やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。短編集 作:うみがめ。
窓から部屋の明かりが溢れている。実家にいるときは大体小町が家にいたから家の電気がついているのが当たり前だったけど一人暮らしを始めてからは暗い家に帰っていたので明るいと、外は寒いが家の周りにはどこか温かさを感じる。そんな事を思いながら、鍵を開け玄関を開ける。玄関を開けてすぐ女性ものの靴が目に入る。
……前はこれがあるだけで狼狽えたもんだったなぁ。
そんな過去を思い出しつつ部屋に行くと、中からはスパイスの効いた良い匂いが漂ってくる。
「おかえりー」
「ただいまです」
上下スウェットと楽な格好をしてソファーで横になっている陽乃さんが、雪ノ下陽乃。が出迎えてくれる。
俺は学校を卒業したのち、大学進学するとともに一人暮らしをするようになった。その俺が暮らす、すぐ側で陽乃さんが一人暮らしをしていたらしく、それから陽乃さんが俺の家に度々訪れるようになった。そしてあーだこーだそーだ、土砂降りの雨の中傘をささず走る俺がいて陽乃さんがこのように居つくようになってしまった。うん、何言ってるのかしら。
「比企谷くーん今日はカレーだよ」
「あ、はい」
このいい匂いはやっぱりカレーだったか。
「もうできてるから手洗ってきてー」
促され俺は洗面所に行く。
うん、風邪予防大事。うがい、手洗いは大事。
うがいと手洗いを済ませ、台所に行くと陽乃さんがエプロンをつけカレーを温めてる陽乃さんの後ろ姿が目に入る。鼻唄を奏でながらご機嫌な感じで鍋をかき混ぜている。
……あ。もう見慣れた光景だけど陽乃さんがエプロンをつけて俺の部屋の台所に立ってるってすごい光景だなぁ。
そんな感傷に浸りながら陽乃さんを眺めていると、
「ん?なに?」
目線に気づいたのかお玉を片手に振り返る。
「あ、いえなんでもないです」
「そう?じゃあ、テーブル拭いてから野菜とか運んじゃって。カレーはもう少し温めるから」
「はい」
俺は言われた通りに動く、陽乃さんは勝手していっている場所のように台所でテキパキとカレーをよそう。それを俺はテーブルに運び二人揃って食卓に着く。
「いただきます」
「召しあがれ」
口の中にはスパイスの効いた程よい辛さのカレーが広がる。程よい辛さのルーは物凄く美味しく、俺は無言で口にカレーを運ぶ。
その光景を陽乃さんは嬉しそうに眺める。
「なんですか?」
「んー、なんでもないよー」
その後もチラチラと俺の方を見、その度に嬉しそうに頰を緩める。
そんな陽乃さんに気を取られつつも、美味しくあっという間に食べ終わる。そして、少ししてから陽乃さんも食べ終わる。
「ごちそうさまです」
「お粗末様です」
「美味しかったです」
「良かった。いや〜比企谷くんは本当に美味しそうに食べてくれるからわたしも作り甲斐があるよ」
「そうですか?」
「うん。さっきも比企谷くんの食べっぷりみてたらついつい嬉しくなっちゃったよ」
ほーん、そうなのか。
俺は立ち上がり、食器を洗いに行く。最近は陽乃さんが料理を作り、俺が後片付けをするという形が出来上がっている。
そして、風呂に入ったりなんなりしてたら時計の針は両方てっぺんを指していた。
二人寄り添って本を読んでいると、「あっ」と陽乃さんはなにか思い出したように声をあげる。
「どうしたんですか?」
「いやー、実は友達に映画を借りてたのに忘れてた」
「今から見ます?」
「今から見るのはいいんだけど、ホラーだから今見るのはちょっと、ね?」
「あー、ホラー苦手でしたね」
「でも明日返すって言っちゃったしなー」
少し陽乃さんは頭を悩ませたのち、「あっ」とまたなにか思いついたのか、いそいそと鞄からその映画を取り出して、DVDプレイヤーに入れ流そうとする。
「比企谷くんってホラー大丈夫だったよね?」
「別に俺は平気ですね。1番怖いのは人間だって思ってるようなやつですから」
「あはは……、比企谷くんらしいね。まっ!平気じゃなきゃ困るんだけどねっ」
そう言って陽乃さんは映画を流す。そして、布団を持ってきて俺の背中に被せてから、ポスンと俺の前面の方に背中をよっかけてくる。
俺はその一連の動作をまるで普段から行われてるかのように動いてたのでされるがままに受け入れる。俺は服越しとはいえ陽乃さんの柔らかさを身体全面に感じる。
それを感じていると、今度は布団を陽乃さんの前の方に持ってくる。つまり、俺の前には陽乃さんがいてそれを布団で包んで丸くなっている状態になっている。
「なにしてるんですか?これ」
「んー?これならわたしは比企谷くんのそばにいて怖くない?的な。ほらほら始まってるよ」
俺はホラー映画なんかよりも、ものすごい至近距離に陽乃さんの顔があるのでそこにばっかり目が行ってしまう。
……陽乃さんからはいい匂いが。これはやばい。ドキドキが止まらない。
「比企谷くん、心臓の鼓動すごいね。バクンバクン脈打ってるよ」
「……そりゃ、陽乃さんがこんなに近くにいたらこうなりますよ」
「そっかー、まぁこの映画が終わるまで我慢してねー」
……我慢してねって……。これはむしろ我慢とかじゃなくてご褒美だろ。
そんな感じで俺は映画の内容には全く目がいかず、ほけーと陽乃さんのことばかり見てるまま話は進んでいく。
すると、
「キャッ!」
と陽乃さんが声を荒たげて俺の首に腕を回し、テレビの画面を見ないように顔を俺の胸に押し付けピタッと身体全面を密着させてくる。
「うぉっ」
突然の陽乃さんの行動で俺は堪らず変な声が出る。
……ちょっ。
「ご、ごめん。いきなり怖いシーンがあったから……」
「はぁ……」
その後も陽乃さんは怖い場面がことあるごとに俺の同様の行為をしたりしながら時が流れていく。最後の方は陽乃さんは画面を一切見ることなく、まるで小さい子供のように俺の体をホールドして俺の体に顔を埋めたまま動かない。
すると、今度は「スースー」といった息遣いが聞こえてくる。
その音の方に目を向けると、陽乃さんが儚さのある心地よさそうな寝顔をして寝ていた。
……寝てるよ。なんか起こすのがもったいないくらいの寝顔だなぁ。しょうがない。
そして、俺は自分のベットに陽乃さんを寝かそうと抱き抱える。
普段はご飯を食べてから少し話してから陽乃さんは自分の家に帰るのだが、今日のように遅くなったりすると遅くに帰るのも危ないということで俺の家にそのまま泊まることが多々ある。
まぁ、決して二人寄り添って寝るってことはなくベットは陽乃さんに譲り俺は床にござ寝だけども。
だから、俺はベットに陽乃さんだけを寝かそうとすると寝てたはずの、陽乃さんはスッとまた首に手を回し俺を抱き抱える。
「ねぇ、比企谷くん。……一緒に寝よ」
と、耳を擽るような色っぽい声で囁く。