やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。短編集 作:うみがめ。
奉仕部にて。
日差しも強くなり、夏に近づいてきたある日。
俺はラノベを読み、雪ノ下はブックカバーのついた本を読み、今日もドアをノックされるのを待っている。由比ヶ浜は葉山グループとの用があるということでいない。
俺と雪ノ下しかいない時には奉仕部には普段は心地の良い沈黙が流れている筈だか今日はさっきから雪ノ下がこっちをチラチラと見てきて気まずい空気が流れている。
「……なにか用か?」
「あ、いえ……用ってわけでは……」
雪ノ下はちょっと狼狽したように言い、俺から目をそらす。
目を逸らしたが少し経つとまたチラチラと見てくる。
チラチラ見られるとこっちもなにかあるのではないかとモヤモヤしてしまう。あれだよ、ぼっちってね人の目線に敏感なんだよ。チラチラ見られ、小声で会話なんかされたら悪口を言われてるんじゃないかってすごい気になっちゃうんだよ。
「なにかあるなら言ってくれ」
「……えっと、比企谷くん壁ドンって知っているかしら?」
壁ドン?
あれだろ、2年くらい前に女子の間でやたらと流行ったやつだろ。
男が女を壁まで追い詰めて手を壁にドンとつくやつだろ。壁ドンって元ネタヤンキー漫画の不良が相手を引き止める時のやつなのか
な。
それをなに今更。
「まぁ、知っているな」
「……そう。えっと……比企谷くんは壁ドンされたいって思ったりするのかしら?」
されたい?するじゃなくて?
いやまぁ、一回はしてみたいな。する相手がいないけど。
「……まぁ、そうだな」
そう言うと、雪ノ下はほんのりと頬を赤く染めて。
「……そう」
そして、雪ノ下は本を置いて立ち上がり、俺の前にやってくる。
俺の前に立つと、雪ノ下は今度は耳までを真っ赤にする。
……?一体何されるんだよ?
なんか顔を赤くする雪ノ下怖いよ。
「……少しこっちを体ごと向いてくれるかしら」
「……はぁ」
そう言われ、俺は雪ノ下の方に体ごと向ける。
そして、雪ノ下は深く深呼吸をしたと思ったら決心したような顔をする。
「……比企谷くん、いくわね」
そして、雪ノ下はそっと俺の頭をつかむ。そのまま、雪ノ下はゆっくりと俺の頭を自分の胸に押しつける。
…………は?
は?えっ?ちょっ。何してるんですか?雪ノ下さん!か、顔が胸に……。
…………貧乳だけどやっぱり女の子だからか少しだけ膨らみが俺の顔を伝わってきます。
って違う。えっ?突然何してるの?自分の胸が貧乳だからってこれが壁ドン?
俺はあまりの出来事に動揺してしまう。
顔を雪ノ下から離れようとしても雪ノ下が俺の頭をがっちりとホールド胸に押し付けているので離れることができない。でも俺はなんとか雪ノ下から離れ。
「ちょっ、雪ノ下何してるの?」
「壁ドンなのだけど……」
「…………は?」
俺は動揺しつつも聞くと雪ノ下は顔を真っ赤に染めたまま、当たり前のように壁ドンと答える。
「は?かべどん……?」
「……姉さんに『雪乃ちゃん、壁ドンってのはね貧乳の人が自分の胸に相手の顔を押しつけることだよ!雪乃ちゃんも比企谷くんにしてみなよ!比企谷くんもイチコロだよ!』って言われたのだけど……」
……この子騙されてるよ。
陽乃さん何教えてるの?信じちゃってますよおたくの妹さんは姉の言うこと。
……いや、まぁ。なんかありがとうございます。陽乃さん!
いや、でもしっかりと間違っているって伝えてあげた方がいいよな?
「……雪ノ下、いいか?」
「はい?」
「今のは壁ドンでは無い」
「………えっ?」
俺が間違っていると言うと雪ノ下は素っ頓狂な声を出して口をパクパクさせ驚く。
「……雪ノ下さっきのやつはただの痴女だぞ?」
そう言うと、雪ノ下の顔はみるみる火が出るのではないかというぐらい赤く染まる。
本当に陽乃さん何してくれちゃってるの?
お宅の妹さんはすごいことになっちゃってるよ。
しかし、顔を赤くした雪ノ下だが、少し経つと何かを決心する顔をする。
……あっ。これは陽乃さんを……と決心した顔だな。
「比企谷くん、さっきのは忘れてくれるかしら?」
「……あ、はい」
「あと本当の壁ドンってどんなことなのかしら?」
「あーっとな確か男が女を壁に追い詰めてドンってやるんだよ」
「……?」
雪ノ下はよくわからないのなキョトンとした首を傾げる。
んー、うまく説明できないよな。
「えーっとな、雪ノ下その壁に立ってくれるか」
「……こうかしら」
「そうしている人に向かってこうやって」
ドン!
と俺は雪ノ下に向かって壁ドンをする。
「……えっ」
俺が説明するために雪ノ下に向かって壁ドンをすると雪ノ下は、はっとしてみるみるうちに顔を赤く染める。
それを見て、俺も今の自分の状況を把握し、顔が赤くなっていくのが分かる。
……ん?これはマズイ状況ではないか?
俺が狼狽えていると雪ノ下は、
「…………ひ、比企谷くんあと顎クイって分かるかしら?」
顎クイ?
俺は小町の持ってる少女漫画で得た知識をフル回転で思い出す。
……えっと確かこうやって。
俺が雪ノ下の顎をクイと少し持ち上げると雪ノ下はそのままつま先で立ち、唇をそっと俺に近づけて――。
「――んっ」