【テスト】ダンジョンで念能力を使う転生者は間違っているだろうか 作:にくきゅうΩ
ベルと別れたユージだったが、地上に出て早々に早くも後悔し始めていた。
やはり普通に事情を説明してついてきて貰うべきだったのでは? という考えが
頭を過ぎる。だがそのまま真実を伝えた所で信じるかと言われれば微妙だ。
実際自分の身で体験しなければそんな話を他人に聞かされた所で、少なくとも
ユージは絶対信じなかったと断言できる。
ユージのいる中央広場には幸いにもオラリオの観光客用の簡易地図があり、主要な
建物の位置だけはどうにかわかる。
金無し、職無し、宿無しの三無しの現状をなんとかしようと
情報を集めようとしたが、生憎今は夜で人通りも少ない。
酒場位はまだ空いてるだろうが、金が無い現状で店に入るのはいかにもマズい。
ギルドは24時間営業なのか分からないので明日の朝にでも向かうとして、治安状況も
分からないこの街で、野宿するという選択肢はユージもなるべく避けたい所ではあった。
(ひとまず西側のメインストリートへ向かって休める場所を探そう、駄目なら
野宿を検討しなきゃな……)
ユージはひとまず、今日の宿を求めて歩き出した。
●
「ベル君、どこに行ったんだ君は……」
バイト帰りのヘスティアは、深夜を回ってもまだ帰ってこないベルを心配し、近辺を
うろついていた。
そんな時、丁度剣を背負った青い衣装の少年が、ホームの辺りをキョロキョロ見回している。
ベルの事も心配だが、彼の様子が気になったヘスティアは挙動不審な金髪の少年に声を掛けた。
「やあ君、何か探してるのかい?」
「わっひゃいっ……!!」
突然背後から声を掛けられ、ユージは情けない奇声を上げてしまう。
後ろを振り向くと、黒い髪のツインテールで青い紐を付けたロリ巨乳がいた。
見た目は幼い少女に見えるが、彼はその身体から発する神威でただの少女では無いと察する。
「ボクはヘスティア、ここのファミリアの主神をやってる、教会にお祈りに来たのかい?」
ヘスティアは目の前の少年にそう問いかけた。
「僕はユージ・ルーリッドって言います。実はお金持って無くて、この教会で
一晩休ませて貰おうかなと思ってたんですが」
「お金が無いってのは辛いよね……一泊位なら構わないよ。お茶ぐらいは出せるから
良ければ中で君の話を聞かせてくれないかい?」
ユージは人が住んでるとは思えない程に古いこの廃教会の家主がヘスティアである事に
驚くが、良い機会なので、この際色々気になっている事をヘスティアに聞いてみる事にした。
●
「別の場所に居た筈なのに、気付いたらダンジョンに飛ばされた!!
しかも恩恵を受けずにモンスターを倒しただって! よく生き残れたね!?」
「幸いにも強力な武器があったのでなんとかなりましたけど、丸腰だったら
多分ヤバかったですね……」
ヘスティアに謎の存在の件を伏せながら、【
ダンジョンに飛ばされたと話すと、非常に驚かれた。
恩恵とは神が人間に与えるもので、経験を重ねる事により【
効率良く鍛えて成長させ、人間の力を引き出す事が出来るというものである。
これにより人間はモンスターを相手に戦う事が出来るが、恩恵を受けないと
普通は最弱のモンスターであるゴブリンにすら苦戦するらしい。
「へえ、恩恵って凄いんですね……所で怪物を倒した時に落とすこの石は何ですか?」
この石について聞いてみる。
「これはギルドで換金してもらえるモンスターの魔石だよ、ボクの眷属がダンジョンから
普段持って帰る魔石よりも少し大きい気がするんだけど……君は何階に
飛ばされたんだい?」
「いや、早く外に出なくちゃって思ってたから良く覚えて無いんですけど、確か赤くて
デカい蟻が何匹が出て来ましたよ。
石は何となく拾っといた方が良いって思ったから拾ったんですけど……
この石ギルドで換金してくれるんですね。回収せずに何個か放棄して来ちゃいました」
魔石を換金出来ることについて、ユージは本当に知らなかったので
いくつか回収しなかったのは不思議でもないが、恐らく7階以降から出現するであろう
モンスターを倒したと聞き流石にヘスティアも驚きの表情を浮かべる。
未だに帰って来ないベルも心配だが、この世界の常識について
何も知らないユージをそのまま放置しておけば大惨事になる予感が
ひしひしと伝わってくる。
それに、彼が倒したという赤くてデカい蟻とは、確か冒険者の間で
『新米殺し』と呼ばれるキラーアントではないだろうか?
神友のタケミカヅチから、自分の所の眷属はそのモンスターに仲間を呼ばれて
苦戦したと昔聞いた事がある。
特に、恩恵を受けずに倒したという事実が他に広まるのは色々危険だ。
「ユージ君、ボクが説明出来る範囲でこの世界についての常識を教えてあげるよ、だから
恩恵を受けずにダンジョンのモンスターを倒したという話は他では絶対にしない方が良い」
ヘスティアは真剣な表情でそう告げる。
地上にいる神々はこの世界に降りた時点で一部を除き、神の持つ力の使用を
禁じられ、並の人間と同じ能力になっているらしい。
神の力も使わず、身体能力も人間と同じならこの世界の神様達は
普段の生活をどうしてるのか気になったので聞いてみると、基本的には下界の人間に
恩恵を与えて自らの眷属とする代わりに、彼らが稼いだ収入の一部でファミリアを運営して
生活の糧を得ている。
オラリオには、冒険者系、商業系、製作系、医療系、農業系など
各種のファミリアが存在し、大手は自分の眷属が稼いだ収入で生活できるが、弱小の
ファミリアは神自身が働いて生活費を稼いでいるのだ。
だからもしその事が広まって下手に目立てば、暇を持て余した他の神々が
自分のファミリアに引き入れようと無茶な勧誘に曝される恐れがある上に、神は
人間の嘘を見破れるというので、質問された時にうまく話さないと
隠しておきたい秘密まで暴かれるだろう。
(それは不味いな……特に念能力の詳細については知られる訳にはいかない)
修行次第では誰にでも習得可能であるが故に、知られれば悪用される危険もある。
だからこそユージは可能な限り念能力の事を他人に教えないと決めていた。
(にしても神様も金には苦労してるのか、なんだか切ないなぁ……)
「ボクにも眷属が一人居るんだけどさ、この時間になっても帰ってこないから心配でね……
探しに行こうと思って外に出たら丁度ユージ君がそこに居たって訳さ」
既に時間は深夜を回っている。自分の唯一の眷属が、こんな時間になっても帰って
来ないというのは心配して当然だろう。
「あー、話してたらまた心配になってきたよ、もう一回探しに行こうかな……」
そこで悩み出したヘスティアを見て、ユージは提案する。
「良ければ僕が代わりに探しに行きます。そして、もし見つけたら
僕を貴女のファミリアに入れて下さい」
「待ってくれ、別に見つからなくても君の入団は拒みはしないけど……本当にボクの所で
良いのかい? 言っちゃあ悪いけどウチのファミリアは零細だし、ホームだって
見ての通りボロボロで……」
「ヘスティア様にはこの世界について色々教わった恩もありますし、ホームが古いとか
零細だとか僕はあまり気にしませんよ」
彼の言葉に嘘が入っていないのは、ユージが本心で答えているからである。
「ありがとうユージ君、ヘスティアファミリアは君を歓迎するよ」
入団の許可を得たユージだが、正式に入る前にまずやるべき事が残っている。
「ヘスティア様、恩恵を受ける前に僕の先輩になる人を探してきますので
特徴を教えていただけますか?」
「でももう遅いし、やっぱりボクがもう一度探しに行った方が……」
再び自分で探しに行こうとするヘスティアをどうにか説得し、自分の先輩にあたる
もう一人の眷属の特徴を聞く。
「歳が14くらいの、白髪で赤い眼をした子なんだけど……」
その特徴を持つ人物が、ユージの脳内検索でピンポイントにヒットする。
「あの……もしかしてその人の名前、ベル・クラネルって名前じゃ……」
その時、バンッ! という大きな音と共に勢いよく扉が開く、目の前にいるのは
ヘスティアが良く知り、ユージが先程ダンジョンで会った人物
「「ベル君!?」」
「か、神様……それに、ユージさんが何で此処に……!?」
冒険者をやるならその内何処かで会うだろうと思っていたのだが、どうやら
彼との再会は随分と早かったようである。
ベル君が勢い良く開けたドアに顔をぶつけるヘスティアはいなかった
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