rest(静かにしろ) 今すぐ模擬戦を始めるんだ、喋るなら後でも構わないだろ―――オルフェイス」
《Sory Buddy! 目標は………ジーザス! 騎士か、久々の騎士様かぁ!? FoFoFo》
「静かにしろって言ったろうがッ!!」
二丁拳銃―――オルフェイスのテンションと口喧しさに再度衝突させる姿はコント以外の何物でもない。
シグナムは怪訝な表情を隠す事無く、昔と変わらぬことをする一人と一機に侮蔑を僅かに篭めた視線を刺した。
視線に気付いたタクヤは臆することも反省することもなく、ただ笑いながら肩を竦めるだけ。なかなかイカすだろ? さも、そう言わんばかりの顔にシグナムは苛立ちを感じた。
「そのやり取りは武装隊で見飽きた物だ。いい加減に構えろ。さもなければ死ぬぞ?」
「おっと、そいつはごめんだな。まだ機動六課に来てピザのデリバリーを頼んじゃいない。あぁ、それとも此処の食堂にピザがあったか? ならそっちを頼もうか」
「もういい、黙れ。お前の減らず口とその態度―――今度こそ叩き直してくれるッ!!」
開始の合図を待たず、先に飛び出したのは苛立ちを抑えきれないシグナムだった。
魔力を用いた高速の移動で斬りかかるが、タクヤは銃を剣の腹に擦り合わせるかのようにぶつけて軌道を逸らす。逸らされた剣撃は地面を抉るもシグナムは即座に逆手に持ち替え、下から斬り上げタクヤに襲い掛かる。
それをタクヤは銃で受け止めるが、ぶつかった瞬間に金属同士の火花が飛び散り、オルフェイスから苦情が飛ぶ。
《Hey Buddy! 熱い、熱いぞ! 華奢でデリケートな俺様のボディが溶けちまうじゃねぇか!》
「あぁ、そうかい! 後でペイントでも修理なりしてやる。だから今はzip your lip!(口にチャックしてろ!)」
Fuck! と口汚く己の相棒に吐き捨てシグナムを見れば、彼女は口元を歪ませ暗い笑みを魅せていた。
楽しそうだ、実に楽しそうだ……俺は全然楽しくないんだがな! とタクヤはシニカルな笑みを浮かべる顔とは裏腹に心の中で文句を吐く。
しかし、ここで面と文句を言ったとしても彼女は聞いてくれはしないし、武器を収めるだなんて高等な手段を取ってくれるわけもない。
―――だったらやってやろうではないか
「シグナム、さっさと終わらせるぞ」
「ようやくやる気になったか、ディアーズ」
嬉しそうに更に口元を歪ませるシグナムに何も答えず、タクヤは彼女の剣を弾き上げ距離を取る。距離を取ると同時に引き金を引いて牽制の魔力弾を数発撃ち出すが、シグナムはそうはさせまいと距離を詰めてくる。
速さに置いてはシグナムに分があるのか、魔力弾の間を縫うように潜り抜けタクヤへと肉薄し三度剣を奮う。
今度はそれを受け止めることはせず、身体を右に傾けることで紙一重で避け、代わりに彼女の額へと漆黒の銃口を突き付ける。
「Chill it,Pal?(少しは落ち着けよ?)」
「お前を前にしてか? それは出来ない話だ。身体がお前を求めてしまう」
「女としてか?」
「いや、騎士として、だッ!」
「That’s a shame.(そいつは残念だ)」
軽口の応酬後、心臓を狙って突き出す烈火の将の愛剣は間一髪のところで純白の銃身に阻止される。
振られた無念さを微塵も見せず、額に突き付けた漆黒の引き金を間髪なく引くも、それよりも早くシグナムの手が銃口をずらす。的から強制的にずらされた魔力弾は彼女のこめかみ擦れ擦れを通り過ぎ、あらぬ方向へと飛んで行く。
「やはりお前との模擬戦が一番心躍る物だな!」
「Ha! 騎士様からそう言われるとは光栄だ!」
醜悪な獣染みた笑みを浮かべ、再度肉薄。金属のぶつかり合う甲高い音を置き去りに、二人の武器は小さな花火を散らす。
互いの視線の先に映る相手は好敵手と呼ぶに相応しい存在。二人に言葉は要らず、代わりに聞こえるのは甲高い金属のぶつかり合う音のみ。
二人は笑みを止められなかった。幾ら時間が経とうと、幾らぶつかり合おうと、身体は軽く、集中力は最大に、そして燃え上がる闘志。
一際甲高い音が鳴ったと同時に、二人の顔はキスをするに十分な距離にまで近づける。カチカチと二人の得物は振るえ、異色な鍔ぜり合いを見せるも後方に跳躍して二人は距離を取る。
「早めに決着を付けて新人たちの観戦としゃれ込みたいね。このままじゃ興奮しすぎて、いつシグナムが怪我するかわからないな」
「馬鹿者。私の方がお前の首を刎ねてしまいそうなんだぞ」
「へぇ? だったら次の一発で決着を付けるか?」
「悪くない提案だ―――もちろん勝つのは私だがな」
シグナムのその挑発が最後の言葉だった。二人は自身の持つ最高の技を出すべく、集中力を高め、笑みを浮かべる。
タクヤは二丁の銃口に魔力を込め、シグナムは愛剣に魔力を込める。二人は奇しくも炎熱変換を持つ者同士だが色が違う。片や黒で片や赤。
色だけを言えば黒い炎というのは禍々しく見えるのかもしれないが、赤の炎とてその禍々しさに負けていない。轟々と燃え盛るそれは煉獄の焔だったか。
シグナムは肌が焦げる感覚を覚え、タクヤは鼓動が速まり、両腕が疼いたのを感じた。
烈火の将は深呼吸をし、最大の技を繰り出そうと、全身に全力を籠めた。
「紫電ッ―――」
「Check―――」
シグナムはタクヤへ翔けた。音を置き去りにし、残像すら残さないそのスピード。もはや地を蹴るのではなく、宙を翔けた。
タクヤはシグナムへ引いた。近づかせないように、すぐに終わるようにその二丁の引き金を同時に引いた。
「――一閃ッ!!」
「―――Mate!!」
燃え盛る紅蓮の刃が切り裂くシグナムの技。暗い禍々しさを持つ黒の焔が穿つタクヤの技。
互いの技は寸分なく相手に当たるのに十分だった。刃が切り付け、弾が穿つ。その次の瞬間。
―――大きな爆音が訓練場に轟いた。
FW陣の訓練省きました。彼女たちとの正式な交流は後々書いていくつもりです。
あと中途半端にきりまして申し訳ありません。